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1. チャーリー(1992)
伝記ものってのは、すでに巷間に流布しているイメージから、いかにナマなものを削り出してくるかってとこが勝負。といってただ裏返しただけの偶像破壊もつまらない。けっこう難しい。これだけ大きな人物を対象にすると、やはりビビってしまうのか、けっきょく当たりさわりのないものになってしまった。「愛されるチャーリー」「センチなチャーリー」はある一方、初期の作品に見られる「単なるからかいを越えた悪意を感じさせるチャーリー」「凶暴で殺伐としてさえ感じられるチャーリー」は割愛されてしまった。この両者の兼ね合いにチャップリンの魅力はあったのに。おもだった作品に触れていく中で『殺人狂時代』には言及しない。あれはチャップリンの女性遍歴(少女遍歴)のネガとして興味深い作品だろうになあ。はじめてセネットのとこを訪ねて、編集というものの面白さと怖さを知るエピソードはなかなかよかった。ヒットラーとの対比なんかもっと執着しても面白かったのでは。20世紀の二人の独裁者として。チャーリーの名場面集で幕にするってとこに、偶像に寄りかかってる情けなさが現われている。大部の「チャップリン自伝」を2時間半で読めたと思えばオトク。[映画館(字幕)] 6点(2011-09-02 10:04:19)
2. 血を吸うカメラ
《ネタバレ》 精神科医との場で何かがプツンと切れてから後が怖い。覚悟が決まった、っていうか。自分のドキュメントの完成に邁進していく。これから犯行に及ぶ店と時刻(時計)を映し、二階から見張っている刑事を映し、ついに自分に迫る警官を映し、記録していく。フィルムってのは詰まるところ、やっぱり記録装置なんだな。記録するということの受動性と、映像作家としての能動性、この葛藤が映画には常にあって、この主人公はその裂け目を不必要に意識し過ぎてしまったのかもしれない。冒頭、目のアップで始まるように、見てしまうことの病いがずっと底でうずいている。ヒロインが犯行を知ってしまう映写のシーン、好奇心・笑み・不思議・不安・戦慄・恐怖と変化していくワンカット![映画館(字幕)] 7点(2008-02-24 12:26:37)
3. チャタレイ夫人の恋人(1995)
ケン・ラッセルのチャタレイ夫人というので期待して見たら、ぜんぜんケバケバしくなくて地味。中世風の仮装してチャールストンを踊るあたりにちょっと「らしさ」が感じられたくらいで、まあ普通の文芸映画だった(なんでもテレビ向けに作ったのを編集したとか)。石炭坑のモチーフが、地下深くに埋められていた労働者階級やら無意識やらが陽の当たる場所に運び出されてくる時代になった、ってこと言ってるみたい。かくして20世紀のテーマは“自由”ということになる。イギリス映画って、嫁き遅れた長女や女中頭などをやらせると、いい女優が多いような気がする。[映画館(字幕)] 5点(2008-02-23 12:00:13)
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