|
プロフィール |
コメント数 |
565 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
三度の飯より映画好きです。どうぞよろしく。 ※匿名性ゆえの傲慢さに気を付けながらも、思った事、感じた事を率直に書いていますので、レビューによって矛盾が生じていたり、無知による残念な勘違いや独善的で訳分らん事を書いているかもしれませんが、大きな心でお許し下され。 ※管理人様、お世話になっております。 ※レビュワーの皆様、楽しく読ませて頂いております。
-------------------------
|
|
1. 審判(1963)
同じカフカの『変身』でもそうですが、ある朝突然トラブルに巻き込まれる不条理劇は不可解で非現実的にしてリアル。暗闇に堕ちたようにもがく姿は人間の原罪について問うたのか、司法に対する皮肉なのか、この後台頭するナチスや複雑な現代社会の到来を予期したのか、多様な解釈が可能です。映画では現代性を持たせ職場での機械的な匂いや巨大なコンピューター、冷気が漂い閉塞感に満ち迷路のように迷い込み息が詰まるのは現代社会の息苦しさを象徴しているようです。特に不気味なのは画家の隙間だらけの家で見張るように覗く子どもたちの目、目、目!法廷でも大勢に囲まれましたが、大人に見られるより純粋な子どもに見られる方が罪悪を感じるようで居心地が悪いです。特異な世界を持つカフカ作品を映像化するなんて到底無理な話と思いましたが、個人的には映画のほうが好ましいぐらいで、どのシーンも強烈なインパクトを残します。[DVD(字幕)] 8点(2006-12-07 18:26:25)(良:1票)
2. 自転車泥棒
《ネタバレ》 冒頭のテロップが流れる間に悲しげなメロディにのって映る長期間仕事にあぶれる人々…、このシーンだけで当時のイタリアの惨状がうかがえます。さらに質屋に積もったシーツの山、自転車一台に一家の生活がかかりこんなにもドラマティックになってしまう凄さ。この過酷な状況下で親子の必死さが伝わってくれば伝わってくるほど悲劇の度合いはどんどん増してゆき、涙腺の臨界点に迫ってきます。しかし、悲劇的とは言え実に優しい視点で親子を見つめています。残酷なことに父親が泥棒をするところを息子に目撃させるわけですが(このシーンが最もエモーショナルだ)、それでもラストで父親の帽子を大事そうに拾い、しっかりと手を握りしめる息子の姿などはとても甘いです。ですがその甘さは極端ではなく自然な感情であり、その純粋さが胸をうち歩き続ける父子の姿が心に深く残り、家族の幸せを切に願わずにはいられないのです。
≪追記≫久しぶりに見返して思ったのですが、本作では人にしても物にしても“多さ”が悲劇として働いています。仕事を待つ大勢の人々、質屋のシーツ、一台の自転車が貴重であるのに一方で通りに溢れる自転車、ラストも人込みの中を親子二人が去って行く姿は物悲しさを強調するものです。[DVD(字幕)] 9点(2006-01-30 18:18:29)(良:1票) 《改行有》
|