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1. 秘められた過去
《ネタバレ》 ウェルズが監督を始め、製作、脚本、衣装、美術、編集と多才ぶりを発揮。
ロケーションもスペイン、フランス、ドイツ、メキシコと幅広い。
港湾シーンの影の乱舞や、天井を取り込みながらウェルズの威容を強調する不安定な斜め仰角ショットに凄味がある。
とりわけ、船のローリングに合わせて背景セットと手前の人物の揺れをずらす効果は絶大で眩暈すら誘う。
中盤までは回想形式の叙述でありながらも、ジャン・ブールゴワンから引き出されたそのノワールスタイルの暗黒画面によって醸しだされる切迫感がただならない。
『市民ケーン』的な謎解きのドラマに、古城での仮装パーティの喧騒では怪奇映画ムードすら加わって映画的スリルは多彩だ。
クライマックスは天井のスピーカーを通した娘と父との、視線の交わらない対話。俯瞰と仰角の切返し編集、そしてノイズが悲劇性を強調する。[ビデオ(字幕)] 8点(2011-05-21 21:01:13)《改行有》
2. 瞳の奥の秘密
欠陥タイプライターとベッドで書き付けた紙片を結びつけていく件りは、ただただ非映画的「語呂合わせ」の為だけに要請された設定と行動に過ぎず、唐突で取ってつけたようなエピソードという印象しかない。
作者の意図が露わになりすぎている。本来、走り書きの行為に何らかの必然性(この場合なら、例えば「習慣性」)を付与することでそうした意図を巧妙に隠すのが演出者の手腕のはず。
また、時の流れの刻印を強調しつつ過度に用いられる対話シーンの単調な顔面アップは、ここぞというショットであるべき目のクロースアップの強度を薄めてはいないか。
といったいくつかの貶しどころはありながらも、ハリウッド映画的な娯楽性は豊かで面白い。
エレベーター内の静かな緊迫感。明度を落とした屋内照明の渋さや、窓外の木々のざわめきがかき立てる不穏感。妻を殺された夫の転居先を訪問する際の、家側からのカメラ移動といったホラー的感覚などはとても巧い。ドアの開閉を、サスペンスとロマンスのドラマ双方と絡ませた多様な用方も良し。
空撮から繋いでスタジアム内をアクロバティックに動き回る荒々しい手持ち撮影はルックの変貌が突出しすぎの感もあるが、やはり楽しい。
[映画館(字幕)] 7点(2010-10-16 16:58:37)《改行有》
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