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1. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 後半の長回しがすごい!とは聞いていたのだけど、前半にも長回しっぽいカットが数箇所。調べてみたら前半は長回しに見えるよう編集されたのだと言うことでしたが、いずれにしろ映像への拘りは一見の価値がある。映画館で見ておくべきでした。
物語はあくまでも主人公セオが知りえる情報だけで進行される。なぜ子供が産まれなくなったのか?ヒューマン・プロジェクトとは何なのか?なぜキーだけが?彼女をヒューマン・プロジェクトに送り届けるのは"正しい"ことなのか?見る人ほとんどが感じるであろう疑問への答えなんて全くなし。情報量が少なすぎ?でも現実ってそんなモノじゃなかろうか。誰が保証してくれるでないのを分かっていながら、信じる道を突き進むしかない。この新しい命は奇跡の始まりなのか、ただ一度の気まぐれなのか。それすら明らかでないのに、その希望にすがるしかない"普通の人"セオ。主人公である彼だけでなく、登場する誰もが不確かな希望のため危険に身を投じる。“死に至る病”とは絶望のことかと思っていましたが、人は希望のためにも死ねるのですね。[DVD(字幕)] 9点(2008-01-07 21:07:53)(良:1票) 《改行有》
2. ノー・マンズ・ランド(2001)
《ネタバレ》 登場人物はわずか数人。小規模でシンプルに描かれる、戦争の始まり方と終わり方。
演出のキレの悪さは否めませんが、実際ボスニア戦争に従軍していた監督の手による脚本は、デビュー作と思えない完成度の高さです。
2人の敵対する兵士は同じ大地で生まれ、同じように自分の大地を愛している。お互いそのことに気がついて友情らしきものが芽生えるのだけれども、今日の今日までいがみ合っていただけに、そう簡単に相手を信用することなど出来ない。相手のささいな行動に過剰反応しては発砲。やられた方もやりかえせ!とばかりに発砲。そして結局…。
まるで子どもの喧嘩のようなこのやり取りが、戦争の現実なんでしょうか?なんて空虚なんだろうと思うと同時に、自分も同じようなことをしているのに気がついてゾッとする。「あらゆる暴力に対して異議を唱える」という監督の言葉が突き刺さりました。
また、戦争報道の受け止め方についても考えさせられる。
彼らが戦地で取材するから私たちは戦争の存在を知るのだけれども、彼らのカメラに写らなかった人々にこそ、本当の悲劇が降りかかっているんじゃないだろうか。
国連からも報道からも見捨てられた地雷男は、荒廃した地に取り残され困惑する民間人のカリカチュア。彼らを傍観することが罪なら、知らない事だって罪のはず。これだけ情報化された社会で、それでも一番大切なことは想像力を働かさないと知ることができないのかも。
[DVD(字幕)] 8点(2008-10-05 22:00:23)(良:1票) 《改行有》
3. アルフィー(2004)
《ネタバレ》 「それほど愛し合っていたわけじゃない。でも、いつも一緒だったんだ。」
いまやSirとなったマイケル・ケイン主演で、60年代に公開された『アルフィー』のリメイク作。女性たちの設定はさすがに変化したものの、主人公アルフィーのキャラクターはそのまんま。40年の時を経ても、相変わらず彼は浅はかです。今回アルフィーを演じるのはジュード・ロウ。彼がそんなにいい男かどうかは置いておくとして、『クローサー』のダンといい、こういうガキっぽい役は見事にはまります。
次から次へ、ある女性のある部分だけを求めてしまう彼。安らぎだとかゴージャスさだとか、女性の"アクセサリー"を愛し、欠点を見つけると簡単に捨ててしまう。気持ちは分からなくもないけど、そんなことしていては「赤い糸で結ばれた」女なんて見つからないだろうに。しかも、彼は運命の人が自分を変えてくれると信じている。
自分を変えられるのは自分だけ。いい歳してそんな当たり前のことを知らないなんて、あなた。それはモテてたんじゃなくって弄ばれていたんじゃないの?(ニッキーとの関係は共依存だし、リズにとっては単に若いツバメの一人でしかなかったし。)
アルフィーは観客にだけ本心を明かす。
これが結構ひどいこと言っているんだけど、妙に共感できるから余計にたちが悪い。ラストシーン、誰からも見捨てられて、彼は初めて人生について考える。ついでだから一度決めたら、そう簡単に相手を捨ててはいけないことにも気が付いてくれればいいけど。お互いの苦しみを理解し、支えあったマーロンとロネットみたいに。[DVD(字幕)] 4点(2008-10-05 21:51:01)《改行有》
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