|
プロフィール |
コメント数 |
262 |
性別 |
|
自己紹介 |
現在の技術で作られた映画を観る目線で過去の映画を見下すようなことは邪道と思っている。できるだけ製作当時の目線で鑑賞するよう心掛けている。 |
|
1. アバター(2009)
飛ぶ、跳ぶ、走る、躍動感あふれる映画である。
3Dが先にありきか、テーマを表現するための手段としての3Dかで評価は分かれるが、後者の心意気と解釈する。めくるめくような映像美で社会性を包んだ上質のエンターテイメントと感じた。
ベトナム戦争や「ソルジャー・ブルー」の問題意識を想起させる場面もあるが、よりマクロ的な視点で、人類史上繰り返される異文化との衝突をいかに克服するか、さらには自然と人間の共生が主題として提起される。本作はパンドラをめぐるナヴィ、アバター、地球人の関係を通じてこの課題を問いかける。相互理解による共存がなければ征服と屈従しかないのが現実。終盤の、理念と矛盾するような派手なドンパチは通俗的だが、ハリウッド映画ならではの娯楽性と受け止めた。
ラストで「エイリアンは去った」の言葉が象徴するように、ナヴィ(そしてパンドラ)からみればスカイピープルこそがエイリアン。似たような印象の映画もいくつかあれど、自然と人間の共生を問うた点は鉄腕アトム「赤い猫」と通底する。[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-31 21:18:09)《改行有》
2. アバウト・タイム 愛おしい時間について
《ネタバレ》 要はかけがえのない1日を大事にしようということなんだね。プロットはよくできており人生論として共感できる点があるものの、何度もやり直しができるというのは弱点でもある。もうひと工夫、制約があってもよかったかな。失敗してもやり直せる人生では深みが出るわけがない。手塚漫画を継承と触れ込みの小説「火の鳥」を読んで、過度のループ展開に飽き飽きしたことを思い出した。
親父のスピーチが最良だったということはラストへの布石。親子の愛情を淡々と綴り、何気ない毎日でも尊いものだと気づかせてくれる。
ひょっとして、ボリス・ジョンソンはこの映画を観てサミット会場を選んだ?……………知らんがな。[CS・衛星(字幕)] 4点(2021-06-27 20:21:24)《改行有》
3. アメイジング・グレイス
《ネタバレ》 イギリスにおける奴隷貿易の廃止という、利害関係が複雑で国益が絡む問題を解決するために立ち上がった政治家の悪戦苦闘を描く。多くの人の決断と仲間づくりと行動、そして駆け引きやある種の狡さをもってようやく目的が達成できるものだなとつくづく思う。名曲の誕生秘話も描いているが、一番の主題は奴隷貿易の廃止であり、これを縦軸に、主人公ウイルバーフォースと時の首相との友情を横軸に据えて物語が展開する。直接的な話法を用いず、奴隷が置かれたひどい境遇をあえて見せない。その隠喩として、馬に対する過酷な仕打ちが代弁している。
ウイルバーフォースは奴隷への拘束用具などを見せて過酷な状況を説明し、時には死臭をかがせることで廃止反対派議員を動揺させ、説得する。議会での討論は丁々発止で、イギリス流のウィットもあり見ごたえ十分である。そして何より首相との終生変わらぬ友情が胸を打つ。さりげないアイコンタクトなど絶妙だ。 最近の映画はやたら刺激的なシーンを見せたがるが、観客の想像力に訴える手法(劇中では、議員の想像力に訴えている)もよいと思う。[CS・衛星(字幕)] 10点(2020-03-10 20:11:05)(良:1票) 《改行有》
|