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プロフィール
コメント数 215
性別 女性
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/
自己紹介 正直、生まれは平成じゃないです。かなり、昭和なムード。昔みた映画を思い出しながらレビューしますので、記憶がずいぶんあやふやかも。なにか変なところがあったら、http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/のほうにツッコんでおいてください。

好きな女優
 「或る夜の殿様」の山田五十鈴、「近松物語」の香川京子
好きな男優
 「お茶漬けの味」の佐分利信
好きなキャラクター
 グレムリンちゃんとマシュマロマン

☆評価基準
10点:超絶。ほとんど奇跡。
9点:傑作。かつ大好きなんだもーんッ!
8点:傑作だし、好きデス。
7点:素晴らしいです。好みの映画です。
6点:まあ、悪くないと思います。
5点:なにか気になるものはあります(~~;

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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41.  七瀬ふたたび 「出来のいいTVドラマ」と言ったら、あまり褒め言葉とはいえないかもしれないけど、けっこう満足して観ることができました。やたらと描きすぎず、物語の前提部分を思い切ってカットし、回想によって断片的に見せていくという手法の脚本は、シャープな感じで好きです。ただし平泉成の役どころはちょっとあっさり描きすぎかなあ、とは思う。テレパシーを文字イメージで表現したり、パラレルワールドを図解したりする映像については、違和感というほどのものはないけど、テレビっぽいのは否めない。映画的な表現としては、評価しにくい。また、CGの出来不出来とかはそんなに私は気にしませんけど、さすがに空を飛ぶシーンにはちょっと笑ってしまいました。せめて役者さんの表情だけでも、もう少し「飛翔感」が出せてればよかったですね。物語のメッセージを限定しすぎて押し付けずに、多様な読み方ができるように作ってあるのは良かったと思います。[DVD(邦画)] 6点(2022-07-02 18:13:20)

42.  横道世之介 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。若いタレントを魅力的に見せる青春映画としては、じつにオーソドックスな作りで良く出来ている。2時間40分というのはずいぶん長いけれど、冗長だと感じるのは最初の30分ぐらいで、それ以降はむしろいつまででも見てられる感じになってくる。 この映画がユニークなのは、時制が前後することによって、物語の結末が途中で分かってしまうこと。しかもその結末は、主人公と関わりの深い友人や家族によってではなく、主人公ともっとも関わりの薄かった女性(伊藤歩)によって知らされる。それによって、この映画の伝えたいことが「結末」ではなく「過程」なのだということを観客は認識する。そして、それは映画の終盤にではなく、むしろ映画の全編にみなぎっているのだということを観客は理解します。 要するに、この映画の主題は「横道世之介の人生を愛でること」と「80年代へのノスタルジー」なのですけど、たとえば「セーラー服と機関銃」や「時をかける少女」が、いまなお若手女優を愛でるためのフォーマットとしてリメイクされ続けているように、この作品も、若手の男性俳優を愛でるためのフォーマットとしてリメイクできる余地があります。今回の高良健吾の起用が(べつに失敗ではないだろうけど)最善の選択だったかどうかは分からない。たとえば池松壮亮や柄本佑が世之介役だったとしても、それなりに成立しただろうな…という想像はできてしまうし、あまりにイケメンすぎる役者だと、ただの「リア充」に見えてしまうので、むしろイケてない俳優を起用したほうが、かえって愛おしさは増すだろうという気もします。 実際、この映画では、高良健吾よりも吉高由里子の輝きのほうが上回って見えてしまうという面は否めない。 長い映画にもかかわらず評価が高いのは偉いですけど、このサイトの平均点はちょっと高すぎなのでは? 6点台で十分でしょ。[インターネット(邦画)] 6点(2022-07-02 18:08:19)《改行有》

43.  いつか誰かが殺される 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 良くも悪くも、テレビの2時間サスペンスみたいな気安い映画ですが、80年代のアイドル映画の楽しさは味わうことができました。映像が綺麗なら、もっと楽しめるだろうに。 なぜ永山家の子供達の名前を組み合わせると、それより後に生まれた主人公の名前に一致するのかがイマイチ謎。主人公の父は永山家を避けていたらしいし、その子たちにあやかって娘の名前をつけたとも考えにくい。 そもそも中国東北部の馬賊の話に結びつけねばならなかった理由もよく分かりませんが、もしかしたら赤川次郎の父が満州映画の人間だったことに関係してるのかしら?勇猛な馬賊の生き様を憧憬することで、卑怯なスパイの暗躍する国際社会を風刺したのかもしれませんが、この映画の観客にはまったく伝わらないだろうと思います(笑)。[インターネット(邦画)] 6点(2022-07-02 18:08:01)《改行有》

44.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 さぞかし現代的にアップデートされてるかと思いきや、そういうわけでもなく、むしろSF的な要素を排して素朴な青春ドラマに回帰したという印象。かけがえのない出会いや人生への愛惜というテーマは基本的に変わっていない。それだけ原作の物語が普遍的だという証なのだろうし、はじめてこの物語に触れる世代にはこの内容でも十分なのでしょう。ただ、年寄り側の立場からいえば、もうすこし驚かせてほしかったというのが正直な感想です。 ひたすらタイムリープを繰り返すだけの展開はやや退屈で、やはり叔母の芳山和子の過去や、彼女が修復していた絵画の謎に踏み込む展開が見たかった。「もう一人の男子」(本作では津田功介)の役割も十分に効果的とは言いがたい。作画についても、物語についても、可もなく不可もなしといった出来。[地上波(邦画)] 6点(2022-07-02 18:06:23)《改行有》

45.  コクリコ坂から 《ネタバレ》 『風立ちぬ』の2年前に制作されていますが、時代設定でいえば『コクリコ坂』のほうが四半世紀ほど後の物語です。この2つの作品には、強い連続性が感じられます。実際、戦前の「航空マニア」の多くは、戦後の「船舶マニア」でもあったはずです。 物語の中心的なテーマは「親世代の過ち」です。主人公の少年と少女は「父の過ち」を疑うのですが、これはメタファーにすぎません。少年の父親は太平洋戦争で、少女の父親は朝鮮戦争で死んでいます。LSTによる朝鮮戦争への参加という歴史も、太平洋戦争という「過ち」の負債であるに違いありません。 しかし、主人公たちは、少年の出生の秘密を知ったときに、父(=太平洋戦争の戦友たち)の行為が「過ち」ではなかったと納得します。明治時代から横浜に残る"コクリコ荘"や"カルチェラタン"といった建築物の価値を肯定するのと同様に、親世代の歴史の意味を肯定していく物語なのです。オリンピックの狂乱を契機に変貌しようとする高度成長期の東京を横目に、あらためて「戦前」の価値を見つめ直そうとする若者たち。そこには、安直な方法で建て替えをはかろうとしていた「戦後」の日本への批判も見え隠れします。 この作品を、たんに「昭和30年代の日本を懐かしむ映画」だと理解するのは間違いであって、むしろ登場人物たちは、「戦後」の日本社会を批判しつつ、失われていく「戦前」の価値を守り抜こうとしている。これこそが『風立ちぬ』のテーマにも通じる、宮崎駿のもっとも危険かつ美しい思想ではないでしょうか。自分の子供に「陸・海・空」と名づける親の発想もだいぶ危険な気がしますが(笑)、宮崎駿自身も、こうした価値観を息子に託しているように見えます。 メタファーをどう読み解くかは観客に委ねられていると思いますが、『千と千尋』や『もののけ姫』のメタファーを読み解くことに積極的な人たちが、『コクリコ坂』や『風立ちぬ』に対して何らのメタファーも見て取ろうとしないのはおかしな話だと思うし、わたし自身は、それらの作品のメタファーがたがいに共通のテーマで結ばれていると思わずにはいられません。 なお、『風立ちぬ』がユーミンの「ひこうき雲」の世界だったとすれば、『コクリコ坂』はさしずめ「海を見ていた午後」の世界です。冒頭で手嶌葵が歌っていた曲は、ほとんど「チャイニーズスープ」のようです。武部聡志と谷山浩子は、たんに「昭和の横浜の音楽」を作っただけでなく、まるで次作のテーマ曲が「ひこうき雲」になることも見越していたように感じます。 宮崎父子の危険な思想の是非はともかく、作品そのものは申し分なく美しいと思ったので、その点を最大限に評価します。[地上波(邦画)] 9点(2022-06-09 00:39:33)《改行有》

46.  天気の子 《ネタバレ》 新海誠の作品において「人間」は脇役なので、あくまで主役は「自然」です。光や、風や、雲の動きを見なければならないし、天体の軌道と運行(たとえば隕石の衝突)、細菌による発酵や腐敗(たとえば口噛み酒)、そして人間をふくめた生き物たちの生理現象(たとえば意思に反して零れ落ちる涙)のほうを見なければならない。個々人が自分の意志でやっていることに、さほどの意味はありません。そもそも人間に出来ることはほとんど無いし、せいぜい自然の変化に波長を合わせて生きていくことしかできない。 そもそも人間が「異常気象」と呼んでいるものは、長い地球の歴史のなかでみれば微細な変化でしかありません。人間の力を使って局所的な天候を一時的に変えたとしても、それは「ガイアのホメオスタシス」によって引き戻されます。新海誠の作品は、過激なくらいに唯物主義的です。「彼岸/此岸」という言葉が出てきますが、これも精神論的な概念ではありません。死んだ人間は「魂」となって天に昇るのではなく、むしろ「物質」に戻って大気中に還元されるという発想です。 社会も狂っているし、自然も狂っている。暴力やブラック労働が社会にはびこり、自然が温暖化で異常気象になったりするのは、人間のせいかもしれないし、そうではないのかもしれない。でも、もはや誰のせいかを問うても仕方がないし、与えられた運命だと思って受け止めていくしかない。もともと世界は狂っているのだし、ピンチの先回りをしても効果はない。ピストルがあっても社会は変えられないし、天に祈っても自然を変えることはできない。人間に出来ることは限られている。主人公のふたりに出来ることは「狂った世界のなかでも自分たちが生きていけますように」と祈ることだけです。そこから先は、世界のためでも死者のためでもなく、ただ自分自身のために祈るしかありません。この物語が、いわゆる「セカイ系」とは真逆の構造になっているのが分かります。 自然現象の変異を描いたサイエンスフィクションは、おりしも酷暑や豪雨や新型ウィルスなどの話題がトップニュースになっている現状にもリンクして、とても同時代的なリアリティを感じさせます。とくに今回の作品は、前作の「君の名は」の世界観をさらに推し進めて、いっそう過激になっている。ここまで唯物主義的な表現に取り組んでいる作家は、世界的にもほとんど例がないだろうと思います。実写でやるのはほとんど不可能だし、だからこそアニメーションで表現することに意義がある。その非凡さを最大限に評価します。[地上波(邦画)] 9点(2022-06-09 00:39:26)《改行有》

47.  ハウルの動く城 《ネタバレ》 遅ればせながらテレビで初視聴。すばらしい映画でした。物語の構造は『千と千尋』によく似ているし、作品のテーマは『風立ちぬ』にも共通している。そのテーマを一言でいうならば、「人生への悔恨」と「文明への悔恨」ということに尽きると思います。 荒れ地の魔女は、悪魔と取引をした魔女です。一方、サリマン先生は、人間と取引をした魔女です。悪魔が「恋と若さと美しさ」(すなわち心臓)を切望するのに対して、人間は「文明による支配」(すなわち戦争)を切望している。そしてハウルは、ハクが湯婆を裏切ったように、サリマン先生を裏切っています。その意味では、文明批判の物語であるようにも見える。 しかし、文明の繁栄を選ぶにせよ、人生の幸福を選ぶにせよ、それぞれの過ちがあり、後悔があるのですね。湯婆のもとへ行けば「文明への悔恨」があるでしょうが、銭婆のもとへ行けば「人生への悔恨」が待ち受けている。それと同じです。 『ナウシカ』に立ち返って考えると、映画版では「文明の悪」を否定したかに見えるのに、原作では、むしろ「文明の悪」をも肯定したかのように見えます。「人生の悪」を受け入れるのと同じように「文明の悪」をも受け入れるのだとすれば、人は悔恨のなかを生きるほかありません。人生をやり直すことはできないし、文明の歴史をやり直すこともできない。 この映画は、まるで魔法のようなハッピーエンドに終わります。しかし、それがありえないほど哀しいファンタジーであることを誰もが知っている。この終わり方は、ほとんどクストリッツァの「アンダーグラウンド」と同じです。ほんとうのところは、やはり『風立ちぬ』と同じように、人生と文明についての痛切な悔恨の映画なのだろうと思います。[地上波(邦画)] 9点(2022-06-09 00:39:19)《改行有》

48.  誰も知らない(2004) 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。すごい映画でした。劇映画の極限的な表現に達している。カンヌは「万引き」よりも、こちらをパルムドールにしておくべきでしたね。 これまで是枝作品を3~4本見てきて、何故そんなに評価が高いのか理解できなかったけど、この作品でようやく理解できた!これがおそらく彼の最高傑作なのだろうし、これなくしては、その後の作品もほとんど評価されなかったかもしれません。 いわば野坂昭如の「火垂るの墓」と同様の悲劇が現代にも存在しうる…という話ですね。どちらの場合も、たんに「個人の責任」を論じるだけでは済まされません。たんなる「虐待」だと解釈すれば、個人の「犯罪」の話で終わってしまうけど、これを社会的な「貧困」に付随する事象だと解釈すれば、その背後にある構造的な問題を考えざるを得ない。「家の結婚」が消滅して「個人の結婚」が全面化した結果、「老・老」「子・子」「子・老」などで構成された世帯が置き去りにされ、そこでは「共同体・セーフティーネットの不在」の問題や、行政・学校、コンビニ・不動産管理者、ガス・水道・電気など「社会インフラ事業者」の役割の問題など、この映画ひとつを見ても様々な問題が浮かび上がってきます。 一般に、こうした問題は「ブルジョワの良識」をもってでなければ構造的な批判が出来ません。なぜなら、貧困層に属する当事者は目先のことに精一杯で、社会構造の問題にまで考えが及ばないから。それどころか、貧困であればあるほど、権威に取り入って生き延びるほうが合理的になってしまうから、そこから権力批判や構造批判の話はけっして出てきません。中流層もまた、こうした末端の問題には無関心だし、さらに日本の場合は、バブル以降の成り上がりが多いので、ブルジョワ層にさえ良識が欠如しています。その意味で、この映画が2004年に国際的な評価を得た意義は大きいのだと思う。いまの若い世代には「ブルジョワの良識」も復活しているように見えます。 ちなみに是枝作品は、作品ごとに映画の文体がまったく異なるのですね。同じカメラマンでも文体が違う。率直にいって、こちらの初期の文体のほうが説得力があると思います。プロの俳優を起用した予算規模の大きい作品では、かえって文体を制御できなくなっているように見えるし、この映画だけを見ても、プロの俳優の演技よりもアマチュア同然の子供たちの動きのほうがはるかに説得力がある。もちろん本作にかんしていえば、柳楽優弥の存在なしに成立しなかっただろうし、アマチュア俳優を起用すればつねに成功するとも言えませんが。 カンヌの審査員長だったタランティーノは「柳楽優弥の顔が忘れられない」と言ったらしいけど、おそらくすべての観客が同じ感想をもつでしょうね。[インターネット(邦画)] 9点(2022-06-09 00:39:12)《改行有》

49.  この子の七つのお祝いに 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 前半は、増村保造らしい明快で力強い演出が好感触だったけど、真相が明らかになっていくほど話のつまらなさに興味が減退しました。犯罪の背景になっているエピソードは、たんに「混み入った事情」という程度のもので、とりたてて心に訴える内容でもなく、社会的なメッセージ性があるわけでもない。本気で近現代史をテーマにするならば、大陸からの引き揚げ者の苦難にもっと焦点を当てるべきでしょう。お人形やら童謡やらの取ってつけたようなホラー演出は、陳腐にすぎて失笑しか出てこない。わざわざ映画化するほどの題材とは思えません。 自分でこの仕事を引き受けて脚本も書いたのだから仕方ないけれど、これが増村保造の遺作であり、なおかつ代表作のように思われているとしたら哀れです。映画作家というよりも、たんなる職業監督としての仕事でしかないように思う。やはり当時は、市川崑や増村保造のような名匠でさえ、角川の凡作のために従事しなければならなかったのでしょうか?[インターネット(邦画)] 6点(2022-05-19 19:03:53)《改行有》

50.  風花(2000) 《ネタバレ》 「あ、春」の最後でヒヨコを孵化させたように、この映画の最後でもカエルが冬眠から覚めます。しかしながら、そんな暖かいエンディングとは不釣り合いなほど、そこにいたるまでの物語にはただならぬ寂しさがある。黒沢清の「岸辺の旅」が本作を意識しているようにも感じます。 「雪の断章」にしろ「風花」にしろ、何故その原作を選んだのか、その動機がよく分からないのだけど、たんに個人の人生を描きたかったのではなく、むしろ物語の舞台である北海道に対する個人的な愛憎や、あるいはローカルな感傷や、あるいは鎮魂めいたものを表現したかったのじゃないかと思えてくる。開拓から「120年」というセリフが執拗に繰り返されたりしますよね。相米慎二にとっての(実質的な地元である)「北海道」が、何かとてつもなく寂しくて悲しい場所のように感じられます。 「翔んだカップル」や「台風クラブ」や「ションベンライダー」は純粋に"文体の面白さ"を語ることのできる映画であり、それゆえに評価が高いのだろうけれど、「雪の断章」や「風花」は"文体"という観点では語りにくい部分がありますよね。逆にいうと、相米個人の本質に触れる内容であればあるほど、純粋に"映画の文体"だけを追求することができなかったんじゃないかしら? わたしは「雪の断章」や「風花」について考えるとき、相米映画を"文体"だけで語るのは限界があると感じます(→この件については、黒沢の「岸辺の旅」との関係もあわせて、ブログのほうで詳述することにします)。 やさぐれた男女の物語ですが、美男・美女の主演ということもあって、映像だけ見るとまるでトレンディドラマのように"キレイ系"の作品に仕上がっているのは意外。美しい映画といえないこともないけれど、これも叙情が先行してしまった結果のように見える。なお、大友良英の音楽は「これでいいのかな?」と感じるほど主張が強かったですね。[インターネット(邦画)] 8点(2022-05-15 03:58:19)《改行有》

51.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 まったくの幼児向け作品だと思って何の予備知識もなく観たのですが、実際にはトトロ以上に難解な要素をはらむ内容でした。端的にいえば、トトロが「森」の物語であり、ポニョが「海」の物語ですね。人間は、切り開かれた陸上世界にしか関心をもちませんが、トトロを見た子供はきっと「森」のことを考えるだろうし、ポニョを見た子供はきっと「海」のことを考えるでしょう。フジモトは人間を憎んでいましたが、意外なことにグランマンマーレは人間に寛容だった。グランマンマーレがリサに何を助言したのか分かりませんが、おそらく彼女の目的は、宗介とポニョを通して、人間と海を調和させることなのでしょうね。 アンデルセンの人魚姫を下敷きにしていますが、あえて「人魚/マーメイド」などの言葉は用いずに「人面魚/半魚人」といったバケモノを意味する日本語を使っています。ここにはおそらく2つの意味がある。ひとつめは、ポニョの存在がたんなる空想ではなく《魚類⇒両生類⇒哺乳類》といった生命史を内在させている点で人間と同じだということ(そのためポニョが人間になる過程でカエルのような形状になります)。ふたつめは、アンデルセンの人魚姫が最終的に「人間」になるのに対して、ポニョはあくまでも「半魚人(半分が魚)」だということ。宗介はそのことを理解するようにグランマンマーレから要請されます。この結果、宗介は、もはや海を「他人ごと」でなく「自分ごと」として捉えねばならなくなる。ここに本作のもっとも重要なメッセージが感じられます。 宮崎駿の諸作品を考えるうえで興味深いモチーフもたくさん散りばめられています。フジモトとポニョの物語は、父を否定する娘の物語であり、これはどちらかといえば宮崎吾朗の作品に共通している。フジモトは地球の生命史を原初からやり直そうと試みていますが、ここには「ナウシカ」との関連性がうかがえます(フジモトはなぜ日本人の名をもつのでしょうか?)。陸上では、港町に暮らす船乗りの家族の生活が営まれてており、ここには「コクリコ坂」との関連性がうかがえます。グランマンマーレは「granma(太母)」と「mare(海)」の造語だと思いますが、ディズニーの「モアナ」に出てくる《テ・フィティ》に似ていますし、これが日本の《観音》に比定されるのも興味深い。冒頭の海中シーンは、まるでヨーロッパのアニメーションのように幻想的でしたが、半神半人の川の女神《ワルキューレ》を描いたワーグナーの歌劇を海に置き換えた感じもあります。 2008年の映画ですが、まるで大震災の死者からのメッセージのように読み取れてしまうのは予言めいていて驚きでした。波の描写は、北斎の《Great Wave》を思わせます。[地上波(邦画)] 8点(2022-05-08 16:50:35)《改行有》

52.  愛情物語(1984) 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。昔観たつもりでいたのだけど、あらためて初視聴だと気がつきました(笑)。 おじさんと少女の物語に、ミュージカルやらイメージビデオ映像やら怪奇ジュブナイルやらを織り交ぜてゴッタ煮の娯楽作品に仕立てています。冒頭の外国人ミュージカルはダサいし、ヘンテコダンスの振り付けはいかにも80年代ですが、知世の踊り自体はかなりキレキレで目を見張るものがあり、その後の知世がこの能力を活かさなかったのを不思議に感じるくらいです。 中年男が少女をたぶらかす寸前みたいな内容は、80年代アイドル映画にはよくあるパターンで、これは制作側の欲望の投影とも言えるし、角川春樹が妹への愛惜を織り込んだ結果とも言えるのだけど、そうした制作の動機の気持ち悪さに目をつむれば、映像的にはけっこう良く撮れているし、意外なくらい飽きずに楽しめる作品でした。愛すべき駄作として8点つけようかとも思いましたが、はやる心を抑えて7点。[インターネット(邦画)] 7点(2022-04-20 22:53:28)《改行有》

53.  寝ても覚めても 《ネタバレ》 怖い。どちらが現実でどちらが夢なのか分からない。くっついたり離れたりする恋愛ドラマはテレビにありふれてるけど、こんなにリアルで怖い話は見たことがありません。この映画には「2人の東出昌大」が登場します。でも、ほんとうに重要なのは「2人の唐田えりか」。英語のタイトルは「Asako I & II」です。 はたして震災前と震災後の世界は、どちらが夢でどちらが現実なのか? 震災後のどんよりした世界は、まるで黒沢清の「回路」や「トウキョウソナタ」みたいに薄暗くて不気味であり、ほとんど悪い夢のように思えてしまうけれど、それが現実であるならその世界を生きるしかありません。子供のようにはしゃいでいた渡辺大知は寝たきりになっているし、汚い川は水かさを増してアパートを呑み込みそうになっている。「水かさが増してる。…汚い川やで」「でも、綺麗」…それが現実なのですよね。 唐田えりかは、この撮影の後、ほんとうに夢から抜け出せなくなってしまったのでしょう。どちらが現実でどちらが夢なのか分からなくなってしまったんだと思う。それを思うと、彼女の没入感もまた怖いのです。「オーロラ。あのCMの。ほんまに見たん?」「うん。見たよ」「空が海みたいやった?」「うん。そう。なんだか夢見てるみたいやった」「そっか。私は、まるでいま、夢を見てるような気がする。…違う。今までのほうが全部長い夢だったような気がする。すごく幸せな夢だった。成長したような気でいた。でも目が覚めて、私、何も変わってなかった」…でも、長い夢のように思えた世界こそが、ほんとうは現実だったのです。[インターネット(邦画)] 8点(2022-04-16 05:27:04)《改行有》

54.  台風クラブ 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で30年ぶりぐらいに視聴。初見のときは画面が暗すぎて誰が誰だか判別できなかった記憶があるけど、今回はだいぶクリアな画面で見ることができた。 これが公募による脚本だというのもすごいですよね。脚本そのものがすごいのか、それを力技でまとめ上げた演出がすごいのか分からないけど、公募シナリオだからこそ出来上がった異常な傑作という気もします。 いびつな思春期の、まともに説明のつかない行動原理で動き回り、理性的なコミュニケーションも成立していない子供たちが、台風の夜に裸で踊り狂い、やがて生と死が循環するという物語。この映画の内容を「祝祭」と解釈したりもするけれど、ベルトルッチが共鳴したのも、イタリア人の中に残酷なカーニバルの感覚があるからかもしれません。狂気にリアリティがありすぎて、「シャイニング」や「犬神家」の悪ふざけのパロディも、たんなるパロディでは済まなくなってトラウマになりかねないほど強烈だし、10代でこの映画に出演させられた人たちは、精神に異常をきたすんじゃないかと心配にさえなるレベル。 とんでもない映画だけど、狂気をセンセーショナルな見世物にする制作動機が好きじゃないので1点減点。[インターネット(邦画)] 9点(2022-04-02 05:08:02)《改行有》

55.  千年の愉楽 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。若松孝二の映画を見るのは初めてです。非常にオーソドックスな作りで、どこにも難しいところがなく分かりやすい映画でした。強いて難点があるといえば、佐野史郎の遺影が喋り出す演出が、どうにもコントっぽく見えてしまったことでしょうか。 なぜ三重県の物語に奄美大島の民謡を重ねたのか分からないけれど、とくに違和感はなかったし、わたしはもともと「日本でいちばん歌がうまいのは中村瑞希」だと以前から思ってたので、彼女の歌声を映画に記録した意義もあると思います。 中上健次の物語は、要するに「色男の血統」についての神話なのだけど、そこに日本社会の「貴賎」の構造を重ねて説得力を与えています。「高貴な血統だから色男なのだ」という理屈は、逆にから言うと「色男だから高貴になったのだ」とも言える。このような社会学的視点を、福田和也は「インチキ」だと言ってますが、意外に社会の支配階級なんてのは「色男だから」とか「喧嘩が強い」とかその程度の理由で決まったのかもしれませんよね。 客観的には8点ぐらいの評価でいいかもしれませんが、個人的に好みの内容じゃなかったので7点。[インターネット(邦画)] 7点(2022-03-29 12:50:30)《改行有》

56.  Wの悲劇 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。昔観たつもりだったけど、これまたちゃんと観たのは初めてだったかも(笑)。 じつによく出来た映画です。脚本も素晴らしいし、蜷川幸雄による劇中劇も美しいし、演技も申し分ない。原作は読んでいませんが、武井咲のTVドラマなどで内容はおおむね分かっていたし、やはり原作を分かってるほうが、この脚色の妙をいっそう楽しむことができると思います。 強いて欠点を言うならば(蜷川の演技がいちばん下手クソだったのはご愛嬌として)、一般に名場面として知られているラストの「泣き笑い」のシーンが、わたしには、ちょっとクサいかなあ、と思えました。嘘の人生に耐えられなかった男と、嘘の人生を引き受けようとする女の対比というコンセプトが、このラストへと帰結する必然性は理解できるのだけど、それだけに無理やり押し込んだ観念的なラストのように見えます。わたしとしては、世良公則が刺されてすべての嘘がバレてしまうもっとも哀れな場面で終わったほうが良かったと思う。 いずれにせよ、澤井信一郎については、さらなる再評価があっていいのになと感じました。[インターネット(邦画)] 8点(2022-03-21 22:52:24)《改行有》

57.  蘇える金狼(1979) 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。鈴木清順や森田芳光の文芸映画は見ていましたが、村川透のアクション映画で松田優作を見たのはこれが初めて。予想以上に面白かった!もっと血生臭くて陰鬱な内容かと畏れていましたが、かなりスタイリッシュで軽快だし、スケール感もあって見ごたえがありました。物語はまあ荒唐無稽ですけど、大映時代劇に優るとも劣らぬアクションの美学を十分に楽しめる。 とくに優作の狂気をはらんだ意味不明な動きは不思議なくらいにカッコいい。一般には、太陽にほえろの「なんじゃこりゃあ!」が有名ですが、本作での死に際のよろめきは舞踏のように美しかったです。この点では、ジャン・ポール・ベルモンドやブルース・リーをも凌ぐような唯一無二の輝きがあると感じます。クラーク・ケントみたいな「変身前」と「変身後」の落差も魅力的だったし、飛行機の中でキューブリックのSFみたいなことを呟いて終わる不気味でシュールな感覚も洒落ていました。 ちなみに原作では、風吹ジュンのことを無慈悲に殺して逃げおおせるらしいけど、やはり優作の場合は最後に死んでこそ真骨頂なのでしょうね。むしろ風吹ジュンを殺したことのほうが腑に落ちなかったです。[インターネット(邦画)] 8点(2022-03-17 20:12:08)《改行有》

58.  時をかける少女(1997) 《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。なぜ角川春樹はここまでして「時をかける少女」にこだわるのでしょうか? 原田知世への恋慕とも言えるし、妹への愛惜とも言えるし、そうした個人的な動機の部分には若干の気持ち悪さを感じないでもないけれど、よくいえば、それだけにピュアな作品なのでしょうね。 原作からの不可解な設定変更をふくめて、物語はまったくもって荒唐無稽だし、妙ちくりんな謎の演出が作品のチープさを際立たせてるし、主人公はお世辞にも美少女とは言いがたいし、あきらかに長所よりも短所のほうが多い映画なのですが、それがかえって「NHK少年ドラマシリーズ」みたいなSFジュブナイル特有のヘンな効果を醸し出していると言えなくもない。個人的には、けっして嫌いじゃありません。 中盤までぎこちない下手クソ演技を披露していた中本奈奈が、終盤になって中村俊介と語り合うシーンでは、とつぜん不思議な説得力を発揮していて、「出会いの偶然性と必然性」みたいな哲学的なテーマを投げつけており、思いのほか胸を打つところもありました。 愛すべきヘンテコ映画として8点つけようかと思いましたが、はやる心をおさえて7点。[インターネット(邦画)] 7点(2022-03-17 19:57:10)《改行有》

59.  岸辺の旅 《ネタバレ》 だいぶ前に録画したNHK放送をようやく視聴。面白かった。クロサワ映画はこれで4本目ですが、いちばん好みに合っていたし、ようやく自分の波長にも合ってきた感じ。 黒沢清、佐々木史朗、湯本香樹実、大友良英、浅野忠信…という面子なので、否が応にも相米慎二のことを意識させるし、原作には何か相通じるテーマがあるのかもしれない。でも、映画そのものは、ことさら観客に何かを訴えている風でもなく、端的に「エンターテインメント」としての味わいを楽しむべき作品かなと思う。 死んだ夫が幽霊になって戻ってくる設定はありふれてるものの、ほんの少しずつ予想を裏切っていく展開や、うっすらした不気味さとうっすらした美しさが同居する映像は、それだけで十分に魅力があります。一貫して穏やかな浅野忠信の演技も素晴らしかった。深津絵里は、なかなか能動的に生きられない日本女性のか弱さをよく体現しています。 白玉だんご、稲荷神社の祈願書、滝の背後に通路がある、終りが近づくと指が動かなくなる、死者との性的な接触はできない… などの物語上の「設定」がある一方で、夫の語る「宇宙物理学」の世界観があり、他方では三途の川を信じてきた日本人の「伝統的観念」がある(それが「岸辺」というタイトルの前提でしょう)。それらが渾然一体となって、一種独特な死生観を形づくっています。まあ、ただそれだけの映画だと言ってもいい。 このレビューサイトで、こういう作品を「エンターテインメント」と評したところで、ごく一部の人にしか理解されないと思いますが、けっして泣いたり笑ったりビビったりするだけが映画にとっての「エンターテインメント」じゃないだろう、とだけ言っておきます。 大友良英の音楽は、昭和の松竹映画風の曲からドイツロマン派様式の曲まで多彩でした。ちなみに子供がピアノを弾いている後ろでは、やはり井之脇海のときのようにカーテンが揺れていました。[地上波(邦画)] 9点(2022-01-29 19:37:07)《改行有》

60.  スパイの妻《劇場版》 《ネタバレ》 ベネチアでは演出のほうが評価されましたが、この作品が優れているのはむしろ脚本だと思います。もともと黒沢清は「ジャンル映画」(要するに通俗映画)の作家を自称しているので、この作品も「サスペンス・ロマンス」の体裁で作られていますが、濱口竜介と野原位の脚本は「不可視のものを映像化する」という政治的な課題に取り組んでいます。 この作品が10年前の「金子論文」の発見に触発されたのは明らかですが、731部隊の「細菌戦」の真実はそれでもまだ全貌が闇に包まれています(映画が公開された2020年にも新資料が見つかっています)。したがって、この映画も「いまだ目に見えないもの」を描くという政治的な課題を負っています。主人公・福原優作の機密漏洩の企ては未遂に終わり、真実は闇に葬られたまま戦争が終わり、結局のところ、あのフィルムに何が映っていたのかも分からない。そういう物語なのですね。 黒沢の「ジャンル映画」としてなら7点、濱口と野原の「政治映画」としてなら9点。そのあいだを取って8点の評価にします。ただし、わたしが見た1月10日のNHK放送はおそらく「劇場版」でなく「TV版」なので、映像のテイストがいかにもNHKの歴史ドラマ風でした。「劇場版」だったら、演出に対する印象がもっと違うのかもしれません。[地上波(邦画)] 8点(2022-01-12 10:34:35)《改行有》

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