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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  耳をすませば(1995) もう何度となく観ているため、点数をつけるのが意外に難しい。思い出補正も含めて、10点でいいか(笑) 初めてこの映画を観てからずっと心に残っているのが、入念なロケハンに基づく風景描写。これが本当に素晴らしい。本作の風景は公開当時より少し昔の1980年代の風景を意識して描いたとのことだが、生活感に溢れた普通の街並みでありながら、丘や空を遠景として巧みに取り入れることで、美しい風景に仕上がっている。デジタルではないセル画の味わいも、風景の美しさを引き立てている。ジブリ背景ランキングなるものがあれば、私はダントツで本作を1位に挙げるだろう。他のジブリ作品にある海外的な風景やファンタジックな風景よりも、本作のリアリズムに基づく風景の方が強烈な魅力があるように思う。そんなリアルな風景を描きつつ、劇中の小説の話になった瞬間、わずかな時間だけ背景がファンタジックなものに変化する。それこそぱっと花が開くように。リアルな風景の連続の中に、一瞬だけ混じり込むファンタジーのインパクト。この背景の使い方も実に効果的だ。 ちなみに物語は単純で平坦? 中学生の若気の至りみたいな物語? まあそうかもしれないんだけど、夢に向かって頑張る主人公二人のひたむきさや爽やかさは、いつに観ても大変微笑ましく、同時に心が洗われる。 [地上波(邦画)] 10点(2019-01-15 11:04:34)《改行有》

2.  生きる 説教くさいとか、展開が遅いとか、喋りが聞き取りづらいとか、現代から観ると色々と難癖をつけたくなる。 しかし、それでもあのブランコのシーンの感動が、最後の夕焼けの美しさが、そうした難癖も吹き飛ばしてしまう。 主人公は安定した職があっても、家族がいても、世間的には立派な人であっても、生きるということの意味や意義を見出せていない。 むしろ日々を生きるのではなくやり過ごしてきただけで、まるで死人のようだと自嘲している。 そんな主人公が死の淵に立ったとき、初めて生きることの意味や意義を見出して奔走を始める。 冬の夜のブランコ。それを満足げに漕ぎ、歌を口ずさむ主人公。 本当に良いシーンだ。生きる意味を見出し、精一杯生き抜いたのだから。 ヤクザと対峙するシーンも涙を誘う。 主人公のように”生きる”ということが自分にもできるだろうか。 いつもこの映画は冬の夜のように深々と、しかし夕焼けのように暖かく問いかけてくる。[DVD(邦画)] 10点(2018-08-25 15:54:32)(良:1票) 《改行有》

3.  天国と地獄 《ネタバレ》 ほんとに面白い映画だな、と毎回見るたびにつくづく感心してしまう。 間違って誘拐された子供を助けるべきかの心理的葛藤、現金を詰めたかばんを持って特急こだまに乗れ、7cm開く洗面所の窓…。 冒頭から息詰まる展開の連続、後半で犯人が割れてからは警察の狂気さえ感ずるような執念の捜査、モノクロ画面に浮かぶ唯一のカラー。 名場面・名演出のオンパレードだ。誘拐罪の刑の軽さに対する黒澤の怒りが本作の大きなテーマだというが、それが映画全編を通じて伝わってくる。 皮肉なのは、名声名誉の象徴である高台の住人を憎悪して犯行に及んだ犯人だが、その被害者である大富豪権藤も、かつては貧しい靴屋であり、高圧的ではあっても仕事には熱心で、善良な男であったことだ。 要は犯人は、自分と似たような境遇にあった人間に対して罪を働いてしまい、もっといえば、未来の自分がなりうるだろう立場の人間に罪を働いたともいえる。 犯人は医師の資格もあり、それなりの教養もあったのだろうから、高台に対する屈折した憎悪など抱かずに、善良さを持ち、仕事には熱心に励んでいればよかったのに・・・。そう思わずにはいられなかった。 黒澤映画が偉大なのは、娯楽性が十二分にありながら、こうした人間性や善良さについて深く考えさせてくれるところだ。[DVD(邦画)] 10点(2018-08-18 15:19:45)《改行有》

4.  用心棒 三船の豪快な殺陣に圧倒された。 作中の舞台や敵役の設定が西部劇テイストなのは、本作の脚本がアメリカのハードボイルド小説「赤い収穫」をベースにしているからだろう。 それでも幕末の混沌とした時代設定を思えば、あまり荒唐無稽にも感じないのが不思議。 ただ剣の凄腕というだけでなく、知恵を使って敵を追い詰めていくという主人公の描き方が良い。 腕っ節だけでなく知恵もたつというのは、のちのジョン・マクレーンにも通ずるようなヒーロー像だ。 要所要所で挿入される豪快なアクション、ハードボイルドな物語(原作がハードボイルドだから当然だが)、黒澤の映像演出もあいまって、 世界にも通用する素晴らしい時代劇になっている。[映画館(邦画)] 10点(2018-08-18 14:52:58)《改行有》

5.  機動警察パトレイバー2 the Movie アニメ映画でこれほど衝撃を受けた作品はいまだかつてなかったかと思います。 まさかアニメが、日本の安全保障についてここまで深刻かつ真面目に題材として取り上げ、鋭く切り込んだメッセージを発するとは想像もしなかったです。 世間に溢れる戦争や自衛隊を扱う邦画以上に、本作は日本の戦後体制について問題提起し、かつ上質なサスペンスに仕上がっています(人が直接死ぬシーンも、大がかりな戦闘シーンもなくここまで場を盛り上げる展開はお見事) 寒々とした東京湾景に漂う、後藤と荒川の会話。 押井作品お馴染みの「ダレ場」が、本作は一番衝撃度が高く面白かったというまさかの展開(笑)。 本作を普遍的名作にしているのは、①純粋にサスペンス劇としてのクオリティが高い、②日本の戦後安全保障への問題提起(平和憲法・日米安保が続く限りは、本作の問題提起は尚も有効でしょう)、③往年のハードボイルド・フィルムノワール要素漂う人間ドラマ(振られるとわかっていながら女の為にあれこれ奔走する男の姿は哀愁があって入れ込んでしまう)、この3要素が大きな役割を果たしていると思います。 ちなみに私はもう1要素があると思っていて、それは④パトレイバー作品である事を利用したギャップ。 よく本作はパトレイバーである必要がない、ロボットアニメとしてみるとダメという批判がありますが、私は、本作はパトレイバー作品でなければ、ある意味名作には成りえなかったのではと思います。 パトレイバーが旧OVAの頃から醸成してきたあのどこか明るく緩い世界観からは想像もつかない緊迫した展開、実にハードボイルドな人間模様。 まさにパトレイバーからは想像も付かない、というこのギャップが、観客を本作にのめり込ませる、あるいは衝撃を与える大きな要素だったと思うのです。 実際私もパトレイバーをどこか明るく賑やかな近未来警察(ロボット)アニメとして捉えていた為、幻の爆撃→後藤・荒川の会話という連続コンボに大変な衝撃を受けました。 個人的には押井監督の最高傑作だと思います。[ブルーレイ(邦画)] 10点(2017-11-29 12:00:10)《改行有》

6.  日本のいちばん長い日(1967) 日本が終戦に至るまでの24時間を描いた、異色の戦争映画。昭和のスターたちを総動員して、当時の政治家や軍人たちの狂奔を淡々と描き切った傑作。喜劇を得意とする岡本監督がこの異様なテンションの作品を作っているのだから恐れ入る。 終戦の舞台裏では、少なくない数の軍人たちが自ら命を絶ち、往生際の悪い過激主義者は、この期に及んでもなお徹底抗戦、さらには抗戦のためのクーデターまで実行に移していた。当の軍人たちは至極真面目なつもりでいたのだろうが、戦争が遠い昔となった現在からすれば、彼らの行動と態度はまさに狂気の沙汰だ。黒澤年雄演ずる畑中には、当時の軍人たちの狂気が仮託されていて、そのあまりの熱量に圧倒されると同時に、その狂乱ぶりには苦笑いさえも込み上げてくる。森師団長の殺害、二重橋前での自決、どれも真面目と狂気が一周回ってギャグのように見えてきてしまって、大いに戸惑った。 全編通じて、8月15日の強烈な熱量と狂気が、淡々とした描写の中に宿っているのが、奇妙であり見事だ。映画を観終わったあと、なぜこの国は無謀な戦争に突っ込んでいったのか、どうして高等教育を受けたはずのエリート軍人が、ああも狂ってしまったのか。徹底抗戦を叫んだ人間たちはいったい何にしがみつこうとしていたのかを考えてしまった。このような時代の惨めさ、愚かさ、狂気を二度と起こさないために、なにが必要だったのか、どうあるべきだったのかを考えさせてくれる貴重な映画だ。[ブルーレイ(邦画)] 9点(2020-03-29 15:50:46)《改行有》

7.  横道世之介 高良健吾と吉高由里子のコンビが実に良い。青春ものの映画にしては上映時間が非常に長いのが特徴だが、この長さが苦にならない、むしろずっと続いてほしいと思わせるような、いい意味でのユルさや多幸感に溢れている。そしてその多幸感やユルさを象徴しているのが、主役二人の演技。ボケにボケを重ねて押し通すようなカップルなのだが、観ていて「なんかこいつら可愛いな、すごく楽しそうだな」という印象を持つから、これは二人の演技が凄いのか、もしくはこの二人の組み合わせが抜群の化学反応を起こしているのだろう。高良・吉高コンビはこれで2度目だと聞くが、今後も30代・40代になって歳を重ねてもこのコンビが見てみたいと思った。 既に他の方も仰っているが、主人公の死去が中盤から提示されるにもかかわらず、この映画は切なくはなっても、空気感は常に明るく爽やかだ。世之介の人物像、ふとたまに思い出しては、あいつは良い奴だった、面白い奴だったと笑顔で口にしたくなるような男。そんな主人公の人柄が映画全体の空気にもリンクしている。そしてこの映画自身、ふとたまに思い出しては、あれは良い映画だった、面白い映画だったと口にしたくなるような存在になりつつある。良い映画だ。[DVD(邦画)] 9点(2018-09-14 18:11:13)(良:1票) 《改行有》

8.  蜘蛛巣城 《ネタバレ》 黒澤の凄さだけでなくシェイクスピアの凄さも理解できた映画だった。 森が動く!という伏線と展開は原作と同じであり、そのトリックは意外性があって楽しめた。 原作執筆から何百年もたっているが、面白い作品は何年経とうが面白い。 黒澤の能を取り入れた演出も素晴らしい。登場人物たちの動きがなんとも妖しく不気味だ。 ホラー的な表現も黒澤は十分に出来るということがわかる。ダイナミックな演出のみに終わらぬ多彩な表現能力を持つところはさすが世界の巨匠。 たくさんの方が触れているが、あの弓矢のシーンは凄いとしか言葉が出てこない。 素人に毛が生えた程度の学生に矢を射させたというから、三船が本気で怖がるのもむべなるかな。 数ある黒澤映画の中でも特に有名なシーンであり、私も大好きな場面だ。[ブルーレイ(邦画)] 9点(2018-08-25 15:34:59)(良:1票) 《改行有》

9.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 《ネタバレ》 小学生4年生くらいのころ、夏休みTV放送で本作の序盤だけ観た記憶がある。 そのときの印象は、「難しくてわからん! あとなんか怖い!」だった。それで序盤だけ観て、鑑賞を止めてしまった。 それから10年後くらいにちゃんと鑑賞。で感想は「面白いけど、やっぱこの映画怖いわ!」ってことだった。 文化祭前のある一日がずっと繰り返され、異常に気付いた人はどんどん消えていく。そして時折挿入される廃墟のイメージ。 もちろんホラー映画ではないけれど、人をぞっとさせる不気味な演出や物語の展開に満ちていて、それをまさか国民的なラブコメディ原作でやってしまう衝撃。 原作のドタバタ明るい雰囲気やお約束事、お決まりを逆手に取って、異常な世界や異常な展開を際立たせ、さらにそこから夢や時間の曖昧さという哲学的なテーマまで言及するというのは、実に尖っていて、攻めに攻めた手法だなと感心もしてしまう。 余談だが映像もこの攻めた姿勢を反映してか、奇抜な映像表現も多い。大人になるとこの映像の攻めた部分も感心する。 本作を「怖い!」と判断したのは、本作から漂うこうした不気味さや異常感を子どもながらに感じ取っていたからだろう。 大人になっても夢邪鬼とサクラ先生の会話シーンなどは相変わらずぞっとする。 確かに原作クラッシャーという悪名も本作には付いて回るのだが、ここまでポップで不気味で、サスペンスフルで、だけど物語には奥行きがあって、意外性に満ちた映画というのは、名作と呼ぶべきではないかと私は思う。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2018-08-13 11:08:50)(良:1票) 《改行有》

10.   《ネタバレ》 黒澤のカラー映画ってぶっちゃけどうなんだろう?、あまり良い評判聞かないけどなぁと思い、長年手を付けてなかったが、この機に本作「乱」に挑んでみた。 鑑賞してみると、いやいや、前評判を十分吹き飛ばすくらいに、力のこもった大作だった。 カラーになったとはいえ、これぞ黒澤と言わんばかりの、壮大なセットを背景に群衆や天候を縦横無尽に活用した、ダイナミックで躍動感あふれる画づくりは健在。本作ではさらに、ヴィヴィッドな色彩も重要な要素になっている。それぞれが身にまとう衣装の色の違いで各陣営・各登場人物を明確にさせる、あるいはショッキングな演出の肝となるなど、カラー映画だからこその工夫も抜かりない。クライマックスで、楓の方を処断するシーンの演出には痺れた。まさに構図で語り、構図で魅せる。さすが巨匠黒澤。 その他の見せ場でいえば、中盤の城攻めのシーンがまさに出色。蜘蛛之巣城でやったホラー的演出をさらに進化させたような場面であり、次々に斃れていく兵士たちの凄惨さ、刺し違えて自刃する女たちの痛ましさなど、このシーンだけ切り取ったとしても、日本の戦国ならではの凄惨極まる戦の表現に成功しているといっていい。 ちなみに作品の欠点としては、映画というよりはむしろ舞台劇になっていることだろう。特に狂阿弥と丹後の台詞はもはや舞台劇のそれといっていい。役者の演技はともかくとして、映画としてはかなり不自然でくどく感じてしまった。全編を通して、映画というよりは、もはやビッグスクリーンで壮大な舞台劇をやり切った感が強い。人によって好き嫌いが出るのはこのためではなかろうか。私も若干違和感を拭えなかったので、満点評価とはしていない。 なにはともあれ、世間にあまたあるシェイクスピアのリア王の翻案としては、最も成功した作品と呼んでもいいだろう。[DVD(邦画)] 8点(2022-08-14 19:25:36)《改行有》

11.  恋は雨上がりのように 《ネタバレ》 小松奈菜の若くキラキラした輝きと美しさを全力で綴じ込んだ作品。原作は未読だが、作品が持つ文学性とキャスティングの妙で、人気漫画を実写化した作品の中では傑出した出来上がりになったのではないだろうか。 冒頭からこれでもかというくらいに小松奈菜という女優の美しさや輝きを際立たせようと工夫しているのが見て取れる。大泉洋を相手役に選んだあたりも、中年男と女子高生の交流という物語に変な厭らしさを出さないための工夫といえる。思春期の女子高生のまっすぐすぎる思いに困惑しながらも、真摯に誠実に接しようとする中年男性の演技は、多少ファンタジーが入った部分はあるにせよ、説得力があった。 漫画実写化、特に女子高生が主人公の映画となるとどうしても色眼鏡をかけて観てしまいがちだが、本作はそうした先入観をなぎ倒す物語のテーマ性の深さがある。全体を通して見れば物語は、一度大きな挫折を味わった主役二人がどのように関わり、どのようにそれぞれの道を進んでいくか、というもの。単に恋愛だけでない、人間ドラマ的要素もちゃんと盛り込めている。回想シーンの効果的な配置や、モノローグに頼らない脚本には好印象を覚えた。雨、陸上、図書館、レストランのシーンにおいてもリアリティバランスを何とか維持するよう工夫がされている。度々言及される芥川の羅生門の一節は、人生の雨宿りという題材に対しての暗喩であろう。これも本作の文学性を補強するのに良い役割を果たしている。これらを振り返ってみれば、巷間に溢れる女子高生が主役の恋愛映画にはない、プラスアルファの要素が盛り込まれているのがわかる。個人的にはこれが本作を突出した出来に押し上げた要因ではなかろうか。 ちなみに本作のマイナスポイントは主に2つ。タイトルロールあたりの実にマンガ的な描写。全体的にあそこだけ違和感があり、そこは写実的に撮ってよかったのではないだろうか。もう一つのマイナス点は、高校生役の俳優陣の演技力。清野菜名はちょっと高校生にしては老けすぎだが演技は及第点。京都弁を使いこなせていない山本舞香、終始平凡な演技の松本穂香は目も当てられなかった。主役を引き立たせるという意味では成功しているかもしれないが、さすがにレベルが低い。 本作の陰の功労者にも目を向けておこう。音楽担当の伊藤ゴローだ。映画音楽で彼の名前を見ることはなかなか少ないが、いつも通りのオーガニックでセンスの良い音楽を提供している。この手の邦画だと、やけに仰々しいかやけに無味乾燥としたBGMが多いのだが、伊藤ゴローを音楽担当に迎えることで、上品ながらも盛り上がりに欠かない音楽提供に成功している。知る人ぞ知るポップバンドであるスカートが本作に協力しているのも憎いところだ。この点、制作陣のセンスの良さが光っている。 全体としてみれば、漫画原作とは思えない”青春ドラマとしての素晴らしい出来を備えた映画”であった。おそらく小松奈菜が高校生役を演じるのはこれで最後だと思うが、その若さゆえの、ときに無鉄砲なくらいの輝きや美しさを綴じ込めることができた意義は大きい。[DVD(邦画)] 8点(2019-08-01 11:51:56)(良:2票) 《改行有》

12.  海街diary ”セッション”のついでに観た映画で、あまり期待はしていなかったが、綾瀬はるかと長澤まさみの初共演と言う事で興味があり、鑑賞した。 個人的にセッションが外れの映画であったため、逆に本作は楽しんで鑑賞する事が出来た。 低劣なコント? 自分はそうは思わない。そりゃ是枝監督らしさを盛り込みつつも、商業的な成功が得られるようキャスティング的工夫も盛り込まれた、色々と設計された世界観の映画だとは思うが、自分はこの映画から低劣さよりは、色々な方面に気を遣った誠実さや生真面目さを感じた映画であった。 惜しむべくは、静かでしみじみした作風の為、強烈な物語展開がないのが弱みだが、逆に現代的な小津作品を観たような気分に浸れた。 正味7.5点ぐらいだが、四捨五入で8点ということで。[映画館(邦画)] 8点(2019-04-20 16:55:38)《改行有》

13.  ファースト・マン 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。セッションの監督ということもあり、少し身構えて臨んだが、想像していた以上に手堅い映画だった。 インターステラーに影響を受けたと思われる、CGになるべく頼らないフィルムの映像は、手ブレが激しい場面も多いが、フィルム独特のざらつきも相俟って1960年代のアナログな雰囲気を上手く作れていたと思う。劇中に登場する飛行機や宇宙船の、現代からすると極めてチープで古めかしい計器が衝撃で激しく唸るシーンや暗く狭い操縦室に閉じこめられるシーンの恐怖感は素晴らしかった。IMAXだと手ブレが激しい場面も逆に臨場感があって、そこまで悪印象はなかった。ボーンシリーズ等で手ブレ映像に慣れていれば、本作のそれも特に問題ないとは思う。ダンケルクに続く体感型の映画であると個人的には思っていて、ロケット飛行シーンなどは大画面・大音響のIMAX環境で鑑賞するといいと思う。 物語は淡々としているが、それでいてツボを押さえた造りだった。アポロに乗り込む場面の緊張感と高揚感は素晴らしかったし、クライマックスの月面での涙や奥さんとの再会シーンも、多くを語らず、役者の目と表情で語らせる演出は非常に好みだ。言葉はなくとも娘や奥さんへの愛情が伝わってくる。 華やかな歴史と思われがちな宇宙開発競争や月面着陸だが、本作は非常にシビアな目線で描いている。莫大な予算を注ぎ込みながら、犠牲を出しながらも、国家が宇宙開発をを続けるのには、東西冷戦でのソ連側への対抗意識が背景にあった。60年代は東西冷戦が最も先鋭化した時代でもあり、宇宙開発でソ連の後塵を拝するばかりで、何としても宇宙開発競争でソ連よりも先に偉業を打ち立てようと、轟々たる非難もなぎ倒して突き進んでいくアメリカの狂気を本作から感じることができた。主人公ニールも幼い娘の死や同僚の死によって喪失感を抱えており、その喪失感を埋め合わせようと、危険な任務にのめり込んでいく。ニールの狂気とアメリカの狂気がリンクするように映画が作られていて、興味深かった。そして辿り着いた、寂しく侘しい月面で、ニールは亡くなった娘に会えたのだろうか。もしくは娘への愛を月に置いていくことができたのだろうか。解釈は観客に任されているが、こういうハードボイルドな演出が目立つ秀作だった。[映画館(字幕)] 8点(2019-02-14 13:26:11)《改行有》

14.  GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 《ネタバレ》 初鑑賞は、夏休み深夜のBS放送だった。 簡潔ながら練り込まれた物語と難解な台詞回しに頭の中がこんがらがりながらも必死で展開を追いかけ、 結局鑑賞後に胸に残ったのは、作品が貫徹する独特の緊迫感と冷ややかさだけだったのがいい思い出だ。 初見では物語の主題や展開を理解するには至らなかった。 だがそれはともかくとして、「何かえらいクールな映画を観たなあ」という思いにはなった。 その後何回か鑑賞する機会があり、それでようやく本作の主題等が理解できるようになった。 それでも未だに少佐の葛藤や悩み、それらを超越する為の人形遣いとの融合については、理解しがたいところもある。 おそらくこれからの人生でまた何度か鑑賞し、そのたびに色々とまた違った感想や理解を得るのだろう。 公開から二十数年、何回も鑑賞したくなる映画という点で、やはりこの映画は傑作なのだろう。[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-04-21 12:06:58)《改行有》

15.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 年末の映画館で鑑賞。 素晴らしい物語、素晴らしいテーマ性を持った映画だと感じた。 演出についてはところどころ思う点があり、8点評価とした。 戦争の影にどんどんと呑みこまれていく日常を描きながらも、物語全体を通してユーモアや笑いの要素は絶えず盛り込まれる。 原爆投下の日が迫るサスペンス(観客はそれを把握していて、劇中の人物はだれも気付かない、という構図が素晴らしい!)と、ほのぼのと笑いやユーモアの交じる描写を何の違和感もなく融合、両立させている脚本・物語は見事だ。 少し注文をつけたくなったのは、淡々とした描写が光る作品だからこそ、空襲~すずさんの片手切断のシーンはやや長ったらしくくどく感じ、原爆投下のシーンはあえて直接的に描かない方が良かったのではないかと感じた。 むしろそれらのシーンはばっさりカットして、腕を失くしたすずさんや、爆風でぼろぼろになった孤児を映すだけでも、衝撃度はあったのではないかと思った。 原作も興味を持って読んでみたが、映画版は原作に負けず劣らずの出来だと感じた。 予算や上映時間の制約の中で、原作の淡々とした世界観を巧みに再構築出来ている。 最後に。 こうした素晴らしい作品の主演を掴み取った”のん”の運や才能はやはり凄いものがあるなと感じた。 彼女と同世代でちやほやされる女優は沢山といるだろう。しかし誰からも記憶される、数年に一本あるかないかの名作に巡り合える女優はごく僅かだ。 事務所とのトラブルや、様々な逆境の中で、彼女は本作を手繰り寄せたわけだから、これはもう”何かを持っている”としか言いようがない。 演技も申し分なかった。のんの将来にも期待したくなる映画だった。[映画館(邦画)] 8点(2018-03-17 17:32:19)《改行有》

16.  機動警察パトレイバー 今観てみると、プロット的には結構あっさりとした終わり方で、個人的には2の方が重厚な余韻があって好みのため、本作は8点とした。 しかし本作も名作である事は間違いない。公開から30年近く経った現在でも、サイバー犯罪への先見性や犯人像の新鮮さは未だ失われていない。 サスペンス劇としての秀逸さに加え、隠れたテーマとして浮かび上がる東京への愛憎。 我々はどこから来て、どこへ向かうのか。 埋め立てを繰り返し、古き町並みを壊し、無機質な建築を無尽蔵に創り出していく東京。 夏の茹だるような風景。意味深な町並み。 ノスタルジーとも文明批判とも言い切れない、下手すると意味があるのかないのかさえよく判らぬ まさしく東京に対する愛憎の思いが本作に奥行きを与えている。 ≪追記≫ 先日、全国で某社製携帯電話が通信障害のために使えなくなる、という騒動があった。 私も携帯が使えず色々と不便だったのだが、世間的にも大きな騒ぎとなった。 で、その際に頭に浮かんだのが本作。 ”特定のOSが社会で独占的な地位を得て、それが何らかの理由で不調に陥った場合、どのような混乱が社会に生ずるか?” つまるところ本作の先見性はここにあり、今後も社会が人間の要請に応じて様々な”OS”を作り続ける限り、それが失われる事はないだろう。[ブルーレイ(邦画)] 8点(2017-12-24 13:31:31)《改行有》

17.  アネット 《ネタバレ》 レオス・カラックス初の英語作品、かつミュージカル映画。 ダークなおとぎ話×ロックミュージカルという異色の切り口に惹かれて鑑賞。 スパークスの楽曲が本作のストーリー・世界観の基になっているが、大胆なジャンル設定の試みは成功しており、 まさに唯一無二、独自性溢れるカラックス映画に仕上がっている。 物語で描かれるテーマも興味深い。 子どもを食い物にする父親、ドメスティックヴァイオレンス、常に女性が悲劇を辿るオペラ、暴力性と悪意が籠ったスタンダップコメディ。深読みをすることが可能な作品でもある。 惜しむべくは、映画の骨格は素晴らしいが、ストーリーテリングに伏線や意外性がないので、 映画としては単調になっている点だろうか。 それにしても、マリオン・コティヤールはいつ見ても美人。 歌もできるし演技も上手いし(ゆえに本作で起用されたとのこと)、中盤で退場させずに もう少し見せ場を用意すれば、賞レースにもっと食い込めたのではなかろうか。[映画館(字幕)] 7点(2022-05-18 08:25:14)《改行有》

18.  すばらしき世界 《ネタバレ》 ラストシーン、画面に広がる晴天と、そこに映し出された『すばらしき世界』というタイトル。 呆気ないほどに、しかしほぼ必然的に、三上は逝ってしまった。若い津乃田を除いて、残された人々は呆然としてこの状況を受け入れるしかない。これのどこが「すばらしき世界」なのだろう、と考えてしまう。これは皮肉なのだろうか。 しかし、冷静に映画を振り返ってみると、三上は幸運な人間だったとわかる。世間の風はいまだ冷たいが、それでも真心から彼に親身に接する人々がいた。三上にとってどこまで本意であったかはともかく、彼は職を得て、居場所を作ることもできた。世間は世知辛いが、人との暖かな繋がりや絆が途絶えるわけではない。その意味で、確かにこの世界はすばらしいのかもしれない。 一方で、三上について、見落としてはならない視点がある。彼は純粋であったかもしれないが、決して潔白であったわけではないということだ。劇中での明確な描写はないが、彼が犯した殺人について、同情の余地はあっても、とても正当防衛で済まされる状況ではなかったことが示唆されている。前後の場面から推察するに、三上は暴力衝動を抑え切れず、相手に対し過剰に反応した可能性が高い。そして劇中を通して、事情はどうあれ一人の人間の命を奪ったことに対して、真摯に反省している様子もない。 映画が三上に同情的に寄り添いながら、最後の最後で突き放す展開になったのも、自分の生き方や気質、過去の罪を真摯に反省しないといけないぞ、という意図が込められているのかもしれない。 三上に感情移入をさせつつ、彼を突き放すときは容赦なく突き放す脚本の展開、緩急の付け方が、緻密な映画であった。バッドエンドにもハッピーエンドのようにも見える、エンディングの余韻も素晴らしい。惜しい部分としては、ダレる場面がやや多い、一部の展開が非現実的、わりかし適当なロケハン。この三点である。ダレ場が多いのは、名のある俳優にわざわざ見せ場を用意するから(白竜、山田未歩、キムラ緑子、安田成美)。スーパーの店長と親しくなるくだりは、さすがに非現実的。あとけっこう気になったのが、ロケハン。舞台が足立区の設定なのに、台東墨田の風景がやたら映ったりするのはいかがなものか(スカイツリーを綺麗に映したいのはわかるけど)。あと足立は平坦な土地だから、そもそも坂は映り込まないぞ笑。 大枠としての物語が緻密な作風なのに、細部が適当だと、点数を下げざるを得ないという映画でもあった。[DVD(邦画)] 7点(2021-10-13 08:54:35)《改行有》

19.  県警対組織暴力 仁義なき戦いを警察側の視点で描いた作品、といったところか。 菅原・松方コンビ(主には松方)が、政官財の癒着構造に刃向かい、敗れ去っていく様が描かれている。 ただこの主役コンビも主人公然としているが悪人そのものであり、しがらみや情誼を捨て切れず、重大な局面では理性が働かず、分別を失くして暴走するしかないという、実にしょうもない悪人たちなのだ。 菅原演じる刑事も、正義や悪についての一筋縄ではいかぬ哲学を持っているのかと思いきや、銃が撃ちたかっただけという理由で警察に入ったとしか語られない。観客側としては彼が(ある程度の悪を許容しつつも)犯罪に立ち向かうといったカタルシスが欲しいのだが、この映画はやはり実話路線だからか、そういった方向には走らない。実にほろ苦い展開に走るのである。 政官財の癒着は、反逆者二人を無残に葬った。ただ、その反逆者たちも振り返ってみれば葬られて当然と言えるような、どうしようもない男たちだった。 この映画を10点とするには、もう少し菅原文太の刑事としての活躍が欲しかったかもしれない。[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-05-28 19:06:06)《改行有》

20.  君の名は。(2016) 劇場で見たいと思いつつ、結局見れてなかった映画。 なんだかんだで良い映画だった。 「秒速~」「言の葉~」に較べると、主人公たちは実に爽やかで、脚本も後味の良い展開に仕上がっている。 以前の作品では素直なハッピーエンドを殆ど採用してこなかった新海監督の成長が感じられた。 …ただ相変わらずだなと思ったのが、印象的な楽曲をPV的に流して、細やかな人物描写や心理描写を端折る手法。 人物描写に深みがないと批判されるのは、人物や心理を描く手間をそうした手法で端折るからではないか。 瀧と三葉の”入れ替わり”によるスラップスティックなやり取りが、前々前世によって一瞬で流されてしまうあの瞬間。 実はあのやり取りを少し時間をかけて描くだけで人物の描き方は深くなるのに、そうしない、或いはそうできなかったところに、 新海監督の作劇能力の限界(ないしは実力不足)が見えたような気がした。 後半部の展開がかなり駆け足気味で、ここも詰めが甘いなと感じたところ。 とりあえず作品を何とかハッピーエンドまで持って行けた事、過去作からの成長を感じられた事、主人公たちの爽やかさを評価して7点。 次回作も期待しています。[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-05-12 14:05:57)《改行有》

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