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1. パリの灯は遠く
カメラは『召使』のように部屋の間を不穏な感覚を伴って移動しながら、深度の深いパンフォーカスで的確に構図を決めていく。画面奥を動く人物、室内の調度品や絵画類、衣装といった情報密度の高い背景と細部は説話とも密接に連携し、ショットの持続が生む緊張感と相俟って最後まで映画は弛緩することがない。二人のクラインを駅ホームの前景・後景で重ね合わせる構図取りの見事さ、鏡や窓への主人公の映り込みや等身大の影(虚像)を多用した主題の視覚的提示等々、あらゆるショットが細心に設計されている。市街を走り周る黒塗り車の動きの異様な不気味さ、鋭角的なパースをもって強調される駅構内やゲットーの威容(美術:アレクサンドル・トローネル)も圧巻である。随所に深い「緑」を配した渋い色調設計も終始徹底され、夜の路地や移送列車のシーンの、闇の深みも素晴らしい。DVD版の画面は少し明るすぎの感あり。ビデオ版の濃厚な暗さのほうが本来志向された画調のように思われる。[DVD(字幕)] 9点(2010-05-19 19:59:39)
2. バレット(2012)
運転席と助手席での対話が多く、その深度のない構図の反復も単調。
ならば、流れる背景だとか車内に入射する街燈の光などで画面に変化をつけて欲しい。
クライマックスの発電所廃屋も、三者それぞれの位置関係の提示が不出来。
音の反響で繋ぐなり、縦構図を利用するなり、現場機具をもっと活用するなり、
もう少し空間を活かして欲しい。
湯気に煙るプールでの乱闘も、『イースタン・プロミス』の後ではいささか物足りない。
が、数々のアクションをこなしてきたシルヴェスター・スタローンの
武骨で年季の入った面構えと、彼の発する低音の響きは非常に渋く印象深い。
『スペシャリスト』以上に、彼の声の魅力がよく引き出されている。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2013-06-09 23:44:06)《改行有》
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