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41.  無法松の一生(1943) 《ネタバレ》 初っ端のカメラが凄いですね。2階の部屋から屋根瓦に行き、街灯ナメながらおっ母さんにフォーカス。最後腰の辺りから見上げる位置で固定。きっと子供が親を見上げる目線でしょうね。乗車拒否して喧嘩したり、芝居小屋の迷惑行為から、ブッ飛んだ主人公だなぁとは思ったけど、人の話をシッカリ聞いて、反省するところは反省できる男。徐々に松五郎が義理人情に厚く一本筋の通った魅力的な男に観えてくる。 字は読めないけど配られるビラを貰い、さぁ自分の出番だと本気の全力疾走。学生のケンカを見守るだけでなく、手まで出してしまう気の入り様。これこそ背中を見せて子供を育てる、まさに理想の父親像。ぼんぼんとの親子のようにほのぼのした関係から、成長したぼんぼんを「吉岡さん」と呼ぶことへの戸惑いなんて、この時代の映画で良くこのシーンに時間を割いたなって感心する。 クライマックスの祇園太鼓。太鼓を叩く松五郎に、路上を埋め尽くす観客、海の波しぶきに湧き上がる雲。“無法松”というタイトル通り、松五郎の生き様を表すような勢いが感じられた。そして走馬灯のように駆け巡る思い出。『あぁ、一生とある通り、太く短い生涯の幕を閉じるのだな』と感じさせるに充分な映像。最後止まる車輪と降雪で死を表現。唐突だけど見事。 検閲。そんな時代だったんだ。所々のブツ切り展開に“??”となったけど、納得。こち亀両さんのようなホロリとさせる人情話と思いきや、寅さんのような未亡人への想いを丸々切除されていたとは…これね、完全版を観ることが出来たら9~10点かも知れない。そんな嘆かわしい時代があった事に私が出来る抵抗として、8点にさせて頂きます。 ただ吉岡大尉のいきなりの死は、あの繋がりで正解というのは意外。[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-10-17 19:10:00)(良:1票) 《改行有》

42.  太平洋ひとりぼっち 《ネタバレ》 リメイクの必要がないくらい、この一本で完成されている作品だと思った。内容に全然古さを感じさせない。 前置きも何もなく、いきなり出発直前から始まる。でも進みたいけど風がないから進めない、いきなり前途多難な船出にグイグイ引き寄せられた。 石原裕次郎演じる“青年”の明るさ、前向きさ、バカっぽさが、板についてない関西弁と相まって、いい塩梅で楽しませてくれる。ひたすら陽気に孤独な旅を続ける青年。そんな彼が泣き出したりぼ~っとしたり、はたまた“もう一人の自分”との会話なんか、自ら孤独を紛らわしてるのか、孤独が生み出した幻影なのか境界線が曖昧で、結構リアルだと思えた。 あの小さい船のわりに結構な荷物が積まれていて、積み荷の目録を見ているだけでも想像力が湧いて楽しい。角砂糖とクリープとバターで作った森永ケーキ、なんか美味しそう。こけし印の牛肉缶を直接火で炙るの、ハフハフ言って食べたい。ご飯をビールで炊くの…コレは不味そうだな。水は腐っても床拭いたり洗濯とかで使えそうだけど、捨ててしまったんだな。実話をモトにしているだけに、サバイバル生活がリアルに楽しそう。 嵐に見舞われてガラスが割れたときはやばい雰囲気だったけど、他にトラブルと言えばサメと米軍機くらいか?過酷だけど画的にどうしても単調になってしまうであろう単独航海。変にアクシデントを盛り過ぎてリアリティを失うより、青年がパクパク海苔食べて暇潰ししてるのがリアルで良かったかな。 そして合間合間に青年が出発に至る経緯や家族との話を挟み込むことによって、飽きずに観せるのはうまい演出。[インターネット(邦画)] 8点(2022-10-01 15:04:54)《改行有》

43.  蒲田行進曲 《ネタバレ》 「コレが、コレなモンで」ってモトはコレだったのか。 とっても勢いがあって、サクサクとスピーディな展開に目が離せない。問答無用で小夏をヤスに押し付ける銀ちゃんの無理やりさに『ちょっ、えぇ!?』ってなりつつも、何だかんだ状況を飲み込んで、2人イイ感じになって行くところが面白い。 身勝手に自分のことだけ考える銀ちゃんだけど、要所々々でみせる気の弱さとか、言葉にはしないヤスへの気持ちとか、憎めないキャラに仕上がっている。 ヤスの地元の大歓迎っぷり。事情を察知してる母の言葉。コレはコレでありなのかもなぁって思えてしまう。大部屋の苦労も笑いに変えて、ヤスがスタントに体を張るごとに増えていく小夏の快適グッズ。 最初っからデーンと構える未完成の大階段が、後の波乱を物語っている。後半シリアスになるけど、散々引っ張っての大階段落ちは大迫力。その後の大団円で一気に緊張していた空気が溶解するのもお見事。 銀ちゃんだけでなく、橘こと原田大二郎、千葉真一、志穂美悦子、真田広之といった銀幕のスターたち。 対するスターを輝かせる名もない大部屋の人々。住む世界の違うスターと大部屋。 この映画は、大部屋のヤスが一瞬だけスターになった映画にも観えるけど、そこを“チャンチャン”として、コレは映画だ!って終わらせる。 撮影所の映画だけに、最後の大合唱が生きてくる。色んな人が関わって、色んな思いがぶつかって、一本の映画が出来てるんだなぁって。コレが映画だ![インターネット(邦画)] 8点(2022-09-17 19:17:39)(良:1票) 《改行有》

44.  父と暮せば 《ネタバレ》 『母と暮せば』は観ていたが、正直あまり良い印象が残ってなくて。本作は3部作の1作めって事なので、どうかなぁ?って思ったけど、予想外にガツンと来た。どこか幼さが残る娘と、頼りになる面白いお父ったん。テンポの良い親子の会話が心地よく、重たい原爆の話だけどスルスルと抵抗なく観られた。親子で押入れに入るのカワイイ。 お茶もまんじゅうも口にしないお父ったんに『あっちの映画同様、亡くなってるのかなぁ?それがこの映画のオチかなぁ』なんて思ったけど、案外早くに亡くなっていたことが解る。そこが観どころじゃないんだ。 ストレートに、当時原爆の下に居た人たちの恐怖を語ってくれる。まるで読み聞かせのようだ。浴衣姿のおっとりした美津江の昔話から、エプロン劇場と陽気に始まったお父ったんの広島の一寸法師。広島の人が鬼に対し、原爆瓦でどうしてやりたいか。忘れることの出来ない内に秘めた怒り。美津江じゃなくても怖くなった。原田芳雄の語りの、息が止まるような迫力。 美津江の話。感情を抑えきれなくなったアキコさんのお母さんから出た言葉。父を助けられず見捨てて逃げたこと。あの時生き残った者が幸せになることを阻む。3年前の記憶がいつまでも美津江を苦しめる。宮沢りえの語りも、まるで生存者の体験談のように生々しく聞かせてもらった。主演2人の聞かせる力。 最後のは何だったんだろう?あの不安を煽る音楽と原爆ドームから、美津江ももしかして?って思ったりもしたけど、きっとたぶん、料理してる美津江のカットと、家の天井から続くドームのカットは、続いてるように観えて、別カット、別の建物なんだろう。 ドームの外に咲く2輪の花は、原爆の後を生きる生命で、たぶん美津江と木下さん。観る側に木下さんの具体的なイメージを持たせるために、敢えて浅野忠信を登場させたんだろうか。モヤモヤさせる終わりにした監督の意図は掴めなかった。 モトは舞台の戯曲として創られて、ほぼ舞台そのままのスタイルで映画化されていると思う。だから伝えたいテーマがシンプルに伝わる。死者が会話するファンタジー要素を入れて、死者と生存者の両方の体験者の話を聞かせる。 「前の世代から伝わる話を、いじったりせずに、あとの世代に忠実に伝える」この映画のテーマは、美津江の所属する昔話研究会の方針と通ずるものがあるんだろう。この話を映画にすることで、より多くの人が目にする機会が増えるだろう。私も映画だからこの作品を観る事が出来た。恐ろしく心にガツンと響く映画だけど、観て良かったと思ってる。被爆者の気持ちを“いじったりせず、忠実に”表現したこの映画を、一生に一度で良いので観てもらいたい。[インターネット(邦画)] 8点(2022-08-31 21:42:45)《改行有》

45.  異人たちとの夏 《ネタバレ》 片岡鶴太郎の演技力がとても評価されてた記憶がある。コメディアンが映画に主演して、真面目な演技をして評価されるって、当時としては珍しいことだったと思う。そんな人、北野武くらいじゃないかな?テレビで初めて観て、なるほど納得。見事に“英雄のお父さん”を演じていた。 本作が大林宣彦監督作品だって忘れてた。若者の青春映画の監督ってイメージだったから、こんな大人のメルヘンファンタジーを撮っていたことに驚いた。当時の私は知って観てたのかな。ホント忘れてた。 画面から伝わる夏の暑さ。浅草の異世界感。「暑いから脱げ」ってセリフがホント両親っぽい。もう40歳になる英雄を子ども扱い。この両親、自分たちは既に死んでいることを自覚しているけど、どういう仕組みで現世に戻ったとか、よく解ってないんだろうな。英雄と再会した喜びとか、涙とかは無く、出会いから日常生活から、スッと自然に取り入れていくところが、本当に不思議な世界を観ているような気持ちにさせてくれる。 英雄と房子がアイスのカップを取るシーン(いやこの場面も、裕福な家庭でないのにそんな物があるのが、なんか実家っぽい)。英雄も私たちもドキッとしてしまうけど、落ち着いてる房子のギャップが面白い。下手したら年下のお母さんだけど、子供の母親は何歳でも母親なんだな。 そんなお母さんが趣味でラジコンカー(本格的なのでなく子供のオモチャのヤツ)で遊んでるなんて可愛い設定、どっから思いつくんだろ?凄いよ大林監督。 すき焼き屋の別れは涙が溢れてくる。時間が来たら消えてしまうことは理解している両親。それも子供の為と受け入れているところ。両親に食べてほしい英雄と、子供に食べてほしい両親のお互いの思いやりが何とも切ない。 桂の正体。「バカな、今は空き室ですよ!」慌てる間宮と管理人に、当時はゾ~~~ッとしたわ。怖かった。その後のホラー描写はやり過ぎ感があって、なんか、今までの感動や余韻を台無しにされた感があったなぁ、やっぱり。 でも今観ると、案外悪くない結末なんだよね。身体フワーリ、ベッドグルグルー、血がドバー。は、当時の流行りだろうか、やりすぎだと思うけど、気がついたら地縛霊になってた桂は、彼女なりに、自分が原因とも知らずに、英雄の身を案じてたと解釈すると、それはそれで切ない。[地上波(邦画)] 8点(2022-07-11 00:11:44)《改行有》

46.  鬼畜 《ネタバレ》 テレビなんかで毎月のように、子供の虐待死のニュースを見る。本当に胸糞悪いけど、もしこの映画が昨今のニュースで見るような虐待だったら、きっと最後まで観る自信はなかったと思う。一方的な虐待や、被害者に逃げ道のないものは、どれだけ評判が良い映画でも苦手意識がある。観終わって嫌な気持ちになるのは、どうもねぇ…この作品はどこかのサイトで“トラウマ級”だの“鬱展開”だのって書いてあるのを見たことがあって、う~ん…私に耐えられるかなぁ?なんて思って観てみたけど、これが想像以上にグイグイ観せる映画だった。 幼い子供に対する、今じゃ絶対に撮れないような虐待行為は出てくるが、そうした理由や感情がしっかり描かれているので、一方的に不快感だけを感じることはなかった。お梅にしてみれば、印刷所は火事になるし経営は傾くしで、毎日火の車であくせく働いているところに、突然夫の妾が乗り込んできて、自分が産めなかった子供を3人も置いていかれた立場。これでは腹の虫は治まらないだろう。『子供の顔を見るたびあの女を思い出す』というのも解る。もしお梅に子育ての経験があれば。もし印刷所の経営に回復の兆しがあれば。もし宗吉に事態を丸く収める話術でもあれば、お梅もどこかで折れていたかもしれない。 庄二に対する“このまま見て見ぬふりをしたらどうなるんだろう”という、手を汚さずに事態が進むことを期待(?)するところは、何とも生々しい。宗吉は子供を望んでいたこともあり、苦しみつつも2人の子に手を下す様子が痛々しく描かれる。もちろん身から出た錆で同情の余地はない。だけどもし私が宗吉の立場だったらと思うと、どうにも胸を締め付けられる思いだ。一方で実際に手を掛けないお梅の、提案や証拠隠滅の冷徹さ。追い込まれた人間はここまでやるんだなって、妙な説得力を感じた。 利一が生きていたことにホッとして、迎えに来た父を否定することに複雑な心境になった。僅か6歳でどれほど大人の汚さを見せられたことだろう。 同時に利一が今後、どうやって生きて行くのか不安にもなったけど、きっと良子とも無事再会して、兄妹2人、施設かどこかで、健やかに育っていってほしいと願うばかり。 子供3人に対する3通りの処置の仕方。これはペットを飼えなくなった時の手段と一緒に思えた。宗吉にとって“自分の子供”って、金に余裕がある時に出来心で買ったペット程度にしか、思っていなかったんじゃないだろうか。その子どもたちを突然押し付けられた現実。もともと養っていく覚悟の無さが、宗吉をあのような鬼畜の所業に走らせたんだろう。 本作の夫婦と、昨今のニュースで見る子供の虐待事件との一番の違い。『躾だから』と虐待する自分たちを正当化していること。そして子供を痛めつける目的が、八つ当たりだったりストレスの発散だったりと、呆れるくらい自分勝手な理由なこと。元日の事件は、人間の所業とは思えないほど残酷だ。 そんな本当の鬼畜夫婦の映画だったら、間違いなく嫌悪感・不快感しか湧かず、観たことを後悔しただろう。[インターネット(邦画)] 8点(2022-06-05 22:12:31)(良:1票) 《改行有》

47.  ツィゴイネルワイゼン 《ネタバレ》 もうね、指パッチンですわ。こんな不思議で不気味な作品、よく思いついたものですよ。 原田芳雄の演じる中砂の強烈なキャラクター。「ウナギが食べたいなぁ」あの力強い声でそう言われると、私までウナギが食べたくなる。特大のうなぎの蒲焼を手掴みで食べる。焼きとうきび。すき焼きに大量のこんにゃく。蕎麦と日本酒。腐りかけの桃。なんて美味そうなんだろう。戸棚の中の鱈の子のこだわり。青池夫婦が食べるいっぱい並んだ料理も、何だか解らないけどどれも美味そう。赤い器が印象的。 印象的な赤。女の股から出てくる赤い蟹。赤くなっていく弟の骨。中砂家に吊るされた赤い提灯。中砂の眼球を舐める周子の舌の赤さ。船の渡し賃にパカパカ開いて見せる門付の女の股ぐら。観えないんだけど赤いんだろう。 門付の3人組がまた強烈なインパクトを与えてくれる。イチャイチャしたい若い2人、だけど稼ぎ場までの道を知ってるのは年重の男だけ。三角関係の結末は、コントみたいな殴り合い。 コントというより不条理に近い。「ダメダヨ」のタイミング。屋根に落ちる小石。トマソン・トンネル。小雨の中登場人物たちが勢ぞろいで見上げる花火。サラサーテのツィゴイネルワイゼンに入る声。何でか解らないモノ・現象から醸し出される不思議さ。「怖いな…気をつけなくっちゃ…」椅子の上で体育座りの中砂カワイイ。 カワイイといえば青地の腕を引っ張る園「もうじき落ちてまいりますわ、早く参りましょ」の少女のような仕草カワイイ。旦那の居ない家の中で胸がはだけて、さぁコレから。ってタイミングで入る指パッチン。怪しい雰囲気から一瞬で目を覚ますような指パッチンの可愛さ。このセンスが素晴らしい。[インターネット(邦画)] 8点(2022-05-03 20:01:09)(良:1票) 《改行有》

48.   《ネタバレ》 戦国時代と江戸時代の明確な区別も付いてない子供の頃に、初めてこの映画を観た時、武士が殺される様子が生々しすぎて、めちゃくちゃ怖かったな。お茶の間でよく流れてる“時代劇(斬られたら踊りながら倒れる。服切れてない、血出ない)”の、ちょっとお金の掛かった作品かな?くらいに思っていたので、血が飛び散り、死体が転がる世界観に衝撃を受けた。血まみれの城内、密集して走る騎馬、空を埋め尽くす火矢、燃え落ちる城。 音楽もオドロオドロシイし、全然私の知っている時代劇の範疇じゃない、むしろコレ戦争映画だ。 この作品の他に戦国時代の映画で、ここまでお金の掛かった、観てて怖い映像って、他にあるのかな?思い付かないな。 子供の私にも話の大筋が分かり易く、親兄弟が家督が原因で争う顛末は、どこかおとぎ話の教訓のよう。 久しぶりに観たけど、映像の美しさは際立っている。ザワザワと波打つ草原、ムクムク増える入道雲、砂地に流れる雲の影、だいだい色に染め上がった夕焼け。この自然を撮るためにどれだけの時間を要したことか。黄、赤、青、登場する色鮮やかな武士たちの布陣の美しいこと。 『リア王』を基盤にしているそうで、映画の中で舞台劇らしさを表現したんだろうか。 面白い事にこの映画には、町人や農民といった、劇の内容と無関係な群衆が一切出てこない。三郎のお城も、普通なら城下町があるだろうに、寂しい砂地の辺鄙な所にあるのも、“余計な情報を描かない舞台劇”だと考えると納得が出来なくもない。 劇中、アップで映るのは一文字の一族、楓、鉄(クロガネ)、狂阿弥くらいか?それ以外の役者の顔アップは殆ど無い。末の方が秀虎にどんな表情をしていたのか、それどころか末の方が宮崎美子であることも解らないくらい、寄らない画造り。この辺りの撮り方も、自由に寄ったり出来ない舞台劇を意識してのことかと思われる。劇場の大画面で観ていたら、表情の違いも観えたのかな。 ほぼ素っぴんメイクの役者陣に対し、城が襲われたときからの仲代達矢だけは、狂気の形相を白粉やドーランで表現している。眼の前で繰り広げられる地獄絵図と同時に、主人公秀虎の精神も地獄に落ちたという表現だろうか。対象的に悶え苦しむ武士たちは地獄に落ちた餓鬼のよう。 原田美枝子演じる楓の方の、凄みのある抜刀と怒声。高笑いから一転して脅迫、色仕掛けに入る絶妙な間。そして最後の泣き落とし。井川比佐志演じる鉄のすっとぼけた態度と痛快な台詞回し。この二人の、殿である次郎の頭越しに繰り広げられる闘いが見事。 借り物であるリア王リメイクの主役は秀虎だけど、純粋なクロサワ映画の主役はこの二人ではないだろうか。 黒澤監督が鉄役を高倉健にしたかった理由も解る。[地上波(邦画)] 8点(2022-04-03 13:50:10)《改行有》

49.  大魔神 《ネタバレ》 映画自体は観たこと無いけど二次創作でよく知っていた大魔神。 誰もが知ってる変身シーンは、もしかしたら日本のヒーローの変身ポーズの元祖だろうか? ま、観るまでもなく、想像したそのまんまな内容だろうなって思ってたけど、それがまたどうして、予想以上に迫力があった。 額に杭が打ち込まれ、流れ出る真っ赤な血のおどろおどろしさは、観ていてゾッとした。 穏やかな顔の武神像が腕の動きに連動して怒りの表情になる、有名な変身シークエンス。あの目。眼力。アオリ気味に下から見上げる構図の素晴らしいこと。 最初に城下に現れたシーンで、物見櫓の横に立ち止まる大魔神。ここで約4秒、微動だにしない姿は息を呑む迫力。 逃げ遅れた兵を攻撃するシーンでは。屋根に隠れて胸から上が見えない。大魔神が腕を振り下ろすと、屋根が壊れて顔が出てくる完璧なカメラワーク。 城下町をメチャクチャにする大魔神、決して善人の味方ではなく、荒ぶる神として暴れるのも素晴らしい。己の額に杭を打ち込ませた領主への天誅。左馬之助を殺した後の、怒りの収まっていない目の迫力。抵抗するものはもちろん、無関係な村人も被害に合う無尽蔵さ。これぞ神の怒り。 巨石や巨木、滝なんかを神として崇拝した日本人。日本古来の自然信仰。暴れる武神像は、まさに自然災害と言える。 最後に土になって崩れ落ちるところも、大魔神が異世界の魔物や宇宙の神秘でなく、あくまで自然から産まれたものって感じで、味わい深い最後だったと思う。自然の力に対し、無力な人間は、ただ怒りが鎮まるよう祈るしかない。 ウルトラマンやゴジラは身長50mとかだけど、この大魔神は4.5mと小さい。その大きさだからこそ、魔神の表情、怒りに満ちた目が、肉眼でハッキリ見て取れる。踏み潰される人間の痛さ、睨まれる怖さが伝わる。 刀も鉄砲も効かない、大魔神の圧倒的な力。これも相手が戦車やミサイルだとどうなんだ?とかって思ってしまうから、戦国時代って設定も絶妙。[インターネット(邦画)] 8点(2022-03-08 22:58:39)(良:1票) 《改行有》

50.  疑惑(1982) 《ネタバレ》 よくもまぁこんな、ふてぶてしくも憎ったらしい女を創り出せたものだ。 もう死刑一直線、この女が殺したことは間違いない。最後はスカッと有罪判決を出してくれるのを期待して観てしまう。 犯人が意外な人物のドラマ、計画的な殺人トリックに見慣れたせいか、この自然体で直情的で、何がしたいのか解らない球磨子が新鮮に見える。裁判の席でも自分の感情を隠さない球磨子。憎たらしいけど、確かに、自分の無罪を主張するなら間違ったアピール方法。 観ていて球磨子が本当に犯人かどうか、解らなくなる。逮捕後の生存ルートに、どうにも計画性がなく、無罪が期待できない状況に自分を追い込むなんて、犯人だとしたら頭が悪すぎる。 絞首刑の夢で取り乱すシーン。豊崎が言うように「はずみで人を殺すかもしれないけど、計画的に殺すとなると…」こんなのを見ていると、球磨子が犯人じゃ無い可能性が、自分の中でも芽生えるから不思議。 映画の視聴者ではなく、裁判の傍聴人として、とても残念な判決。球磨子が保険金を手に入れられなかったのは、律子のせめてものファインプレーに見えたけど…そうだろうか? この裁判の重要アイテム、靴とスパナ。靴が脱げていたことを怪しむ律子の法廷発言を「そんなのどうでも良いのよ頭悪いわね」と遮る球磨子。 豊崎の証言に取り乱して退廷させられた時、律子に「名演技だ」と言われ、顔の見えない方で口角ニヤリ。 この事件が自殺だったら、豊崎はどこから『ケネディ事件』なんて情報を仕入れて持ち出したのか。(※今回はじめて知った。当時誰でも知ってるような、有名な事件だったのかは知らないけど。) やっぱり球磨子が「一人では生きていけない」とか何とか、福太郎に無理心中をしようと誘い、自殺の方法から手順なんかを指示したんじゃないかな。 目撃者の証言、福太郎の足の傷から、やっぱり球磨子が運転。怖くなってブレーキを踏まないようにと説明して、ブレーキの下に靴とスパナを入れた。目的は福太郎が急に怖気づいて助手席側からブレーキを踏まないように。 福太郎には2人の無理心中と思わせて、実際は自殺教唆。その実、世間からは事故に見えるように細工。だとしたら球磨子は相当したたかだ。 宗治君の証言で、球磨子の目論んだ『事故』でなく『自殺』にはなった。でも有罪まで持っていけなかったのは、律子の完敗に思える。 最後の打ち上げ。律子の腕にワインを浴びせるシーンは息を呑む迫力だった。 桃井かおりが悪女役をする作品が、他に何作品あるのか知らないけど、私の知っている桃井かおりの憎たらしさをストレートに出したのが、まさしくこの映画の鬼塚球磨子だと思う。それだけ自然で、私がイメージする桃井かおりそのまま。[インターネット(邦画)] 8点(2022-02-13 16:27:18)(良:1票) 《改行有》

51.  トラ・トラ・トラ! 《ネタバレ》 -Tora!Tora!Tora!- “ワレ奇襲ニ成功セリ”の意味だけど、タイガーの虎ではなく、トとラをくっつけた通信暗号で、意味は持たない。 真珠湾攻撃を真面目に映画化した作品。当時は第二次大戦の史実をもとに、ダイナミックに戦場を描くことが、戦争映画という娯楽映画のいちジャンルとして成立していた時代。空母の甲板に並ぶ水兵たち。真珠湾基地の風景、居並ぶ軍艦と航空機たち。日米両側の軍備に迫力を感じる。もちろん開戦からおよそ30年も経っているし、模型だったり現行兵器そのままだったり、当時のものを完全再現した訳じゃないだろうけど、やっぱ凄いわ本物。 見終わってから知ったけど日米合作とのことで、それで日本の描写も丁寧なんだなと感心。ハリウッド映画の日本人に有りがちな怪しい日本語ではなく、きちんとした日本語で、しかも関西弁まで出てきて驚いた。でも写真の『U.S.S.ARIZONA』はカタカナ表記が正解でないかな?極力公平に作ろうとしたためだろう、アメリカ人俳優と日本人俳優を1人づつ交互に流すエンドクレジットにも注目。 魚雷訓練で低空飛行をしている攻撃機に手を振る遊女。鳥居のそばで釣りをするおじさんなど、日本軍と民間人の身近さが感じられた。敵艦のシルエットクイズ風訓練風景なんか、とても日本人らしく和やかに描かれている。一方で大海原を走る空母赤城の勇姿。発艦する零戦の朝焼けに映える美しさ。いざ開戦というピリッとした空気が、日本は怒らせると怖い国だという事が、ビシビシ伝わってくる。アメリカ映画なのに、血が通った日本人が描かれている。 序盤中盤と政治的な駆け引きが多いが、後半に集中する真珠湾攻撃は迫力満点。 滑走路で一発撮りの爆破シーン、逃げ惑う兵員たちの命がけの撮影は、CGでは絶対に出せない臨場感。 容赦なく破壊されるP-40にカタリナ飛行艇。逃げ惑うB-17。基地内で働く日系人青年に向けられる敵意の目。 ハレイワ飛行場のケネスとジョージの活躍、機銃を撃つ黒人調理師が、辛うじてアメリカ・サイドの溜飲を下げる。 映画の大半は開戦に至る過程を丁寧に描写していて、特に日本側の、戦争を避ける為の努力が感じられる。 アメリカ側は、日本との開戦に危機感を感じている者と、あの場に及んで呑気にしているものの落差が大きい。 でも詳しくないけど、そもそも開戦前のアメリカが、日本と大使館の暗号電文を傍受して解読するのって、国際法的に犯罪じゃないの? 日系アメリカ人のゲリラ活動を恐れて滑走路に集められる航空機。もみ消された空襲前の潜水艦撃沈事件。たまたまB-17編隊の到着と重なったレーダー基地での未確認機影のキャッチ。 真珠湾で大打撃を被った失態。これは変えようのない事実で、この映画はあの時、何故そうなったか、些細な行違いと不運なミスの重なりに、真摯に向き合っている姿勢が見て取れる(…言い方を変えるとミスした士官に責任を擦り付けているようにも)。 一方の日本側は、開戦に前向きな士官に対し、実際にアメリカを見てきた山本長官の言葉に重みが感じられる。 戦争を回避できなかった野村・来栖両外交官。目的の空母を沈められず、艦隊を引き上げる南雲長官。開戦の最後通牒の前に攻撃をした事実を受け止める山本長官。みんな他人のせいにはせず、自分自身の責任として受け止める姿勢が、今も昔も変わらない日本人らしさに思えた。[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-02-08 22:16:11)《改行有》

52.  友だちのパパが好き 《ネタバレ》 フワついたタイトルから、おっさんの願望をそのまま映像化したような作品を想像してたけど、なんか違った。 そう視点が違った。自分の世界に入っている人を、一歩引いて客観的に撮ってるから、主要人物の殆どに感情移入出来ない視点で観えるんだな。 恭介がマヤと(劇中)最初にキスするシーンは通行人同様、たまたまその場で見てしまったように観せる。二人の関係も、LINEの交換、ファーストデート、ファーストキスといったドラマチックな場面を省いて、もう関係が出来上がってからをぶつ切りで見せる。 食堂のミドリと川端の会話も、たまたま食事中、向かいのグループの会話が聞こえてしまった風に。仕事外で何かあった事を匂わすだけ。客観的に観ている私は、二人に何があって今に至るかを、会話から想像する造りになっている。もの凄い演技力も要求されるわこの撮り方は。 自殺を図る先生。主観的に撮れば、先生の辛さを感情移入できるくらいドラマチックにも出来たろうに、そこをたまたま通りかかった他人のハヅキ視点で観せる。おじさんに自殺を止められて、説教されて、逃げようとして、生徒に見られて。客観的に観ると、何とまぁカッコ悪い。 広いようで狭い世の中で、それぞれ点だった登場人物が徐々に、モヤモヤモヤ~~~っと線で繋がっていき…結末は割愛、ご自身で。 話は逸れるけど、便秘になってモヤモヤ。それがスカッとするほどでないけど、ようやく出てきました。 一応どんなの出たか見ますね。でもマジマジとは見ないですね。ありがとう。とか、さよなら。なんて感情は抱かずに、冷たい視線を送って、機械的にジャーっと流しますね。 「やぁーやあ」「やあ、やあ」 身体から出たウ○コが、その後どうなったかなんて、ホンッットどうでも良いですよね。 いやぁ~面白かったわー。[インターネット(邦画)] 8点(2022-02-05 14:34:50)(良:2票) 《改行有》

53.  バトル・ロワイアル 特別編 《ネタバレ》 ~『バトル・ロワイアル』のつづき~ この時のたけしはまだ若くギラギラしていて、出てくるだけで存在感が凄い。原作はあくまで生徒たちが主役で、教師はここまで物語に絡んでこなかったと思う(途中までしか読んでない)けど、映画では主役級の役割を持って登場している。 まるでセリフを喋るように、感情的に話す生徒たち(もちろん演技指導で)と違い、普段の話し方の北野武がまた怖い。桐山役の安藤政信が自らセリフを一切排除した理由も、もしかしたら邦画のセリフっぽいわざとらしさが嫌いだったのかもしれない。 キタノが自分を殺させようとする中川に掛ける言葉「中川、頑張れ」が、自殺した七原の父が書いた「秋也ガンバレ!!」とオーバーラップ(※このキタノのセリフのシーンに、七原の父のシーンを流してしまう親切さが余計。だけど同世代の子供に観せたいという意図があったろうから、敢えてだろうけど)する。 自分が死ぬ。となった時、当然生きるよう努力すると思う。それが無理だと悟った時、冷静であれば、生きられない自分の代わりに、特定の誰かに何かを託したくなるのかもしれない。クサイ話だけど、生きた証を誰かに託す行為。 子供たちも、42人のうち41人が死ぬルールから、自分が生きる可能性が限りなく低いなか、僅か15年の人生の知恵を絞り、生きる努力、生きない決断を自分で選んでいく。子供たちの死に様をみせる映画から見えてくる、子供たちの3日間の生き様。 GPSを持った杉村が、片思いの琴弾に好きだと伝えたくて奔走する。誤って自分を撃った琴弾に「逃げろ」という気持ち。好きな子に気持ちを伝えることに残りの命を使う気持ち。そんな事ができる子供たちだから見えてくる、どこかに忖度のない、残りの人生の使い方。彼らより長いこれからの人生を私がどう生きるか、とても考えさせられた。 最後に「走れ。」とメッセージ。詰め込み過ぎと言うか自己満足と言うか、邦画らしいダサさがまだ残ってる。 今回買ったDVDが特別篇と書いてあって、追加シーンがあるんだそうだ。観たのもう20年近く前だし、公開版とどこが違うのか、調べないと解らなかったけど、物語に深みを持たせる回想シーンとかが追加されているようだ。殺し合い中の他の生徒の動きとかは特に追加がなかったのは残念だけど、バスケのシーンも相馬の過去も、悪くなかったと思う。 当時あれだけセンセーショナルだったこの作品だけど、今だったら数あるシチュエーションの一つに過ぎない。この作品以降、必然性もなく人の命を使った、殺人ゲーム的な作品がたくさん出てきた。多くの作品が『私だったら“このゲームを”どう生き残るか?』って、今置かれている理不尽な状況からの生還を考える程度に過ぎない。 「人生はゲームです」今置かれている特異な状況だけに収まらず、これまでの生き様まで踏み込んだこの作品は、先駆者にして稀有な存在に思える。[DVD(邦画)] 8点(2022-01-16 16:05:04)(良:1票) 《改行有》

54.  バトル・ロワイアル 《ネタバレ》 当時は洋画ばかり観ていたから、もしかしたら初めて劇場で観た邦画かもしれない。お金の掛かってない邦画はテレビやレンタルで観るもので、わざわざお金を払ってまで…って考えで。 原作本が出る時にたまたまラジオで「中学生同士が殺し合う小説」って聞いて、何とも悪趣味な内容だなって思ってた。それが社会現象になって、映画化が決まって・・・テレビでは当然、肯定的な意見なんて取り上げられず、青少年への悪影響ばかりが取り沙汰されていたと思う。やはり中学生が、それも同じクラスの友だち同士に殺し合いをさせるという内容は、間違ってもコメンテーターが実名で「これ面白いですよ」なんて言えない時代だったと思う。 当時ネットとかあまりやってなかったから、私もテレビとかで言われる通り、表面的な話題性だけの、中身のない作品だろうと。当時流行っていたエヴァの亜種のように、気分が滅入るような殺し合いをネチネチ描写したものだろうと思っていた。 ただ怖いもの見たさと興味はあった。私ももう大人だし、この作品を通して何を思うんだろうか?アニメ以外で劇場で観る邦画は、どんなものか。 アクションはやっぱり当時の邦画だなって思った。銃の効果音こそ『バキューン!』では無くなってたけどリアルってほどではなく、まだ撃たれて死ぬ時、「ギャーッ!」って手足をバタバタさせて踊るような演技指導の時代だったから、当時流行ってた韓国のアクション映画に比べて、ひと昔前の作品感。 内容には引き込まれるものがあって、楽しい修学旅行から一転して、軍人に銃を向けられる非日常感。そこに退職したキタノが現れて、淡々と状況を説明される違和感。目の前でいきなり女生徒と親友を殺される恐怖と驚き。このあと時々国信のことを思い出すのがリアル。 有無を言わせず始まる殺し合い、出席番号順に名前を呼ばれ、自分のバッグを抱え、武器の入ったバッグを投げ渡されて、次々と走っていく場面の緊張感は、この映画イチの名場面だと思う。武器のバッグをキタノに投げ返す女の子が忘れられない。42人の生徒たちの個性、それぞれが考えを持って状況を捉えていることが、この映画を単なる“悪趣味な殺し合い場面集”と違うことを感じさせる。 単純に42人の殺し合いだから、2時間の映画では駆け足の殺人シーン・ダイジェストになるかと思ったけど、短い時間ながらそれぞれの個性をよく出せていたと思う。分厚い原作に細かい設定があったからこそだと思うけど。 どう見ても大人な川田と桐山も、殺し合いに参加する目的の、怪しい転校生(留年設定)として、案外違和感なく受け入れられた。何でも出来て安心感のある川田の関西弁キャラクターがホッとさせてくれて、主人公のサポートと、鑑賞者に状況を伝える重要な役割を担っていた。もし七原と中川が状況に振り回されるだけの映画だったら、観ている側も状況を理解するのに余計な時間がかかるし、生徒たちの掘り下げも浅くなっていたと思う。 ~『バトル・ロワイアル 特別編』につづく~[映画館(邦画)] 8点(2022-01-16 15:59:21)《改行有》

55.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 ルールも勝敗もないから、永遠に終わりのない3人野球。 真琴の、いつまでも3人で、ずっとこのままが良いって気持ちが凄く伝わる。 それがいつまでも続くとは思っていない功介。続かないことが解っている千昭。 真琴が同じ時間を何度も繰り返すことによって、徐々に3人の気持ちが先に進み出す描き方が上手い。 過去に行けるというトンデモナイ能力を、あんなどうでも良いことに使えてしまう真琴がとても良かった。 バカなことばっかりの真琴が、意を決して友梨に、千昭が好きなことを告白するシーン。好きな人の突飛な話を信じられる真剣さ。行動力。アニメの声優は初のようだけど、ドラマで目にする仲里依紗がビックリするくらい上手に演じていた。 可愛い絵柄でドギツイ内容のアニメ、心を抉り取られるような鬱展開のアニメが増えた中、パンツも見えない、キスシーンすらない、カラッと真っ直ぐな高校生たちの物語は、逆に新鮮だった。 後輩3人もまた、毎日が楽しそうで、悩み多くて大変そうで良いね。功介に告白するとき、メガネしてないのは何でだろう?コンタクトにした?功介がクッキリ見えるのが怖いから? 魔女おばさん。単に超常現象に理解がある人だと思っていたけど、芳山和子だったんだな。1983年版をもう一度観なくては。[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-05-26 23:18:05)(良:1票) 《改行有》

56.  忠臣蔵(1958) 《ネタバレ》 忠臣蔵の映画は二作品ほど見ていると思う。そしてこの作品が忠臣蔵の決定版と言える映画とのこと。 原作に忠実というか、捻りの無い標準的な物語に仕上がっているため、忠臣蔵の面白さが直接的に伝わってくる。 約六十年前の作品ということもあり、この映像自体の美しさ、当時の俳優の動き、舞台の作りこみ等に価値を感じてしまう。 台詞が、いわゆる現代語ではないため、ちょっと頭の中で訳しながらの拝聴となるが、映像と構成で充分に分かる仕組みになっている。 庶民が常に赤穂側の目線で語るのが、この物語の善悪を明確にしている。 世の中が太平だと「もっと派手な事にならんかな…自分に影響がない範囲で」なんて思ったりする。湾岸戦争や某宗教団体の事件がそんな風潮だった記憶がある。庶民にとっての赤穂事件は、そんな感じだったかもしれない。 垣見五郎兵衛が自分を騙る大石の正体と目的を知った時の対応。岡野が図面を受け取る際のお鈴の父の言葉。赤穂浪士を応援する庶民たちの反応がとても心にしみる。 気になったのは吉良の行列の罠。赤穂浪士の結束が乱れるかと、はらはら出来たのは大変良い演出だが、笠を被った大石があっさり間者るいに見つかり、多勢に囲まれての大立ちまわり。扇子でひらりとかわして、捕えられる事無くゆるりと引き上げる…それでは罠の意味が無いのでは。 罵られ、蔑まれてきた赤穂浪士達がいよいよ決起し、見事本懐を遂げて引き揚げる姿が美しく清々しい。これぞお約束といったところか。 先に忠臣蔵映画を見て、後に史実を知って驚いたのが、このあと四十七人全員が切腹していたこと。 過去二作品でも書かれていなかったが、歴史に明るい人には常識かもしれないし、事の重大さから避けられない結末だと思うけど、これを知っているか知らないかで、大石内蔵助達の見え方も変わってくると思う。 そう考えると、本作では吉良の嫌がらせに右往左往する浅野内匠頭。あと一日の我慢だったのに、辛抱出来なかったのか、お家を取り壊しになってでも、切らなければ済まない心理状態が気になるところ。[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-05-03 20:47:58)《改行有》

57.  ラヂオの時間 《ネタバレ》 面白い!誰かの身勝手な都合で、内容がどんどん改変されて行く過程で、ラジオドラマの原作と言える「運命の女」が実はどんな話だったか、なんとなく見えてくる辺りが上手い。 主人公の職業とか、ストーリー上特に重要じゃないように見えるけど、鈴木みやこ先生自身がモデルだと解ると、そりゃ拘るよな…って納得してしまう。 どうでも良い内容のラジオドラマで、作者は素人。それでもプロの仕事をする現場スタッフ。色んな感情がありながらアドリブで乗り切る芸能人。保坂アナが最後の出演発表に、みやこ先生の夫を入れる演出が何とも憎い。 収録中、みんなが面白くない思いをしながら作っているのに、終わってしまうとみんな満足そうなのが、観ているコッチも一緒に満足感を味わわせてくれる。 唯一、今回の結果を面白くなく思っている牛島。『いつかみんなが満足するモノを作る』夢。たった一人だけど、わざわざ感動を伝えに来たトラックドライバーが救いになってるのも、ベタだけどイイ。…渡辺謙、大型トレーラーのバック操作が出来るんだな。 掃除婦が宮本信子だったなんて気が付かなかったから、種明かし的に嬉しい出演者の紹介だった。 90年代後半のお洒落な空気も味わえて、すごく得した気分だ。[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-04-30 01:45:20)《改行有》

58.  名探偵ホームズ2/海底の財宝の巻 《ネタバレ》 ~『青い紅玉』のつづき~ 青い…で描かれるロンドンの街並み、群衆の動き。海底…で描かれる戦艦の水兵たち、砲の動き。砲撃と爆発。 子供向けの作品だけど、作画やストーリーに手を抜かない姿勢がこの2作に込められている。 この当時は『大人の鑑賞にも耐えられるアニメ』なんてジャンルはなく、あくまでターゲットは子供だけだったのに、この作画クオリティ。 共同制作のイタリアに日本アニメの底力を魅せつける意味もあったかもしれないが。 戦艦のシーンで延々と流れる軍艦マーチ。時々チリン・ジャラジャラ…ってパチンコかい!遊んでるけど、ふざけてない。 キャラの見せ方が上手く、たった23分×2の作品なのに、メインキャラの性格がしっかりわかる。 ゲストのポリィにしてもライサンダー兄弟にしても、人じゃないけど怪鳥や潜航艇といったゲストメカも、1話のみの登場(TV版はあまり覚えていないので、たぶん他の回には出てこないと思う。)なのに、魅力が込められている。 これだけ短時間で密度が濃いにも関わらず、山盛りサンドイッチの調理や、飛行船のイギリス周遊など、本筋とは特に関係がないシーンだけど、宮崎作品らしいシーンをしっかり入れているのが凄い。 個人的な思い入れが強いため。とは思うけど、やはり宮崎監督の、一番脂が乗っていた時期の作品。 素人に声を当てさせたり、独り善がりな芸術性が出てなくて、監督の個性と商業作品としてのクオリティが共に高く出ている名作。[映画館(邦画)] 8点(2021-04-17 18:56:24)《改行有》

59.  名探偵ホームズ1/青い紅玉の巻 《ネタバレ》 懐かしい。劇場で続けて2回観て、TVシリーズで1回。今回は久々の視聴になる。まさかまた観られるとは… 正直、当時10歳の自分には、本命の風の谷のナウシカより、同時上映のコッチのほうが面白かった。 ここでのレビューは『海底の財宝』とは別作品の扱いなのね。 後年TV版を観た時、名前が微妙に違うので違和感を感じた記憶がある。 モロアッチ教授だったのにモリアーティ教授と呼ばれてたり、エリソン夫人がハドソン夫人だったり。 なんか、TV版はニセモノだって、そんな認識だった。 TV版の作画の甘さも気になった。ホームズやモロアッチ、エリソンの顔が人間臭かった。 恐らく制作第一話だった本作は、登場人物の顔が長めで犬っぽさが強い。やっぱこうでないと。 ウィキによると、この回はTV版の第5話だったそう。 モロアッチとの初顔合わせで「シャー(ベ)ック・ホームズ」と名乗る。ここがなんか、格好いいんだ。 当時の雑誌で『シャーロックと名乗った上に、後から(ベ)の音声を乗っけた』みたいな事が書いてあったけど、劇場では気が付かなかったな。 TV版では「ホームズ!」としか名乗らなくて、長年消化不良だったけど、ついに当時の劇場版を観られて感激。 劇場版初期の声が広川太一郎じゃなかったのも、今回初めて知った。 ~『海底の財宝』につづく~[映画館(邦画)] 8点(2021-04-17 18:54:36)《改行有》

60.  小さいおうち 《ネタバレ》 世間を何も知らない田舎娘が、東京の丘の上の小さいおうちで女中をする。自分が初めて好きになった人が、そのお宅の奥様だった。 こんな同性愛だジェンダーだが無い時代。恋愛の延長が結婚ではなかった時代。どうしたら良いかわからないタキちゃんの気持ちがよく描けていたと思う。 宝塚歌劇団から飛び出してきたような睦子なら、きっと自分を理解してくれるという直感。そして理解してくれた。 その時のタキちゃんの声を押し殺した泣き声が、見ていてコッチの心まで締め付けられそうになる。この映画イチの名場面。 『一生この部屋に暮らして、奥様や坊ちゃんの世話をしたいと思っています』狂おしいほど好きになったにもかかわらず、なんてささやかな告白だろう。 人妻の身でありながら、そこまで人を好きになれて行動できてしまう時子と、目の前に好きな人が居ながら、気持ちを伝えることすら出来ない自分。 嫉妬心からだろう、板倉に届けなかった手紙。そんな事でしか時子への愛情を表現できなかったタキちゃん。墓場まで持っていく秘密。 『街中の噂になっている奥様の不倫事件』の影に隠れた、タキちゃんしか知らない『坂の上の小さいおうちの恋愛事件』。 時子を裏切ることで、タキちゃんの恋もここで終わる。手紙に書いてある内容は解っている。でもその手紙の封を切ることは生涯出来なかった。 「私ね、永く生きすぎたの」背中を丸めて泣くタキお婆ちゃん。好きな人を裏切った事実は、何年経っても辛かったんだろう。 空襲でおうちが焼け、夫婦は亡くなった。タキちゃんにはもう、板倉の行方とかはどうでも良いのだ。 手紙を隠した意味がイマイチ解っていない健史。恭一の「そんなに苦しまなくて良いんだよ」は、時子の代弁なんだろう。 今回2度目の鑑賞で↑のような感想になりました。こんなに良い映画だったか?と再評価。 「床がベタベタするわ」時子は体が火照ると足に汗かくんだな。何も言わずに床を拭くタキちゃん。 仕事から開放されて女中部屋で雑誌見ながらくつろぐタキちゃん可愛い。 南京陥落で大喜びはわかる。江戸末期からずっと戦争してたんだし。でも戦中のトンカツとか、ちょっとビックリするけど実際あったんだろうな。 おうちを焼く焼夷弾。『母と暮せば』でも思ったけど、山田監督の描く爆撃は、短時間で大事なものを破壊される恐怖が見事に描けている。[地上波(邦画)] 8点(2021-04-17 02:21:38)《改行有》

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