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1. コロッサル・ユース
スラムの住宅街。階上の窓から家具が押し出され、地面に落下するファーストショットから強度と重量感に満ち、重力を強く意識させる。
前作と比べてより低位置に置かれたカメラは、終始人物を地面に留まらせるかのごとく画面下半分の空間に捉え、背景の壁面を主体として浮かび上がらせる。
特徴的な深い陰影の中、経年を印すスラム地区の建物や壁面の混濁した色彩が醸しだす存在感は非常に濃密。テーブル上に置かれたグリーンの透明ボトル1本も豊かな色彩と光沢を画面に放つ。
一方で、移住先となる新しい集合住宅の鋭角的で無味無臭な白い壁は異質なコントラストを生む。
格別凝った照明設計を行ってはいない風でありながら、いずれのショットも豊かな明暗の領域をもって視覚を刺激する。
ラスト近くの屋外シーン。木々に反射する波光の揺れとカメラの緩やかな動きが美しい。
[映画館(字幕)] 9点(2010-11-10 21:08:30)《改行有》
2. ゴダール・ソシアリスム
地中海を巡るオリヴェイラ『永遠の語らい』(2003)のすべるような波と静けさに対して、白と紺碧のうねるような波と風雨の轟音が後々まで耳目に残る。
オリヴェイラがギリシャ・エジプトを巡ってインドへ向かおうとしたのに対し、ゴダールが寄港するのはパレスチナ・オデッサ・バルセロナと、内戦の地への拘りを鮮明にする。
特にオデッサのシーンに対する力の入り具合は、『映画史』や『アワーミュージック』など、度々引用されてきた『戦艦ポチョムキン』への思い入れの強さをはっきり窺わせる。オリジナルの虐殺シーンの引用と、現在の緑に囲まれたオデッサ階段を右斜め下に移動していくカットが交互にモンタージュされるなど、引用が創出する新たなイメージは感慨深い。
第一章の客船内の享楽的な原色と爆音の洪水は、第三章のモノクロ・カラーが混交する引用映像と戦乱の爆音と呼応している。
第2章のリャマとロバ、ランプシェードも印象的だ。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-30 20:08:28)《改行有》
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