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1. コックと泥棒、その妻と愛人
《ネタバレ》 序盤、ただ不快なだけなヒゲ男の傍若無人な振る舞いが理解できなかったが、途中でふと気づく。どんなに高級で上流ぶったレストランでも食事という行為は排泄やセックスと同レベルの本能にもとづく行為である。そこに気づいてから、この映画は上品とか下品とかいう言葉で人間の上下を分けようとしている人間に対する手の込んだ皮肉だということが理解でき、どっぷりのめり込んだ。しかもその後、腐敗した肉のコンテナに全裸の男女が押し込められるシーンで、冷凍のブタも腐ったブタも、人間も、同じ肉に変わりは無いという根性の悪い強烈な皮肉がまたも表現される。参った。インパクトのあるラストへのくだりはやや力技っぽかったが。ジャン・ポール・ゴルチエの絢爛な衣装が皮肉をより一層利かせるのに一役も二役もかっている。傑作。10点(2004-05-29 00:26:23)(良:1票)
2. 恋人たち(1958)
《ネタバレ》 完璧な恋愛映画。最初は少々ジャンヌに腹が立ったりもしてましたが、途中から怒るのをやめてしまった。フランスらしく、自分の欲求と感情に素直な女性らしさを皮肉もいやみもなくさっぱりと美しく描き出している。もちろんジャンヌ・モローの見とれるほどの美しさに負うところが大きいのも確か。冒頭からジャンヌが抱えている苛立ちは、決して夫に対するものではない。夫はすでに過去になっている。彼女はただ一つかけている何かを、形も分からないまま探してさまよっているのだろうと感じた。そして逢引の夜にその何かが見つかる。それは相手の男ではなく、男の行動。その行動によって彼女は自分をさらけ出す恥を取り去り、自分の心に初めて素直になれた。そして全てが満たされて完成されたのは100%純粋な自己愛。これはもう、恋愛とは女性のためだけにあるものだ、とはっきり言い切ってしまったようなものだ。参った。ラスト近くで、ジャンヌが鏡を見るシーンで、これはもうケチのつけようが無い映画だと確信した。ああいうシーンを入れられるかどうかが、名作と佳作の境目だと思う。10点(2004-03-10 01:30:22)(良:1票)
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