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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
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変更日付順12

1.  明りを灯す人 ほのぼのした映画の線かと思っていた。たしかにおおむねそうなのだが、政治の混乱期のドラマなのだった。アカーエフ独裁政権が崩壊したあとのキルギス。当時一応日本でも報じられていた記憶はあるが、「独裁者」の風貌がモロに日本人だなあといった感想しか持たなかった。イラクは独裁者が消えたあと、混乱に突入した。こちらは都市部ではワイワイやってるようだが本作の舞台となった村ではのどか。電気のメーターを操作した罪で捕らえられていた主人公が、政権崩壊で釈放されたくらい。と思ってると、底のほうでは動いていた。やり手の男が村を牛耳りだし、親戚のおとなしい男(妻は赤旗なびかせたトラックに乗って出奔してしまう)を次の村長に押したて、中国の土地開発団を呼んだりしている。そういった動きの気配に合わないものを感じていく主人公の困惑、といった話で「ほのぼの」では終わらない。そしてこういう「転換か否か」という話は、変革期の国では(日本の幕末維新期もそうだったが)どこでも起こってきた。主人公は子どもがみな娘で息子がいないのを気に病んでいる昔風の男、でも電気技術者である彼を尊敬しているらしい男の子がいつもそばをチョロチョロしている。電信柱に乗っているときマッチを投げ上げてくれと頼むと、中に小石を入れて風に飛ばないように工夫してくれる賢い子。後にこの子が(だと思うんだけど、顔をよく識別できない)木に上って降りられなくなり主人公が助けにいく。山の向こうを見たかったと言う少年。この地方の希望がじんわい感じられるいいシーンだった。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-29 09:04:55)

2.  ある子供 いつものぶっきらぼうな・人物にしか興味を示さないカメラワークは同じで、主人公が盗んだ箱を河に投げりゃ、カメラは箱を追いたくなるだろうに、投げた当人から離れない。箱を追わない。やたらカメラを振り回されるよりは嬉しい。救いようのない奴に救いはあるのか、という話で、ブニュエルの『忘れられた人々』に比べると詰めが甘いようにも思えたが、重いテーマではある。子供を売ったら妻にダメージがいくか、なんて考えっこない人物。弟分とオナラしたとかじゃれ合ってるのが似合いの人物。そいつが冷たい水に漬かって、弱って、逃げないでとか言われて、変化したのか。ワルに毎週金せびられるのに疲れ切ってもいた。分かりやすい理由は与えてくれない。ただぶっきらぼうなカメラが見たものだけを提示される。淡々と警察署へ面会に行くあたり、いい。[DVD(字幕)] 7点(2013-10-06 09:16:03)

3.  愛を止めないで 遠くの恋人に会うためにスクールバスジャックした気のいい青年のコメディ(と見ていいんだろ?)。本人はダーティハリーみたいな緊迫を期待してたのかもしれないが、そうはいかない。いたってノドカ。まずなかなか「世間」が顔を現わしてくれない。窓の外には牧歌的な風景が続くばかり、人質たちも自分を憎んでくれない。ピクニック気分。どれだけ進んだのか目印になるような建築物がなく(こういう話だとだいたい途中に一度は橋を渡って別の生活圏に進んでいくってイメージがあるものだが)、それがないから同じところをグルグル回ってる感じ。で「遠くの恋人より近くの人質」ってな親近感の移行が起こってくる。恋人が「世間」になり、人質が「隣人」になってしまう。困ったものだ。バスに置き去りにされ広いところで子ども二人の保護者のようにポツンと立ってるあたり秀逸。子どもがピストルで遊ぶあたりもおかしい。女教師に「ちゃんと保管しといてよ」と叱られて、ピストルを返される。車体に書かれたSOSが子どものいたずらと思われちゃうってのもあったな。犯人自身が子どものようなもので。[映画館(字幕)] 7点(2012-12-16 10:15:08)

4.  アタラント号 《ネタバレ》 花嫁が船上を歩くシーンが美しい。見送りの人々の姿とか。棒みたいの使って飛び乗るの。皮膚に心地よい風が当たっているような感覚があります。芸人の誘いのシーンのまがまがしさ。いろいろ渡り歩くその乱れが、花嫁の心の乱れと重なってくる。すごいローアングルで船繋ぐとことか。レコードのギャグは、若者が合わせてアコーディオンを弾いていたという落ちが付く。結論としては、もひとつピンと来なかったんだけど、随所のみずみずしさは素晴らしい。みずみずしさを味わえればこの映画はいいのかもしれない。そう納得させてしまうのも監督の腕か。[映画館(字幕)] 7点(2012-12-07 10:10:40)

5.  アッシャー家の末裔 空間の広がりの薄ら寒さと言ったらない。友人が犬を呼ぶが逃げていくあたりの閑散とした感じ。カーテンのそよぎ、スローモーションで本棚から崩れ落ちてくる本。レースの死に装束が風で揺れだすあたり。時を告げる鐘が鳴るとホコリがさらさらと落ちていって。アッシャー氏がギターを爪弾くと外の荒涼とした風景と共感していく。ちょっと目まぐるしすぎるかな、ってとこもあるけど、映像の音楽性を極めている。ギターの弦がぶつんと切れるなんて、日本の怪談でもよく三味線であったけど、世界共通の怪奇趣向なのね。黒猫やら振り子やらも出てくる。次第に嵐になっていくとこのカッティング。音が重要な役割りをする原作を、サイレントで映像に翻訳したという意味で、無声映画のひとつの「結論」を提示したような作品になった。姫の登場の盛り上げ。世界がブレだしてくるの。開かれたドア、狂ったようにひらめき続けるカーテン、振り子の脇からのアップ。映像によって、凍りついた音楽に耳を傾ける、いや目を凝らすという映画芸術の達成。[映画館(字幕)] 9点(2012-07-28 09:28:41)

6.  アンダルシアの犬 ピアノを引きずり女に近づこうとしている男、これとまるきり同じ状況ではなくとも、似たようなことをしている男はいるな、という感じは持てる。あるいはいつか自分がこれと似たようなことをしそうだ、という予感。ピアノとか馬とか修道士とかに、一つ一つの象徴を当てはめてはいけないのだろう。ピアノに漠とした「重さ」を感じるのは象徴とは違う。でも男というものは、ピアノを引きずり女に近づこうとするような存在だなあ、とはしみじみ納得できる。シュールリアリズムとは、そういうもんなんだろう。エロティックな幻想にしろ、蟻にしろ剃刀にしろ、全編触覚的で生々しい。例の剃刀のシーンでは、女性観客の「やっ!」という叫び声が館内に響き渡った。そして全編実に明晰。シュールリアリズムとは、夢を明晰に記録したい夢なのか。[映画館(字幕)] 7点(2012-07-18 10:03:31)

7.  赤い手のグッピー 《ネタバレ》 登場人物の関係を呑み込むまでが面倒なんだけど、なんとなく金田一ものの本家と分家みたいなものか、と勝手に納得して見た。そこに田舎とパリの対立も持ち込まれる。変に視線が絡みあって、互いに何かを秘密のうちに見てしまいあっちゃう世界。その雰囲気が楽しい。エンペラーと言われている106歳のおじいちゃんが、ここぞと言うところで笑わせてくれる。横溝からオドロオドロしさを抜き取ってある。焦点となる見せ場に欠けるのが物足りないか。あの深い井戸がラストに来るかと思っていたが、逆に上に、木に上りました。[映画館(字幕)] 6点(2012-06-29 10:02:42)

8.  穴(1960) 音が凄い。削る音、ラストの警官たちとの揉み合いの音。本来静けさが支配している場所だけに効く。そして歯ブラシの鏡などの小道具の使い方。たしかに脱獄ものの名作だ。ただブレッソンの『抵抗』の感動とは違うんだな。映像では脱獄そのものの面白さを、どちらも中心にしているのに、「外」の深さが違うんだろうか。映画の感動には映像だけに任せられないものも含まれてくるのだろう。逃げ出す目的という非映像的な・説明的な部分も、映画の感動に関わってくるのだ。そういう「粗筋を読めば映像見ないでも分かるようなこと」は出来るだけ映画の感動から除外しようと、つい思ってしまうのだけど、そういうものでもないんだな。純な部分・不純な部分と多くの面を持つ複合体としての映画の感動…、そんなことを考えさせられた。たとえば歌のよしあしに、メロディだけじゃなく歌詞も関わってくるように。映画は密室の生み出す緊張が好きで、一方に襲撃してくる外部から立て籠もる密室と、本作のように何とか逃げ出そうとする閉じ込められた密室、を描き続けてきた。舞台という制約がないからこそ映画では、そういう状況が好まれるのか、これも興味ある問題。[映画館(字幕)] 7点(2012-06-07 09:51:42)

9.  甘い生活 もしかすると有名な話なのかもしれないけど、中盤でマルチェロがうるさいと言ってラジオを止めさせた「天使のような少女」が聞いていた曲は、ラストのストリップの音楽と同じ“パトリシア”だったのね。その曲に導かれて怪魚の海岸に「天使のような少女」が戻ってきたとも取れるわけか。この二つのエピソードは対照されているよう。少女もやがて喧騒の中でタダレていくぞ、という幻滅の予感なのか、あの曲にいざなわれてもまだ少女はなんとか怪魚の腐臭からは隔たっているぞ、という確認なのか。観るごとに発見のある映画だ。それはともかく、本作は以後続くフェリーニ・ワールドとでも呼ぶしかない偉大な山脈への習作って気がする。前作『カビリアの夜』までで、物語を語っていく才能は十分に証明された。しかし監督はそれに飽き足らなかった。ここから物語を壊していく映画群・真にフェリーニの世界が始まる。冒頭、キリスト像を引っ提げたヘリコプターの影が路上を滑りビルの壁面を這い上がっていき、物語ではなく映像で何事かを見せていく姿勢をはっきり示している。以後も、物語を語るまいという意志と、まだそれに代わるものが整っていない困惑とが、渾沌としたまま展開されていく。だからちょっとおとなしい。古邸探検のエピソードなんか、以後のフェリーニだったら人々のメイクがどぎつくなっていただろう(カラーだったらもっと青く)。スターに群がるパパラッチや聖母を見たという混乱あたりに、かろうじてフェリーニ的祝祭感が味わえるが、ラストのドンチャン騒ぎなどあんまりドンチャンしていない。早朝の噴水にあったような喧騒の後の静けさが、すでに疲れとともに忍び寄ってるみたい。だいたい海が本物の海だ。フェリーニ・ワールドへ向かう化学変化が起こり始めた作品って感じで、奇っ怪に変貌するかも知れぬ気配をみなぎらせつつ、かろうじて「普通」にとどまっている緊張、それが本作独自の面白さなんだろう。現代の馬鹿騒ぎの背後から忍び寄る古代ローマの影の静けさ、ってのは彼の重要なモチーフであり、ロータの音楽も何か古代ローマをほうふつとさせた(レスピーギ『ローマの松』の“カタコンブ”に出てくる五拍子の弦楽器の刻みに似たモチーフが聞こえたり)。『フェリーニのローマ』は、歴史を越えたローマ巡りという同じテーマに、カラーで再挑戦したとも言えそうだ。[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-22 09:39:37)

10.  アトランティス(1991) しばしば使われる上下逆さまの構図が気に入った。水面を下にすることによって海は完全に閉じた世界になる。波打ち際を逆さまに見る光景など、引っ繰り返しただけでこんなに面白くなるのかと驚いた。下降する気泡。底で痙攣する水面。静かな湖沼のようなシーンも美しかった。けっして風の吹かない別天地になる。この逆さまの空を、イカもエイも飛行いていく。天地創造の段取りになっているのが、あちらのお国柄で、別にいいんだけど、楽しくお散歩していたウミヘビが大魚を目にして逃げていくあたり、少し擬人化しすぎな気もした。マンタがアリアを歌うのは楽しめたが。loveとhateの対比はつまらない。人間が退場したぶん、『沈黙の世界』より詩的要素は高まった。広さを感じられなかったのは、あんがいそこで暮らす生き物たちにとって海中ってのはこんなふうで、目の前の世界しか存在しないんだろう。ラストで水面の上(下?)の輝きに初めて憧れていく。それまでずっと水面を出ることを禁じられていたカメラが、ラストの空撮で広さを存分に味わう。閉じていた世界が開かれる。[映画館(字幕)] 7点(2012-02-19 10:27:22)

11.  愛の風景 《ネタバレ》 「合わない」男女は、いかにして愛し合えるのか。慈悲と無慈悲、寛容と不寛容といったモチーフがいろいろ変奏されていく。アンナとの出会い、「まず欠点から言おう」なんてあたりにベルイマンの空気が香る。母の祈りもすごいよ。「あの女を愛せない私をお許しください。どうかあの二人を引き離してください」って。父の死、結婚、から第二部と思っていいのかな、ちょっとトーンが違ってくる。慈悲なり寛容なりのテーマは一貫してるんだけど気分に段差があり、一本の作品としてはやや完結性に欠けた。少年ペトルスのエピソードがいい。慈悲のつもりが裏返されて無慈悲に転じていく痛ましさ。良くも悪くもベルイマンから出られてない映画だ。「人と人とはしょせん“合わない”のであり、だからこそ愛は素晴らしいのだ」ってな結論ということにしておきましょう。ラストは、二人別々のベンチに座ったままやり直そうと言ってる。[映画館(字幕)] 7点(2012-01-09 10:10:51)

12.  赤い航路 私がそういうことに詳しいんじゃなくて河野多恵子の小説から得た知識で言うんですが、SMってのはぶったりぶたれたりの肉体的嗜虐被虐だけじゃなくて、どこか演じる要素が入ってくるんだそうですな。騙し合いつつ、その底で共演している悦びを得る。ここまで裏切り合えるんだ、という信頼が一本強く張りつめていく。屈折と言えば屈折だけど、愛の本質を突いている気もする。ついに旦那が不能になって完成する性愛、ってのも屈折の極致。この女優さん、うまいんだか下手なんだか、美人なんだかブスなんだか分からなくなるんだけど、なんか「そういう世界っぽさ」は感じられた。愛の倦怠を怖れるの、拡大再生産していかないと不安になる、そしてもう愛だか憎しみだか分からないところまで、社会や友人たちへの憧れを残しつつ二人だけで閉じていく。こういう話の舞台となるともうパリだ。さらにタイ料理・アジア行きの船・インド人、と非キリスト教的装置で飾り付けると、キリスト教徒は安心して乱れることが出来る。でもこの監督、こういうドロリとしたのはあんまり得意でないのではないか。空気がも一つ淀まない。[映画館(字幕)] 6点(2011-12-04 09:43:25)

13.  IP5/愛を探す旅人たち ちょっと離れたとこからだと好意的な感想をいくらでも書けそうなんだけど、もひとつ心の中心点に刺さってくれない。手応えが茫漠と広がってて、つまり物足りない。小人の人形なんか、もう一回出てくるのかと思ったが、おとぎ話への導入の役割りだけだったのね。老人の妖精に出会うおとぎ話。少年、青年、老人と社会の中心にいない者たちの、つまり社会と切り結ばない旅。解放としての森でなく、閉じていく森になってしまった。立ち聞きで心が伝わるってのも、テレビドラマ的。ミケランジェロといたずら描き画家との違いは、天井に描いたか壁に描いたかだ。実際イヴ・モンタンが死んでしまうとなると、年寄りの冷や水なんて茶化せなくなってしまった。[映画館(字幕)] 6点(2011-12-03 10:12:28)

14.  アメリカ 横顔の映画。体全部が真横を向いている(おもに左)。顔の半分が見えていないことによる膨らみと言うか、かえって内面への興味をそそられる。また視線の方向は分かるが、相手との距離感が分からない(見えてる目玉が一個なので)。そして原則として相手は同一画面に収まらない。だもんで人物間の距離感覚がひどく曖昧になってしまう。あのように真横だと永遠に平行線が引き伸ばされていく感じで、「相手」が漠然と霧散していくような取りとめのなさが満ちてくる。この原作はそもそも「本人がまったく望まないのに人間関係のごたごたを招き寄せてしまう喜劇」という一面がある。映画ではその他人たちが曖昧になっていくところに、この監督なりの解釈があるのだろう。エレベーターボーイのエピソードが一番面白かったか、だんだん抜き差しならなくなっていく感じ。警官もタクシーの運ちゃんもポスターもすべてドイツ語のアメリカ。ラストは延々と湖の脇を走る抜けていく車窓シーン、汽笛とともにクレジットタイトルが入ってくる。[映画館(字幕)] 7点(2011-05-14 09:43:38)(良:1票)

15.  アリゾナ・ドリーム 何となく『ガープの世界』を思い出した。ああいう「半ファンタジー」系の作品。亀が犬の世界と魚の世界をつなぐ。ニューヨークの現実からアリゾナの田舎に戻ると幻想味が増してくるの。幻想としての故郷。自動車の墓場にドアを持って立つ人なんか、寺山修司的だし。笑いはややヒステリカルで、なにかというとアコーディオンを持ち出してきて、ラシドーシーラー、ラシドミシドラー、とやる娘の胆汁気質がおかしい(全体の音楽はゴラン・ブレゴヴィッチ、冒頭の11拍子からいい)。けっきょく青年の成長もの、ってジャンルになるのか。どこか南米寄りのファンタジーの気配があり(椅子がフワフワと浮き出したり)、東欧と南米って、どこかでつながってるのかな、と思った。全体のとりとめのなさを、許せるかどうか、観たときの気分で評価が変わる映画だろう。[映画館(字幕)] 6点(2010-11-02 10:45:20)

16.  青いパパイヤの香り 前半が素晴らしい。漂い続けるカメラは、家の霊というか地の霊の視点というか。したたるパパイヤの汁、したたるロウ。なんらの恨みがましさも叱責の声もない家。熟し終わった家庭の匂いが、画面に立ち込めている。静かに静かにしゃべる。悪い時代の前の静けさ、いやこのころだってインドシナはちっとも平穏じゃなかったはずで、でもそのなかで家の静けさを維持し続ける緊張のようなものが、空気を濃密にしている。フランスでセット組んで撮ったって言うんだけど、細部のアップもあり大変だったろう。まあ20世紀末のベトナムで撮っても、同じ苦労があったかもしれないが。前半に比べると後半は、少女の初恋が成就されるということで黙劇的な緊張はあるんだけど、話が狭くなった感じ。けっきょく、女は弱しされど女は強し、っていうような話に落ち着く。みな影のように生きている独特の感じ。[映画館(字幕)] 7点(2010-10-06 09:54:08)

17.  アンナと過ごした4日間 《ネタバレ》 男が忍んでいるときのアンナの顔が初めてはっきり見えたのは、ヘリコプターのシーン。鏡越しにこちらで隠れている男と目が合うんじゃないか、とハラハラさせつつ、指輪をうっとりと眺め男の心を歓喜で満たしている場面。それまでは、ただいればいいという役どころで、スタッフの一人を使って演出しても安上がりに済んじゃうんじゃないか、などと思っていたが、このシーンから彼女は「対象」として生命を吹き込まれ、終盤やはり演技の力を見せる。裁判の場のアンナが素晴らしい。視線のそらしと凝視だけなんだけど。ああ東欧の女優さんの顔だ、と思う。なにか耐えに耐えて硬くなったなかに、人間味を潜めている顔。風景も久しぶりに、旧体制下の東欧を思い出させる陰鬱な静まりを見せてくれて、とても美しい。裁判の場で、寡黙だった男が「愛」という言葉を口にする。その場違いな唐突さ、驚き、その上で「この言葉以外にないな」と深く得心させられる。これレンタルビデオ店では「ラブストーリー」に分類されていたけれど、間違いなくラブストーリーなのだ。同じ姿勢でレイプされたもの同士の共感からスタートしたのかも知れないが(皿洗いから記憶がよみがえる趣向)、「愛とはこういうものだった」と、すごく極端な設定で普遍の本質を提示されたような感動があった。[DVD(字幕)] 8点(2010-08-20 09:57:42)(良:1票)

18.  アブラハム渓谷 ナレーションに語らせる、つまりこれ弁士付き映画として徹底された世界。ま、ポルトガルに弁士付き無声映画はなかっただろうが。そこで登場人物すべてが何者かによって見透かされている感じになる。真正面から捉えるが、実体のない影のような人々。音楽も徹底して流す。一楽章まるまるとか。徹底すると言えば、みながエマに惹かれていくってのも徹底していて、下男や執事さえも。なんか『テオレマ』をちょっと思った。ヒロインの持っている軽蔑、男社会へ対してなのか、もっと広く現実すべてに対してなのか。ただそれを深い謎として展開するには、彼女若すぎた。表情も一本調子で、長い作品を持たせるには弱かったと思う。[映画館(字幕)] 6点(2010-07-25 09:46:47)

19.  愛・アマチュア 《ネタバレ》 ゴタゴタを全部切り捨てて一からやり直せたら、っていう再生への夢は、記憶喪失願望になっていく。酷薄だった男もイノセントになれる。イザべルのほうも「修道院ではどうも違う」と15年間思い続けポルノを書いてるってのも、なにか一種の記憶喪失的断絶を経た再生を待っているようなもの。この二人がやや受け身の転身願望なら、ソフィアは自分で男を突き落としてるんだから積極的。金を騙し取ろうとするのも、転身への準備ということか。それらの邪魔をするのが、悪の組織・あるいは警察ってところが物足りない。それは本来「世間」そのものであるべきで、それを相手とするのが大変なので、悪として処理しやすいものを引き出してきた、って感じ。つまり、はっきりした悪を相手とすることで、三人の連帯がたやすくなっちゃう。そこでドラマが弱まる。ラストは『ラストタンゴ・イン・パリ』の裏返しのような感じで、あちらは究極無名同士の関係を見事に語ったのに対して、こちらは認知する。「名前はトーマスよ」なんてセリフでもよかった。[映画館(字幕)] 6点(2010-07-12 12:03:26)

20.  愛の地獄(1994) 《ネタバレ》 いわゆるオセロ症候群てヤツか。それでいて実際に妻が不貞をはたらいている余地を残しておき、曖昧に断ち切る。いかにもフランスらしい、キレよりもコクの世界。結局中心にあるのは「深まる疑い」という一本のベクトルだけなんだけど、それこそサスペンスだ、ってんでしょうね。尾行をする場面で、映画は生き生きする、個人的な視点だからか。嫉妬というのは、すべての材料を悪いほうへ悪いほうへととめどなく勘繰っていく装置で、ひとたび作動すると、そのとめどのなさがスリラーになっていくんだ。ラストで冒頭の風景が繰り返されるが、もう自転車はやってこない。水上スキーのシーンって、おそらくボートのおしりで撮影するんだろうけど、撮影シーンを想像するとおかしい。[映画館(字幕)] 7点(2010-01-26 11:57:59)

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