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プロフィール
コメント数 450
性別 男性
自己紹介 大阪府出身、岡山県在住、阪神・下柳と同年月日生

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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
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変更日付順12

1.  最後の戦闘機(1936) ちょっぴり物騒で好戦的な邦題ですが、戦争を背景に男の友情と一人の女性を巡るロマンスを描いた人間ドラマに涙がホロリハラリ・・・。冒頭の駅で戦地に赴く男たちを見送る家族や恋人の数々をカメラが流れ、止まったところにアナベラがいて、そして彼女のアップでここからもうこの映画にロマンスがドドッ~と押し寄せてきます。そして不器用で誠実な中尉を演じるシャルル・ヴァネルの包容力に満ちた髭面、苦悩に歪む若きジャン=ピエール・オーモン、この3人はとにかく素晴らしい~。ラストのアナベラ、ヴァネル、そしてジャンの弟である少年の頬にそれぞれに流れる涙・・・それぞれの思惑をいっぱいに詰め込んだ涙には私も涙で応えさせていただきました。爆発シーンや戦闘機の空撮シーン、表情豊かな雲海、濃霧に煙る任務地など戦争に絡むシーンも相当な技術で撮り上げたリトヴァクさんの出世作。♪女の微笑にすべてを忘れる ささやかな恋にすべてを忘れる ~~♪ と酒場で合唱する戦士たち・・・傷を負った戦士の痛みをぬぐうのは女性なんですな~、いいシーンです。[ビデオ(字幕)] 10点(2005-07-31 23:34:52)

2.  赤い風船 少年と青い風船を持った女の子とのランデブーなんか何度見てもかわいくて好きだな~。風船の赤が鮮やかなカラー画面、雨上がりの石畳をこちらに走ってくる少年のシルエット、狭い路地を走る少年と赤い風船の一体感、逆光に透ける風船に囲まれた少年の表情・・・本当にいいですね~。唯物的であるはずの風船のこれほど豊かな表情は、そのへんの役者の喜怒哀楽に満ちた表情よりどんなにも優しく純粋で心温を感じさせてくれます。「風船のような軽やかな気分に浸ること間違いなし」とアドバルーンをあげておきます。[ビデオ(字幕)] 10点(2005-06-28 12:59:47)(良:1票)

3.  エレニの旅 旧の酒場での1シーン1ショット、演奏が中断と再開を繰り返す音の有無。その中断と再開は、民族紛争、大戦、内戦といった20世紀ギリシャの戦いの中断と再開の連続を縮図としているように聞こえました。音楽を奏でることができる=安寧、演奏できない=戦い、この構造を基本にこの作品では音楽とはまさに音を楽しむことである、と分からせてくれます。アレクシスの旅立ちを祝う白布の丘での演奏が、銃声一発で止まってしまうシーンなど象徴的でした。水を中心に火、木、また汽車や船が語る雄弁な映像美はもちろん、逆難民ギリシャ人としての公と難民内での個という二重構造のスケールの大きさ、ラストシーンに込められたエレニ=ギリシャの哀しみにはため息です。そして、あれだけの河沿いの街をセットとして築き上げ、ダムの水を流し撮影するというアンゲロプロスチームには白旗なのです。[映画館(字幕)] 10点(2005-06-19 22:40:47)(良:3票)

4.  素晴らしき放浪者 1932年製作というのは本当か~!製作年詐称疑惑を訴えたい。そう思えるほど川沿いの道や公園に息づくパリの姿がエロスたっぷり、鮮度豊かにフィルムに刻まれています。望遠鏡で道行く女性を覗き見していた親父が、ブーデュに一目惚れするシーンに私は一目惚れです。放浪者に恋するブルジョワ、恋に理屈はないのだとばかりに一目散に駆け出す親父・・・ドラマチックラブストーリーです。その後のブーデュの放蕩三昧にはその恋の盲目性が見えて痛く可笑しい。妻や女中との真っ当な恋愛ではなく、これぞ恋愛だというような恋愛。「美しき青きドナウ」の演奏シーンからゆらゆら川をすべるカメラの雰囲気もどこか肌をなめるようにエロチックで、キャッチアンドリリースされる魚のごとく水へと帰っていく放浪者がまたのびのびと泳ぎ出す姿に、恋に奔放な一人の人間を見ました。素晴らしき放浪者による素晴らしき映画です。[DVD(字幕)] 10点(2005-05-12 13:29:17)(良:1票)

5.  大いなる幻影(1937) 反戦を謳い、人間の本質を描き出した見事な作品です。「所詮、人間が作った物」の国境に救われるラストシーンは、人間が作る物への愚かさと尊さを描き出していてなんとも象徴的でした。幻影であるかもしれないが希望を紡ぎだす1コマ1コマ、1シーン1シーンは、どれも丁寧。どこまでも高貴になり得る人間、その姿そのものが幻影であったしても、幻影が実体になるその時を信じて営まれる人間の行い。その行いのなんとも愛しいことか。その行いこそに人間の本質があるのではないだろうか、と感じさせられました。そう感じることが“大いなる幻影”なのかもしれませんが・・・。とにかく素晴らしい作品です。10点(2004-05-14 13:23:21)(良:2票)

6.  シェルブールの雨傘 ピンク、イエロー、ブルー、レッド、グリーン・・・歌に合わせた、なめらかなカメラによって切り取られる画面の上を、カラフルな絵の具たちが鬼ごっこをして、はしゃぎ回っているような映画ですね~。黄色い清掃車の背景には黄色い服、白い雪の背景には白い服、青い壁紙の背景には青い服、赤い服の母娘、といった色彩の重なり具合は同じ色たちの仲良しこ良しぶりに見えて愛らしいです。それだけカラフルに描きながら、ラストを黒い服と白い雪で閉めるところが、モノクロ映画への敬意に見えてなんともいじらしい作品でありました。[映画館(字幕)] 9点(2006-02-13 12:45:30)

7.  世界 この作品、北京の「世界公園」を舞台に、女性ダンサーと彼女を取り巻く人間模様を描き“いまの中国”を表現するという着想を得た時点で監督には勝ち組のゴールが見えたのではないかな~。“世界”で愛を求める孤独感、“世界”に日々いることの閉塞感、“世界”から抜け出せない焦燥感・・・ミニチュアの「世界公園」を比喩に後はそれらをどう切り取っていくか。全体を覆う寒々としたフィルム(デジタル→フィルム)の質感が孤独感を、ワンカットで長々と回されるカメラの前の沈黙した空気が閉塞感を、ダンスが華やかであればあるほど焦燥感を現前させているように見えました。主人公タオとロシア人アンナが沈黙したまま人力車に揺られるシーンの顔に射し込む光の美しさ、言葉の通じない二人が交わす会話の豊かさよ。タオの心象を現すアニメ、携帯電話のメール、まんま使われる「東京物語」の音楽もよしとしましょう。「今年は雪が降らない」世界を締めくくるラストのほのかな雪に、二人の世界が暖かく展ける・・・ミニチュアの世界がようやく等身大の世界を手に入れたように見えるその痛々しさに心惑わされる傑作です。[映画館(字幕)] 9点(2005-11-27 23:42:37)(良:1票)

8.  冒険者たち(1967) 見終わった後もあの口笛の主旋律が心の底で静かに鳴り響くようなフランソワ・ド・ルーベの音楽・・・よかったな~。海を見ると今でもあのメロディを口笛吹いてる私は、冒険者からはほど遠いちっちゃな人間です。[ビデオ(字幕)] 9点(2005-05-17 23:46:13)

9.  ラウンド・ミッドナイト 私はジャズ演奏者や曲目に詳しいわけではありませんが、ジャジーな雰囲気の酒場でお酒を飲むのは大好きです。この映画はそんな酒場のBGVが合う作品ですね~。これはアメリカ作品ですがパリが舞台となっているためおフランスのパヒュームが漂います。ホンモノが醸し出す、ゴードンのジャズプレイヤーとして演奏、その頬のふくらみ具合、指使いなどはうっとりとしてしまいます。彼にインスパイアを受けたフランシス、彼を配置することでデイル・ターナーの神格ぶりを描くのですが、フランシスや彼の娘とターナーとの会話がミニマムで、そのことでよりフランシスとターナーとの関係に深みが増しています。海岸での広がりある開放感あふれるシーン、「世界は丸裸で・・・」と語るターナーとそこに挿し込まれるフランシスの娘のショットにはしびれました。そしてニューヨークでのターナーの孤高ぶり・・・。ターナーの映写に微笑を浮かべるフランシスの表情、彼の表情はこの「ラウンド・ミッドナイト」に魅了された人が浮かべているであろう表情のようにも見えました。さてとジャズのCDでも借りに行こうかな~、と思った人がきっと多い一品であります。え~っと返却日はいつだったかな?9点(2004-10-24 22:18:57)(良:2票)

10.  田舎の日曜日 《ネタバレ》 あの老人の心象をいちいち語るナレーションですが・・・どう考えても不要だなあ~。まあ、いいか。さてこの映画は楽しいんです。ある日曜日、田舎の老画家の屋敷で起伏の少ない話が進むだけなのですが楽しいんです。画、音、流れるようなカメラワーク、すごく広がりがあって翼が生えたような気分になります。室内シーンでは外で遊ぶ子供の声がかすかに聞こえたり、窓の多さが採光に冨む光あふれる室内を生み出し、外界と一体化しているようです。老画家は、老いを直視できず、若き日の自分という幻に生きています。ですので孫の存在を受け入れられないのか、全く孫に興味を示さず、女の子が木に登って降りれなくなり大騒ぎの時にも、お茶でも用意させようと暢気にかまえていますし、その女の子の書いた絵も全く見ようとしません。見えているのは、息子であり、そして独身の娘なのです。息子と色褪せた長椅子について語るシーン、庭にいる若き日の妻と自分が登場し家の中の子供たちを呼ぶシーン、など過去に執着する姿を描き、娘とダンスを踊った後、娘と息子夫婦が帰ってからのラストがこの映画の見せ場。駅からの帰り道、アトリエ、ようやく時の経過を受け入れる老人の姿が台詞なしに見事に表現されています。あの縄跳びをする少女二人の後ろ跳びは、きっとそれを初めて見たのでしょう。アトリエのシーンはもう過去への訣別そのものですね。それでは私もそろそろ今日という日に訣別しまして、真っ白なキャンバスで明日を迎えるとしますか。おやすみなさい。9点(2004-10-07 23:46:25)(良:3票)

11.  悪魔のような女(1955) 《ネタバレ》 前半で殺人の過程を提示し、プールの水を抜くところから一気にミステリー度が加速。ニコルが学校を去ってからはサスペンス度が怒涛のうねり。そしてホラーでさらりと締めくくる。うーん、見所たっぷりでございます。サスペンスは、不安にかられるクリスティーナの陰影、光をぼんやりあてたり、上半身だけあてたり、窓際から漏れる光をあてたり、とこのあたりの演出はしびれます。前半にも、車が通り過ぎる水たまりのショット、小石を投げ波紋が広がるプールの水面のショットをさりげなく射し込み、「水」がキーであることを表現。前日の魚料理が出てくることや、おまけにバスタブ2階の住人が聞いていたラジオのクイズ番組の問題が、「モザンビーク海峡をはさむ地は?」とこれまた水に関わる懲りようで、それらを発見する楽しみも与えてくれております。そんでもってラストのラスト、学校閉鎖の日にまで壁際に向かって立たされる少年モネの背中・・・こんなのアンリ!?9点(2004-09-05 00:46:55)(良:1票)

12.  ナイト・オン・ザ・プラネット オープニングの地球へのズーム、地球はよどみなく自転していますが、昼と夜は等分に変わらず、影=夜の部分に時折、差し込む光のようなものが、何気ない日常のドラマを感じさせてくれますねー。地球の各地で同時間に繰り広げられるタクシーの物語。人と人とが袖振り合うことで、少しだけ心が変わったりする日常の人間模様が、夜のタクシーを縮図として届けられます。それぞれのエピソードの冒頭、都市の画1コマ1コマがその街の息遣いを、ひたすら走り続けるタクシーが街の息吹を感じさせてくれます。長回しの多い会話の合間にタクシーからの主観ショット、街を滑るタクシーのロングショットを挿し込み、見ている者も心地いいドライブを楽しんでいるような気分にさせてくれます。「おはよう、アキ」、命ある者にはどんな者にも平等に朝はやって来るのですねー。今日とは少しだけ違った朝をむかえたい人におすすめの作品。9点(2004-05-22 21:18:27)(良:2票)

13.  巴里の屋根の下 《ネタバレ》 これは映画中のシャンソンを聞くだけで幸せな気分になれます。アルベールは恋には破れたが、楽譜までは破らず、あいかわらずパリの屋根の下で楽しそうにシャンソンを教えています。「まーまー皆さん、生きてりゃいろんな嫌なことも辛いこともあるかもしりゃーせんが、ここはひとつ、シャンソンでもうたって甘い気分に浸りやしょう」というメッセージが聞こえてきそうです。トーキーな台詞は少ないですが、数々の映像的音使いのセンスあふれる作品です。シャンソンで口説かれたのはニニだけではなく、“パリの屋根の下”で幸せになったのもニニだけではなく、この私もでした。思わずつっこみたくなるストーリィがマイナス1点です。9点(2004-05-16 23:44:36)(良:1票)

14.  ロバと王女 シャルル・ペローの寓話がミシェル・ルグランの音楽にのせて色鮮やかに綴られるドゥミの映画。青い色調で整えられた王様の国、赤い色調で整えられた隣家の王子の国、そして森へ逃げ込んだドヌーヴは緑色の色彩に彩られます。青、赤、緑・・・これは光の三原色であり、この三色を混ぜ合わせると白くなります。カメラのホワイトバランスは白さえ表現できればすべての色が表現可能であるとの光の原理であり、注目すべきは“白”となります。ペランとドヌーヴが現実から抜け出しランデヴーする丘のシーンは、白い衣装を纏った二人がオールマイティの夢幻を表現します。そしてラストの白で統一された衣装に、愛の普遍性が突き抜けていくのでありました。[映画館(字幕)] 8点(2006-06-23 22:55:26)

15.  ぐうたらバンザイ! 盆休みの間に見てしまい、職場へ復帰するのに随分と精神的苦痛を強いる原因となった作品。主人公のぐうたら賛歌にはパラダイス座のアルフレードも苦笑いでしょうな。そしてこれは見事な“いぬのえいが”で、主人公に仕えるワンちゃんの愛くるしい忠犬ぶりには頬も緩みますが、バクテン連発にゃ驚きました。で最後までその犬は「ワン公」・・・名前すら付けないぐうたらさ。ただ魚を釣り、ただ玉を突いて、食べて寝る。文部科学省選定映画です。[ビデオ(字幕)] 8点(2005-08-18 21:48:04)

16.  わんぱく戦争 そういや幼少の頃はドロドロになりながら暗くなるまで外で遊んだな~、と遠い日の花火でも見るようにこの戦争ごっこに明け暮れている少年たちを見ました。無邪気に真摯に戦う子どもたちがモノクロ画面いっぱいビスケット缶のように詰め込まれ、思わずポケットをたたいてビスケットを増やしたいような気分になりました。しかし先日職場の女の子がペンギンのドキュメンタリーを見て、ペンギンはこんなに一生懸命なのに私は・・・と落ち込んだ話を聞いて笑い飛ばしていた自分だったのに、この映画を見た後、子供たちはみんなほがらかに生きているのに私は・・・と落ち込んだ自分がいて、その子のことを笑い飛ばしていた自分にまた落ち込んだのでした・・・。って落ち込む映画ではけっしてございません。胸が高鳴るマーチは勇ましく、美しい旋律のピアノ音は優しい、いい映画ですよ~。[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-08-10 13:03:28)(良:1票)

17.  ダディ・ノスタルジー 青い空に浮かんだ雲がだるそうに流れゆく休日の昼下がり、どうしても見た~くなる映画があります。例えば「八月の鯨」。この映画も監督自身の「田舎の日曜日」と同じくその類で、南仏の海沿い、高台の家を舞台に遠くサッカー場から聞こえる子どもの声やホイッスルの音が穏やかな海の眺望に溶け込み、何もしなくてもそこにいるだけで、生きるっていいな~と思わせるようなフィルム空間が生まれています。父と母と娘、この三人のやや計測の難しい距離感がその空間で切り取られ、それだけといえばそれだけですが、それだけなのがいいんですな。ロージーの「召使」あたりでは、怪と陰を存分にのぞかせていたダーク・ボガードがダディに扮しノスタルジックに演じているのも見ものです。春眠にパンプキンパイとシナモンティーでも用意してどうぞご覧あれ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2005-04-04 12:30:06)《改行有》

18.  午後の五時 大統領になりたいという女性。その彼女がヒロインとして華々しく描かれるのではなく、彼女とその一家を介して、タリバン政権崩壊後のアフガンの現実、イスラムの伝統社会を透かせて見せています。食べること、住むこと、寝ること、といった生きる原初的欲求。おしゃれをするといった二次的文化的欲求。そのはざまの主人公の苦悩、葛藤、どうしようもなさ。廃墟の宮殿の静寂にポツンポツンと滴る水、ハイヒールの靴音。このコントラストは主人公の内面が見事に音をもって表現されています。義理の姉が水を使って洗う赤ちゃんの背景に、焚き火の炎を揺らめかせながら、水と火を生きる象徴として表現した後、暗闇の中、凍えを逃れるため、やむなく火をつけた一家の糧である荷車が燃え盛るシーンは、主題歌であろうイスラム歌謡がかぶせられ、とてつもなく切なく美しいです。ラスト、行き場を失った老人に神の死を語らせているのは、“午後の五時”に人間の死を意味させているだけではなく、神の死をも意味させているかのようでした。そして水平に消えていく一家は、水平から現れるオープニングの対として、静かにこの映画に幕を下ろしています。難癖をつけるなら、あまりにも対話シーンにクローズアップが多いのがマイナスです。引いたショットでその構図が映えているだけに、もう少し効果的にクローズアップが使えたのでないかなー、と感じながら映画館を後にしたのでありました。8点(2004-08-04 00:36:32)

19.  たそがれの女心 カメラの動きが流れる曲線美。この作品でキーとなる耳飾りがそのカメラの動きにシンクロするように流れる。転石はいつしか真の宝石に。宝石商が同じ耳飾りを将軍に売りに来た四度目には、さすがに「またかい!」と笑ってしまった。タイトルそのままにマダムの姓が臥せられているのはなぜだろう。宝石に輝きを与えるのは高貴な身分や血筋などではないのだ、ということだと解釈しておこう。 8点(2004-04-10 07:33:58)《改行有》

20.  太陽(2005) 終戦間際の未知なる何かを迎える不安と焦燥を薄暗い室内空間と微音で綴っていく。コチコチという時計の音が一定のリズムを刻み、経過する時間の平等性、普遍性を画面に与えていく。時の平等性と普遍性は、あらゆる空間のみならず、全ての人間に与えられたものであり、天皇も例外ではない。天皇がローソクを消したり、皇后が登場し電灯を点けても、変わらない画面の明度は、人間という意味で天皇も一般人と「変わらない」ということか。しかしこの作品は単に凡なる人間仲間として天皇を平に整地しようとするのではなく、その立場を常に差別化し続ける。人間と立場、平等と差別、その落差の構造に巻き込まれたままに、ラストの天皇のお言葉を「天皇の人間宣言」などと呼んでもいいものかどうかと歴史をぶつけられる。[映画館(字幕)] 7点(2006-11-24 17:04:04)

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