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1. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
《ネタバレ》 見知らぬ駅のホームに降り、混雑する大人たちの隙間に紛れ、その間を縫って進む主人公の少年。
少年の身長に合わせたカメラと喧噪が、異世界に戸惑う彼の心細く不安な心情を表している。
カルカッタ駅から路上生活者が屯する街路へ、そして橋、河へ。
ロケーションを活かした街の猥雑な雰囲気は、主人公の暮らしていた村の素朴な風情ともよく対比され、
冒頭とラストの自然光にあふれた故郷のノスタルジックな情景を引き立てる。
故郷を再訪した主人公を、地元の男性が黙って案内する。通りの向うから現れる女性たち。
再会した実母と妹の奥ゆかしい表情が涙を誘う。そして抱き合う彼らを周囲の人々が笑顔で祝福するシーンもただただ美しい。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-12 20:49:47)《改行有》
2. ラッシュ/プライドと友情
ハワード・ホークスのように、プロフェッショナル達を描く。
初めてのレースシーンに流れる『GIMME SOME LOVIN’』の選曲と、
リアミラーを駆使したスピーディなカッティングは『デイズ・オブ・サンダー』の
故トニー・スコットへのオマージュかと思えば、そもそも音楽担当はハンス・ツィマー
なのだった。
激しく煽られる芝生、土埃、雨飛沫といった対象物によって表現されるスピード感。
雨降る最終レース、スタート前の二人が交わす視線の交錯が印象深い。
そういえば、南波克行氏のロン・ハワード論でもかつて「水に飛び込む」ショット
へのこだわりが指摘されていたが、このレース映画にも水への飛び込みが
抜かりなくワンシーン挿入されている。
ダニエル・ブリュールとアレクサンドラ・マリア・ララが結婚した夜のプールシーン
がそれである。
そして、そこに繋がる二人の対話シーンが美しい。
窓外を見つめるクールなダニエル・ブリュールの胸部に
ロン・ハワードがガラス窓を通して反射させるのは、
スピルバーグのような紅い炎ではなく、碧い水の揺らめきなのだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-11 17:17:01)《改行有》
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