|
プロフィール |
コメント数 |
615 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが…… 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。 |
|
1. スリーデイズ
《ネタバレ》 久し振りに再見し、細かい部分まで「すべて彼女のために」(2008年)をそのまま再現してるんだと感心させられた一方で、物語の根幹に関わる部分を大きく改変してるって事にも気が付き、驚かされましたね。
自分は最初に本作を鑑賞し、その何年後かに「すべて彼女のために」を観賞し、此度感想を書く為に二本連続で観てみたという形なのですが……
最初に観た時より衝撃が大きかったし、それに伴って、本作に対する評価も更に高まったように思えます。
何せ本作ってば、主人公が妻への疑いを捨て切れていないんです。
一応台詞では「妻を信じる」というスタンスだし、疑いを持ってるだなんて、それこそ自分の邪推に過ぎないのかも知れませんが、一途に妻を信じていた「すべて彼女のために」の主人公に比べると、見るからに様子が違うんですよね。
でも、それによって妻への愛が弱々しく感じられるなんて事は無く「たとえ妻が殺人を犯したとしても、それでも妻を愛する」という意思の強さが感じられる形になっているんだから、本当に見事。
「すべて彼女のために」は「妻を一途に信じ抜く男」を描いたのに対し、本作では「妻に疑惑を抱きつつも、それでも愛する男」を描いたのかな、と思えました。
だからこそ、同じストーリーの映画なのに「違った味わい」「独自の魅力」が生み出されている訳で、この辺りは本当に上手い。
「ドン・キホーテ」から影響を受けて「理性を捨てた方が人は強くなれる」と言い出す場面とか「狂人となっても、絶望に生きるよりはマシ」と覚悟を決める場面とか、この主人公は愛ゆえに狂気の暴走を果たす事になると、序盤の段階で示してるのも良いですね。
「すべて彼女のために」では、中盤以降の主人公の暴走っぷりに驚かされ、多少引いちゃう気持ちになったりもしたんだけど……
その点、本作は主人公に肩入れし易いし、過激な選択に至るまでの説得力も増していた気がします。
物語の途中で出会う「ママ友」ならぬ「親友(おやとも)」な女性の活かし方も上手い。
「すべて彼女のために」では主人公とのロマンスを予感させ「その気になれば他の女性と幸せになる事も出来るが、それでも妻を選ぶ主人公」って示すだけの存在だったと思うんですが、本作は彼女に他の役目も与えているんですよね。
いざという時に備え、息子のルークを預ける場面を挟み、主人公の「もしかしたら、自分は助からないかも知れない」という悲壮感を高めるのに成功してる。
こういうリメイク映画における「既存の人物の重要性を高める改変」っていうのは、観ていて本当に嬉しくなっちゃうし、もう大好物です。
他にも「あえて偽の証拠を残しておき、警察の捜査を欺く」という罠を用いる事によって、主人公の有能さが増している事。
妻に嫌疑が掛かった殺人事件の真犯人が誰か、観客に教えてくれる事なんかも、嬉しい改変。
これらの改変部分に関しては「余計な事をした」「何でもかんでも説明し過ぎて、野暮な作りになった」と感じる人もいるんでしょうけど、自分としては正解だったと思いますね。
あれだけ用意周到に計画を立てていた主人公が、証拠を燃やしもせずにゴミ箱に捨てて警察に見つかっちゃうってのは違和感あったし、殺人事件の真相についても、明確に描いておいた方が、スッキリとした後味になるんじゃないかと。
そんな具合に、色々と改変している一方で「すべて彼女のために」でも印象的だった、不仲だった父との別れ際のハグについては、ほぼそのまま情感たっぷりに描いてくれてるのも、実に嬉しい配慮。
主人公の妻は美女で、息子は美少年っていう辺りも、殆どそのまま再現しており、感心させられましたね。
そのままの方が良い箇所に関しては、そのまま。
そして変えるべき箇所に関しては、思い切って変えるという采配が絶妙でした。
本作「スリーデイズ」は傑作であり、これ単品で鑑賞しても、文句無しに楽しめるのですが……
「すべて彼女のために」とセットで鑑賞すれば「リメイクの妙味」「新たに映画を作り直すという意義」についても感じ取る事が出来るんじゃないかって、そんな風に思えましたね。
娯楽作品としても、リメイク映画の理想形としても、オススメしたい一本です。[DVD(吹替)] 8点(2023-09-28 21:29:31)(良:3票) 《改行有》
2. すべて彼女のために
《ネタバレ》 「脱獄は簡単だが、その後が大変だ」という台詞が印象的。
この台詞が序盤で語られる場面だけでも充分にインパクトがあったのですが、映画の終わりにも再び繰り返されるというんだから、何だか徹底していましたね。
脱獄に成功した主人公達の未来を示唆する台詞であり、この映画を象徴する台詞でもあったように思えます。
とはいえ、その簡単なはずの「脱獄」も充分に困難である事が劇中で描かれており、だからこそ(逃げ続けるのは、コレ以上に大変なのか……)と思える終わり方になっているのが見事。
脱獄に成功し、ハッピーエンドと呼べる終わり方のはずなのに、まだまだ前途多難である事を示唆される。
でも、それまでに描かれてきた主人公の力強さを思えば、そんな困難も必ず乗り越えられるはず……と、希望を失わずに前向きな着地を果たすバランスは、かなり好みです。
そんな具合に、中々の佳作と呼べる品なのですが、難点としてはやはり「主人公の妻が無罪かどうか、最後まで謎のまま」って事が挙げられるでしょうか。
主人公は一貫して無罪を信じている訳だし、物語の展開としても「そんなの、どっちでも構わない」って話ではあるんですが、やっぱり観客としては気になっちゃうんですよね。
仮に有罪であれば「それでも主人公は妻の無罪を信じ、殺人を犯すほどに暴走してしまった」という切なさが生まれただろうし、無罪であればハッピーエンド感が増したであろうし、答えを明かさないままというのが勿体無く思えてしまうんです。
意味深な場面を挟み「どちらでも観客の好きなように解釈して良いよ」って思わせるような形でもなく、何か「妻が有罪なのか無罪なのか、答えを出すのを忘れてた」って感じられる構成だったのも痛い。
ここは素直に「妻は無罪である」と示す場面を挟んでも良かったと思います。
あと、コレは観客側の自分が悪いんでしょうけど、今回久し振りに鑑賞し(あれ? 主人公が殺す相手って、因縁とか全く無い麻薬の売人だったの?)って驚いて、ガッカリもしちゃったんですよね。
「序盤に主人公を騙して金を奪い取った相手から、復讐がてら大量の利息込みで金を奪い返す」って展開だと記憶していたんですが、実際はそういったストーリーの繋がりは無く、勝手に美化して記憶しちゃってたみたい。
その場合、序盤で主人公を騙した奴らに何の仕返しもしないまま終わっちゃうのかって不満も生まれるし……
この辺りは、思い出補正の恐ろしさというか「一度観た映画を、何年振りかに観返して評価する」事の難しさのようなものを感じました。
でもまぁ、そういった諸々込みで考えても、やっぱり「良い映画」「面白い映画」でしたね。
単純に、妻が美人で息子が可愛いってだけでも、主人公を応援したくなるような魅力がありましたし。
脱獄計画で大変な中でも、幼い息子を公園に連れて行って遊んであげたりする場面とか、ちゃんと主人公が「良い奴」だって事を示す描写があるのも嬉しかったです。
劇中で妻のリザが困惑していたように、ともすれば観客としても(この主人公、やり過ぎ)(いくら愛する妻の為とはいえ、流石に応援出来ない)って気持ちになってもおかしくなかったのに、そこをギリギリで踏み止まる形になっていましたからね。
空港に指名手配の写真が届く前に、間一髪で間に合った場面とか、そこで観客に(あぁ、良かった……)と安堵させる為にも、主人公を完全に「暴走する狂人」としては描かず、感情移入出来る余地を残しておいたのは、正解だったと思います。
警察側も数多くの証拠を掴んでいるし、後の「スリーデイズ」(2010年)に比べると、主人公達がいずれ逮捕される可能性も高そうな本作品。
それでも、きっと彼らなら大丈夫だと思えるし、そう思いたくなるという……
ビターなチョコレートのような、程好い余韻を味わえる映画でした。[DVD(字幕)] 7点(2023-09-28 21:24:50)(良:1票) 《改行有》
|