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41.  ゴッホ 群像ものではなく兄弟もの。困った兄さんをとことん尊敬しぬく弟、で彼も兄と同じようにだんだん閉じていき、妻も追い出し、兄の絵だらけの部屋に閉じこもる。徹底した社会への不信。でもこの病む兄弟に対して弟の妻はやたらに食べて健康。彼女がいたからヴィンセントの絵は残ったんだなあ。弟テオは自分の「家庭」よりも、兄との「家族」に拘束されてしまっていたんだ。芸術の狂気の物語でありつつ、現代の投資としての芸術とどこかで対比させていた。カラスがワッと飛び立つとき、麦畑に隠れて合図を待っていたスタッフたちのことを想像してしまってはいけない。[映画館(字幕)] 6点(2013-05-18 10:26:07)

42.  無言歌 《ネタバレ》 仲間が吐いたゲロを摘まんで食べるシーンで、ヤバイと思った。ドキュメンタリー出身の監督なら絶対に撮らないクソリアリズム映画なのか、と心配になった。でもそこらへんは、まだ劇映画に慣れてなくて試行錯誤していたときに撮った部分だったのかもしれない。次第に立ち直り、ドンさんの妻が来てからは、ドキュメンタリーの手法が生きた劇映画になった。いつも隙間から外光が漏れている室内(というより坑内)、そういう光は映画ではだいたい「外への希望」を象徴させるものだった。だけど、この坑内に入ってくる光はそうではない。夫の死を知らされて悩乱した妻が外の光に導かれるように出て行く。しかし外に広がっているのは風吹きすさぶ荒野なのだ。希望さえ吹き飛ばされてしまうような黄砂の世界。このだだっ広い閉塞感こそ、中国反右派闘争時代の犠牲者が味わった絶望の映像化だろう。「これからは百家争鳴だ」と言われて発言したところ反動分子と決められ、「思想改良」のために荒野に送られた人々の絶望。もうこれからは絶対喋るまいと決めた人々の、無言の歌が吹き荒れている。ここに埋められたくない、という最期の願いも無視され、柔らかい尻の肉を食われたあと荒野の塚になっている人々。圧迫してくる広さの力が圧倒的で、ドキュメンタリーでつちかわれた腕が十分に発揮されていた。王兵ワンビン監督。[DVD(字幕)] 7点(2013-05-07 09:59:02)

43.  ニーチェの馬 《ネタバレ》 ラシドミドシ、ラシドミドシといううねりに乗ってド~~シ~~ラ~~と下降するモチーフが否応なく陰気。息を切らせる馬の映像とあいまって、もう映画のトーンが定まる冒頭。前作『倫敦から来た男』では、話の内容とスタイルが合ってない、という不満を持ったが、本作は合い過ぎるほど合った。中風の後遺症か、右手の不自由な父とかしずく娘、老いた馬、荒天の外を窓から眺めるのが日課の日々。やがて馬は病み、井戸は涸れ、ここを離れようとしてもなぜか戻ってしまい(単に行くあてがないことを映像で表現したのかもしれないが、そう思いたい)、どうもここらあたりから何かが起こり始めている。ランプの火が消え、灯そうとしても着かない。娘は「何が起きてるの」と呟く。外の風は止むのだが、娘は馬が食べるのを止めたようにじゃが芋を食べず、「食わねばならん」と言っていた父もじゃが芋を食べる手を止め、静かにフェイドアウト。何かが起きている。人生を放擲してしまうまでの無力感なのか、もっと宗教的な終末観なのか。この終盤の「何かが片付きつつある感じ」はホラーに近い。この家族の絶望だったのかもしれないが、もっと大きなレベルでの推移だったと思いたい。日常を包む大きな世界を垣間見た気にさせる映画だった。[DVD(字幕)] 7点(2013-05-04 09:15:56)

44.  パッション・ベアトリス 《ネタバレ》 まだ食事でフォークを使わない、バリバリと肉を手づかみで食べる。そういう時代の、家を巡る悲劇。娘ベアトリスは、父が帰ってくるので初めて頬紅をつける。家長の役を降りて、ただの娘に戻れるという安堵感。しかし父は昔の父ならず、すさんじゃってるの。「わしより後まで食べるな!」 この食事のシーンは、カメラがあっちこっちと回って、父の変貌を観察してるよう。そして、この父は家長の器ではない、となる。高い理想に輝く完全無欠の「家長」のイメージが、この家を圧迫していく。ベアトリスの頬紅は落ちていく。一つの家に複数の家長。悲劇の設定が整った。そして物語の果てに家長はベアトリス一人になれるのだが、その家は何と荒涼とした場所になってしまったことか。マリア像に頬紅をつけるように、父の血をなすりつける。前作がジャズ映画『ラウンド・ミッドナイト』(デクスター・ゴードンのたたずまいが絶品)だった監督、本作では音楽がロン・カーターだが、印象に残っていない。ごめん。[映画館(字幕)] 7点(2013-04-12 10:09:09)

45.  ハムレット(1990) シェイクスピアものってのは、いわば落語を聞くときの心構えになるわけで、ストーリーは知ってるから、その語り口で芸を見してもらおうじゃねえか、ってとこ。でもこの監督は真面目にストーリーを語っちゃうんだな。でまた、メル・ギブソンが真面目。あの人はイギリス連邦のオーストラリア出身だからか、なんか女王陛下の臣として真面目方向で、英国の国民戯曲に対処しちゃう。移民の国の人たちは、どうも故郷ヨーロッパにコンプレックスが強いらしくて、マックィーンは最後にイプセンやってたし…、国の問題ってよりも、アクション映画出身スターのコンプレックスなのかな。マッドマックスやってた男がハムレットやる面白さを狙えばいいのに、「シェイクスピア役者」の堅苦しい型に入っちゃって演じている。でもやや明るいフーテン的な線を狙ってたか。ラストの決闘でもちょいとオドケを折り込んで軽みを出そうとしてたり。[映画館(字幕)] 6点(2013-04-09 09:43:40)

46.  黄金時代(1930) 苛酷で本質的なものと、柔らかいが欺瞞的なもの、の対比が軸になっているか。島の岩肌、サソリの生態、など苛酷。ブルジョワの家具調度の柔らかさや、彼の好きな羽毛が対比される。いや、こうやって整理して見てしまうのは、きっとシュールリアリストにとっては、馴れ合ったイメージの連想ということで、いけないんだろうが、もうそう見ちゃうのが習性になってるマトモな世界の住人なんで、勘弁してもらう。一番濃密なのは島に人が来たところ。だいたい人が並んで歩いてるとリアリズムを突き抜けちゃう気分が出てくるんだ。骸骨になった法皇なんて、すごく「意味」っぽいんだけど、帽子をとって挨拶すると、何か意味を超えたイメージになっていく。固いコンクリートの上にヌルヌルした粘土状のものを載せるの。なんかの起工式みたいな普通の儀式なのかもしれないが、ヌルヌルの触感だけが突出して迫ってくる。男は羽毛を散らし、窓から燃える木やキリンを落とす(脚本にダリが協力)。虫を潰し、犬を蹴り、盲人を倒し(盲人を痛めつけるのは『忘れられた人々』などがあり、彼の作品での盲人は特別な存在のよう)、しかし己れの所有欲からは逃げられない。あ、また意味で解釈しようとしてる。小太鼓の連打が異様な高揚を生む。ベッドに牛が寝てたり、ロビーを荷車が通ったりするのも心地よい。水中撮影で美しいシーンがあった覚えがあるのだが、ノートには記されてないな。ほかの映画の記憶が混ざってるのか。そういった曖昧な記憶として存在しているのが、一番ふさわしい映画なのかもしれない。[映画館(字幕)] 8点(2013-03-23 10:01:07)

47.  ブリキの太鼓 オスカル君の気味悪さは映画ならではのストレートで迫ってきます。ずっと生き続ける祖母をポーランドに残したまま、成長を再開するオスカルは西へ行ってしまう。これはどう考えればいいのか。ポーランドに残って成長していくってのなら分かりやすいが。彼の太鼓は、軍楽隊のリズムをワルツに変えもするが軍隊の慰問にも使われる。不快に思っても政権から離れられない「芸術」と見てそう間違いではないと思うが、母の死以後の部分がよく分からない。でもそういう“分からなさ”が寓意の豊かさで「きっと深いんだ」と思わせられるのが、芸術映画の得なところ。[映画館(字幕)] 7点(2013-03-14 10:00:50)

48.  いとこ同志 《ネタバレ》 うまくいく奴とうまくいかない奴の話。うまくいく奴にとっては何でもないことが、うまくいかない奴にとっては大障害であったりする。それぞれの人生ってことで、しょうがないの。“ヌーベルバーグ”と構えていた想像よりは、しみじみしたいい映画でした。まじめ男が初めて思い切った行動に出たのは(ロシアンルーレット)不発に終わり、彼の命は「うまくいく奴」の遊戯の中に終えられてしまう。このバックに延々とワーグナーが流れることで、つまらん事故が荘重な運命悲劇の様相を帯びるんだ。神話のなかの兄弟の相克って感じで。なぜピストルに弾が入っていたのかを理解していく長回しが素晴らしい。[映画館(字幕)] 7点(2013-03-11 09:45:39)

49.  ターミネーター2 《ネタバレ》 本作のあたり、90年代の前半、SFX技術は急速に進歩した。昔の合成の、ふちが緑に光ってたころから特撮映画好きだった者として、ほぼ完成の域に達したなと感慨無量であった。下水溝のチェイス(トラックが跳び下りてきて追っかけちゃうんだもん)などアクション映画の基本的な見せ場もシャカシャカいうリズムに乗せて身を乗り出させるが、液体金属ロボットの動きに力を入れていて「ここまで来たか」感が強かった。床の市松模様がムクムクと起き上がったり、格子を通り抜けてもピストルは引っかかったり、と芸が細かい。見せ物として本道を行っている。エレベーターの天井からブスバスと刺してくる。せっかく液体金属の身体ならもっとほかの襲い方もあるんだろうが、まいいか、と思わせる。液体窒素で凍るとこも細かい。足がボロッ、ついた手がボロッ、でも細片が融けてまた戻っちゃうの。この監督は女性に重火器持たせて戦わせるのが好きみたい。[映画館(字幕)] 8点(2013-03-09 09:51:28)(良:1票)

50.  風の中の恋人たち とんでもない邦題にもかかわらず、なかなか良作、とりわけ前半。原題は「ナヌー」、ヒロインの名前。フランスを旅するイギリス娘。列車の中で沈黙のまま、パン、卵、塩(!)などを交換し合っていくあたりの演出のきめ細かさ。その村に降りるかどうか迷ってコインを投げ、それでも走りかかった列車から飛び降りてしまう(カメラを忘れてそれが後の伏線となる)。男の無骨さが、いかにもフランスの地方人なのか。外国を一人旅する女性のスケッチとして味わえる。後半政治が絡んできて、ちょっとトーンが濁るんだけど、ラストがまたいいんで印象は良。男の不器用さに好感が持て、どこか幼さの残る若者の恋のドラマとして良。この女流監督、その後どうしてるのか。[映画館(字幕)] 8点(2013-03-08 10:19:11)

51.  無秩序な少女 すさんでいた少女が表現すること(劇団に入る)によって解放されていく話。障害者と一緒にするのはまずいかもしれないけど、宮城まり子の一連の『ねむの木』ものの映画をちょっと思い出した。市民社会から排除された者が「表現すること」で元気をつけていくという点では似た力学。ドキュメンタリーの強みもあって、あっちは優れた映画になったが、こっちは劇団仲間に魅力がなく、ストーリーがヒロイン一本だけで細く、話が拡がらなかった。ヒロインは自分から劇団に来たのに(ま、行くところがほかになかったし、ここも半分そういう更正施設を兼ねてるらしいけど)それにしちゃ、愛想がなさすぎる。秘書の応募に来たところを演じよと命ぜられ「私は働いたことがない」と爆発するが、あれは「市民社会ってのがどんなもんだか、まったくわからないので不安なんです」って裏打ちのある叫びに聞こえなくちゃいけないとこだろう。ただの「困った少女」でしかなかった。原案・脚本・監督ヤニック・ベロンって女性。[映画館(字幕)] 5点(2013-02-15 09:46:06)

52.  女と男のいる舗道 あっけなさというのがこの監督の重要な要素。ラストもそうだけど、初めて客をとってしまうところも、それらしい逡巡や決意の表情やらを見せず、出来事は不意に訪れる。街頭でのドンパチも、観客が「なんだなんだ」と戸惑ってしまうような仕掛け。観客に対する親切が紋切り型を作ってしまい、出来事を遠ざけてしまう、ということなんだろう。出来事は常に隣り合わせに起こり、ある種の自由の感覚がある。流動していくものを肯定する気持ち。人はいつも不意に状況の中にいるんだ、って。冒頭ヒロインのシルエットにタイトルが被さってるんだけど、音楽が中断しつつ流れる。音楽の中にゆったりと浸れない、沈黙が緊張を強いる。出来事が不意に起こるように、今続いているものが不意に消えることもあるってことか。[映画館(字幕)] 7点(2013-02-11 10:25:06)

53.  エレンディラ ヒロインは海に憧れ続け、ラストでやっと海のそばにテントを立てるが、また砂漠のほうに逃げていく。この青空が印象的で、海の青より空の青を選んだ、という感じ(青と言えば、初めて体売られたときカーテンを青い魚が過ぎていく。「百年の孤独」に、ずっと雨が降り続いて湿度が上がった室内を、魚が泳ぎ過ぎていくってイメージがあって、好きだった)。マルケスの小説って凄く映像的だと思ってたんだけど、やはりあれ文学なんだな。この映画で一番美しいイメージは祖母の夢語りなんだ。エイが空を飛んでいくような。その瑞々しさに比べると、ガラスの変色など、実際の映像で示されるとかえってイメージがしぼんでしまう。そこだけが特異点として浮き上がってしまう、日常の中の非日常として。全体が溶け合ったものになってくれない。さらに言えば、あの仕掛けはどうなってんのか、などとあらぬことを考えてしまう。これ映像の不利な点ですね。修道院から帰ってくるところがミソか。幸福と懐かしさで、彼女は懐かしさのほうを選んだってこと。[映画館(字幕)] 7点(2013-01-30 09:57:34)

54.  真夜中の恋愛論 何かを突き詰めようとしてるな、というのは感じるが、その仕掛けのほうに主題が移ってしまった気がする。男女の一夜だけで映画を作ってみよう、ってのは、あくまで仕掛けであって主題にはならないんじゃないか。心理的な探り合いが続いて、これエスプリってやつでリアリズムじゃないんでしょうね、それともフランス人ってのは「ああいう状況下」でも喋ってばかりなのか。主題が仕掛けに吸収されちゃってる。男が帰るのかどうか、ってのもサスペンスにするわけではない。あくまで言葉で世界を構築していく。市民社会は写真の中の教師生活のみ、完全にプライベートな時間だけ。たぶん他人を理解する・理解しようとする時間が始まる、それが恋の誕生というラストなんでしょうなあ。意外とよかったのはサン=サーンスの弦楽四重奏で、オーケストラ曲だけ聴いて馬鹿にしてはいけなかった。[映画館(字幕)] 4点(2013-01-09 10:20:52)

55.  バルタザールどこへ行く ラスト、羊の群れがやってきてバルタザールを囲んだあたりで泣けてしまった。今まで荷や水を汲み上げる装置やらに常に囚われ囲われ包み込まれていたロバが、ここで初めて柔らかな羊の毛に包まれる。囚われでなく保護されるように。そして本当の最後、バルタザールの死骸がごろっと転がっているカットになる。キリスト教的には、天上の祝福に対する地上のむくろ、ってことなんだろうが、自由と孤独が壮絶に一体になったようにも見える。ずっと自由を希求していたロバが、孤独によってそれを得た、って。全編を貫いていた「生きることの苛酷さ」がここで救われた、というのとも違う、ある種の納得というか、心構えというか、一つ高い認識に至った気がする。監督のスタイルが一番素直に感銘に至った作品でした。[映画館(字幕)] 9点(2013-01-06 10:11:56)

56.  冬の旅 他人の目を通した『少女ムシェット』というか。共感を呼ぼうというのではなく、理解不能なところを残したままで、でもこういう少女がいるという実感を描こうとしたのでしょう。やりたいこともない、「放浪じゃない、放埓だ」と人に言われ、社会との関係をうまく取れなく、不器用なのか純粋なのか、どんどん自由=孤独のほうに偏っていってしまう力学が描かれた。一人旅ってのは、プライベートな時間だけにしてしまうと同時に、自分を社会に曝してしまうことでもあり、それをうまくまとめるには「祭り」という儀式が必要なんだろうけど、彼女の場合その祭りによって最後の追放を受けてしまう。これが自動車の一人旅だとまた違うんでしょう。プライベートな空間を携帯して、いわば部屋ごと移動しているようなものだから。転落への軽蔑と自由への憧れがきれいに釣り合い過ぎてしまったかな。チュニジア人がマフラーのにおいを嗅ぐカットはホロッとした。[映画館(字幕)] 7点(2013-01-03 10:01:56)(良:1票)

57.  ブローニュの森の貴婦人たち 字幕にかかりっきりで画面に集中できなかったというのが真相。自分の不幸の準備をせっせと進める黒い女より、娘のほうが主人公であったのかな。やがて脱獄ものの名作を撮る監督と思うと、自由への脱出、ヘレンの玩具であることからの逃走、自負心、個人の中の決して侵されないもの…などという言葉が浮かんでくる。真っ白な部屋がまあ監獄です。外の雨はしのげるが、雨のなかでしか男には会えない。ドアからの光やエレベーターの光が黒い女をしばしば覆う。内省的な感じ。冒頭の嘘の告白と、ラストの愛の告白が、残酷な対になっている。冒頭の告白で悲劇を表に引きずり出してしまい、ラストの告白で結論を得る。ヘレンにとっては悲劇の完成、男女にとっては祝福。アイロニーのドラマなんだろうが、いささか息苦しい。[映画館(字幕)] 6点(2013-01-01 09:46:55)

58.  愛を止めないで 遠くの恋人に会うためにスクールバスジャックした気のいい青年のコメディ(と見ていいんだろ?)。本人はダーティハリーみたいな緊迫を期待してたのかもしれないが、そうはいかない。いたってノドカ。まずなかなか「世間」が顔を現わしてくれない。窓の外には牧歌的な風景が続くばかり、人質たちも自分を憎んでくれない。ピクニック気分。どれだけ進んだのか目印になるような建築物がなく(こういう話だとだいたい途中に一度は橋を渡って別の生活圏に進んでいくってイメージがあるものだが)、それがないから同じところをグルグル回ってる感じ。で「遠くの恋人より近くの人質」ってな親近感の移行が起こってくる。恋人が「世間」になり、人質が「隣人」になってしまう。困ったものだ。バスに置き去りにされ広いところで子ども二人の保護者のようにポツンと立ってるあたり秀逸。子どもがピストルで遊ぶあたりもおかしい。女教師に「ちゃんと保管しといてよ」と叱られて、ピストルを返される。車体に書かれたSOSが子どものいたずらと思われちゃうってのもあったな。犯人自身が子どものようなもので。[映画館(字幕)] 7点(2012-12-16 10:15:08)

59.  アタラント号 《ネタバレ》 花嫁が船上を歩くシーンが美しい。見送りの人々の姿とか。棒みたいの使って飛び乗るの。皮膚に心地よい風が当たっているような感覚があります。芸人の誘いのシーンのまがまがしさ。いろいろ渡り歩くその乱れが、花嫁の心の乱れと重なってくる。すごいローアングルで船繋ぐとことか。レコードのギャグは、若者が合わせてアコーディオンを弾いていたという落ちが付く。結論としては、もひとつピンと来なかったんだけど、随所のみずみずしさは素晴らしい。みずみずしさを味わえればこの映画はいいのかもしれない。そう納得させてしまうのも監督の腕か。[映画館(字幕)] 7点(2012-12-07 10:10:40)

60.  トト・ザ・ヒーロー 社会学的に見ると、アイデンティティの不安とか何とか、人生論的に見ると、他人への妬みや呪いを支えにして生きることの不幸とか何とか、心理学的に見ると、ユングの影とか何とか、いろいろ出そう。面白いのよ、一応面白いんだけど、なんちゅうか、作者の設計図が見えすぎちゃってるというか、醒めすぎてるところがあって、酔わせてくれない。ちょっと窮屈。若い監督なんだから(当時)、もっと破綻ぎりぎりの冒険もあってほしいところ。ラストの笑いはなんだったんだろう。他人を呪うことで支えられていた自分の人生の空しさを知ってしまった絶望に裏打ちされた笑い? 人生ってものを哄笑するような、ドロッとしたような、他人に対する呪いがもう社会を超えて神にまで向かったような。自分の人生を他人に奪われたと思い込む人間ってのにピンと来るか来ないかが、本作を楽しめるか否かの分かれ目のよう。[映画館(字幕)] 7点(2012-12-02 09:42:03)

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