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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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301.  酔っぱらった馬の時間 おそらく車とは縁のない斜面で暮らす少年が、タイヤを密輸で越境させようとするが、タイヤはふるさとの側に転がり落ち、彼と弟とラバが未来の側に越境する、地雷原の広がる未来に。そういう話だ。イランのクルド民族の話だけど、障害者を持つ家族の話でもある。障害者を扱った映画って、いつもだとちょっと構えてしまうところがあるのだが、これはマッスグに入ってきた。生きることが苛酷なのは、ここでは障害者だけではないからか。このラバは姉が嫁入りする引きかえで手に入れたもので、姉の想いの代価になっている。だからラストの越境は、ここで戻ったり死んだりしては姉の想いが無駄になってしまうという後押しがあったからで、兄弟愛姉妹愛がここで一点に結ばれた、そこがいい。包囲する雪の白さの迫力。[映画館(字幕)] 8点(2008-06-03 12:16:28)

302.  グレースと公爵 ヒロインは革命の是非には関せず、野蛮や不寛容への嫌悪に基づいて行動する。公爵と政治的な意見は異なっても、元恋人同士の親和の情に基づいて動く。心意気ってやつだ。革命政府と絶対王政とどっちが野蛮か、なんて暇なときに考えればいい、いま目の前にある野蛮をとりあえず回避しようとする。この行動原理は、現在世界で起こっているアレコレについても有効だな、と思ったがそれは映画とは別の話。曇天の王の処刑の日、聞こえてきた喚声を、いま民衆が蜂起して王を救い出したのかも知れない、と思うヒロイン。心意気には限界がある。『悪魔の発明』を思わせる絵画調の風景は、この映画が民衆が見たリアルな世界ではなく、あくまでヒロインの眼に映った光景だ、と言ってるよう。[映画館(字幕)] 6点(2008-05-29 12:13:24)

303.  エデンより彼方に 擬古典主義映画っていうのか。徹底してハリウッド黄金期のスタイルを踏襲する。斜めに書きなぐったようなタイトル。音楽もほとんど伴奏のように流し続ける。旦那が出社するときの音楽なんか、そうそうこういう感じこういう感じ、とニンマリしてしまう。ラストの平行四辺形に組まれたキャストのタイトルに至るまで凝っている。スタイルを踏襲するってのは、すでに完成した形式を利用して、それを外から眺める視点を持つことだろう。差別や偏見のテーマの扱いに、そういう積極的な成果が出ていたかどうかはハテナだ。それよりも、作者はひたすら耽溺の悦びに酔いしれてしまっていた。雑誌の取材で暖炉に手をついて微笑むポーズなんかの時代性、「ときとして違う世界の人間の方が心を許せる」「でも許したらもう違う世界の人じゃないわ」なんて会話の妙、メロドラマに必須の駅頭シーン、そういったもう完成した型を、古来の茶器を撫で回すように改めて愛でている映画と思えばいいのだろう。[映画館(字幕)] 7点(2008-05-23 12:16:25)

304.  それでも生きる子供たちへ 私は一番最初のアフリカの少年兵の話が良かった。たとえば青空の下の畑(?)での大人の敵兵との撃ち合いなんか、そこが遊ぶにふさわしいような場所だけに、その唐突さ・非現実感から現実感が生まれてくるジワッとした感じなどが迫ってくる。破壊するために訪れた教室で、学ぶ夢に誘われる少年を、スニーカーを脱いだ足で見せた。言葉は寡黙で映像が雄弁という理想的な作品だった。“学校の夢”はラストの中国篇とも呼応している。また中国篇は“ゴミ拾い”でブラジル篇と、アフリカ篇は“戦争”でイギリス篇とつながり、“盗み”でジプシー篇とイタリア篇が通じ合っている(あのイタリア篇、夜の遊園地が夢のようにきれいだと思ったら、カメラがヴィットリオ・ストラーロだったのか)。いま世界での苛酷な子供の状況を多元同時進行的に捉えることが出来るオムニバスでもある。[DVD(字幕)] 6点(2008-05-22 12:21:40)

305.  戦場のピアニスト 万人共有の熱い記憶と思われていたものも、時がたつと冷たい歴史記述になっていく。その熱量を少しでもとどめておきたい、という強い意思が感じられた。ナチ下のユダヤ人の生活を再現し記録する意思。じわりじわりと追いつめられ追い立てられていったその細部。踊れと命じられる屈辱。あるいは気まぐれの処刑、6人を撃ち、7人目の前に弾を込めなおすわずかの時間の、もしや、という一瞬の期待も描く。さらに「立て」に応じられなかった車椅子の老人の末路。一つ一つのエピソードが重い。主人公は窓から見ている。ユダヤ人やポーランド人の蜂起も、窓から見下ろすだけで参加はしない。見る人に徹していただけに、外へ出ていったときの、なにか剥き出しなるような怖さが特別だ。『裏窓』のすぐれた応用になっている。遠く上から見ていた殺された女性の死体と向かい合うように伏し、死人の振りをしてドイツ兵をやり過ごす場の生々しさ。映画の前半は、集合場所や貨車など、高密度で人々が画面を埋めていた。後半は一転して無人の世界、世界そのものの廃墟のような光景、その落差がなによりも雄弁だ。[映画館(字幕)] 7点(2008-05-21 12:16:14)

306.  過去のない男 《ネタバレ》 考えてみれば、映画の人物ってのは、すべて過去を持たずに唐突に我々の前に登場してくるわけで、観客はその行動や言動から過去を類推していくしかなく、言ってみれば記憶喪失者に付き合っているようなものなんだなあ。この映画、名前がないと何も進まない法の世界と、隣人たちの親切の共同体とが対比されていて、けっこう社会派監督としてのカウリスマキを印象づけた作品。やむを得ず解雇することになった従業員へ、未払い給料をなんとか渡さんとする社長が光る。名前がなくても信頼や親切が優先する社会をはっきりと提示した。妻が見つかると、そっちもちょうど男が出来てて、っていう解決は、アステアの戦前のミュージカルにもあった手だが、いいよね。[映画館(字幕)] 7点(2008-05-19 12:16:41)

307.  藍色夏恋 やっぱり青春は自転車だな。音楽もスカルラッティのソナタのような清潔なピアノの響きで、自転車に合う。学校の床に貼られたラブレターを剥がそうとする二人、最初のうちは丁寧に手でやっているのだが、あとは足になる。するとまるでダンスを踊っているよう。そういえば後半、講堂にきちんと並べられた椅子の間でのケンカも、しだいにダンスを思わせていく。やさしい接触は恐いけど、叩き合うなら自然に触れあえる。ケンカもダンスの一種なんだ。自転車という道具だてがありながら、相乗りはしないで、それぞれのチャリンコを走らせ続けているのもいい。[映画館(字幕)] 7点(2008-05-11 12:21:37)(良:1票)

308.  インランド・エンパイア あ~あ、とうとう行っちゃったなあ、って感じ。この人の映画は、意味が無意味に引きずりこまれかけ、意識が無意識に飲みこまれかけ、それでもかろうじて踏んばってる、っていうスリリングな面白さがあったんだけど、ついに無意味・無意識が勝利をおさめたみたい。最初のうちはなんとか意味を取れないことはないの。久しぶりに大役が回ってきた女優の話ということで、女優の卵で描いた『マルホランド・ドライブ』の逆サイドから,ハリウッドの魔を描く、って意図か、とか。でもそうねえ、女たちが出てくるあたりからか、もう無意識が暴走しちゃって、わけ分かんなくなる。ま、あの女たちだって無理すれば、ヒロインを嘲笑する“若さ”って意味を取れないこともないんだけど、あの東欧(ポーランド?)の部分になるとお手上げ。これはどういう意味だろう、って考えること自体が、もう後半は無意味に思えてくる。ただ名所旧跡を観光で回ってる感じに近い。極端な顔のアップが表情の意味をなくし、グロテスクな物質に還元してしまい、かえって無人の部屋のたたずまいに何やら意味が隠され詰まって感じられた。今ここまで好き勝手させてもらえる監督はそうはなく、思えば3時間、私はこのわけの分からなさ、無意味の国の観光ツアーをけっこう楽しませてもらった。[DVD(字幕)] 7点(2008-05-09 12:18:48)

309.  息子のまなざし 《ネタバレ》 カメラが観察者の視線となって少年に張り付く。見てどうしようという前に、見ずにいられない力が働いている。復讐とかなんとかじゃなく、この見たい衝動。見抜きたいのは、罪の自覚があるのかないのか、ただそれだけ。その緊張がすさまじい。ふっと語る、おまえが殺したのは私の息子だ、のスリル。激しい追っかけ合いの後、でも戻ってきて立つ少年、言ってみればこの瞬間のための映画であって、ここから罪と向き合った本当の罰が始まるんだなあとか、ここに立たざるを得ないまでの彼の孤独を描いてたんだなあとか、それ以前に男を父として尊敬し始める描写の蓄積が生きてくるんだなあとか(敷石と車の距離を目測で言い当てる)、それらもろもろが、この立ち尽くす少年の一点に集中する。いい映画なんだけど、一つこの監督困るのは、手持ちのカメラを振り回すでしょ、前の『ロゼッタ』の時も軽い船酔い状態になっちゃったんだけど、本作では重い船酔い状態でウッウッとこらえながらの鑑賞となり(なにせ10分あたり150円払ってる勘定なので、あと150円ぶん、あと150円ぶんと頑張ってしまう)、終わってすぐトイレに駆け込んで昼に食べたグラタン吐いた。だから次の『ある子供』はDVD出るまで待って家で見たの。[映画館(字幕)] 7点(2008-04-29 12:20:15)

310.  ラテンアメリカ光と影の詩 南米って、幻想とリアリズムの境界がはっきりしない土地で、そこらへんが味わい。廊下に掛けた額が落下する音がうつろに響いている雪の学校の最南から、暖かい北へ向かう少年の旅。風が吹くと傾く島では「今日は傾斜日和でしょう」なんてやってる。この島、日本が買ってくれないか、とアピールしてたり。あるいは水没する都市のイメージ、道が電信柱や並木ごとそのまま湖に至っている。幻想がリアルに提示される。テレビでは各地の浸水予報を「どこそこ地方では首まででしょう」とやってる。北へ進むにつれて政治風刺の意味あいが濃くなり、幻想を楽しむ分には物足りないが、でも南米の文学や芸術っていつも幻想と政治がセットになっていた。政治が苛烈であればあるほど幻想も豊かになっていくのだろう。空が広い。[映画館(字幕)] 7点(2008-04-24 12:15:58)

311.  街のあかり 《ネタバレ》 コンスタントに新作出されるとあんまり有り難みが薄くなってしまうけど、でもやっぱいいなこの人。いつも“ちょっといい話”なんだよね。どん底できざす希望の光。ブアイソな壁に囲まれた場面の間に、夢のように美しいヘルシンキの夕景や夜景が入るその光のよう。もうスタイルについては言うことがない、完全にこなしきった一つの話芸になっている。今回ホントにうまいなと思ったとこは、男がずっと口を鎖ざして女を守りとおし有罪の判決が下った後、そのかばわれ続けた悪漢の情婦はどうしてるか、というと、悪漢どもがトランプに興じている後ろでつまらなそうに掃除機をかけてる、ってとこ。この苦いユーモアがカウリスマキの真骨頂。[DVD(字幕)] 7点(2008-04-20 12:12:32)

312.  トランシルヴァニア 大枠だけを取り出すと「ジプシー男をトランシルヴァニアにまで追ったフランス女が捨てられ、自らが流浪の人となる」って話。たぶんジプシーに対して昔からヨーロッパが抱いていた、偏見とセットになってるロマンチックな誤解ってのがあるんだろう。自転車で走る爽快感など、たしかにいいなあと思う。放浪って、壁に囲まれることの鬱屈からは自由になれるが、壁に囲まれることの安堵からも追放されるわけで、でもそこらへんを突っ込む映画ではなかった。異国で異邦人としてさまよう気分を疑似体験する映画か。おそらくスクリーンで見れば美しいんだろうなあ、という日没の光で撮られた場面があり(ヒロインが去った後の車の友人、ビールビンで頭叩く男)、そういうところDVDだと濁ってしまって残念。ここんとこ『パラダイス・ナウ』『ボンボン』とコーヒー占いの映画が続くと思ってたら、これにもまた出てきた。日常を離れる運命の訪れを示すときの定番なのか。[DVD(字幕)] 6点(2008-04-17 12:23:59)

313.  ルネッサンス 白と黒のコントラストの強い、まるで切り絵のアニメーション。いいんじゃないかと思ってたら、これ、実写をもとにした手法らしく、人物の表情や仕種がけっきょく俳優のそれで、アニメならではの表現ではなくなっていた。古くなった白黒実写映画を見てるような気になってくる。『白雪姫』も最初実写で撮って絵にしたってことだけど、欧米人は、アニメは現実に近づけることをヨシとしてるとこがあるみたい。発想が逆なのではないか。絵を動かすことでしか描けない世界を発見するのがアニメーターの仕事ではないのか。チェコのカレル・ゼーマンに、銅版画ふうの世界と実写との合成による『悪魔の発明』という傑作があって、白黒のトーンが似てるのでこれ見ながらしばしば思い出してたんだけど、技術はそのころより格段に進歩したがアニメの精神は退化したような。ガラス張りの歩道と下の車道の関係なんか面白かったんだけど。[DVD(吹替)] 6点(2008-04-11 12:21:50)

314.  ピストルと少年 最初のうち少年はやたら反射する面に向かい合う。テレビに向かい合い、鏡に向かい合い、電話番号を書きとめるために窓ガラスに向かい合う。その自分の反射から、姉に向かい合いたいという気持ちにダーッとなだれ込んでいく。そうか、ピストルを向けることによって、初めて自分以外の人と向かい合えるようになったのか。彼の漠然としていた欲望が、刑事が登場することで明確にされてしまう。あるいはもう観念していた少年を姉が引きのばしていってしまう。ぼんやりしていた彼の欲望を、周囲の思いやりやお節介が、よってたかって大ごとにしていってしまう。しばしば子どもが起こす事件についての、これはひとつの解釈だろう。車に固定されたカメラからの視点が多く、カーブを切ってフロントガラスに建物の像が入ってきたり、光の向きが変わっていったりするとこが好きなんだ。[映画館(字幕)] 6点(2008-04-06 12:20:16)

315.  Hole 降り続く雨、ゴキブリウィルスの蔓延、中庭に落ちていくゴミ…、世紀末である。息の長いカットがジトッと湿気を感じさせる。うらさびれたボロアパートに不意に入ってくる華やかなミュージカルシーンは、女の心象風景なのだろう。エレベーターの中のカリプソ。でも、その華やかさを出すためにボロアパートが背景として置かれているのではなく、ボロアパートの世紀末感を強めるためにミュージカルシーンがはさまれているよう。初めて男と女が一つの画面に斜め上下で収まるあたりは何となくワクワクした。プライバシーの侵害であった穴は、檻からの脱出口にもなる。ラストは救出なのか昇天なのか。上から見れば足を吸い込む穴、下から見れば救助の手が伸びてくる穴。[映画館(字幕)] 6点(2008-04-04 12:21:33)

316.  パラダイス・ナウ 《ネタバレ》 両論併記的な結末となるが、ぎりぎりに絞った果ての結論なので安易さは感じられない。自爆テロは結局イスラエルに殺す理由を与えてしまうだけだ、が一方。それはそうなんだけど、なら圧倒的な軍事力の差の前で何か具体的な打開策があるのか、がもう一方。どちらも相手の言い分を否定し切れない辛さが、現在パレスチナが立たされているまさにその地点の辛さなのだろう。この映画、自爆テロリストとなっていく青年の心情には同情を寄せながら、送り出していくシステムの非情さはくっきりと描いている。「君は選ばれたんだ」と口では持ち上げておきながら、殉教ビデオを撮るときはナンみたいなものを食べながら見ているいい加減さ。そして殉教ビデオはレンタルされて別途収入になっている。日本だって、さかんに特攻をあおった上官の多くは戦後軍人恩給で楽しながら天寿を全うした。大義は、いつでも若者ばかりを死なせていく。[DVD(吹替)] 7点(2008-03-13 12:24:21)

317.  友だちの恋人 《ネタバレ》 等身大の人物に、作者の目はベッタリついてもいないし、見下ろしてもいない。心のふるえを精密に映して、しかもその精密さを自慢げに誇示しない。つまり上品なんだな。人と人は理解し合えないこともあるけど、理解し合えることもある、他人てのもオツなものです、って話。柄ものでない単色の衣裳と機能的な都市空間で、普通なら冷たさを表現する画面づくりが、逆の効果をあげている。女同士の義理なんて、日本だとここぞとばかりに思いっきりベッタリと描くところを、さらっとやってのける。ラスト、緑のブランシュが森を背景に右、青のレアが湖を背景に左。“男”の会話が別々の人物を指していたことが分かって、「じゃああんたファビアンと寝たの」とくる間が絶妙。青いファビアンと緑のアレックスが、木陰に隠れているカットもいい。[映画館(字幕)] 7点(2008-03-05 12:18:58)

318.  13/ザメッティ 《ネタバレ》 よくまあこれだけ目つきの悪い人を揃えたものだ。白黒の画面にそういう人がいっぱいいるだけで、実に凶々しい。でメインのえげつないゲームになる。話の段取りとして主人公が死なないことは分かっていても、けっこうドキドキする。このドキドキには、賭け手側と共犯しているような疚しさも含まれている気がした。だからといって「命を大切にしよう」なんてメッセージがあるわけではなく、これはたぶん綺譚の味に一番近い。19世紀のポーあたりがよく書いていた異常な体験談もの。「こんな話があってね」という語りべに耳をそばだてる感じで見ていればいい映画だろう。最後のゲームで4発も弾を入れると、66.66…%×66.66…%で44.44…%の高率で相撃ちになってしまい勝負がつかないのではないかと、主催者に成り代わって心配した。あそこは1発ずつで勝負がつくまで繰り返させるのが正しいだろう。だと相撃ちの確率は2.77…%に抑えられる。[DVD(字幕)] 6点(2008-03-03 12:25:32)

319.  鉄路の白薔薇 グリフィスのメロドラマは、現在の目でも充分面白く感じるのに、フランスのこれは、ちとつらかった。だいたいサイレント映画の芝居ってのはどこでも大袈裟になるものだけど、本作の臭さはヨーロッパの深刻趣味も加わるんで、我慢の限度を越える。アメリカのヒューマニズムに対して、こちらには、苦悩によって人間は成長していくものだ、っていう精神主義があるからなんだろうか。前半の特殊な愛が後半で普遍に至る、ってあたりも、なんかすごくヨーロッパっぽい。でもやはりカットのリズムというものを洗練させた映画史上の業績は尊重したいし、アメリカとヨーロッパの違いをあれこれ考えるきっかけになっただけでもありがたい映画ではある。[映画館(字幕)] 6点(2008-03-01 12:16:09)

320.  D.I. 監督主演のエリア・スレイマンは、なんでもパレスチナのキートンと呼ばれている人だそうだけど、全体のトーンはフランス映画ふうで、いろいろ屈折していてやや分かりづらい。もちろんこちらの不勉強のせいが大きいのだが。前半の隣人のいざこざに、イスラエルという隣人の影を見せると同時に、パレスチナだって一枚岩ではないってことも含んでいるのかもしれない。とかくニュースでは常に集団で見られる存在だけど、当たり前のことだが、ときに反目したりするこういう個人個人で成り立っているわけだ。そんなところがけっこう新鮮。町のたたずまいにも、普通の暮らしをしている場としての生活感がある。集団で怒りの波となっているニュース映像の裏に、こういう“普段”があってこそ、その怒りの実質が分かってくるというものだ。忍者になったりと破天荒な展開の部分よりも、こういった記録映像的な部分でよかった。風船に検問所をなくしたい願いが託され、圧力鍋に沸騰寸前の気持ちが託される。[映画館(字幕)] 6点(2008-02-29 12:19:33)

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