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プロフィール |
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自己紹介 |
ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。 「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。 映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。 目指せ1000本! |
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1. サンセット
《ネタバレ》 監督は前作の成功体験で味を占めたのか、情報を遮断されたヒロインの一人称で
帝国末期の閉塞感と混沌を描く試みは見事に失敗している。
登場人物たちの思わせぶりな台詞と一向に進まない展開、消化不良のまま残る謎など、
ひたすらヒロインに寄り添う撮り方が本作の舞台とミスマッチ。
ホロコーストという強烈な舞台装置があった『サウルの息子』はその焦らし方が効果的だっただけに、
監督のメッキが剥がれた形だ。
難解と言えば聞こえが良いが、逆に言えば「何を描きたい?」とも言いたくはなる。
歴史の闇を描きたいのか、激動の時代を生きようとするヒロインの強さを描きたいのか。
ヒロインが何を考えて行動しているのか分からず、妄想も幻覚も入り混じり、
最後は第一次世界大戦に兵士として従軍している。
帽子店が存続のため貴族に女性従業員を捧げている、性奴隷を匂わせる嫌悪を見るに、
彼女も過去に似た被害を受け、女性の殻を脱ぎ捨て、兄から憑依されるように同化したと解釈できるが。
当時のハンガリー史を知っていること前提。
帽子店を訪れた皇太子夫妻が翌年どうなったかは言うまでもない。[インターネット(字幕)] 4点(2023-10-19 22:19:15)《改行有》
2. サウルの息子
《ネタバレ》 同胞のガス室送りを手助け・後始末をしている"ゾンダーコマンド"の存在を初めて知った。
監督はかつてタル・ベーラの助監督を務めた影響か、スタンダード比率で寄り添うような主観の長回しが、
主人公の視野の狭さ=見たくない光景とリンクして、閉塞感と混沌の中に放り込む。
この二つが、飽和状態のホロコースト映画に新しい切り口を入れる。
ぼかされた死体の山には目を背けられるが、絶命の叫びからは逃れられない。
そしてその状況に慣れてしまった自分がいる。
だからこそ、死んだと思われる息子(という設定)を
自分を保つための理由づけにしないととても生きていけないだろう。
最後は撃たれるだろう彼の笑顔が、新緑の森に冴え渡る鳥の鳴き声が、
無機質なアウシュヴィッツ収容所と対比して寓意的に映る。
敢えてやっているかもしれないが、凄惨さと絶望度ではまだ足りない。
この撮り方がなければ、全く話題にならなかったかもしれないのだから。[映画館(字幕)] 7点(2016-07-18 19:09:19)(良:1票) 《改行有》
3. さあ帰ろう、ペダルをこいで
《ネタバレ》 交通事故で両親と記憶を失ったブルガリア系ドイツ人の青年とブルガリアから飛んできた型破りな祖父がタンデム自転車で祖国へ帰るロードムービーを縦軸に、社会主義時代のブルガリアからの亡命を図った一家の回想を横軸として交差していく。バッグギャモンとタンデム自転車が重要なキーワードになっており、原作付きだから当然とは言え、脚本が素晴らしい。無理なく伏線が回収され、ミニカーと自動車事故がオーバーラップして記憶を取り戻す演出には感嘆。叙情性溢れる音楽も素晴らしく、二人と軌跡を追った気分になれる。亡命が皮肉にも家族の断絶を引き起こし、新天地でも暗い過去を送っていた青年が、祖父と始めたバックギャモンをきっかけに過去と決別し、新しい人生を始めるラストに「世の中捨てたものじゃない」と思わせる力があった。英題は『世界は広い、救いはどこにでもある』。とても良い掘り出し物でした。[DVD(字幕)] 8点(2015-03-20 22:02:42)
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