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プロフィール
コメント数 565
性別 男性
自己紹介 三度の飯より映画好きです。どうぞよろしく。
※匿名性ゆえの傲慢さに気を付けながらも、思った事、感じた事を率直に書いていますので、レビューによって矛盾が生じていたり、無知による残念な勘違いや独善的で訳分らん事を書いているかもしれませんが、大きな心でお許し下され。
※管理人様、お世話になっております。
※レビュワーの皆様、楽しく読ませて頂いております。

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  BROTHER 《ネタバレ》 たけしの舎弟である寺島進は〝命を張ってきます〟などと宣言せず〝ちょっと用が…〟とまるでトイレにでも行くかのように、たけしに別れを告げる。だが彼を置き去りにし走り出したリムジンはどんどん小さくなっていき、次に見送る寺島進の精悍な面構え、そして車中のサングラスを掛け表情は分からないがたけしの無言のアップとなる。これは交わした言葉とは裏腹に、見事に紛れもない今生の別れのシーンとなっています。通じ合った者同士の間には無粋な言葉は存在しない。これぞ真の〝Brother〟なのです。[DVD(邦画)] 8点(2011-11-30 18:46:03)(良:1票)

22.  リミッツ・オブ・コントロール 《ネタバレ》 これは〝殺し屋〟の映画などではなく〝映画〟のための映画です。 意味深な「自分こそ偉大だと思う者を殺せ」という指令、2杯のカップ、同種のマッチ箱に入れられたメモ、ヘリコプター、個性的な登場人物たちの背景、裏切り者の存在、あるいは警備の厳重なターゲットの部屋への侵入、などなど…これらの詳細は一切説明されず省略されますが、まるで映画においては全て不要なものであると声高に宣言しているようです。そして必要に見せるのは繰り返し。例えば、バンコレの決まり切った行動様式がカフェでギャルソンとのやり取りに笑いを生み出し物語をシンプルにつむぎ出します。一つ一つのショットも芸術的でありながら嫌味にはならず、バンコレの絵画的な顔も強烈な印象を残します。 ・・・ただ、活劇としての弱さは感じます。もちろん殺し屋の物語なのに拳銃が出てこないのですから、あえて排除しているのでしょうが。それと個人的好みの問題が大きいのかもしれませんが、バンコレは顔は良いのですが動きにはいまいち魅力がありません。[DVD(字幕)] 8点(2011-04-26 18:33:58)(良:2票) 《改行有》

23.  ゴースト・ドッグ 《ネタバレ》 屋上で行われる修行が侍らしくないのはご愛嬌として、電話やファックスではなく伝書鳩を使ったり、最も気持ちの通じ合う親友とは言葉が通じなかったり、「そんなやり方はダメでしょ」と鳥に狙撃を阻止させて銃撃戦を見せてくれるあたりがタマりません。  それとやっぱりこれは役者陣が素晴らしいと思います。フォレスト・ウィテカーの巨体はトロそうでありながら素早く(ルーイを守るためジョニーを射殺する時の素早さ!)、攻撃的でありながら同時に柔和であり魅力的です。また、高齢化の波がもろに押し寄せているマフィアのジイ様たちが良い味を出していて、階段を登るだけでゼイゼイ息を切らしていたり、バスローブ姿でラップを披露したり、真剣な顔つきでアニメを見ていたりと、そのユニークさは相当な面白さです。 ・・・それからこの映画は他の映画のアイデアを拝借しており、過去にゴースト・ドッグがルーイに救われた二度のフラッシュバックにおいて、ルーイの回想とゴースト・ドッグの回想ではチンピラの銃の方向先が異なっているのは黒澤明の「羅生門」への、水道管から射殺するのは鈴木清順の「殺しの烙印」へのオマージュとなっているのでしょう。[DVD(字幕)] 8点(2011-03-03 18:48:26)《改行有》

24.  東京流れ者 《ネタバレ》 冒頭のモノクロームの映像の格好良さ、店がグチャグチャになる大乱闘の過剰さ、射程が10メートルの哲也(渡哲也)がわざわざ目印を作る面白さ、緑のブルゾンが似合う健(二谷英明)のニヒルさ、蝮の(川地民夫)の不気味さ、随所で歌う唄の楽しさ…と見所は尽きません。それにしたって、名残惜しそうに別れて一筆までしたためてくれた親分が〝成り行き〟で裏切ってしまう現実の切なさ。義理を重んじる昔気質の男は流れてゆくしかない世の中の住みづらさよ。[DVD(邦画)] 8点(2010-08-27 18:12:53)

25.  HANA-BI 《ネタバレ》 最初の方は北野監督にしては台詞が多いんじゃないかと思っていたのですが、例えば、タケシさん演じる刑事の子供が亡くなってしまったことや、奥さんが不治の病であること、大杉漣さん演じる元相棒が自殺を計ったことなどは、筋立としては重要であっても映画としては面白くも何とも無いから台詞で観客に説明するように簡単に処理しているのでしょう。ここで見せたいのは夫婦の肖像であり、その部分はえらく無口であってもケーキを使ってその仲をみせたりするのは実に見事だと思います。道中でも同様にどことなく物悲しさを感じさせながらギャグをかましていき、その果てに寡黙な岸本加世子さんの刃物よりも鋭くグッサリ突き刺さるような台詞が用意されているのですから堪りません。  それと寺島進さんが追跡者として追ってくるのも移動感が増していて良いです。たとえ彼らが追いつかなくとも北野監督の映画で浜辺で少女が無邪気に遊んでいたらそこはもう天国みたいな所で、紛れも無く終着駅なんですがね。  …ただ、絵の部分に関しては少々くどい感じも受けました。[DVD(邦画)] 8点(2010-07-27 18:43:37)(良:1票) 《改行有》

26.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 まずタイトルが出るまでのオープニングがとても良いです(この冒頭部が最も好き)。〝全員悪人〟という宣伝文句に違わず悪人だらけで、カッターナイフから菜箸まで生々しく痛覚を刺激し目を覆いたくなるばかりに狂気で凶器が満ちており、もはや銃なんぞ映っても全く怖くならないほど暴力全開です。また各々別世界から集めたようなキャラクターもしっかり立っていて、髪を撫で付けず煙草プカプカでヘラヘラの椎名桔平の魅力は否定できないですし(警察署前の煙草ポイ捨てのやりとりが面白い)、加瀬亮の風貌といい英語ペラペラのインテリ具合といい漫画から飛び出してきたみたいなキャラクターももっと見せてくれと思わせます。それに頭パカパカ叩かれてもオトボケ顔の三浦友和(吠えない犬ほど噛む)、時代劇から出てきたような石橋漣司(彼の登場シーンは喜劇だが、この皮肉な笑いも残酷なものだ)、人が良さそうな北村総一朗と小日向文世(彼らこそ最も計算高い悪党だ)と一人一人が本当に良い味を出しています。しかも誰もが口を揃えて〝バカヤロー〟〝コノヤロー〟と言うので、これはコントでそのうちダンカンも登場するのではないかと思ってしまう一方で、とても冷め切ってもいる不思議な世界になっています。  ・・・ただ、いつもより説明台詞が多いのが気になります(おそらく無くたって問題無いのだが)。例えば何処かの国の大使は完全にコメディーパートを勤めていますが、あの笑いはTVでやるようなしゃべくりによるものです。[映画館(邦画)] 8点(2010-07-07 18:16:31)(良:1票) 《改行有》

27.  酔いどれ天使 《ネタバレ》 もちろん酔いどれ天使の志村喬さんは良いのですが、やはり三船敏郎のギラギラとした感じが凄まじく、これ以降、黒澤映画の主役として圧倒的なスター性を放ち活躍することになるのも頷けます。黒澤監督もきっと三船のシーンの方が撮っていて面白くなってしまったのではないかと思わせるほどです。例えば、最後に岡田の所へ殴り込み行くシーンが素晴らしく、実際はそう長くない?廊下を長く使って見せ、乱闘の末にペンキでベトベトになって物干し場で事切れる松永の姿は強く心に残るものがあります。あの場面が素晴らしいあまりに、その後にあるエピローグの部分が全くの蛇足に見えてしまうほどです。[ビデオ(邦画)] 8点(2010-04-06 18:27:56)

28.  河内カルメン 《ネタバレ》 原作を読んだことはありませんが、この内容、文章ではこんなに楽しくできないでしょう。つまり本作には映画ならではの楽しさが詰まっているのです。野川由美子さんの魅力が十分に引出されているのはもちろんですが、例えば、露子が同性愛のモデルの先生に部屋に閉じ込められ迫られるシーンで、男が助けるためドアに体当たりしようとすると、悲鳴が聞こえドアがパッと開き、露子が何食わぬ顔して颯爽と階段を降りてくる…。この軽快さ、快活さが、本作の全てを象徴していると思います。[DVD(邦画)] 8点(2010-03-01 18:14:00)

29.  グッドナイト&グッドラック 報道の真の意味を問い闘うエド・マローがとことんカッコ良いです。それはたとえあのジョージ・クルーニーがダサめの眼鏡をかけていなくたって彼の方が格好良く見えたでしょう。というのはマローの鋭い眼光だけではなく、始終プカプカ吸い続けている指の間で今にも燃え尽きそうなあのタバコがキーアイテムになっているからです。クルーニーが白黒で撮ったのは当時の映像に合わせる為よりもタバコの煙の美しさを表現するためではないかと思えるくらいに、あるいはタバコ会社がスポンサーについているのではないかと思えるくらいにタバコが素晴らしいです。特にマローが登場するファーストショットがしびれます。横顔の影にタバコの白い煙が美しくまっています。この魅力的なショットから始まることによって、これから始まるマローの物語において彼がいかに立派に闘ったかという事に説得力を持たせ、英雄譚として成立させているのです。[DVD(字幕)] 8点(2009-01-19 18:13:23)

30.  レッドクリフ Part I 私は「三国志」大好きで、演義・正史問わず小説、マンガ、ゲーム、人形劇…と見境なく何でも見るのですが、結局のところ何に惹かれているのかと言いますと、その人物たちの魅力、〝漢〟たちの格好良さなのです。その観点からすると本作はやっぱり面白いです。キャラクターの特徴がそれぞれ端的にとらえられていて、劉備は庶民派全開でワラジを編み、中国で神格化されている関羽は当然のように光の中から登場し、張飛は怒声をあげ超人的なパワーを発揮し、超雲は不言実行で主君に尽くし、孔明は聡明で物腰は柔らかありながら掴みどころがなく、悪役として描かれる曹操も重い空気を纏いながら微笑みをたたえ懐が深そうな感じが良く出ているのです。しかしながら本作では、何と言ってもトニー・レオン演じる周瑜が格好良くって、その殺陣は一番アクロバティックに決まっていますし、時折、孔明すら見失うようにスッと姿を消すその存在は特別な者として描かれています。  さらに軍旗が印象的に使われていて、関羽は馬に踏みつけられている劉備の軍旗を取り戻しハタめかせ忠義を表明し、周瑜は曹操の軍旗をたたみ敵を屈服させようとします。この他にも各々の一騎当千ぶりを見せる殺陣がなかなかユニークで面白いのです。  そしてまた、男たちだけではなく女たちも格好良いのです。パンチをかます男勝りの孫尚香は魅力的ですし、絶世の美女・小喬が凄く官能的で惚れてしまいます。それも決してラブシーンが良いのではなくて、負傷した夫の体に自分の体を巻きつけるように包帯を巻くシーンの扇情的なことといったらないのです。こういうのをロマンティックというのでしょう。こりゃパート2も見ずにはいられなくなりました。 [映画館(字幕)] 8点(2008-12-02 18:34:05)(良:2票) 《改行有》

31.  殺しの烙印 《ネタバレ》 主人公が壁に寄りかかり謎の美女が階段の中腹あたりにいて、離れた場所でそれぞれ独りごちるように話すのにしっかり会話ができていたりと、現実世界よりも美的構図を優先したシーンが全編に渡って見られます。そういった意味では実験的な感じがするのですが、これがとても美しいのです。水と虫が象徴的な謎めいた美女のイメージは裸で駆けずり回る主人公の女房よりもずっと魅力的でエロティックで幻想的ですし、かと思えば飯の匂いをクンクン嗅ぎ興奮を覚える主人公は生活感に満ちていますし、そこに乗り込んでくるナンバー・ワンの殺し屋は、殺し道の極みだとばかりに目を開けたまま寝てズボンはいたまま小便垂れても、なおクールで強烈な存在感があります。車の下に隠れて前進していく埠頭での銃撃戦などとても工夫されていますし、ラストのナンバー・ワンとの決闘のシーンは暗い中に存在する四角いリングがとても印象的です。殺し屋に美女と巧みな演出、これだけで映画は十分に面白いのです。冒頭と最後に流れる殺し屋の歌も良い。[DVD(邦画)] 8点(2008-09-05 18:06:42)

32.  けんかえれじい 痛々しい喧嘩のヤンチャ的暴力性、触れるのもおっかない男女の仲の赤面的純情さ、こんな使い方があったのか!ピアノのハレンチ的欲情、そして真っ直ぐな反抗的青春…。暴力に馬鹿さに悲哀と男の構成要素をものの見事に描ききった本作のパワーは凄まじいです。そんなアホな男どもに蹴散らされる清純なる道子さんが可哀相でたまらんですが、これぞ〝をのこ〟の映画。[DVD(邦画)] 8点(2008-05-28 18:18:55)

33.  ミステリー・トレイン だから何なの?という内容ですが、例えば工藤夕貴さんが足でライターを付ける、例えばブシェミが店先で釣り竿を振り回している、例えばホテルのフロント二人の絶妙なコンビネーション…。こういう感覚というのは学んで身に付けたものではなく(もちろんジャームッシュはたくさん映画を観ていると思われるのですが)生来備わったものだと思います。ジャームッシュのこの感覚、私はたまらんです。[ビデオ(字幕)] 8点(2007-12-07 18:15:59)

34.  雨月物語 《ネタバレ》 朽木屋敷の幻想世界が最高の見せ場だとは思いますが、個人的にはその世界の入口と出口が印象深いです。入口は霧が立ち込める舟のシーンで、出口は妻の幽霊が待つ家に戻ったシーン、どちらも息を呑むほど素晴らしい。それから田中絹代さんが落武者に槍でつかれてしまうシーンは衝撃的ではないのに俯瞰気味に見せることによって傍観者のような冷たさを感じさせたまらなく悲しいです。…ただ一点気になるのが、説明台詞のようなものが何ヶ所かあることで完璧に近いからこそ逆に目についてしまいます。[ビデオ(邦画)] 8点(2007-11-19 18:16:41)

35.  イン・ザ・スープ 《ネタバレ》 いただけないショットが多い気はするが・・・率直に言ってこれは好きな作品だ。さえない映画屋と協力者の奇妙な友情、モノクロが良い雰囲気を醸し出しているところは「エド・ウッド」と似ているが、こちらの方が少しばかり先だ。真剣に手を伸ばせば届くかもしれないけれど、うたかたの如く不確かな夢。夢を追いかけるのは素晴らしい事だけど、〝誰と一緒に見るか〟というのも大切なんだと思わせてくれる。本作はアレクサンダー・ロックウェル監督が実際に体験した出来事を基にしているらしく監督の思いが詰まっているので、どこか優しい感じがするのだろう。嘘から始まった真の友情、新たな船出に思いを語る中、隣で死んでゆくのは「真夜中のカーボーイ」を彷彿させる、喜劇であり悲劇でもあるが観終わった後、心がほんのり温まる心地の良い作品だ。アルドルフォとジョーの二人の人物造形が実に面白く、ブシェーミのチャチャチャの練習場面やジョーが路地で元気いっぱい踊りまくる場面などとても良い。ユーモアに富む素敵な台詞も随所にありハッとさせられる。ちなみに私の最も好きなシーンはアルドルフォに天使だと言われたアンジェリカが始めて彼に見せる笑顔で、その表情が驚くほど美しい。[映画館(字幕)] 8点(2007-06-04 18:27:22)

36.  姿三四郎(1943) あのように投げ飛ばされただけであんなにボロボロになるのか?とか、三四郎と村井の一進一退の攻防は社交ダンスが始まるのか?とか思ってしまったものの試合シーンは実に工夫を凝らしてありダイナミックに描かれています。これといって波瀾もなくオーソドックスな展開ですが、三四郎と檜垣との対比もはっきりしていて食事をしているところに檜垣が帰ってくる場面など完全な訣別を感じさせますし、最後の決闘シーンも素晴らしいです。ただ残念ながらカット版だったので少々物足りない感じもしましたが、主人公の成長過程はしっかり描かれていますし無駄なシーンが全くなく叙情的で簡潔で、そして何よりとてもパワフルです。[ビデオ(邦画)] 8点(2007-05-14 18:18:00)(良:1票)

37.  薮の中の黒猫 《ネタバレ》 怪談ものの常套でもある悲劇の物語は概して単純なのですが何とも強い吸引力があります。冒頭の絶妙な構図の藪の中より物々しく現れる野武士の集団に不安な心持ちにさせられ、実際に暴行される母と嫁のシーンの毒々しさは現実さがあり残酷で、ある意味、本作で最も怖い部分と言えます。それに対して妖怪となった母と嫁が復讐を行うシーンは、まるで能を見るような品格を感じさせ美しさすらあるのですが、実行され殺害された侍たちの姿は夢から覚めたようにやはり無惨でギョッとさせられるのです。この幻想的な描写が人間業ではない物の怪の不気味さや怪しさを醸し出しているのですが、これが実に巧いのです。女たちの浮遊感、屋敷と藪の境界線の不透明さ、そして復讐のシーンに限らず銀時と嫁が絡み合うシーンの官能的な美しさなど特筆ものです。この胸の詰まるような物語後半、腕を取り戻しにくる箇所などは渡辺綱の逸話と同じ流れですが、愛欲あふれる母と子の関係だからこそ一際すざまじい情念が渦巻いておりドラマがより劇的なものとなっています。また人間の描き方も良くて侍の捉え方、特に酒呑童子を山賊だったと笑う頼光の豪快なキャラクターが面白いです。・・・ただ一点だけ気になるのは言葉遣いで、なんだか時々あからさまに現代語が入り混じっていたような気がします。[ビデオ(邦画)] 8点(2007-04-28 17:22:21)

38.  剣鬼 《ネタバレ》 花造りの名人にして走れば脱兎の如しという漫画チックな主人公の物語は、いささか精密さや盛り上がりには欠けますが、なかなか良いシーンが多いです。まるでその場に居合わせているかのように肩ごしから撮られた噂話をしているシーンや登城途中の風説で状況を伝える巧さ。そしてラストの幻想的な花畑での怨念渦巻く壮絶な斬り合いは圧巻です。美しいロマンスの花畑が一変してバイオレンスに血塗られる凄さ。さらに、一見、幻のように現れる居合抜きの達人などの素晴らしい構図も随所に見られます。また哀しくも不気味な斑平を演じる市川雷蔵さんが良いです。飄々としていながらも心情をしっかり感じさせてくれます。[CS・衛星(邦画)] 8点(2007-04-11 18:39:04)

39.  アンビリーバブル ともすれば未来という設定も忘れてしまいそうな近い将来が舞台ですが、これはシュールレアリスムをやりたい監督が冒険し過ぎる危険性を回避して、観客に歩み寄り少しでも物語性を備わせようとしている印象を受けます。なんせ既成概念無視の不可解な現象の連発。説明無し、物語の関連性無しにウガンダ人が空を飛びますし、異常気象を装い夏に雪が降りますし、水が凍結します。この不合理さは未来科学的と言うよりも完全に超現実的であり、同時にその画は詩情的なのです。ですから物語としては不親切と言いますかイイカゲンなのですが、私は何だかとっても惹きつけられるのです。まず最初の異変としてエスカレーターに死体が当たり前のように転がっていてホアキンと共にミステリアスな世界へと誘われる。そして錯覚のようにクレアのそっくりさんが登場するシーンにドッキっとさせられる。この奇妙な謎の数々の答えは提示されませんが、これは〝無人島に行くなら何を持って行く?〟みたいな極論に過ぎず意味など無く、愛についての追求なのだと思います。ショーン・ペンをストーリーテーラーとして使ったのは少々ズルい気がしますが、解り易さも提供してくれるしオトボケ学者キャラは味があります。ホアキンとクレアも役にはまっていますし、特にホアキンの無口で少し困惑気味の表情のアップが良いです。ただこの〝アンビリーバブル〟って邦題はどうなんでしょう?風船の如く空飛ぶウガンダ人だけに捧げられたようで、この題をつけたことがアンビリーバブルです。[DVD(字幕)] 8点(2007-03-30 18:20:48)(良:1票)

40.  この首一万石 《ネタバレ》 〝侍〟と言えば誉め言葉の代名詞として使われ侍精神には賞賛に値する面もありますが、その反面恐ろしい部分も混在するのが事実。そもそも封建社会のもと(殊に江戸時代)武士道は主君に都合の良いように組み込まれた思想体系。身分制度による差別や、面子・建前を重視し過ぎ生を軽んじるといった醜く残酷で好ましくない面も存在します。そして侍も人間なれば現実には良き面よりも悪しき面を実践していた者の方が多かったのではないでしょうか。酒を差し入れてくれた優しい侍までもが斬りかかってくる恐怖。侍の醜悪さを表面化させたラストの壮絶な大立ち回りはかなりショッキングです。・・・ところでこの物語展開どこかで見た気がするなぁと思ったら、偶然が重なり様々な思惑が絡み合い最後に一つに収束していくスタイルは…『ロック、ストック~』じゃないですか!いや~日本ではこんなに以前にやっていたのですねぇ。[CS・衛星(邦画)] 8点(2006-11-27 18:20:22)

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