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プロフィール
コメント数 1016
性別 男性
ホームページ http://blog.livedoor.jp/gepper26/
年齢 37歳
自己紹介 いつまでもこどもでいたいから映画は感情で観る。その一方で、もうこどもではいられないから観終わったら映画を考える。その二分化された人間らしさがちゃんと伝わってくる映画が好き。

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41.  いつか読書する日 《ネタバレ》 冒頭の数シーンで田中裕子さん演じる中年女性のそれまでの人生を垣間見ることができます。毎朝行っている牛乳配達。朝の長崎の坂道を、青白い光が優しく染める。どんビキの画の中には静けさがあり、その中で僅かに聞こえる牛乳瓶のぶつかり合う音。それは町中に響く。毎朝、毎朝。田中裕子さんは、その中に完全に染まっていた。めだち過ぎず、それでいて埋もれていない。この演技。これぞ演技だと実感する。気合を入れて上る長い坂道、玄関の前で座って待っているおじいちゃんに渡す牛乳瓶、それを急かす訳でもなく呼吸を整え飲み終わるまで待つ、そこには慣れを感じる。歳を感じるのにも関わらず、老夫婦の家に来ると子どもに見える。そこには昔からの積み重ねを感じる。そして躊躇するかのような表情を見せる一軒。10分かそこらで、町にとっての彼女の存在位置を理解することができる。話が進むに連れて、彼女がなぜあそこまで辛い仕事をするのかが理解できていく。彼女の台詞にもあったように、考える暇がないほど働き、疲れた状態で一日の終わりに読書をする。それが彼女の幸せだと。しかしその一方で、その全てが“愛”を意識しない為に行われている行動だという事にも気付く。そして、彼女は意識してしまう。考えてしまう。ミスをしてしまう。そんな彼女の変化、動揺、葛藤がヒシヒシと伝わってくる。生きていること、その中で人は誰かを愛さずにはいられない。彼女もまた、愛に溺れた。象徴的な展開だった。燃えるように愛し、そして燃え尽きた。が、しかし、彼女の中にからつっかえは消えた。意識しなくてもいい日々が訪れた。と同時に悲しみを背負った。だけど、そんな表情一つも見せない。それが彼女の強さであり、美しさだった。愛する人がいなくなった家に届け続ける牛乳瓶。そこに彼女の消えていない愛を感じる。[DVD(邦画)] 9点(2007-03-12 01:34:49)(良:2票)

42.  僕は妹に恋をする 《ネタバレ》 二人が始めて感情を表に出すシーンは、完全なるワンシーンワンカット。撮影、照明の凄さを感じます。また、あのシーンではワンカットであるがゆえに“間”が素晴らしい。流行の無駄なカッティングがない分、そこにある二人の感情が画からヒシヒシと伝わってきます。それはそこに音楽がないからであり、あるのは時を刻む時計の小さな音と、二人の息遣い。ワンカットで撮るからこそ産まれる静けさの素晴らしさ。二人の感情が緊張感となって痛いほど伝わってきました。音楽が極めて少ないけれど、随所で感情の大きなゆれが表現される時に使われている。これもまた凄い。“間”と“静”が生み出す感情の流れを監督は完璧に描いていた。監督のおかげで僕は二人にしっかりと感情移入することが出来、二人が胸に抱える喜びと悲しみをしっかりと感じることが出来た。しかし、それらは今の現代では受け入れられないかもしれない。昔は当たり前だった長回しも、今ではほとんど観られることはなくなった。地上波のドラマでは意味のないところでカットがコロコロと割られ、まるでインタビューの時間削減をしているかのようにぽんぽんと変わる。そんな時代に“間”は受け入れられられないかもしれない。でも、そんな時代に真っ向から映画の本質をぶつけるが如く、信念を貫く安藤尋監督を僕は心から尊敬し誇りに思う。時代に流されない日本映画の持つ力強さをこの先も貫き続けて欲しい。期待と感謝を踏まえて満点に限りなく近い9点を点けさせていただきます。[映画館(邦画)] 9点(2007-02-06 22:55:32)

43.  山椒大夫 あまりにも深い絶望。苦しくて、どうしようもなく、それなのになぜ死に行く安寿はあれほどまでに美しく描かれているのだろう。水面が揺れ、吸い込まれていく肉体が絶望さえも吸い込んでいくように、美しく見える。溝口監督の作品には必ず、どこかに小さく、本当に目を凝らし、心を完全に広げていなければ見えてこないような儚い希望の光が見えるような気がする。繊細で尊い命という名の光。それを我々に教え、伝えてくれる。心が震えた。[ビデオ(邦画)] 9点(2007-02-04 02:40:52)(良:1票)

44.  幸福な食卓 《ネタバレ》 この作品を観終わってから、じっくりと時間を掛けてこの作品が何を伝えたかったのか考えてみた。自分なりにではあるけれど、うっすらと見えてきたものが一つあった。それは、“家族の再生”、あるいは、“人生の再出発”ではないでしょうか。中原家の少し異質で感情の欠落したようなファーストシーンからそれらは始まっていたように思います。遺書まで残し、家族を捨ててまでこの世を去ろうとした父は「父さん、父さんを辞めようと思うんだ」なんていいだし、それに対してお兄ちゃんは「あらまぁ」で軽く流すような発言をしている。これがふつうな筈がない。正しい家族のあり方や間違いのない人間になる為に、それぞれがそれぞれのやり方で修正しようとするけれど、それは簡単な事ではなかった。過去を忘れようとしても、忘れられるものではない。でも、振り返ってばかりいては前に進めない。さまざまな苦しみを受け入れて進まなければならない。しかし、中原家の中で、彼女以外のみんながそれから逃げていた。ラストシーン、主演の北乃きいさんが、土手の道を歩く長いシーンがある。僕の記憶にはなぜかあのシーンばかりが鮮明に残っている。この作品の中で中原家だけでなく、多くの登場人物が悩み、苦しんでいるその葛藤があのワンシーンに集約されていると感じた。何度も後ろを振り返り、何かにすがるような目をする。そこには彼女の心の内にある忘れらない想いと忘れたくない想いがあるのがわかった。そして、一つのカットを挟んだ後、彼女はもう後ろを振り返ることなく、前だけを見て歩いていた。彼女の中でどういう心境が働き、変化したのか、その全てを理解することは僕にはできなかった。ただ誰かに支えられ、また時には支え、そして彼女は向かったように思います。彼女をいつも見守っていてくれる家族の待つ食卓へ。 すばらしいラストシーンだったと思います。[映画館(邦画)] 9点(2007-01-29 07:53:38)(良:1票)

45.  ゆれる 《ネタバレ》 主人公の目線で物語が始まり、二人が画面の中に収まった時点から確実に揺れ始めていた。兄との違いに揺れ、それは嫉妬であり、劣等感であり、優越感だった。兄の背中を見て育った弟は、兄の幸せを望み、兄が掴もうとしていた幸せを奪い取り、兄を庇い、そして兄を陥れようとした。全ては兄への嫉妬から生まれた物。自分に無いものを全て持っている兄に対し抱いていた劣等感。優しさなどはそこには存在しない。兄の幸せを願ったのは、自分はすでに幸せであるという遠まわしな嫌味であり、兄を庇おうとしたのは、自分が始めて優位に立てる状況を作ろうとしたからだった。全ての原因は捻じ曲がった弟の心がもたらした。そんな目には見えていない危うい心が、しっかり雰囲気となって、まさにゆれている橋の上にいるような恐怖や緊張感を僕に感じさせてくれた。この映画は素晴らしい。[映画館(邦画)] 9点(2007-01-06 21:36:52)(良:1票)

46.  武士の一分 《ネタバレ》 この映画を作った山田洋次監督が、木村拓哉さんと檀れいさんを通して何を伝えたかったのか…それはまず間違いなく“愛”でした。目で見て確かめる事のできない形のないものを、様々な方法でこの映画を見ている者に伝えようとする、その山田洋次監督の熱い想いに深く感動しました。[DVD(邦画)] 9点(2006-12-22 00:45:47)

47.  HANA-BI 《ネタバレ》 生と死。暴力と愛。様々な感情の間で男の心が揺れ動いているのがヒシヒシと伝わってきます。伝えたいことだけを描こうとする北野監督の想いが随所からうかがえます。無駄な説明もないのにストーリーがわかり、その波に乗っかっている人間たちの感情も台詞があれほど少ないのに恐ろしいほど伝わってきます。その演出力、あるいは脚本の無駄のなさに感動しました。全ての台詞、行動、カットに意味を持たせ、そして最後に繋げていく。素晴らしかったです。男は誰かを守るために拳を上げ、そして時に引き金を引く。その一方では、自分を犠牲にしてまで他人を包もうとしている。男の優しさとそれとは真逆の部分が強いがゆえに一方が際立つ。その方法は様々なところから伺えました。静けさが多くあるからこそ、音楽が際立ち、また台詞が際立つ。また死があるからこそ、何気ない行動、すなわち生きている時間が重く感じられ、さらにラストでの女の二言が、それまで一切何も語らなかったが故に際立ったと思います。その一つ一つに、全てが集約されているような気がしてなりません。多くの登場人物たちの心の葛藤が素晴らしく、その一人一人に感情移入できてしまうその一人一人の重要性にもまた感動しました。やはり北野監督は凄い人だと心から思います。[DVD(邦画)] 9点(2006-12-22 00:20:01)(良:3票)

48.  明日の記憶 《ネタバレ》 エグゼクティブプロデューサーを渡辺謙さんがしておられる事から、この作品にかける渡辺謙さんの想いはかなり強かったと思われます。テーマとして感じられるのは、やはり“愛”でしょう。しかもそれはそんじょそこらの“愛”ではなく、もう言葉では言い表せないくらい強い愛情です。深く広く、そして硬い愛です。アルツハイマーになる夫を支える妻。それはもう大変などという言葉では表しきれません。この作品はそのことから考えると妻を演じる樋口可南子さんが真の主人公だったと思います。夫の記憶が失われていく苦しみも確かに悲しく辛い物だと思います。でもそれ以上にその夫を見捨てず、何年も傍らに寄り添い続けられるその強い愛情に感動しました。時には嫌になり、時には逃げ出そうとも考えるその苦難、そこで大概の人間ならそうしてしまうでしょう。でも、それから目をそらさず、むしろさらに強く暖かい視線で夫を見つめるその妻の心の強さに涙しました。全てを忘れようとしているのに、手から離さないそのコップには妻の名前が刻まれている、そこにもまた互いの深い信頼と強い愛情を感じました。たった一つのアイテムで全てを集約してしまうその演出も素晴らしかったです。[DVD(邦画)] 9点(2006-12-09 18:33:37)(良:1票)

49.  暗いところで待ち合わせ 《ネタバレ》 僕はこの原作も脚本も読ませていただきました。さらに少し前学校で、天願監督に怒られてしまいました。まぁ、そんな事もあって、この映画、かなり気合入れて観にいきました。まず、初めの印象は演出がものすごく上手いという事です。奇妙な同棲の中で、すれ違い、ぶつかりそうになるそのギリギリが素晴らしいとしか言えないほどの緊張感となってそこに漂っていました。原作も脚本も読んでいましたから、オチは当然知っていましたが、それでも次どのような展開になるのか原作と脚本を読んだ事を忘れて夢中になって画面を見つめていました。冒頭では、二人を漠然と写し、次にミチル、その次にアキヒロ、そして最後はミチルとアキヒロを描く。その一貫した流れが本当に観るものを楽しませてくれました。無駄のない脚本は二人が徐々に近付いていく様子を巧妙に描いていました。本当に少しずつ少しずつ。どうやったらここまで繊細に描けるのか驚くばかりです。そして最後のミチルとアキヒロの向かい合っているショットは、キスしそうなくらい近い。それは二人の心の距離を演出しているような気がして、思わず興奮してしまいました。また、この作品は非常に台詞が少ないだけに、役者の演技が試されたような気がします。その点、田中麗奈さんの演技は完璧だったと思います。盲目の方がどのような動きをするのかはわかりませんが、やはり家の中であれば自由自在にまるで目が見えているように動けるのでしょう。そのリアルさに感動しました。さらに窓の外のホームに立つ母親に向かって「おかあさん」と叫ぶシーンは本当に素晴らしかった。彼女のイメージシーンも間に含めることで母親への思いをさらに強い物として描かれていました。アキヒロの役のチェン・ボーリンさんの動きも素晴らしかったです。黙っている時のちょっとした動きや作業の動き、あと目線の力強さなど本当に素晴らしいところが多かったです。僕は主人公の二人に原作と脚本を読んでいましたから、初めからしっかり感情移入して観る事ができ、ミチルの一人では生きて行けないという思いと、アキヒロの誰かに信じてもらえる事の喜びをヒシヒシと感じながら見ることができ、終始非常に楽しく観る事ができました。素晴らしい作品だったと思います。[映画館(邦画)] 9点(2006-12-09 18:14:50)(良:1票)

50.  亀は意外と速く泳ぐ 見終わっても彼らが本当にスパイだったのか疑わしくなるほど彼らの存在がふつうでした。ふつうにバーベキューしながら銃を扱ったり、ふつうに夫婦が会話をしながら、あっさりと箪笥の中から500万円が出てきたり、非現実的な出来事があまりにもシュールに、そしてあっさりと出てくるもんだから、それがふつうのような気になってしまいました。まぁ、それは間違いなく勘違いなんですが、それほどこの映画のなかの“ふつう”は尋常じゃない“ふつう”感が溢れていました。ストーリーの中でクジャクが地引網をしながらボソッと、あっさり「ふつうそうなスズメが幸せそう」的なことを言っていましたが、この映画はコメディでありながら“ふつう”あるいは“平凡”の素晴らしさを訴えているのかもしれません。いかに何気ない平凡な日常を楽しめるか、そして、平凡な毎日をどれだけ大切に過ごせるか、という物を感じました。ふつうにしろ、ふつうに歩けと言われると「ふつうって何だっけ?」って思うのと同じくらい、ふつうという行為は無意識にしている行為で、考えるとなかなか難しいことなのかもしれません。だからそこそこラーメンのおじさんも凄いことをしているんだという説得力が沸いてきました。「自分には出来るのだ。出来るのに作らないだけだ。作れば作れる」そのなんとも言えない切なさ。コメディなのに、危うく泣き掛けてしまいました。ここまで書いて気付いたのが、ふつうなスズメと、ふつうじゃないクジャクを比べる事でスズメの良さ、つまりふつうの素晴らしさと難しさが引き立っているのかも知れません。この作品の脚本はそういった点も深く考えられていますね。ただ単にコメディを作るだけでなく、そういったしっかりとしたテーマとメッセージ性を持っている事は素晴らしいと思いました。どうしようもないほどくだらないことばかりやっている映画ですが、僕はこういう現場で汗を流してみたいと強く思いました。作品の中から楽しさや情熱たるものがヒシヒシと伝わってくる、素晴らしい映画でした。[DVD(邦画)] 9点(2006-11-30 01:26:22)

51.  虹の女神 Rainbow Song 《ネタバレ》 岩井俊二監督がプロデューサーという立場からどの程度製作に手を加えたのか、詳しいことは何一つ知りませんが、それでもあの構図の撮り方や色彩の鮮やかさ、そして照明の美しさから考えると、かなり深いところまで監督が手を加えているような気がしました。映像的な部分で言うと、ひとカットひとカットの画がとても丁寧に作られているのに感動しました。手持ちの移動ショットや長回しのショットが、淡々と語られる平凡な台詞の掛け合いに臨場感をプラスさせていたように思いました。終始、そんななんともない物語が流れていきますが、この作品はそのなんともない感じに深い共感を僕は覚えました。片思いの切なさや、夢に対する不安と期待など、青春真っ只中な主人公たちの心が想像しなくとも勝手に感情へと深くしみこんできます。鈍感な主人公を愛す、純粋な心を持った女性。彼女の優しさや弱さが素晴らしすぎます。観ているこっちとしては何で気付かないんだとイライラしっぱなしです。しかもそれが延々と、リアルに描かれ続け、それでも主人公は気付かず、彼女が最後に直球とも言える賭けをするものの、やっぱり主人公は気付きません。この時点で観ているこっちはその後何が起きるかわかっているから主人公の愚かさを呪います。また、悔しくもあります。だからなのか、ラスト、彼女の想いが思いがけず主人公に伝わります。純粋で鈍感すぎたがゆえに気付けなかった主人公。そんな彼の鈍感な部分も、不器用な部分も、みんなみんな好きだと綴った手紙。もっと早くこの手紙が渡っていればと悔しくなる反面、想いが主人公に届いてよかったと嬉しくも思います。主人公の青年にも、女の子にも僕は無意識のうちに激しく感情移入していました。こんなことは滅多にないような気がします。この映画は僕は今出会えたのがベストだったような気がします。こんなにも共感した作品はあまり他に覚えがないです。主演の市原君と、草野樹里さん、あと蒼井優さんの三人の演技は素晴らしいの一言に尽きます。脚本、役者、映像。多くの要素が本当に素晴らしい作品でした。[映画館(邦画)] 9点(2006-11-16 23:31:20)(良:1票)

52.  ただ、君を愛してる 《ネタバレ》 写真展のシーンは本当に素晴らしいシーンでした。平凡で、ありふれた、当たり前の日常から切り取られた白と黒の写真。それは、静流と誠人の平凡な日々のほんの一瞬の出来事で、誠人はその平凡な日々がいつまでも続くと思っていた。いつまでも変わらずそこにあり続けるものだと、そう思い込んでいた。でも、当たり前は、いつだって不意に終わりを告げるもの。何の前触れもなく訪れた別れに、人は、その当たりまえの日々がいかに幸せで、いかに喜びに満ちていたかをようやく気付く。いつまでもそばにあり続けると思っていた温もりや香りが突然消えてなくなる、それは愛情とはまったく別離の感情ではあるけれど、喪失は必ず誰にでもやってくる。それなのに僕らはそれを忘れ、当たり前の喜びを見失いがち。それがどれだけ儚く、尊いものか忘れてしまう。どんな大きな出来事よりも、日々繰り返される平凡な営みこそが幸せだということに気付けないのだ。いつまでもそばにいると信じ切っていたせいで、言わなかった事や行かなかった場所。もっと笑っていればよかった。もっと彼女に触れていればよかった。もっと早く気付けばよかった。そんな誠人のどうしようもない悔しさや切ない感情が画面から痛いほど伝わってくる。それでも静流が悲しんでいないのは、きっと誠人に出会い、愛することの幸せと喜びを知ったからだと思う。誠人に振り向いてもらえるよう大人の女性になろうとするその純粋な片思いの心も、とても素敵だった。そして最後の静流の写真。それは、美しくなった彼女の姿だった。初めに誠人が出会ったときとはまるで別人のようだった。さらに、池の畔でのキスの写真は本当に素敵だ。「生涯ただ一度のキス、ただ一度の恋」というタイトルのその写真は、彼女の想いが溢れるほど込められていたように思う。人生の全てをその瞬間に注ぎ込んだような写真だった。だからとても幸せそうで、美しく見えるのだろう。そして誠人もその瞬間、静流を愛していた。想いが重なった唯一の写真。その写真の中での二人の想いは強く結ばれていた。だから僕の涙は止まらなかった。人を愛することの素晴らしさを教えてくれる素晴らしい作品。[映画館(邦画)] 9点(2006-10-28 22:05:36)(良:1票)

53.  シムソンズ 劇中で登場人物の一人が「長くやっていると忘れてしまう」と言っていたが、確かにその通りだと思う。いつからか、なんのために上手くなりたいのか忘れ、ただただ毎日辛い練習を繰り返すばかりで、苦痛ばかりが増えていく。でも、彼女たちはそうはならず、常に初心というか自分たちが楽しむ為にやっているのを忘れる事無く、笑顔でやっていた。それは、やはりスポーツをやり続ける意味なんだと思う。楽しいから、明日もがんばれるのだ。それを忘れていなければ、辛い練習を毎日続けていると、出来なかった事ができるようになって、より楽しくなって「もっともっと」って上を目指せるようになる。楽しさは、向上心と情熱と喜びを与えてくれる。この映画にはその多くが詰め込まれていた。仲間と力をあわせてやることは、たった一つの良いプレーでさえ、物凄く大きな喜びに変わり、それを彼女たちは、常に噛み締めていたように見えた。ミスをカバーし合い、仲間を信頼し、全力を尽くす。これぞスポコン。ひた向きに努力している様子と、その努力が実を結ぶ様子が、見ているだけで嬉しくなる。スポーツの素晴らしさを実感すると共に、仲間の大切さを痛感させられた。[DVD(邦画)] 9点(2006-10-04 02:26:06)

54.  リンダ リンダ リンダ 《ネタバレ》 たまに大げさに騒いだり、その後にぽっかりとその騒いだ分だけ元気がなくなる。高校生の頃って大体そうで、後先なんていちいち考えてない。今が楽しければ、それ以外に理由もいらなかった。仲間と一緒に何かに向かって努力して、結果はどうあれ自分たちが満足するためにひたすらやる。この映画はもしかするとどんな青春映画よりも地味で、でもどんな青春映画よりも自分が感じてきた青春の温度と限りなく近い気がする。意外といつも喋んない奴が突然まじめな事話したり、行き当たりばったりで良い風に転がったり、目が覚めたら時間が過ぎててその事実を認めるまでに意外と時間が掛かったり、結局告れなかったり(で、後で後悔する)。不思議と、地味なことが記憶の中で一番鮮明だったりする。今まで観てきた青春映画の多くは、常に楽しさや興奮するような物を積み重ねてる事が多い。それは観ていて楽しいけど、リアリティはないし、共感もほとんどない。薄暗い見慣れた廊下や遠くから聞こえる練習の音、全然人の来ない展示のクラスや焼きそばの美味しさなんかは、地味だからこそ胸に響いた。意味の無いような台詞や地味すぎて気付かないような台詞が、本当にリアルで、あるある、なんて思いながら笑っていた。この映画は、僕の中でこれ以上のリアルはないような青春が、全てのシーンに欲張りなほど盛り込まれていて、胸が一杯になった。あと、最後、ステージの上に靴下を脱いで、裸足で登場するのは、僕の中での青春の最もエロいと思っていたスタイル。[DVD(邦画)] 9点(2006-09-14 01:52:57)(良:2票)

55.  運命じゃない人 日本版『パルプ・フィクション』+『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』と言ったら大袈裟です。でも、そんな感じです。時間軸を行ったり来たりしながら、四人の登場人物に視点を置いて物語が語られて行きます。ストーリー自体は複雑ではないのに脚本がとても巧妙に作られていて、お馬鹿なぼくにもとても簡単に理解し楽しむ事ができました。登場人物たちがみんな揃いも揃って不器用で冴えない奴らばかりで、みんなすごくちっぽけな人間に見えます。でもそれがなんとも言えない爽快感だとか小さな感動を与えてくれます。また、登場人物たちにはそれぞれの目的があり、その目的を果たすためみんな必至になって悪戦苦闘しますが、やはりみなさん不器用なのでことごとく空回りします。おバカさんの為の上質おバカムービー。[DVD(邦画)] 9点(2006-08-25 19:54:52)

56.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 作品の中で非現実的なタイムリープをやりたい放題行っているのに、目が向くのは、現実的な三人の行くへだけ。聞きたいくない事、やりたくない事、やられたくない事、やってしまった事。主人公の少女は自分の想い通りにしたいが為にタイムリープを繰り返し、ミスをやり直すためにタイムリープをし続けた。その結果、彼女は取り返しの付かないミスをする(ここでの葛藤は、観ているこっちまで苦しくなる)。無邪気に使っていた事を後悔し、やり直す事のできない現実に涙を流す。そして、彼女が最後にしたタイムリープは、自分の為じゃなく、大切な人の為。そして未来の自分の為。彼女は少女から大人になる為に、進むべき目標を見つけた。あぁ、この映画はなんて素晴らしいのだろう。今を楽しむという、青春の原点を思い出させ、そして見せ付けてくれる。あぁ、素晴らしい!あぁ、高校生に戻りてぇー![映画館(邦画)] 9点(2006-08-23 21:33:28)(良:2票)

57.  タイヨウのうた 《ネタバレ》 YUIの演技は良かったと思う。初めてであれだけ出来れば十分。初々しい演技と、弱弱しい台詞の喋り方にはとても好感を持てた。YUIが歌うシーンに随分と長い尺を取っていたのも、あれはあれでいいと思う。主人公の少女の弱々しさとは反対に、歌っているときの力強さが、命がけで力いっぱい歌っているようなに見えて、夏の蝉のような儚さと青春の清々しい感動を覚えた。主人公の少女と恋をする青年役の演技も、その年齢の男の子の真っ直ぐで純粋な心をしっかりと捉えた演技をしていたと思う。病に苦しむ主人公の話は結論的に死に行き着くのは当然の結末ではあるが、そこで主人公を取り囲む残された人々がどういった反応、対応を示すかが観る者の心を引く。この作品の良い所は、人生の中で、最初で最後に人を愛すことの喜びと幸せを知り、そこから多くのことを知り、人と触れ合い世界を広げて、そして去っていったという、一見ありきたりではあるが、その中に込められた彼女の喜び、幸せがYUIの歌う曲を通して強く感じることが出来た。主人公がCDの中に吹き込んだ歌声を、彼女の家族と彼女が愛した青年、親友の少女だけでなく、ラジオを通して多くの人の心に届いたという終わりはとても良かったような気がする。彼女がこの世を去ったことで、涙を流すシーンを入れるよりも遥に、爽やかな笑顔と共に終わっていた事が何よりうれしかった。そして、この作品によってYUIの横顔の美しさ、演技中の愛くるしさなど様々な面でYUIという人間が好きになりました。素敵な映画だったと思います。[映画館(字幕)] 9点(2006-06-30 02:01:20)(良:3票)

58.  河内山宗俊 見せるものは見せる。いらないものは見せない。とにかく自分の目でしっかりと観て、己の頭で考えろと言わんばかりの無駄のない脚本。そのテンポの良さはもう、82分という作品の長さからもはっきりとわかる。濃縮というか、凝縮というか、とにかく、82分に詰め込まれた内容の濃さ、厚みに感動する。維持をはる馬鹿な男、自分の欲ばかりに動く男、何にもなり切れない愚かな男、誰かの為に死ねるのなら幸せだと言って血を流した男、言葉少なくただただ男らしい生き様を見せ付けた男。どれになるかは、自分次第。その瞬間に何のために生き、そして誰の為に生きたかで、男の本当の強さが試されるのではないかと感じた。面白い。面白すぎて、悔しい。[DVD(字幕)] 9点(2006-06-25 01:55:55)(良:2票)

59.  めし やはり女性を描く天才です、成瀬巳喜男監督は。全てが女性中心に回り、男はその全ての引き立て役に過ぎず、喜びも悲しみも結局は、気まぐれで繊細な女性の心理で変化する。その変わり目、変わる瞬間、変わっていく心情。それらの繊細な心理は男にはわかるはずがないのです。でも、そのわからないはずの心理描写を、映像の中に切り取って、描いてしまう成瀬監督。すごいとしか言いようがないです。歩く様、眠る様、ご飯を装う様。その全てから、女性の深層心理がひしひしと痛いくらいに伝わってきます。辛く退屈な日々から逃げ出し、全ての荷物を降ろしたとき、軽くなったその頭と身体から眺めた景色の中の生活は、何気ない平凡な姿に過ぎなかった。柔らかく自然な俳優たちの演技、平凡を絵に描いたような淡々とした暮らし。時代は違うが、そこにある日本と日本人に深い共感と、爽やかな感動を味わいました。[DVD(字幕)] 9点(2006-06-25 01:32:36)

60.  火火(ひび) 高橋伴明監督に直接質問することが出来た。「タイトルの火火というのは、どういう理由があったんですか?」すると判明監督は「田中さんが付けたんだよ。火と火でよろしくって」そんな単純な会話にも満たない言葉だったが交わすことができた。実際に監督直々に映画の説明をしていた。白血病のリアルな映写の時、窪塚君は直々にリアルな演技を進んでしたとか、本当に様々な裏話から、特に感じ取って欲しい部分だとか、丁寧に語られた。親子の深い絆、信頼、愛情。どこにでもありそうだけど、どこにもない、本物の親子。どこまでやれるか、どこまで尽くせるか。胸が痛くて仕方なかった。残そうと思えば永遠に残すことが出来る焼き物の美しさとは違い、人間はいつか必ず灰になる。でもそのとき、誰にどういう形で愛され、また愛し、そのときを迎えるか。どんなに辛くともそこに温もりがあるのなら幸せなのかも知れない。この映画から伝わってくる最も大きく、美しいメッセージは、「ありがとう」だと思う。[映画館(字幕)] 9点(2006-06-19 00:45:12)(良:1票)

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