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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 愛の昼下がり 《ネタバレ》 6つの教訓シリーズの中では、この作品が一番好きかも。 ロメールの映画では「日本人には理解不能なフランス人の恋愛観」がよく出てきますが、今回は珍しく、女性への対応に共感できる男が主人公で、さらにロメールにしては「普通のハッピーエンド(でもメチャ感動)」でした。教訓シリーズ、「最後くらいは“めでたしめでたし”でもいいじゃん」っていうロメールのつぶやきが聞こえてきそうなラストでした。 プロローグで、妻に不満はないけど、いまひとつ心が満たされない様子を表現した、「相手の意思を無力化するペンダント」で妄想を繰り返すところは爆笑。ここだけ見ると、このオトコも、教訓シリーズによく出てくるろくでなし野郎かと思いましたが、最後まで見ると一番まともな男性でした。 本筋に入ると、昔の知り合いの女性・クロエが登場し、渋々相手をしているうちにだんだんと彼女のことが気になり、クロエも大胆に彼を誘惑し始めます。とうとう、裸のままベッドで横たわるクロエを前に、さあこれから・・・というところで、鏡に写ったジャミラ状態の自分を見て思いとどまり、そのまま妻の元へ・・・。 冒頭の、入浴後の妻とのキスシーンで妻が「服が濡れるわよ」、ラスト前の、シャワー後のクロエとのキスシーンでクロエが「キスは? 服が濡れるけど」。同じシチュエーションでも相手が違うと結果も変わる的な意味の教訓なのか、彼は服を買う時にこだわりがあるようだったのでそれと絡めているのか、それとも他に違う意味があるのか、どれが正解なのかわかりませんが、結果的に映画的な面白さが増しているのは事実。もう一度じっくりと見れば、意味がわかる・・・かな? 今回も、ストーリーはシンプルだし、いつも以上に何も起こらないのに、6つの話の中で一番心に残った作品でした。特に、クロエのシャワーから妻号泣のラストまでの数分間は、ほんとに映画らしい、いいシーンだったと思います。 何も起こらない平凡な話・・・で思い出したのが、「ガラスの仮面」に出てくる一人芝居「通り雨」。この映画ももしかしたら関係者から「監督、こんな平凡でつまらない話、ほんとに映画にするんですか?」と止められたかもしれません。でもロメール監督ならきっと北島マヤのように「見た人がつまらないと感じたら、それは話が平凡だからではなく、私に映画監督としての力が無いということだね」みたいなこと、言いそう(笑) 。そういえばこの話、落としどころが「通り雨」に似ているような・・・気のせい?[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-08-13 21:47:02)《改行有》 2. 悪魔のような女(1955) 《ネタバレ》 有名な映画なのでタイトルは知っていましたが内容は全然知らず、でもそのおかげでこの映画の醍醐味を充分に味わうことができました。真相が明らかになった時は、一流マジシャンのパフォーマンスを見た時のような「ダマされる快感」に酔い痴れました。 この映画では、結末のインパクトを高めるために、見る側を騙そうとする「罠」がいくつも仕掛けられています。 まずは、鑑賞者の意識を「2人の女性の完全犯罪は成功するか否か」という視点に向かわせようとします。 汽車でタバコを吸う校長を迷惑がる2人の女性客、風呂に水を入れる音がうるさいと怒り時刻をメモする夫婦、酔っ払いが車に乗り込もうとした時に店員が確認した汚れた荷台、死体をプールに投げ込む直前に点いた部屋の電気等、「これが後でポイントになるんだよね」と思わせるシーンが次々と・・・。でもこれだけ続くとさすがに「トラップか?」と思っちゃいますね。 次は「プールに投げ込んだはずの死体が消えた」ところから、怪奇ホラー系の匂いを漂わせます。 クリーニング屋から届く校長のスーツ、校長に怒られたという少年、集合写真に写る校長らしき影・・・。安っぽい謎解きドラマだと、こんな怪奇現象は「犯行を紛らわせるためのトリック」で片づけられるのですが、本作では、このホラー的な空気が最後に活きてきます。 そしていよいよラスト。バスタブの校長よりも、自分は死んだ妻の表情の方が怖かったです。ショック死する妻、計画が成功し喜ぶ校長と愛人。でもそれは探偵が見抜いて手を打っていた・・・と、意外な真実を次から次へと畳み掛けてきます。 これでこの事件も解決・・・と思ったら、最後の最後、少年がパチンコを「校長夫人にもらった」という謎のシーン。 一瞬、実は夫人は死んでおらず、妻が探偵と結託し、校長と同じ手を使って2人を陥れ、「さらにもうひとつの真実があったのだ!」ということを表しているのか・・・とも思いましたが、校長が妻の脈が止まったのを確認しているので、これは違いますね。 そうなると、少年が見たのはやっぱり死んだはずの校長夫人だったのか・・・? あえて真実を示唆せず、最後にもう一度観客をゾッとさせる怪奇ホラーの余韻を残すことで、作品全体の印象がグッと深まりました。 最初にも書きましたが、この映画、最後の真相を知らずに観ることができてホントにラッキーでした![CS・衛星(字幕)] 8点(2022-05-24 21:05:08)(良:1票) 《改行有》 3. アデル、ブルーは熱い色 《ネタバレ》 やっぱりダメですねー、別れた恋人と未練たらたらのままで会うのは・・・。男女間でも同性愛者でも、あのような結末になってしまうのは必至。 新しい恋人とのセックスに満足できていないというわずかな心の隙間に、アデルのひたむきな気持ちと過去の快楽が突き刺さり、一瞬心が揺らぐエマですが、「今は別の人がいるの。分かるよね」と、まるで自分自身をも諌めるように、そして「でも死ぬまで思いは抱き続ける」とアデルを思い遣るやさしさ。 ここを機に、アデルも一歩前に進める気配がわずかでもあれば救われるのでしょうが、ラストの、気持ちの整理がつかないまま展覧会に来てしまい、最後はあの切ない後ろ姿・・・。 でも映画としては素晴らしかったですね。同性愛を強調したり理解を求めるような作りではなく、恋愛の本質がまっすぐに描かれていて、安っぽいテレビドラマとは比較にならない、骨太の映画表現を楽しむことができたと思います。[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-30 19:50:23)《改行有》 4. 暗殺の森 《ネタバレ》 原題のIl conformistaとは、「順応者・同調する者」というような意味らしいです。つまりこの映画の主人公も、子供時代の特殊な体験から「自分もみんなと同じでありたい」という心理によって、ファシストとなり、結婚もしますが、決して心から望んだわけではなく、所詮は代償行為。「普通・みんなと同じ」ということと「流される」ことがイコールであると思い込んじゃった人の悲劇です。 行動の動機が「逃れたい」という心理で、思想に裏打ちされたファシストではないため、体制が崩れれば自分の支柱もなくなり、心から魅かれる女性に出会っても最後は見殺し。一度壊れた冷たい心の温度を「青」という色で表現したのかなと思います。その対極として、この映画に登場する「赤」は、殺された女性の顔など、人間らしさの象徴のように感じました。ですが、自分にとっては、むしろ「白」が印象として強く残っています。精神病院の白、森に降り積もった雪の白など、この映画の白は、とても怖かったです。 女性同士のダンスのシーンも、主人公の対極のひとつとして描かれたようにも思えます。女性同士でタンゴ、最初、周りの人たちから好奇の視線を向けられますが、そんなことはお構いなし。そういう態度が人々を惹きつけ、最後は主人公の男性を包み込んでしまいます。タブーを犯した者は異質とする主人公と、自由であることの美しさで人々を魅了する女性二人との違い。これって、ファシスト政権下のイタリアと、自由の象徴・パリを表していたのかも。 自分には、ファシズムや当時のイタリアの時代背景に対する知識がなかったため、理解することはできても実感することはできず、映画として消化し切れない部分も残ってしまい、ベルトルッチ監督の傑作と評されている作品だけに、ちょっと残念でした。[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-27 20:41:16)《改行有》 5. アメリ 《ネタバレ》 フランス語の響き、フランスらしい音楽、おしゃれな街並みという土台の上に、アメリの世界観を乗せ、フランス映画独特のセンス、美しい映像技術で見事に料理した、「オールフランス」の相乗効果で、完成度の高い作品に仕上がった印象です。 最初、アメリのキャラクターはちょっと苦手な感じでしたが、品の良いユーモアが心地よく、最後まで楽しめました。写真の男の正体がわかるシーンなどは、座布団一枚差し上げたいくらいです(笑) 人とのコミュニケーションが不器用な人間って、少年時代の宝箱や遅配の手紙のような話を「妄想」して楽しむ傾向が、他の人よりも強いんですよねー。そういうタイプの人の心理描写が秀逸で、そこが、ただの雰囲気映画・不思議ちゃん映画とは決定的に違います。 人の感情を弄ぶような「みんなを幸せにしてあげますミッション」を遂行するアメリに対して「おまえ、天使にでもなったつもりかよ!」と、普段なら怒りのツッコミを入れたくなるところですが、まぁこういうイタイ子ちゃんのやることだから・・・と、不思議と気になりませんでした。そりゃ、現実にこんなことしてるヤツが自分のまわりにいたら、グーで鼻殴りますけどね。でも隣のおっさんと八百屋にしたようなことは、自分もやりそうです(笑) 以前は「フランス映画、良さがさっぱりわからん!」状態だった自分も、本作をはじめ、良質のフランス作品に触れる機会が多く、フランス映画アレルギーが少しずつ緩和されてきた気がします。[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-08-26 22:09:00)《改行有》 6. 愛の神、エロス ウォン・カーウァイ監督の「若き仕立屋の恋」、これはほんとに素晴らしい作品ですね!これ以上の感動が味わえる恋愛映画、しばらく出会えないんじゃないかと思えるほどの傑作でした。おかげで、あとの2本の印象、自分の中ではちょっと弱くなった感じでした。それにしても、もうちょっとマシな邦題はなかったのでしょうか?タイトルだけ見た時は「きっとB級エロ映画だろう」としか思えませんでした(笑)[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-23 20:21:42)(良:1票) 7. アデル/ファラオと復活の秘薬 話が進むにつれて、どんどんバカバカしくなり、でも最後まで観ちゃいました。一歩間違えると、見るに堪えないB級ドタバタ映画になりそうでしたが、紙一重で「娯楽作品」の域にとどまっていましたね。これって、大して映画好きでもないカップルがデートで、他に行くところもないから「とりあえずこれでも観る?」っていうノリで観るような映画かな?と思いました。[CS・衛星(字幕)] 4点(2013-03-08 18:55:30)
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