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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
121. アフロ田中 《ネタバレ》 原作漫画は未読なのですが、何十巻も刊行済みの御話を 「高校を中退してしまった」 「友人の結婚式に出席しなければいけない」 という二つの事柄を主軸に据えて、上手くまとめているように思えました。 一見するとメインテーマのように描かれている「彼女を作る」という行為は「結婚式に彼女を同伴すると約束したから」という理由での、オマケに過ぎない形ですよね。 それゆえに、ラストにて主人公が振られる事となっても、全くバッドエンドの香りがしない。 むしろ、その「本当は彼女なんて必要ない」という図式を活かして、明るいハッピーエンドに繋げてみせているのだから、脚本の巧みさが窺えます。 でも、振られる件に関しては、少し引っ張り過ぎたようにも思えましたね。 友人達との関係性を考えれば「他の皆は振られたのに、主人公だけが彼女と結ばれて終わり」なんて事は有り得ないはずなので、勿体ぶった告白シーンの演出には「いや、もう結果は分かっているよ」と、醒めた目線になってしまいました。 ただでさえ、その直前の結婚式にて、同じようなブラフの演出を、たっぷり時間を掛けて行われたばかりでしたからね。 二連続でやられてしまうと、流石に食傷気味。 こういうのは一度くらいに留めておいた方が「結果は分かっていても、やっぱり嬉しい予定調和」として、楽しめるんじゃないかなと思いました。 特に、この映画の場合はスピーチの場面が「ダメかと思ったら結果オーライだった」であり、告白シーンが「イケるかと思ったらダメだった」という順番なので、余計に辛い。 上述の不満点を考慮した上で判断するに、この映画のクライマックスは「主人公と男友達との絆が回復した瞬間」にあるのではないかな、と思う次第です。 それまで高校を中退した事に対し、後悔の念らしきものを窺わせなかった主人公が、初めて「高校卒業していれば良かった」という想いを口にする。 その理由が、学歴がどうこうといった話ではなく「そうすれば、卒業まで皆と一緒にいられたから」という辺りは、本当に良かったですね。 それまでの劇中にて、常に主人公の心情をモノローグで語る演出を取っていただけに、この「告白」には(そんな風に考えていたのか!)という意外性もあったりして、不意を突かれた形。 スピーチの場面では感動的な演出にするのだろうなと察して、ちゃんと身構えていたはずなのに、その予測を上回る感動を与えてもらいました。 劇中でアフロを貫く理由が今一つ分からないとか、友達と険悪になる流れが不自然だとか、気になる箇所は色々あったりもするのですが、楽しめる場面の方が多かったですね。 特に「女の子に送るメールの文面で悩む件」には、とても共感させられましたし「無断欠勤を社長に謝る件」なんかも、観ていて緊張感を抱かされ、社長が鷹揚な対応をしてくれた時には、心底からホッとさせられました。 基本的に作中人物が善人ばかりで、優しい世界を形成しているから、観ていて心地良い。 「失恋の傷なんて、友達同士で集まって騒げば、笑い話に過ぎなくなる」というメッセージが感じられるエンディングも、とても好みでした。[DVD(邦画)] 6点(2016-06-30 08:22:19)(良:2票) 《改行有》 122. あげまん 《ネタバレ》 伊丹監督は作中にて、自らの妻である宮本信子を「良い女だ」「美人だ」と褒めさせる事が多いのですが、本作は「妻を賛美する為に撮った」という側面が、最も強い映画なのではないでしょうか。 「やりたい事、全部やってごらんなさいよ」 「ダメだって、良いじゃないの」「一文無しになったって良いじゃないの」 「貴方くらい、私が養ってあげるわよ」 これらの台詞って、きっと監督が奥さんに言ってもらいたかった事、あるいは実際に言われたり感じ取ったりしたメッセージなんじゃないかと思えて、微笑ましかったですね。 「人間にとって、人間を自由にするくらい面白い事はない」 という台詞もまた、映画監督である自らの価値観を示した一言だったのかと思えたりして、興味深い。 映画全体としては、主人公が売春したと誤解されてしまう件と、次期首相候補の政治家と対決する件、二つのクライマックスが終盤に立て続けに起きる形になっている辺りが、やや忙しない印象を受けましたね。 全編に亘って「伊丹節」とも呼べそうな、独特の楽しい雰囲気が漂っているのは間違いないのですが、肝心の山場に差し掛かっても、どうにも気持ちが盛り上がらない。 主役の男女二組が復縁するハッピーエンドに関しても、ちょっとオチが弱かったみたいで (えっ、これで終わり?) と拍子抜けしてしまったのが残念です。 それでも、タイトルとなっている「あげまん」の説得力というか (こんな女性が傍にいてくれたら、自分も色々と成功出来るんじゃないかな……) と感じさせるだけの魅力を、主人公がしっかり備えている辺りは、お見事でしたね。 個人的好みとしては、序盤における「恋人探しの香港&ヨーロッパ旅行」の件が、妙に楽しそうに思えたもので、そちらを主題とした映画も観てみたかったところです。[DVD(邦画)] 5点(2016-06-30 04:27:38)《改行有》 123. もう頬づえはつかない 《ネタバレ》 桃井かおりの存在感が素晴らしいですね。 あの喋り方、表情。気怠さの中に垣間見せる女の弱さ、強かさ。 考えてみれば、彼女が主演の映画は初体験のはずなのですが、観ていて全く違和感を抱かない。 彼女が主人公なのは当たり前、画面の中央に映っているのは当たり前、と思わせるような魅力がありました。 そんな彼女を観賞する為のアイドル映画とすら言えそうな一作なのですが、舞台設定なども中々に興味深く、画面に映る街並みを見ているだけでも物珍しくて、楽しかったですね。 七十年代後半の日本といえば、自分は生まれてもいない、近くて遠い世界。 学生運動も下火となり、若者達が「権力に反抗しても何も変える事など出来ない」という、無力感に包まれていたと思しき世代。 そこで暮らしている人々の姿が、時代を越えて自らの青春時代と重なる瞬間もあり、何とも言えず切ない気持ちに包まれました。 そんな普遍性を生み出している理由は、やはり丁寧な人物描写にあるのでしょうね。 同棲している男と女とが、狭いアパートの中で 「ちゃんと自分の歯ブラシを使って欲しい」 「口を濯いだ水を、食器を洗っている隣で吐き出さないで欲しい」 などと言い争ったりしている。 現代の目線からすれば、ベタで退屈とも受け取れる日常の一コマから、不思議な説得力を感じる事が出来ました。 主人公の女性がメロンを食べる姿を、如何にもエロティックに撮ってみせる辺りなど「あぁ、当時は目新しい表現だったのかもなぁ……」と、気持ちが醒めてしまう瞬間もありましたが、総じて新鮮に感じる場面の方が多かったですね。 「主人公に素っ気ないが、魅力的な男である恒雄」「主人公に馴れ馴れしくて、ダメ男な橋本」という構図であったのに、それが逆転していく辺りなんかも面白い。 特に前者の存在感は強烈で、終盤にて妊娠を告げる主人公に対し「堕ろしてくれ」と答える辺りなんかは(うわぁ、最低だ……)と心底から嫌悪。 対する後者に関しては、段々と真面目で優しい人柄が明らかになっていき、ちゃんと彼女と結婚して責任を取るつもりだったと判明した瞬間には(良い奴じゃん!)と、胸中で叫ぶ事になりました。 けれど、悲しいかな、主人公の女性は恒雄を愛しており、橋本には愛情に似た何かしか抱いていないのです。 だから橋本と同棲していながら、平気で恒雄と浮気してしまう。 橋本に結婚を仄めかされた事で、初めて「愛していない存在から愛される疎ましさ」を理解する。 こういった場合、自分は主人公の女性に嫌悪感を抱く事が多いのですが、何故か本作は、そんな彼女の気持ちが理解出来たというか、同情すらしてしまったのですよね。 中でも「私は、ただ男を待っているだけの女じゃないからね」という台詞が、実に物悲しい。 それは結果的に「置いてけぼりにされても、本心では待っていた」事を告白してしまっているというか「愛されていないと薄々感じながら、愛する男に対して強がってみせている」心情が伝わって来るかのようで、本当にやるせない思いがしました。 この世には「痛いほど気持ちが分かる」と思わせる女優さんが、確かに存在するのだと、強く実感させられましたね。 そんな行き詰った暮らしの中で、堕胎の悲しみを乗り越えた彼女が、二人の男と決別し、自立する事を示して終わるエンディングは、非常に爽やか。 荷造りの最中に転んでしまっても、すぐに笑顔になって立ち上がってみせる辺りに、女性の力強さを感じられました。 ただ、自分としては(主人公にとってはハッピーエンドかも知れないけど、振られちゃった橋本君が可哀想だよなぁ……)と思えてしまい、そこだけが残念。 彼女は彼を愛していないのだから、仕方ない事かも知れないけど、出来る事ならば、彼女が彼を愛するようになり、結ばれて幸せになる結末なんかも見てみたかったものです。[DVD(邦画)] 7点(2016-06-29 12:31:03)《改行有》 124. 渚のシンドバッド 《ネタバレ》 これほど赤裸々に同性愛を描いた内容だったのか、と吃驚。 それなりに耐性は出来ているというか、同性愛者が主人公の映画でも意外と楽しめてきた経験があるはずなのですが、本作に関しては生々し過ぎて、ちょっとキツいものがありましたね。 (邦画なので、洋画よりも身近で現実的に感じられて、物語として割り切れないのかも……)と途中までは思っていたのですが、終盤にて(いや、やはりコレは、この映画が特別なんだ)と確信。 何せクライマックスとなる浜辺のシーンが「男を愛せない男を徹底的に詰る」という内容だったりしますからね。 男を愛してしまう男が詰られるシーンなら何度も観てきましたが、その逆というのは珍しいし、何よりこの件だけで二十分近くも尺を取っていたりするものだから、もうお腹一杯。 長回し演出ならではの緊張感も相まってか、ラスト十分くらいは神経が擦り減ってしまい、観ているのが辛かったです。 終わり方に関しても、不思議な爽やかさがあり、好みな演出のはずだったのですが(でも、結局は明確な答えを出していないよなぁ……)という考えも頭をチラついてしまい、残念。 好意的に解釈すれば、観客に自由な解釈の余地を与えてくれる結末。 意地悪を言うならば、答えを出す事から逃げてしまった結末であるようにも思えました。 作中で最も印象的だったのは「優しいフリ」という言葉。 主人公が「自分は同性愛者である事」「キミを好きだという事」を親友の吉田君に告白した際に、彼は優しく受け入れてあげようとするのですが、抱き付いてキスされたりすると、最終的には主人公を拒否してしまうのです。 「本当に優しいなら、ちゃんと告白を断るべきだった」 「相手は親友だから傷付けたくない、などと遠慮するべきではなかった」 等々、色んなメッセージが込められているように感じられて、非常に興味深かったですね。 吉田君は、それまで基本的に「良い奴」として描かれていただけに、終盤にて本性が明かされるというか、その優しさが「フリ」でしかなかった事を暴かれてしまう流れが秀逸。 主人公の前では色々気遣っていても、当人のいないところで何気なく「あいつは変態」と言い放ってしまうシーンなんかは、特に衝撃的でしたね。 結局のところ「自分は同性愛者を差別するような人間ではない」と相手にアピールして、曖昧な反応をするだけでは、本質的に優しい人間とは言えないのかも知れない……と、身につまされるものがありました。 自分に告白してきた吉田君を無下に扱うヒロインに「私が女だから好きになっただけ」「ヤリたいだけなんだよ」と言わせた辺りは、本当に思い切ったなぁ、と感心。 ただ、これに関しては、ともすれば「同性愛者=肉欲に囚われない精神的な愛を求める人」という極端な美化に繋がってしまうというか、さながら「男を愛せない男は酷い奴だ」と言われているかのようで、やはり抵抗がありましたね。 そりゃあ同性愛を否定するのは間違っているけど、だからって異性愛を否定するかのようなメッセージを込めるのは、ちょっと違うんじゃないかなと。 他にも作中のアチコチにて、女性蔑視というか「男に比べて女は醜い」と訴えているかのような表現が目立ったのも気になりました。 主役の三人に負けず劣らず、脇役も個性が光っていたのは、青春群像劇といった趣があり、嬉しかったですね。 落ち込んでいる女子生徒を元気付ける為に、男子生徒が宙返りを披露するシーンなんかは、特に素敵。 後者の男子に関しては、第四の主人公とも言えそうなくらいにスポットが当たっており、作中で最も共感出来た人物かも知れません。 些細な誤解から、友達の自転車を川に沈めてしまうという間違いを起こした後、思い直して自転車を川から拾い上げる姿なども、何だか憎めない。 そんな具合に、好きなシーンと、嫌いなシーンとが綯交ぜになっており、非常に判断の難しい一品。 正直「良い映画だった」とは思えなかったのですが…… 観ていて圧倒されるような、力強い映画であったのは間違いないと思います。[DVD(邦画)] 6点(2016-06-28 10:46:35)(良:1票) 《改行有》 125. 漂流教室 《ネタバレ》 監督は大林宣彦、主演は林泰文。 この組み合わせには「青春デンデケデケデケ」という傑作があった為、期待して観賞する事となった本作。 スケールの大きい原作漫画を、よくぞ二時間以内に纏めてみせた……と言いたいところなのですが、この映画に関しては、さながら短編漫画を無理矢理引き延ばして作ったかのような印象を受けてしまいましたね。 タイムスリップする場面など、やたらと冗長に感じられるし、主人公達が「探検隊」を結成して外界に足を運ぶ件も、あまり必要とは思えません。 その一方で、原作における「醜い大人代表の関谷との対決」「時空を越えて母から子の手に渡される武器」などを再現したシーンは、あっさりと簡略化されていたりするのだから困り物。 監督さんが監督さんなので、青春映画としての側面が強くなるのは分かるのですが、主人公とヒロインの恋愛模様に関しても、あまり好感は持てず、残念でした。 二人の距離が縮まるキッカケの場面については「飲料用に支給された水を、下着の洗濯に使っていただけ」だとは思うのですが、ここって「皆のリーダーであるはずの主人公が、水を無断で持ち出しているヒロインを目撃するも、それを二人の秘密として見逃してあげる」というトンデモない場面にも解釈出来てしまうのですよね。 「誰にも喋らないで」「水は大切だもんね」という両者の台詞も紛らわしかったし、ヒロインに「水泥棒」というイメージを与えてしまいそうな演出は、避けた方が良かったのではないかな、と。 シャワーシーンや、砂漠に降る雨など、色々な場面にて「水」を象徴的に描きたかったのかも知れませんが、少し配慮が足りないようにも感じられました。 主人公がリーダーとして不適当な人物ではないか、と思えてしまうのは、恐らく意図的な演出なのでしょうね。 終盤にて、それが理由で主人公は悩み、ヒロインに慰められる展開になるのだし、マークという生徒から力量を批判され、リーダーの座を賭けて決闘を申し込まれたりもしている訳ですから。 けれど、その場合「じゃあ、どうして中盤にてアッサリと皆のリーダーに選ばれたの?」という根本的な疑問が浮かんでくるのだから、やはり失敗であったように思えます。 一応、長所と呼べそうな部分も幾つかあって「キミの涙は、どんな水よりも綺麗だ」などの台詞は、中々ロマンティックで良かったですね。 映画冒頭の、自転車で登校するシーンなんかも、オシャレな魅力がありました。 ピアノがキーアイテムとして描かれている事もあってか、劇中曲のクオリティが高いのも嬉しい。 「砂の女」を連想させる砂まみれな教室風景や、砂のシャワーを浴びる少女の姿なども、幻想的な雰囲気があったかと。 舞台をインターナショナル・スクールにした理由も「未来に撒かれた種子」が全員日本人なのは不自然という考えゆえなのだろうなと、納得は出来ます。 ラストに関しては、ちょっと観ていて恥ずかしくなるような青臭さもあるけれど、絶望的な世界を前向きに生きていくという、ハッピーエンド風に仕上げてもらえたのは好み。 手放しで褒める事は出来ないけど「良い映画」「観客に感動を与える映画」を目指して、真面目に作られたのだろうな、という事は伝わってきました。[ビデオ(邦画)] 4点(2016-06-27 22:06:34)《改行有》 126. 隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS 《ネタバレ》 映画をリメイクするというのは、勇気のいる事だと思います。 それが原作小説や原作漫画の存在しない「オリジナル」の映画であり、しかも名作と呼ばれる品であるならば、尚の事。 本作に関しては、元ネタである1958年版の後に、立て続けに観賞する形を取ったのですが、中盤以降の展開を大胆にアレンジしているのが特徴ですね。 最初、主人公の名前は「武蔵」で松本潤が演じると聞いた時には「えっ、何それ? 全く新しい人物を主役に据えるの?」と思ったものですが、蓋を開けてみれば「太平」の名前を「武蔵」に変えただけ、と言っても差し支えない程度の変更でした。 アイドルに疎い自分でも知っているようなビッグネームが主人公とヒロインを演じている訳ですが、ちゃんとある程度「汚れた」デザインを心掛けており、役者当人の顔立ちの違いはあっても、全体的なイメージはそれほど離れてはいなかった事も好印象。 特に男性側に関しては、美男子であるにも拘わらず髭ぼうぼうで小汚い乞食のような格好で終始通した事には、思わず感心。 「追っ手を欺く為に」とか何とか理由付けして、途中で髭を剃って髪を整えて、小奇麗な身なりに変身するのも可能だったでしょうからね。 その点に関しては、オリジナル版の下層階級と上層階級の対比を守ろうとしたのだろうなと、誠意を感じました。 女性の肌の露出度が下がっているのは、残念といえば残念ですが、まぁコレは元々がサービス過剰というか「ちょっと黒澤監督、助平な観客に媚び過ぎじゃないか?」と思っていたりもしたので、肌を晒さない衣装にした気持ちも分かります。 他にも、色々と小ネタも盛り込まれているし、スタッフはオリジナル版を愛し、リスペクトした上で真面目に作ったのだろうなと思いました。 ただ、どうしてもある程度は比較しながら観てしまうので、気になる点も多かったですね。 まずは、演出が物凄く分かり易くて、大袈裟な点。 六郎太に斬られて死んだと思われた武蔵が、実は生きていたと分かる場面なんかも、勿体付けてさも驚きの展開みたいに描いているのですが、いくらなんでもそれは生きてるって分かるよと、ついつい苦笑してしまったのですよね。 こういう万人向けの演出は好ましいと思っているのですが、本作は流石に分かり易過ぎたのと、その頻度が高過ぎるように感じられて、食傷気味になってしまいました。 また、一本の映画として観た場合には意味不明に感じられる「オリジナル版のパロディ演出」も多くて、好きで盛り込んだのは分かるけど、何もそこまでしなくても……と思ってしまいましたね。 武蔵と新八が籤引きをするシーンなんて、オリジナルと違って目の前で姫様が無防備な寝姿を晒している訳でもないのに、道端で急に始めるものだから、唐突感が否めない。 極め付けは「裏切り御免」の使い方で、いやいや今までそんな喋り方してなかったじゃない、オリジナルにあった台詞を無理やり真似させてるの丸分かりだよ! と、冷めた気持ちになってしまいました。 でも、リメイクならではの長所も幾つかあって、関所をオリジナル版と同じ手法で通過出来てホッとした後に、突然呼び止められてドキッとさせられるサプライズなんかは、素直に驚かされて、嬉しかったですね。 阿部寛演じる六郎太も貫録があって良かったし、兵衛さんが元ネタと思しき悪役の鷹山なんかも、面白いキャラクターだったと思います。 何より興奮したのが、オリジナル版でほぼ唯一の不満点だった「クライマックスでの主役不在」が解消されている事。 ちょっとそこの「姫を助け出す」パートが長過ぎるよ! と思ったりもしたのですが、それでもやっぱり、喜びの方が大きかったです。 民を信じて金を預けた姫様が裏切られる事なく、笑顔で出迎えられた結末も、それに伴う主人公との別れなども、良かったと思います。 その他、友人から「ダースベイダーのそっくりさんが出るよ」と聞かされていたもので、覚悟して観賞していたら「これ、蒲生氏郷じゃん!」とツッコまされたという余談もあったりして、何だかんだで楽しい時間を過ごせた映画でした。[DVD(邦画)] 5点(2016-06-08 11:32:52)《改行有》 127. 隠し砦の三悪人 《ネタバレ》 黒澤明が凄い監督さんだという事は「七人の侍」や「用心棒」で充分に承知済みだったはずなのですが、こういうタイプの映画も撮れるんだなと、再び衝撃を受ける事になりましたね。 冒険活劇であり、全編に亘ってコメディ色が強く、作中で人が次々に死んでいるはずなのに、何処か呆気らかんとしている。 必要以上に緊迫感を与えたりしない為、観ている側としても、リラックスして楽しめる一品だったと思います。 やや冗長に感じる場面も、あるにはありますが、面白く観賞出来た時間の方が、ずっと長かったですね。 そんな本作独自の魅力として、特に目を惹くのは、ヒロインである雪姫の存在。 主人公であり、タイトルにもなっていると思われる六郎太、太平、又七に関しては、他の黒澤映画でも似たようなタイプの人物が見つかりやすいのに対して、彼女は非常に個性的だったと思います。 とにかく目力の凄い美人さんで、独特の甲高い声に関しても、最初は「うへぇ」と思っていたはずなのに、気が付けば「これはこれで……」と、それを個性として受け入れる心境になっていたのだから、不思議なもの。 彼女に命を助けられ、その恩に報いる為とばかりに尽くしてくれる名もなき娘さんの存在も、心を癒されるものがありました。 三船敏郎演じる六郎太に関しては、腕っぷしも強く、頭も良く、男気もあり、清濁併せ呑む度量もあってと、文句の付けどころのない人物なのですが、ちょっと主人公としては愛嬌に欠けるような印象も受けましたね。 その弱点を補うかのように、太平と又七とが愛嬌を振りまいてくれているのですが「結局、誰が主人公なんだ?」という疑念も頭に浮かんできて、観賞している間、集中力が削がれてしまったのが残念。 六郎太は作中に登場するのが遅すぎるし、太平と又七に関してはクライマックスに不在だったりするしで、どうも話の核が散漫に思えてしまいました。 特に後者の不在問題に関しては深刻で「えっ? 何で太平と又七は出て来ないの?」と、本気で戸惑う事になりましたね。 てっきり、敵方に密告しても褒美を貰えないと悟った二人が、それならばとばかりに姫様を救出し、ついでに金も取り戻す展開かと思っていただけに、大いに拍子抜け。 窮地の一行を助け出すオイシイ役は、途中から出てきた兵衛さんの担うところとなる訳ですが、六郎太に「百年の知己」と言われても、具体的にどんな過去があったかなどは語られないし、今一つ盛り上がれません。 結局、太平と又七は肝心な場面で六郎太達を見捨てて逃げ出したっきりな訳であり、いくら愛嬌があっても、主役として感情移入出来る範疇を逸脱しているように感じられました。 自分の好みとしては、もっと六郎太を中心に据えた作りの方が嬉しかったかも。 それでも、そんな臆病者の二人が殺されたり、罪人として囚われる終り方ではなく、目当ての金を僅かでも手に入れて、願いを叶えられたハッピーエンドだった事には、ホッとさせられましたね。 立派になった姫様に諭されて、すっかり仲良しになった二人。 だけど、ずっとそのままという訳ではなく、村まで帰る道中では、また喧嘩をしては、仲直りしたりもするんじゃないかな……と、微笑ましく思えました。[DVD(邦画)] 7点(2016-06-08 07:50:23)(良:1票) 《改行有》 128. 探検隊の栄光 《ネタバレ》 あらすじを知って「これは絶対に面白いだろう!」と意気込んで観賞したのですが……何とも判断に困る代物でした。 まず、決して嫌いな作品ではないです。 むしろ好きな映画と言えそう。 コンセプトも良かったと思うし、主演の藤原竜也も熱演してくれていました。 全編に亘って漂う「真面目に馬鹿をやっている」感は、正に望んでいた通りの作風。 それでも語る際に言葉を濁らせてしまうというか、胸を張って好きだと言えないようなもどかしさがありますね。 理由を分析してみたのですが、こういった作品の場合、映画の中における「現実」と、劇中カメラが映し出す「虚構」とに、もっとギャップが必要だったと思うのです。 例えば主人公がワニと格闘するシーンは、現実ではショボいのに、カメラ越しの映像では意外と本物っぽく見える……という視覚的なバランスにして欲しかったなぁ、と。 それはピラニアが食い散らかした人骨も然り、作り物のヤーガも然り、ですね。 本作の場合、現実と虚構に明確な差が窺えない為「人々を楽しませる為に壮大な嘘をついている」という主人公達の恰好良さが、今一つ伝わってこないように感じられました。 中盤に主人公が行う「俺達が作っている番組は無意味なんかじゃない」という演説についても、長年こういった番組に携わっている立場の者ではなく、今回が初参加の人間が言う事なので、今一つ重みを感じられなかったのも難点。 このシーンは普段いい加減な言動の監督さん辺りに言わせて、それに感銘を受けて主人公も本気になる流れでも良かった気がします。 そんな風に不満点も多い品なのですが、眩しいような魅力が備わっているのも確かですね。 序盤、ゴミの不法投棄に怒っているだけのオジサンを「ヤーガの恐ろしさを身振り手振りで伝えてみせる村人」という設定にして、勝手にアテレコしてみせる場面は、本作で一番の笑い所かと。 「やらせ」を完遂しようとするスタッフに対し、大自然が嘲笑うかのように、あるいはご褒美を与えてあげるかのように「本物のヤーガ」がチラリと姿を見せる展開なんかも、ニヤリとさせられました。 終盤に遭遇する反政府ゲリラ達と絆を育む事となり、別れの際には互いに友情が生まれていたというオチも、凄く良かったと思います。 ヤーガが実在したという衝撃よりも、こちらの「現地人と心を通わせ合った事だけは本当だった」という場面の方が、じんわり胸に沁みるものがありました。 主演の藤原竜也に関しては、元々好きな俳優さんだったのですが、こういった映画でも頑張っている姿を見ると、ますます応援したくなりますね。 本人は続編も希望しているとの事なので、楽しみに待ちたいものです。[DVD(邦画)] 6点(2016-06-07 20:29:25)(良:2票) 《改行有》 129. 変態家族 兄貴の嫁さん 《ネタバレ》 世の中にはパロディAVというジャンルが存在します。 そこでは「アベンジャーズ」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」などが元ネタとなっている訳ですが、これは小津安二郎監督の作品を元ネタにした同ジャンルの品である、という印象を受けました。 とにかく予想以上に「絡み」のシーンが多くて、笑えるシーンも極僅かであったのが意外。 当初は「東京物語」単独のパロディかと思っていたのに、他の作品からも色々と拝借している事にも、驚かされましたね。 自分としては、食べ物として「お茶漬け」が登場する場面で(あぁ、パロっているなぁ……)と思わされた後、時間差を置いて再び「お茶漬け」が登場して(またやるのかよ!)とツッコまされた場面が、一番面白かったです。 ただ、正直に告白すると、そこ以外のシーンは退屈だったというか、趣味の合わないAVを早送りせずに延々と見せ付けられたという印象だったりしました。 周防監督の作品は好きだけど、小津監督の作品は今一つピンと来ない……なんて感性の持ち主である自分ではなく、小津監督が好きな人が観賞した方が、より楽しめる一作なのだと思われます。[DVD(邦画)] 3点(2016-05-25 06:29:07)《改行有》 130. 十階のモスキート 《ネタバレ》 タイトルは「本来いるべきではないはずの場所に迷い込んでしまった存在」という意味でしょうか。 お気に入りの品である「刑務所の中」を監督した人のデビュー作と知った上で観賞したのですが、崔洋一監督の力量を再確認すると同時に、主演の内田裕也の存在感にも圧倒される事となりましたね。 どうやら脚本も兼任されているようで、この作品に掛ける意気込みが伝わってきました。 モデルとなった事件の犯人は、本作の公開後に更なる連続殺人を巻き起こしているそうですが、この映画の主人公からも「更なる悲劇」が起きるのを予感させる結末となっている辺り、空恐ろしいものがあります。 離婚、養育費、娘の非行、昇進試験、酒、賭博。 様々な要因が重なり、どんどん借金苦に陥っていく様は、観ていて気分が落ち込んじゃいましたね。 「せめて、ギャンブルは止めようよ」「お酒も控えようよ」と痛烈に思わされるのだから、もしかしたら非常に道徳的な映画なのかも知れません。 作中で描かれるパソコンの存在は「主人公にとっての唯一の健全な娯楽」「現実逃避」「最後の理性の砦」「他者を物扱いする歪んだ性格の象徴」などと、様々に解釈する事が出来て、面白かったです。 その一方で、不思議でならないのが、異様な濡れ場の多さ。 観ている最中は「これが原因で破滅が加速していくのだろう」と思っていたのですが、全然そんな事は無かったのですよね。 万引きした女性を半ば脅迫するように犯したり、同僚の婦警を襲ったりしているのに、それで訴えられるでもなく、破滅の直接の原因になったりする訳でもないので、宙ぶらりんな印象を受けてしまいました。 あるいは、元妻にも襲い掛かったのに、他の女性とは違って明確に拒否された事が、犯行に至る最後の引鉄となってしまったのでしょうか。 どうもハッキリとした答えを見出せないし、単なる観客へのサービスに過ぎないのかな、とも思えてきますね。 基本的には重苦しい作風の品なのですが、随所にユーモアも配されたバランスとなっているのは、嬉しい限り。 横山やすしを競艇場の場面で登場させたり、ビートたけしの予想屋を客と喧嘩させたりする辺りなんかは、緊張が緩んでホッとさせられるものがありました。 他にも、主人公の部屋がお酒の空き瓶で埋まっていた場面なんかも、ゾッとすると同時に、不思議とクスッとさせられるものがあったりして、狂気と笑いが紙一重である事を感じさせてくれますね。 カメラのレンズの端に、小さな虫が止まっているように見える場面が幾つか存在しているのですが、それが意図的な演出なのかどうかも気になりました。[DVD(邦画)] 6点(2016-05-23 16:49:53)(良:1票) 《改行有》 131. うつしみ 《ネタバレ》 間違えてメイキングビデオの方を再生してしまったかと、思わず確認してしまいましたね。 そのくらい型破りというか、メタフィクションな作りでした。 扱っているテーマがテーマなせいか「物凄く凝って作られたマニア向けAV」という印象もあったりする本作。 さながら「走る」という行為に性的昂奮を覚える人達の為に作られたかのようでしたね。 主演の二人を追いかける際に、ドアを開けるカメラマンの手が映り込む演出や、クライマックスにおける農薬散布のような「血しぶき」表現など、少々やりすぎではないかと思える部分も幾つか。 画面が「手ブレ」の状態になってしまう事が多いのも、それが苦手な自分としてはキツかったです。 けれど、それ以上に力強いメッセージ性には、大いに背中を押されるものがありました。 実に分かりやすくて恥ずかしい表現となってしまいますが「観た後に自分も走り出したくなる映画」だなぁ、と。 途中、二人が勢い余って家屋の窓を突き破ってしまう件などは「あれ? もしかしてコレって脚本通りじゃなくて、アクシデント?」と思わせるような迫力があり、好きな場面。 一方で「コーヒーカップが云々」「花瓶が云々」というメッセージに関しては、それ単独ならば詩的で良い言葉だと思うのですが、ちょっとオシャレ過ぎて、映画のメインであるはずの二人には似合っていないようにも感じてしまいましたね。 そのミスマッチ感こそが良い、と捉える事も出来そうですが、自分としてはもっと飾らずに突き抜けて欲しかったです。 とはいえ、考え付いた「良い要素」を、何でもかんでも詰め込んでしまうのが監督さんの魅力なのでしょうから、そこは譲れない部分なのかも知れません。 女性にとって走る事は現実、男性にとって走る事はロマン。 終盤にて、そんな両者の違いを描いておきながら、二人が別れるでもなく、ちゃんと結ばれる事で終わる形だったのは、とても好みでした。 この二人、当初は女性側が男性側に片想いしていて、必死にアプローチして追いかける展開だったのに、終盤にて関係性が逆転する辺りなんかも興味深い。 「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い」など、好きな品々が多い園子温監督作品。 観賞後は、また一つ、好きと呼べそうな映画が増えてくれて、嬉しかったです。[DVD(邦画)] 6点(2016-05-23 12:19:53)《改行有》 132. ア・ホーマンス 《ネタバレ》 今回の松田優作、ターミネーターみたいだなぁ……と思っていたら、本当に正体がロボットだったのには驚きました。 詳しい背景は作中で語られていなかったと思うのですが、一体なんだったのでしょうね、彼。 何処かから脱走してきたか、あるいは彼もまた未来から送り込まれてきた代物なのでしょうか。 そういった部分を秘密のままにする事によって、神秘的な魅力が生まれるパターンもありますが、本作に関しては「結局、何だったの?」という疑問の方が大きく、少し残念でしたね。 監督としての腕前に関しても、才気やら個性やらを感じさせる場面もあるのですが「間が長過ぎる……」と思える部分も多く、どうも褒めるのが難しい映画、という印象。 そんな中で煌めきを感じさせてくれるのが、これが俳優デビュー作である石橋凌と、悪役を演じたポール牧の二人ですね。 どちらも存在感たっぷりで「俳優」としての松田優作と、堂々と渡り合ってくれています。 もしかしたら「監督」最大の功績は、この二人の演技力を引き出してみせた事にあるのかも……なんて考えが頭をよぎってしまう映画でありました。[DVD(邦画)] 4点(2016-05-22 20:22:49)《改行有》 133. 卒業旅行 ニホンから来ました 《ネタバレ》 有り得ない設定なんだけど、それが現実における「舶来信仰の日本人」と重なり合って、シニカルな笑いへと昇華されていましたね。 英語が書かれた服、現地の品とは別物に変貌している料理。 異国の人々から見たら、日本人だって間抜けな姿になっているかも知れないよ、という「視点の転換」を提示してくれるのが面白かったです。 そういった寓意が込められている事を思うと、主題歌が「YOUNG MAN」というのも、実に心憎いチョイス。 金子修介監督って、コメディ映画を撮っても上手いんだなぁ……と思う一方で、どこか既視感を憶える作風だった為、スタッフをチェックしてみたら「彼女が水着にきがえたら」(1989年)「七人のおたく」(1992年)と同じ脚本家さんだったのですね。 大いに納得したし、上記二作品が好きな身としては、何だか嬉しいものがありました。 登場人物が、思った事をそのまま口にしてしまうなど、少々「分かり易過ぎる」点は気になりましたが、それも慣れてしまえば「愛嬌」と感じられてくるのだから、不思議なもの。 最後は絶対ヒロインと一緒に日本に帰るエンディングだろうなと思っていただけに、スターであり続ける事を選ぶ結末には、吃驚させられましたね。 主人公が子供時代からの夢を叶えた形でもあるし、孤児達に「頑張れよ、僕も頑張るから」と約束した言葉を、守ってみせたんだな……と思うと、不覚にも感動。 織田裕二が歌う「YOUNG MAN」が、作中で二度続けて中断される形となっており (どうせなら、最後まで聴いてみたかったなぁ) と思っていたところで、クライマックスにて見事に歌い切ってくれるという演出も、凄く良かったです。 そして極めつけは、ラストシーンにて表示される「つづく」のテロップ。 自分もスターになろうとしていた「一発次郎」の伏線もある事ですし「卒業旅行2 チトワンから来ました」に期待なのですが……はてさて、公開は何時になる事か。 異国旅行で体験した、夢のような出来事。 それを一時の幻で終わらせずに、夢の続きを歩む事を決意した主人公と、彼に呆れながらも付き添ってくれるヒロイン。 実に気持ちの良い映画でした。[ビデオ(邦画)] 8点(2016-05-22 17:36:48)《改行有》 134. 高校大パニック(1978) 《ネタバレ》 1974年のニューヨークにて、生徒が銃を携えて高校を襲撃する事件が発生し、それに着想を得たと思しき作品が幾つか作られましたが(リチャード・バックマン著「ハイスクール・パニック」など)日本でも作られていた事に驚きです。 ただ、どちらかといえば作中でも語られている通り、瀬戸内シージャック事件の影響が色濃いようにも感じられますね。 いずれにしても、当時の日本は今よりも身近に銃があったからこそ成立したお話なのだろうな、と思います。 印象深いのは、数学教師に向けて発砲した銃弾が、女子生徒に命中してしまった場面。 その瞬間、主人公である犯人の中にあったであろう「自殺した生徒の仇討ち」という大義名分が消え失せて、もう決して後戻り出来なくなってしまった事が伝わってきました。 他にも、事件によって授業を中断される事となった生徒達が、大喜びして騒いでみせる姿。 図書室に立て籠もる犯人に対し、説得に訪れた母親が泣きながら息子を気遣うの対し、父親は激昂して「早う出て来て、男らしゅう死刑になって、世間様にお詫びせんか!」と言い出すシーンなども、強く心に残っています。 抵抗を続けるも、とうとう逮捕されてしまった主人公。 途中、微かに心を通わせていたヒロインが警官隊に誤射されて、殺されてしまったという展開もあり、その事に対して怒りをぶちまけるのかと思いきや 「放せよ! 来年、受験があんだよ!」 と言い出すのだから、恐ろしくなりましたね。 完全に心が壊れてしまった主人公の叫びによって終わるという、文句無しのバッドエンドなのですが、その衝撃度の高さは折り紙付き。 観て良かった、と思える映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2016-05-22 14:47:07)《改行有》 135. 好色一代男 《ネタバレ》 こういったタイプの映画なのだから、性的倫理観は一時的にオフにしておこう……と覚悟を決めて観賞に挑んだのですが、予想を上回る衝撃を受けてしまいました。 といっても、性的にインモラルという意味での衝撃では無かったのですよね。 予備知識として仕入れておいた原作小説の「人妻との密通」「少年愛」などは、劇中では全く描かれていません。 その代わりのように、主人公の独特の価値観、奔放な生き様が濃密に描かれていたのですが、それがどうにも面食らってしまう代物だったのです。 他人の恋路を叶えてあげる為に、千両も払ってみせる姿は、そこだけ見れば確かに格好良い。 けれども、そのお金は主人公が働いて稼いだ訳ではなく、父親を騙して持ち出した代物だったりするのだから、大いに興醒め。 勘当された後に、何処か他所で一山当てて凱旋し、父親に借金を返してみせるストーリーなのかなと思ったら、それも全然違っていたのですよね。 父親が病気で死に掛けていると知るや「しめた!」と喜び、ちゃっかり実家に戻って遺産だけ受け取り、再び女遊びに耽るような主人公には、流石に肩入れする事は出来ません。 作中で「飯よりも女子が好き」と言いつつ、食欲に負けて愛する女を一人にしてしまい、不幸な結果を招いたりと、どうも一貫性が感じられない辺りも気になりました。 そういった訳で、自分としては、あまり好感が持てないタイプだった主人公の世之助。 それでも作中にて、彼と関わったお蔭で幸せになれた女性もいた事は、喜ぶべきなのでしょうね。 最後の「船出」で終わる場面も、現実逃避というより、ずっと前向きな 「もっと沢山の女子と出会って、彼女らを幸せにしてあげたい」 という主人公の願いが感じ取れる辺りは、好みの結末でした。[DVD(邦画)] 3点(2016-05-22 08:51:55)《改行有》 136. 千と千尋の神隠し 難しい映画です。 隠されたメッセージだの寓意だのを分析しようとすると、どうしても「監督が可愛い女の子を色んな目に遭わせてみたかっただけのロリコン映画」という結論しか出てこないんですよね。 かつては反体制側の視点から作品を描いていたはずなのに、この作品では権力者側に非常に同情的になっている点など、色々と着目すべき事は多いのですが、それ以上に色濃く感じられたのが「大人は醜い豚」「この世は理解出来ない化け物ばかり」「そんな中で唯一の癒しである幼女は、こんなにも健気で可愛らしい」という主張だったりしたので、やはり自分にとっては、上記のような結論に達してしまう訳です。 もしかしたら、美少女が画面に出てくるだけで嬉しくなるような自分自身がロリータ・コンプレックスだからこそ、そう感じてしまっただけかも知れませんが、ちょっとそれ以外の言葉で表現しようとすると嘘になってしまいます。 自分の好きな「ドラえもん」シリーズや「シベールの日曜日」や「あの子を探して」などがロリコン映画であるという程度には、この作品もそうなんじゃないかなぁと。 ただ、この作品に関しては「そんなに大人が嫌いで、純真無垢な幼女が好きなの?」という作り手に対する疑問符のようなものが浮かんで来てしまい、映画の世界に入り込めなかったというのが正直なところです。 そんな大いに偏った印象を除外して考えれば、凄く上質な映画であるのは間違いないかと。 単純にアニメーションとしてのクオリティーが高く、画面の中でキャラクターが動くのを眺めているだけでも楽しいですよね。 逆境の中で主人公を助け、安堵感を与えてくれるハクの存在も魅力的だったと思います。 特に、竜の飛翔シーンに関しては圧巻の一言で、暫し呆然として見惚れてしまいました。 やはり、こういったタイプの映画は難しい事を考えずに、頭を空っぽにして観るべきだよな、と反省させられましたね。 ラストシーンにて「何だか全てが夢だったみたい」と感じさせてくれる非現実感というか、心がフワフワするような不思議な気持ちを与えてくれるのも(これが童心に返してくれる映画という事なのかな)と思ったりしました。[DVD(邦画)] 4点(2016-05-02 22:45:33)(良:2票) 《改行有》 137. 東京島 《ネタバレ》 無人島が舞台で、しかも男達の中に女性が一人だけ、これは絶対に面白いはず! と期待して観た品なのですが…… 「面白くなかった」「期待外れだった」とまでは言わないけれど、物足りないものがありました。 元ネタであろうアナタハン事件に比べると「女を巡って男達が殺し合いする」という殺伐さもあまり感じられず、どこかノンビリした空気が全編に渡って漂っているんですよね。 それが心地良い、お気楽漂流ものとして楽しめる、という側面もあるのでしょうが、自分としては肩透かし。 主人公となる女性が「サバイバル」していると感じさせる場面が、冒頭で蛇を捕まえる部分くらいしかなかったのも残念でした。 ラスト、島を脱出するのを諦めた男達が「王子」を崇めて、平和に暮らしている姿なんかは、皮肉が利いていて良かったですね。 これはこれで一つの幸せの形なのだなぁ、と思わされたりもしました。 それに対し、脱出に成功した主人公の女性は、窪塚洋介演じるワタナベと結ばれた……のかな? だとしたら、何とも少女漫画的な顛末。 「口が悪くて何かと自分に突っかかってくるけど、本当は自分の事が好きだったイケメン」だなんて、如何にもといった感じですからね。 女性として感情移入して観たら、また違った感想になるかも。 ハッピーエンドという意味では文句の付けどころが無いし、観客が求めるものに応えようとした映画ではあった、と思います。[DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 12:26:56)《改行有》 138. 秘密(1999) 《ネタバレ》 「これは感動させようとしているの? それともブラックユーモアとして笑わせようとしているの?」 と戸惑ってしまう内容でした。 恐らく、感動させようとしている確率の方が高い気はするのですが、それにしては娘に憑依した妻の行動に納得がいかないのです。 ただ単純に「若返った事を喜んでいる」「夫と再び結ばれる事は無かったけど、若い男と再婚出来たので問題無い」という感情の方が、悲しみよりも大きかったのではないか、と思えてしまってならない。 男性側の目線だからそう感じるだけで、女性側の目線からすると、また違った感動的な側面が見えてくるかも知れません。 けれど、自分としては「あぁ、娘に続いて妻さえも失ってしまった夫が可哀想だなぁ」という思いと「元妻も可哀想かも知れないけど、まぁこの後に幸せになれそうだから、良かったね」という思いが入り交じり、何とも言えない気分に襲われました。 二人の切ない運命に「泣ける」映画としても、皮肉な運命を辿る元夫婦の姿に「笑うしかない」映画としても、どちらでも楽しめる一品、という解釈も可能だとは思います。 ただ、自分としては困惑させられる事が多くて、映画の世界に入り込めず、残念でした。[DVD(邦画)] 3点(2016-04-08 12:06:41)《改行有》 139. 模倣犯 《ネタバレ》 森田芳光監督の作品は、好きなものが多いです。 この映画も、監督のセンスを感じさせる場面は幾つかあるのですが、全体的に考えると「面白かった」とは言い難いですね。 原作小説に比べると、犯人であるピースを妙に大物扱いしているというか、感情移入させようと描いているような意図が窺えて、そこに違和感を覚えました。 勿論、それはそれで映画独自の魅力とも言えますし、犯人のプライドを刺激して自白を引き出す件など、原作で(いくらなんでも性格が子供っぽすぎる……)と感じられた反応が、比較的落ち着いたものに変わっている点は好み。 けれど、総じてマイナス面も大きいように感じられて、ラストの爆発シーンや、その後の「子供を託す」オチには流石に唖然。 全編に漂う独特の悪ノリ感、そして時折垣間見せる緊張感の緩急は決して嫌いではないのですが、ギリギリで「好き」と言える領域に踏み込んできてくれない、そんなもどかしさを感じた映画でした。[DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 11:28:15)《改行有》 140. 魍魎の匣 原作小説が大好きなので、それが映像化されたというだけでも嬉しかったですね。 内容的に二時間にまとめるのは難しいでしょうから、大幅な改変が行われたのも理解出来ます。 ただ、作品の核の一つとなる「加菜子を突き落としたのは誰なのか?」「何故、突き落としたのか?」という謎が解かれる件に、あまり説得力が無かったように思えました。 勿論、原作でも決定的な動機が無かった事は承知の上です。 それでも、映画を観ただけだと「えっ? 何で突き落としたの?」と戸惑ってしまいそう。 役者さんに関しては、久保竣公を演じた宮藤官九郎のハイテンションな立ち振る舞いに驚かされましたね。 原作よりも「サイケデリックな天才作家」という雰囲気が色濃い感じ。 堤真一、阿部寛に関しては、流石の安定感がありました。[DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 11:07:35)《改行有》
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