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1. 光にふれる
《ネタバレ》 背景をぼかし気味にした深度浅めのカメラは、主人公ホアン・ユィシアンの不自由な視力と同調させたのだと考えよう。
感知できるものと出来ないものが、カメラのフォーカスで仕分けされているように見える。
列車がトンネルを抜けていホウ・シャオシェン的ショットも光の主題を担いながら台湾映画の薫りを濃厚に伝えてくる。
耳を澄まし、事物に触れて大学の新生活になれていく彼の姿が丹念に追われるが、とりわけダンスと音楽を通して
外界と触れ合っていく描写が映画と相性よく馴染んでいる。
そして、激情を秘めつつ穏やかな表情を絶やさないホアン・ユィシアンの佇まいが素晴らしい。
ダンサーを志すサンドリーナ・ピンナが仏頂面と泣き顔から次第に笑顔の似合うヒロインへと変わっていくのも、彼の言葉と表情を通じてだ。
彼女が月光の差し込む夜の教室内でユィシアンの弾くピアノに合わせて踊るシーン、
彼の故郷の海辺で楽しげに戯れるシーンが美しい。
クライマックスは、それぞれが挑むコンクールとオーディションのクロスカッティングであり演奏とダンスが劇的にシンクロして盛り上げる。
寮の悪友たちもここでいいところを見せて、青春ものとしても爽やかに決めている。
映画のサントラが未だに絶版で手に入らないのが残念だ。[DVD(字幕)] 8点(2016-10-24 23:29:39)《改行有》
2. 白夫人の妖恋
製作舞台裏の事情は、廣澤榮(助監督)の「日本映画の時代」に詳しい。
次第に産業的な翳りを迎え予算を抑えにかかる上層部と現場の軋轢や、スタジオシステムが培った大道具・小道具スタッフの臨機応変な知恵と技術が注ぎ込まれた特撮シーンの苦心談など、映画以上に感動的で興味深い逸話が多々あり、面白い。
中国民話の世界を全編セットによって創りあげた美術の豪勢さ。
西湖の水面に咲く色とりどりの睡蓮や牡丹、華やかな中国伝統衣装などがイーストマン・カラーに映える。
トリック撮影を使った山口淑子と東野英治郎の妖術合戦なども楽しいが、最大の見所は金山寺水攻めシーンに展開される怒涛の水のスペクタクルだ。その水量と迫力が凄まじい。
さらには、衣装を風になびかせながら山口淑子と池部良が昇天するイメージが(舞台裏の苦労談とは裏腹に)壮麗で素晴らしい。
いずれのシーンにも、海外との合作に向けた豊田四郎監督及び、新技術の導入と共にカラー特撮時代へと向かう円谷特技監督以下のスタッフの威信が漲っている。
それから忘れてならないのは、小悪魔的な八千草薫の可愛らしさ。まさにはまり役。
[映画館(邦画)] 7点(2011-05-04 22:55:55)《改行有》
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