|
1. ベルヴィル・ランデブー
《ネタバレ》 ディズニーやジブリも悪くないけど、何か変わったアニメが見たいと思ってる人はズッポリハマりそうなル・モンド・ド・ショメ。 デフォルマシオンを駆使して描かれる斬新なキャラクターやデザイン、ジュネ好きは確実に好みと思われるディテールのこだわり。 言葉でなく絵で表現するべく作られたこの作品はアニメーション本来の面白さに満ち、月並みな感動なぞ無用とばかりわが道をゆく。 巨船やべルヴィルの偉容、四角い男たちの合体、手塚風のボスの変形。 BELLEVILLE(美しき街)=デブばかりのハンバーガーの国アメリカとキツーイ皮肉、孫には犬のエサ同然の食事しか与えぬばあちゃんにファストフードは食わせず、姥三姉妹が発破で仕入れたカエル料理が口にあうフランス賛美。 電車にトラウマのある犬をタイヤにしたりと結構ブラックなんだけど、あまりグロくないのも結構。 目立たないけど不屈の精神で孫を救出しに行くばあちゃんの愛情と意地も根底にあり、最後のスローチェイスでは競輪賭博装置(?)が帆かけ船のよなエレガンス、歌手ばあさまの手動カーブがイカス。 粋に流れる音楽に心おどり、スモーキーな色が目に快く、見るほどに味の出るレアなフレンチ・アニメ。 8年後の「イルージョニスト」が美しくかつ至極マトモな作品であるのを考えると、ショメにとっても二度と作りえない世界かもしれない。[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-04-10 06:59:59)
2. ベニスに死す
トーマス・マンが自らの体験を小説として書きとめ、ヴィスコンティが映像とした「ベニスに死す」は、ドイツ文学とイタリア映画融合の妙味。 マンは主人公アッシェンバッハにマーラーの風貌と自分の生業を与えたが、ヴィスコンティは彼をマーラーを模した作曲家とし、アダージョを流す。 ナルキッソスの化身のような少年タージオを憑かれたように見つめるアッシェンバッハの眼差しは、作家とバイセクシャルの監督のものでもあるか。 マンが主人公にほどこした化粧をヴィスコンティが黒い汗と涙に転化させることにより、美に取り込まれたアッシェンバッハの醜怪さを際立たせる手法は残酷というほかないが、それを受けて水に戯れるタージオの輝きはいや増す相対性。 当人の思いの純度に反して、崇拝というものが傍(はた)から見れば至極滑稽なものであることを冷徹に示したヴィスコンティは、自らの美青年嗜好をも秘かに顧みていたのではあるまいか。 ダーク・ボガートは「愛の嵐」同様異常な愛に殉じる男、ビョルン・アンドレセンは自分が美しいことを知っていて、崇拝者を振り捨てもせず緩慢な死へ追いやる少年に扮してはまり役。 自分が死ぬことも知らず、タージオの幻影に追いすがりつつアッシェンバッハの意識は薄れてゆく。[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-05-10 06:59:58)
3. ベティ・ブルー/インテグラル<完全版>
理性のないベティは愛玩動物にしか見えない。彼女と体という鎖で繋がれているゾルグもベティを愛しているという幻想に浸っているように見える。ヤーレのピアノと海の匂いがこの悲惨な物語を包んでいる。[映画館(字幕)] 6点(2009-07-31 02:34:04)
|