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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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261.  ナイスガイズ! 《ネタバレ》 バディもの、壊れかけた家庭、目の前の事件を追っているうちに巨大な陰謀に行き着くという展開、シェーン・ブラックの脚本は『リーサル・ウェポン』以来、ほぼこのパターンに当てはめて作られているのですが、本作もその例外ではなく「いつものブラックだなぁ」という感じでした。さらに、全体の軽さや不謹慎ギャグのレベルは『キスキス・バンバン』と非常に近く、本作において特に突出した部分はないように感じました(なお、本作にチョイ役で出てくる映写技師の青年はヴァル・キルマーの息子、ポルノ映画のプロデューサーの死体はロバート・ダウニーJrが演じてるらしいです)。 また、ブラックの初期作品には強烈な毒があり、『リーサル・ウェポン』『ラスト・ボーイスカウト』『ロングキス・グッドナイト』などは人生の最底辺で苦しみ、他人から避けられたり軽蔑されたりしている主人公の痛みであったり、捨て身の戦いの中で尊厳を取り戻すという熱いドラマが込められていたため、私はそれらの作品が大好きでした。しかし、本作ではその要素のみがスッパリと落とされています。おっぱいは出てくるし、死体で笑いをとるし、見てくれは過去最高にアダルトなのですが、ドラマの本質部分における毒がほとんどなくなっていた点はかなり残念でした。 さらに、本作は導入部がめちゃくちゃに分かりづらいという大きなマイナスを抱えています。ライアン・ゴズリング演じるマーチは、事故死したポルノ女優の叔母さんから「死んだはずの姪を見かけたから探して欲しい」という依頼を受けたが、そのポルノ女優の死亡は確実であることから、叔母さんは別の女性と見間違えたと考え、現場の記録から割り出したもう一人のポルノ女優・アメリアを追っています。他方、ラッセル・クロウ演じるヒーリーは、「自分を追っているマーチを脅して、もう来ないようにして欲しい」とアメリア本人からの依頼を受け、マーチ宅を訪れます。これが主人公二人の出会いなのですが、ここから二人揃ってアメリアを探し始めるという状況が物凄く分かりづらいのです。数日前に会ったばかりのアメリアを探すヒーリーってバカなのかと。 また、マーチと娘・ホリーの関係性も最初は良く分かりませんでした。酔いが醒めたマーチにホリーが電話をかけてくる場面が二人の関係性を示す最初のカットなのですが、通常の映画であれば、母親に引き取られたが父親を慕い続ける別居中の娘を連想させられる構図をとりながら、実はマーチと同居中であり、その日は友達の家に泊まっていたという、「誰がそんなこと連想するんだよ」という実に分かりづらいことになっています。演じるアンガーリー・ライスの魅力も含めてホリーのキャラクター自体は物凄くよかっただけに、冒頭の数十分間、彼女の個性や立ち位置を理解し損ねた点が残念でした。 後半でようやく明かされる陰謀の正体もよく分かりませんでした。行政と企業が癒着して公害問題が揉み消されているという事実を知ったアメリアが、その癒着を告発する内容のポルノ映画を作ったら、関係者及び映画そのものが抹殺されたという話なのですが、癒着を示すズバリの証拠の争奪戦ならともかく、誰からも見向きもされないようなポルノ映画を人殺しまでして葬り去ろうとしたことの意味が分かりません。人殺しをしたせいで、逆に騒ぎが大きくなってないかと。特に黒幕のジュディスはアメリアの母親であり、娘の命を奪ってまで映画を隠滅する必要があったのだろうかと、本当に不思議で仕方ありませんでした。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-11 15:27:59)(良:2票) 《改行有》

262.  ターミナル 《ネタバレ》 正直、微妙でした。やっぱりオチが中途半端だったのがイタかったですね。缶の秘密はどうでもよかったし、恋愛の落とし方はヘンだったし、グプタの自己犠牲はとってつけたようだったし、あれだけお堅い警備主任の突然の心変わりは不自然だったし。それぞれにじっくりとした描写が必要なシーンなのに、ほとんど説明なしで流されてるんですよ。おかげで、実に印象に残らないクライマックスになってしまったのが残念です。この後半って、実はスピルバーグ自身も手を抜いてたんじゃないの?とも思います。だって、念願のサインをもらいに行くシーンのあまりのこだわりのなさには驚きましたよ。話のすべてが収斂される重要な締めだと言うのに、タクシーでホテルに行き、本人に会い、サインをもらって、はい終わり。そんだけですからね。グプタおじさんの人生まで賭けさせた選択だったわりに、あまりに呆気なさ過ぎて参ってしまいました。それに、普通ならあそこでジャズの名曲をフルコーラスで見せるもんです。その音楽をバックに各登場人物の姿や、そこに至るまでのエピソードがフラッシュバックされ、最後には涙ぐむ主人公のアップ。それで感動を高めるもんですよ。しかし、主人公があれだけこだわったジャズの扱いはあまりにぞんざいで、スピから「はい終わりですよ」って言われてるような気がしました。そんなスピが見せたかったのって、やっぱり小ネタ満載の前半だったんでしょうね。前半は本当におもしろかったんですよ。強引に話を進めるのではなく、細かいエピソードを重ねてドラマを育むやり方って、実に好感が持てます。スピのコメディ演出の巧さには唸らされました。シリアスなわりに小ネタ満載の「マイノリティ・リポート」では「なんでこんなに悪趣味なの?」と笑うのをためらったものの(緊迫の追跡中、ロケットパックの炎でハンバーグが焼ける等)、今回の笑いはほのぼのしてて、実に気持ちが良かったですね。監視カメラVSトム・ハンクスや、グプタの曲芸などなど。この巧さが後半の感動にまでつながってれば、本当の傑作になったと思うんですけどね。5点(2005-01-17 21:20:09)(良:2票)

263.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 信仰の自由を求めたプロテスタントと自分の土地を求めた小作人により建国されたアメリカは、本来は貧しくも清くマジメであることを美徳とした国でしたが、ゴールドラッシュにより一攫千金に目覚め、石油により物質的な豊かさを追い求める国に変貌したのが19世紀終わりから20世紀はじめ。その時代を舞台にした本作は現代アメリカのデフォルメとなっています。ダニエルによる石油採掘を人々が歓迎する中、唯一土地を売らなかったのがホームステッド法(未開発の土地を農民に払い下げる制度。未開の地を家族だけで開墾するという大変な困難が待っていました)により苦労の末土地を得たおじいちゃんだったのは、古き清貧のアメリカ人と物質主義の新しいアメリカ人の対比でしょう。この期に及んで土地を提供しないこのおじいちゃんは、ダニエルからすれば「どうせ値段を吊り上げるハラだろ」としか見えていません。しかし実際には、札束で相手の頬を叩くような相手に大事な土地は渡せないけど、人として接するなら喜んで提供しましょうというのがおじいちゃんの意思でした。そんなおじいちゃんが人として大事だと考えているのが信仰でしたが、その信仰もすでに死んでいます。伝道師のポールは大袈裟なパフォーマンスで人を集めますが、彼の言動には神に対する畏れや敬意、人々を正しく導こうとする信念などはなく、金儲けの道具として人々の信仰心を利用しているのみ。「私は悪人です」と正直に言ってるダニエルよりも、正義面して人々の心につけこんでるだけ彼の方がタチが悪いともいえます。そしてラストではおじいちゃんは死に、その孫は農民として地道に働くことではなくハリウッドの俳優を目指し、伝道師はおじいちゃんの土地をダシにダニエルから金をせびろうとし、そのダニエルはおじいちゃんの土地の石油を黙って勝手にかすめ盗っていたという、古き良きアメリカは死に、なんとも浮わついた人たちだけがこの国に残ってしまいましたというオチ。お見事です。また、弟と名乗るヘンリーが現れた途端にHWを捨て、そんなヘンリーがニセモノだとわかるやまたHWを呼び戻すというダニエルの行動がありましたが、利害が一致すれば独裁国家でも支援し、都合が悪くなればかつて仲良しだったフセインやタリバンと戦争してしまうという、なんとも節操のないアメリカ外交みたいで興味深かったです。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2008-09-12 01:46:54)(良:2票)

264.  クリフハンガー 天敵ソ連を失って以降は迷走の続いたスタさんにとっては起死回生の作品であり、ジュラシック・パークをも超える大予算で挑んだ超大作だけあって、アクション好きにとっては大満足の作品です。しかも単純なドンパチアクションに終わらせておらず、崖を登ったり斜面を滑り落ちたりという雪山ならではアクションを中心にして見せ場を作っているのですから、他のアクション映画とはレベルの違う、かなり丁寧に作られた映画だと言えます。今回は山岳救助隊員であって戦闘のプロではないという設定を最後まで裏切ることはなく、スタさんが銃を一発たりとも撃たない、プロの傭兵と素手で格闘すると負けてしまうという辺りも新鮮です。また、CGが本格的に使えるようになる前の時代の作品だけあって、生身の人間が危険な撮影に挑んでいるという緊張感もバシバシ伝わってきます(スタさんの登場シーンはセット撮影が多いような気がしましたが…)。この辺りは、監督にレニー・ハーリンを持って来たことが功を奏しています。大予算にもまったくひるまぬ図太い根性があり、またスタッフや役者にいかなる無茶も要求する暴君ぶりも有名な監督だけあって、大変な困難を伴う撮影を妥協なくやりきっています。。。ただし、ハーリンの起用が裏目に出ている部分もあって、ドラマパートが台無しになっているのはその最たるもの。本作はアクションだけでなく、ドラマパートも実は充実しています。スタさん演じるゲイブは、敵の手から逃れた時点でさっさと下山してしまうという選択肢があったにも関わらず、親友のハルを救うためにテロリストと戦います。そのハルとは恋人の死を巡る深いわだかまりがありながら、それでもなお親友として彼の命を救おうとする熱い話でもあるのですが、ここが完全にスルー。対するテロリストは一枚岩ではなく、内部では殺し合いにつながりかねないほどの対立が発生しています。また強奪作戦の失敗からテロリスト達が猛烈に焦っているという珍しい描写も入っており、よく突っ込んだ話となっているのですが、これまた設定を活かしきれていません。演技のできる役者で脇を固めていることからも、本作をただのアクション映画には終わらせないという製作側の意思が読み取れるのですが、これらをうまく機能させられていないのが残念なところです。[DVD(字幕)] 7点(2009-10-12 22:20:32)(良:2票)

265.  エターナル・サンシャイン 《ネタバレ》 極めて特殊な設定ですが、その中身は非常に単純。①感情は記憶を超えうるのか?、②ラブラブだったふたりが別れに至るまで。この映画がテーマにしているのはこの2点だけです。①については、恋愛感情とは巡り合わせで起こるものなのか(=偶然)、それともまったく違うシチュエーションで出会っても恋愛感情は起こるものなのか(=運命)という問いかけですが、本作の出した答えはYes。ジョエルとクレメンタイン、メアリーとミュージワック博士の2組のカップルが記憶消去を体験しますが、どちらも記憶消去の後にもう一度恋愛感情を抱きます。ですが恋愛が一度失敗に終わっていることを知ると、メアリーは博士との報われない恋愛を終わらせることを決め、一方ジョエルとクレメンタインはお互いの欠点を認識し、自分がそれを許容できなかった事実を受け止めつつも、また恋愛しようと決めるのです。ジョエルとクレメンタインの決断はいかにも映画的なきれいごとのような気もしますが(あんな告白テープを聞かされて付き合う気になりますか、普通)、その根拠となる②が非常に秀逸なのです。ジョエルとクレメンタインの恋愛は私たちの身の回りにも転がってるような本当に普通のもので、だからこそふたりの葛藤には誰もが身につまされる思いをさせられます。私は彼女と鑑賞したのですが、ふたりがケンカする場面になると自分まで気まずい思いがしたし、一方ラブラブの場面では妙に照れくさかった。それほど恋愛というものがよく描けているんだと思います。感情が記号のように並んでるだけの映画や、ありえない主人公の泣けるラブストーリーなんかではこんな気持ち味わえません。その描写において、時間を逆行させるという掟破りが尋常ではない効果を発揮しています。お互いの欠点がどうしてもガマンできなくてケンカを繰り返しているところからはじまり、ラブラブだった頃へと戻っていくという驚天動地の脚本。あれだけ罵ってた相手が自分にとってかけがえのない存在だったのだと再認識する過程が押し付けがましくなく本当に自然でした。さらにこの映画、幼少時代へのノスタルジーまで盛り込んでみせます。どこまで凄いんだと感心しっぱなしでした。ともすれば難解となる脚本をわかりやすく、かつ刺激的なビジュアルでまとめてみせた演出もさすがで、芸術的にも感情的にも得るものの非常に大きい作品だと思います。[DVD(吹替)] 9点(2007-02-13 02:25:02)(良:2票)

266.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション 創作上のヒーロー達が、実は近現代史の裏側で暗躍していたという着眼点はまんま『ウォッチメン』ですが、ひたすら暗くて説教臭かった『ウォッチメン』と比較すると、本作には適度な笑いとスリルがあり、クライマックスには大掛かりな見せ場もあって、娯楽作としては抜群のバランス感覚を保っています。。。 2006年の『ファイナル・デシジョン』にてシリーズは一旦終了したものの、2009年の『ウルヴァリン』が結構な興行成績を叩き出したことから、「やっぱりX-MENは儲かる」ということでのシリーズ再開。とはいえ、『ファイナル・デシジョン』があらゆる設定や物語を豪快にひっくり返したことから(私は好きですが)、単純な続編は不可能ということで、シリーズの仕切り直しとして製作されたのが本作でした。『バットマン・ビギンズ』や『アメイジング・スパイダーマン』等を見ればわかる通り、仕切り直しの作品は大抵がオリジナルシリーズとの差別化に精出し、あっと驚くような設定変更を仕込んでくるものなのですが、一方で本作は、旧シリーズとの連続性を意識し、それらを作品に取り込んでいこうとする姿勢が好印象でした。新シリーズの一作目であるが、旧シリーズの存在も無駄にはしていない。そうした器用な作りとしたことが、2014年の『フューチャー&パスト』にも繋がっていくわけです。。。 主要キャラクターの生い立ちや、世界情勢、ミュータントの生きづらさ等、多くの要素をぶち込みながらも、本作の流れは驚く程スムーズです。真面目一筋のブライアン・シンガーと、単純娯楽に徹するブレット・ラトナーの良い所を掛け合わせたかのようなマシュー・ヴォーンの柔軟な演出には感心しっぱなしでした。オタク臭いチマチマとした辻褄合わせをやりながらも、クライマックスでは延々30分に及ぶ大スペクタクルをしっかりと見せる。そして、ラストでは相思相愛ながらも袂を分けたプロフェッサーとマグニートーの濃厚な友情まで。娯楽作としては文句のつけようがありません。役者の選び方も見事なもので、変なヘルメットを被って偉そうなことを言わねばならないという悶絶級に難しい役柄には、ケビン・ベーコンとマイケル・ファスベンダーという演技力とカリスマ性を併せ持つ俳優を当ててくる辺りの手堅さを見せています。[映画館(字幕)] 8点(2014-06-04 23:40:01)(良:2票) 《改行有》

267.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 《ネタバレ》 アウトローを主人公としているにも関わらず「毒を以て毒を制す」というそもそものコンセプトは前作以上に希薄化しているし、仲間だの家族だのと主張しすぎることもかなりめんどくさかったです。そういったキーワードをわざわざ台詞で言わなくても、見ている側にはちゃんと絆が伝わるように見せることこそが、演出の妙なのではないでしょうか。 また、殴り合いで戦ってきた主人公がラストで突然覚醒し、それまでとはレベルの違い過ぎる技を何の訓練もなくいきなり繰り出すという展開が私は大嫌いなのですが、本作はまさにそれをやっちゃってる点もマイナスでした。 さらには、スターロードが突出した能力を手にするとチーム内の持ちつ持たれつの関係が成立しなくなり、一人で事に当たればいいんじゃないのとなってしまうし、彼を神の子とした展開は完全に誤りだったと思います。なお、原作においてはエゴとスターロードの間に血縁があるという設定はなく(原作では宇宙帝国の皇子がスターロードの父親だった)、この神の子設定は映画オリジナルだったようです。 吹き替えで見ると、ゲスト出演のスタローンとハッセルホフの声優がともにささきいさおさんだった。この点だけが面白かったです。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に向けて重要なピースである以外の存在価値を感じない作品でした。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2018-01-05 20:13:05)(良:2票) 《改行有》

268.  アポカリプト 冒頭から驚きました。独特のメイクにケツ丸出しファッション、女性方はおっぱい丸出し(エキストラのみならず、ジャガーパウの奥さんのような重要な役柄に至るまで)、NHKスペシャルで見るようなジャングルの村がまんま再現されているではありませんか。これを演じているのはプロの役者さんなのですが、ジャングルで生活している人たちにしか見えません。映画であるからにはある程度綺麗に撮ろうとするものですよ、普通。おっぱいぐらいは隠すだろうし、少なくとも主人公にはかっこいいメイクをさせるものです。しかし本作はそのような映画的な修正を可能な限り排除し、徹底的にリアルに作り込んでいます。ここまで再現してくるとは思いませんでした。マヤの都市の作り込みも凄まじいものがあります。実物大セットとCGを見事に組み合わせた(実写とCGの継ぎ目がまったく分からないという完璧な完成度)都市の再現力は、私が見てきた時代劇の中でもトップクラスです。そこに生きる人々の描写も丁寧で、エキストラひとりひとりに至るまで衣装やメイクに手抜きがなく、画面に映る全員に対してきちんと演出が施されています。これ見よがしに巨大建造物を映し出す時代劇は多くありますが、そこに生活する人々を含め、都市の全体像を提示する映画はほとんど見たことがありません。しかも本作の舞台はマヤ文明。古代エジプトやローマのようにしばしば映画の題材になるような時代ならともかく、満足に映像化されたのは恐らく本作がはじめてです。そんな、参照すべき過去の作品もロクにない状態で、ここまでの完成度で過去の文明を描写してみせたことは驚異的と言えます。メル・ギブソンの監督としての才能と、優秀なスタッフを山ほど動員してきたプロデューサーとしての能力、どちらも大いに評価すべきでしょう。こうしてマヤの世界にどっぷり馴染んだところでいよいよ猛烈なアクションがスタートしますが、ここからはメル・ギブソンの才能がフルスロットル。ジャガーパウがゼロウルフの息子を殺した瞬間、「マジかよ」と場の空気が一瞬止まり、一呼吸置いてから追跡部隊が猛スピードで走り出すところからして燃えます。槍を持ってジャングルを走り回るだけのアクションをここまで面白く撮れるものかと、燃えっぱなし、驚きっぱなしでした。追跡者の動きを俯瞰で見せるカメラワーク等、ここでも優秀なスタッフに支えられていることがわかります。[映画館(字幕)] 8点(2009-12-26 18:51:52)(良:2票)

269.  地獄の逃避行 《ネタバレ》 突如挿入される自然の描写や詩的なモノローグといったテレンス・マリックの手法がすべてぶち込まれており、デビュー作の時点でスタイルを確立してしまっている点には恐れ入りました。『天国の日々』以降20年も監督業から遠ざかっていたのも、「これ以上監督業を続けても同じことの繰り返しだろう」と考えた結果なのだろうと思います。。。 『俺たちに明日はない』の二番煎じのようなあらすじですが、その実態は当時流行していたアメリカン・ニューシネマへのアンチテーゼ。負の感情をぶちまけまくっていたアメリカン・ニューシネマに対して、本作はいかなる感情をも排して光景のみを切り取るという作業に専念しています。1958年に発生したスタークウェザー=フューゲート事件をモチーフとし、無軌道な若者による連続殺人というショッキングな題材を扱いながらも、主人公を義賊とも悪人とも扱っていない点がなかなかユニークです。この主人公には何の目的意識もなく、行く先々でただ人を殺しているのみ。しばらくは決死の逃避行を繰り広げていたものの、飽きがくると自ら車のタイヤをパンクさせて警察に投降。逮捕後にも悪びれもせず、それどころか全米を騒がせた有名人として無邪気にはしゃぐという有様。なかなか斬新なアプローチではあるのですが、このレベルの無茶な犯罪に手を染める人間の心理って、案外こんなものではないかと思います。当初は殺人を犯す意図はないものの、目の前で発生した問題を解決するもっとも簡単な手段として殺人を選び続けた結果、死体の山が築かれるという。こうした本作の切り口にはなかなか惹かれるものがありました。。。 また、『シン・レッド・ライン』以降のような冗長さがない点でも、本作を良いと感じました。なんせ上映時間は94分ですからね。無意味に長い環境映像や、周りクドくて訳の分からんポエムは一切なし。物語をサクサクと進めていく簡潔な演出には感心しました。やれば出来るじゃないか、テレンスさん。[DVD(字幕)] 7点(2012-09-02 03:47:35)(良:2票) 《改行有》

270.  ニンジャ・アサシン 「こんなに楽しめるクソ映画は久しぶり!」というのが率直な感想です。殺人マシーンが人間性に目覚めて組織を裏切るという凡庸な題材をとり、さらには脚本に何の捻りもないため話は全然面白くありません。主人公の生い立ちが描かれる前半のつまらなさには筆舌に難いものがあり、見るのが苦痛で仕方ないほどでした。しかしこの映画、中盤の大乱闘から突如息を吹き返します。ライブアクションとCGを巧みに使い分けたカッコいい見せ場の連続には目が釘付けになりました。ニンジャ軍団がベラボーに強いことにも燃えましたとも。前半では脚本を追うだけだった演出も中盤以降はノリノリで、主人公が武器を鎖鎌から日本刀に持ち換えた瞬間に音楽が変わり、スピーディな早回しからスローモーションに転換する場面には、あまりのカッコよさに鳥肌が立ちました。完全武装の特殊部隊vsニンジャ軍団という世界中の男子が妄想した見せ場もばっちりモノにしており、ハリウッド製ニンジャ映画に求められるものはきちんと詰め込まれています。高いレイティングにも関わらず北米だけで製作費の元をとるほどのヒットになったのも、男の子が喜ぶものを漏れなく詰め込んだおかげでしょう。主演のRainも素晴らしい熱演を披露しています。ニンジャ映画の主演に韓国人俳優が起用されたことには不満もあったのですが、本編を見ればこのキャスティングに納得できます。これほどのアクションをこなせて、おまけに英語を話せる若手俳優は、残念ながら今の日本では見当たらないのです。また、Rainはイケメンではないものの不思議な色気が漂っている点でもミステリアスな主人公にふさわしい空気を持っていました。こちらもまた、薄味のイケメンが多い日本芸能界にはない魅力です。[DVD(吹替)] 7点(2011-09-24 20:16:36)(良:2票)

271.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 本作は家庭の崩壊を描いた作品だと言われますが、実際のところ、家庭という要素はあまり重く扱われていないように思います。主人公であるお父さんは中盤で吹っ切れてしまい、以降は家庭に背を向けてしまうからです。嫁や娘とどう向き合うかという視点は一切なく、彼女達の存在は彼の頭からは完全に消えてしまいます。むしろ私が注目したのは、本作が1999年に製作されたという点です。1999年といえば、『マトリックス』と『ファイト・クラブ』という映画史に残る傑作が2本も生まれた年。そして両作ともに、くだらない日常を生きる男が、生の実感を求めて戦いの世界に足を踏み入れるというお話でした。本作もまた、上記2作と共通のテーマを扱っているように思います。家庭と仕事に揉まれて人生を見失っていた男が、そうした一切のしがらみを捨てて自分の歩みたい道を目指す。上記2作の主人公が追い求めたのは「全人類の救世主になる」「国中の男を束ねた組織のリーダーになる」という幼稚な夢でしたが、一方、本作の主人公が追い求めるのは「女子高生とセックスする」という実に下世話だが、実に正直な夢。目指すもののレベルはぐっと下がりましたが、レスター・バーナムはネオやタイラー・ダーデンと同根の男なのです。。。 本作の脚本は非常によくまとまっています。「この後、私は死ぬ」というつかみで一気に観客の関心を引き、その後は意外性のある展開が繰り広げられてまったく先読みさせません。コンラッド・L・ホールによる撮影、サム・メンデスによる演出も非常に手堅く、こういうものをよく出来た映画と言うのだという見本のような仕上がりとなっています。ただし、問題に感じた点が一点だけあります。クライマックスにて主人公はついに憧れの女子高生とセックスする機会を得たものの、結局彼はセックスを辞退してしまうということ。そこに大人の良識を介入させたら、青年に戻った中年男の悲劇というドラマの意義が半減してしまうでしょうよ。アメリカ社会の破壊を実行したタイラー・ダーデンを見習って欲しいところでした。[DVD(吹替)] 7点(2013-06-21 01:25:38)(良:2票) 《改行有》

272.  ロード・オブ・ザ・リング - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 最高クラスの娯楽性、芸術性を併せ持ち、しかも荘厳な風格まで持ったのが真の映画だと思うんですけど、それって「ゴッドファーザー」と、そしてこの「ロード・オブ・ザ・リング」くらいしか歴史上存在しないような気がします。それほどのスーパー傑作なわけですが、このSEEはもんのすごいことになってます。こちらを見てしまうと、映画館で興奮したものは不完全版と呼ばざるをえません。なによりボロミアの復権がうれしいですね。劇場版では肝心なシーンがカットされ、さらに日本語字幕でもめちゃくちゃにされてしまい、ほぼ悪役扱いだったボロミア。しかしこのSEEを見ると、そのあまりに人間臭いキャラクターに共感せずにはいられません。彼は人間としての強さと弱さの両面を見せ、それゆえに感動させるのです。とくに、指輪の魔力に溺れたことを悔い、獅子奮迅の活躍を見せる最後のバトルはたまりません。あれこそ男です。どこか超越したアラゴルンよりも、私はボロミアの方が好きですね。人間の弱さや邪悪な面を嫌い、人間に対して極端な不信感を持つアラゴルンですが、そんな彼を変えたのもボロミアでした。SEEではふたりの友情がよりしっかりと描かれており、特にラストでは、ボロミアの死をきっかけにアラゴルンが人間の王になる決意をしたことがわかります。そして、このDVD版の吹き替えの出来もすさまじいものがありました。本当に完璧な吹き替えで、このDVDは9800円の価値は十分すぎるほどあります。こんなありがたいバージョンが世間のほとんどの人の目には触れないんですよね。映画ファンやってて本当によかったっす。10点といわず、12点くらい献上したい気持ちです。10点(2004-06-19 16:27:24)(良:2票)

273.  レディ・プレイヤー1 《ネタバレ》 IMAX 3Dにて鑑賞。世界観を説明する導入部や前半の見せ場であるカーレースでは3D効果の高い見せ場があるものの、後半にいくにつれてだんだんと3Dは雑になり、2Dでもいいっちゃいい状態になっていきます。 かつては娯楽作の帝王だったスピルバーグも今や70代。そういや21世紀に入って作った娯楽作で本当に凄かったのは『マイノリティ・リポート』と『宇宙戦争』くらいで、あとは社会派作品ばかりになったスピは過去の監督だと思っていたのですが、ごめんなさい、見くびってました。演出の緩急の付け方や見せ場に入るタイミングなどでは熟練した技が炸裂し、スピはいまだ現役バリバリの娯楽監督であることを見せつけられました。レースでのゴール場面や、ピンチにおける味方の救援など、来ることは分かってるのにそれでも興奮させられるという、この演出のキレは凄いと思います。 物語は紋切り型です。オタク青年の成長物語と夢追い人だったクリエイターの人生をたどる物語が平行して描かれるのですが、これが70年代から繰り返し見せられているスピルバーグの自己投影映画であり、特に新鮮味なし。また主人公の育ての親であるおばさんが殺されるという展開は、あくまで観客に対して敵はそれくらいやってくる奴ですよという説明をするためだけに存在しており、主人公の物語にはまるで影響を与えないというアッサリ仕様。要はビジュアルを見せることに映画のすべてを集中させており、そのためにドラマパートは極力簡素にとどめているというわけです。この豪快な刈り込み方とか、見ようによってはツッコミどころ満載の内容なのに、見せ場の勢いで乗り切ってみせたスピの力って、やっぱりすごいと思います。 もうひとつスピが見せた実力と言えば、膨大なキャラの権利関係の調整だったと思います。本作に登場する古今東西のキャラクターはとんでもない量であり、画面の片隅にチラっとえらいものが写ったりするのですが、これだけのキャラの使用権を獲得できたのは、世界中のクリエイターからの敬意を受けているスピルバーグが本作の看板になっているからだと思います。他の監督ではこうはいかなかったでしょう。[映画館(字幕)] 8点(2018-04-21 03:15:32)(良:2票) 《改行有》

274.  ブラック・スキャンダル 《ネタバレ》 元はバリー・レヴィンソンの企画だったものの降板し、代わりにメガホンをとったのがスコット・クーパー。この人はクリスチャン・ベール主演のクライムサスペンス『ファーナス/訣別の朝』を撮った監督さんなのですが、『ファーナス』は雰囲気こそ良かったものの、作品の要となるようなインパクトの強い見せ場や、2時間に渡って観客の関心を引き続ける強力なストーリーテリングを生み出せておらず、致命的な欠点はないものの、さして面白くもないという凡作に終わらせた実績を持ちます。この監督が、同じくクライムサスペンスである本作をどのように仕上げるのかについては不安が大きかったのですが、案の定、『ファーナス』と同じ傾向の作品となっています。各構成要素は悪くないのだが、2時間を引っ張るだけの強力なものがありません。 最大の問題は、監督が一体何を作品の主軸に置いているのかがよく分からないこと。ジョニデ演じるヤクザの成り上がり物語なのか、武闘派ヤクザの狂犬ぶりなのか、ヤクザとの癒着を暴かれそうになって背中に火が点いたFBI捜査官の転落劇なのか。元となった事件が10年以上に及んだだけに構成要素はパンパンであり、どのエピソードを落とすかという取捨選択が必要だったのですが、監督は乱雑にエピソードを詰め込んだ結果、個々のエピソードがぶつ切り状態で2時間を貫く大きな流れを生み出せていません。 そもそも、誰の視点で語られる物語なのかが不明確。FBIの事情聴取に応じる下っ端ヤクザが冒頭に登場するため、『グッドフェローズ』のレイ・リオッタのように彼がストーリーテラーになるのかと思いきや、冒頭を除くとこのヤクザは空気同然の存在感。その後、ジョニデの元右腕だった殺し屋が語り手として登場したり、ジョニデ自身の家族エピソードになったりと視点がめまぐるしく変動し、結局、感情移入の寄り代がないため物語に集中できないのです。せっかく豪華な出演者を揃えたのにこの出来は残念でした。スコット・クーパー、私の中の要注意監督の仲間入りをしました。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2016-08-10 00:42:35)(良:2票) 《改行有》

275.  ミッション:8ミニッツ 《ネタバレ》 公開時に劇場で鑑賞したものの、お恥ずかしいことに話を理解できなかったのでレビューを書くことを断念。それから2年、この作品の存在を思い出してブルーレイを手に取ったのですが、2度目の鑑賞で、ようやく映画の内容を理解することができました。。。 本作のキーとなるのは、原題にもなっている「ソースコード」と呼ばれるプログラム。これは、死者の脳を利用して並行世界へとアクセスするためのプログラムなのですが、生者では当該並行世界への旅行ができないことから、植物状態にあり、死者に限りなく近い身となっている兵士が、このプログラムの一部として利用されています。この基本設定を押さえておくことが本作の理解への第一歩となるのですが、初見時にはバーチャルリアリティの変種だと勘違いしたために、私は途中でお話を見失ってしまったようです。。。 中盤、主人公は8分後のテロ事件を知る自分の行動によって、列車に乗り合わせた人々を救うことができることに気付きます。彼はそのことをプロジェクトの責任者であるラトリッジ博士に報告するのですが、こちらの世界の住人である博士では、そのことの価値を共有することができません。「並行世界で人助けをしたところで、俺らの世界には何の影響もないんだよ。そんなことより、さっさと犯人探しをしろよ」。こちらの世界で生きる者にとっては当然の意見です。しかし、こちらの世界では植物状態でプログラムの一部に過ぎない身であるが、あちらの世界では人間として生きることができる主人公にとっては、あちらの世界を救うということが非常に重要となってきます。それがクライマックスの決断へと繋がるのです。。。 以上の理解にまで漕ぎつければ、本作のテーマは、監督の前作『月に囚われた男』と共通していることが分かります。システムの一部として非人道的な形で生かされていた男が、その呪縛から解き放たれるべく挑む戦い。相変わらず70年代チックなテーマを掲げているのですが、本作についてはその戦いが報われる美しいエンディングを準備したことで、従来のどのSF映画とも似ていない、独自の作品となりえています。なかなかうまいまとめ方だと思いました。。。 本作の欠点は、ラトリッジ博士を完全な悪人にしてしまったということです。博士を悪人にしなければ、より多面的に楽しめる作品となっただけに、その点だけは惜しいと感じました。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-01-03 01:50:59)(良:2票) 《改行有》

276.  LEGO ムービー 《ネタバレ》 本作は全編CGで描かれているのですが、本物のレゴにしか見えない質感、コマ撮りかと思わせるような絶妙なギクシャク加減など、限りなく手作りに近いビジュアルには感動しました。よくぞここまで作り込んだものです。 子供向けを装いながら、実際には大人をターゲットにしたウェルメイドな作りとした点は、さすがハリウッド。これだけしっかりとした作りであれば、子供たちは何年も本作と付き合うことができるし、大人になってこれを見返した時には、「子供の頃に楽しんだ映画が、これほど深いことを語っていたのか」と感動するはず。使い捨ての娯楽作とはせず、耐用年数の長い芸術作品として作ったクリエイター達の真摯な姿勢には感銘を受けました。 一方で、子供心を忘れていないことも、本作の良いところです。ガンプラは見てもいいけど触るなと子供達に言い聞かせている私にとっては、身につまされるお話でした。レゴもプラモデルもその本質は玩具であり、楽しんでこそ意味があるのに、それをルールで雁字搦めにして遊び心を奪ってしまうという本末転倒。息子達よ、本当に申し訳ない。バットマンがミレニアムファルコン号に乗り、スーパーマンとグリーンランタンがなぜか中つ国に居て、ガンダルフとダンブルドア校長が言い争いをする。ルールに縛られない本作の闇鍋感は最高だったじゃないですか。「νガンダムの隣はサザビーに決まってるでしょ!」と狭いことを言ってた自分が恥ずかしくなりました。 作品全体の主張も面白いと感じました。没個性的な主人公の生き方がいったん否定され、「個性が大事!」とディズニー映画みたいなことを言い出した時にはとても残念な気がしましたが、その後の展開で個性の塊であるヒーロー達が事態に対処しきれなくなり、主人公が小市民ゆえの強さを発揮し始めた時には胸が熱くなりました。これこそが「♪ありの~ままの~」ですよ。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-10-14 15:46:51)(良:1票) 《改行有》

277.  ドーン・オブ・ザ・デッド この映画はアクションですね。(ゾンビとは言え)群集に向かって銃を乱射する、情けをかけず殺しまくるなどなど、通常の設定では倫理的にいかがな描写も、ゾンビ相手ならOKとばかりにやりたい放題。ゾンビ映画の醍醐味のひとつってこれなんですよ。大勢で、しかも単品では弱い連中をとにかく殺しまくると。こういう正直な映画、アクション好きとしては奨励したいと思います。そしてクライマックスは「マッドマックス2」!プロパン大爆発、誰もが思い描くナイスな作法でチェーンソーを振り回すなどなど、とにかくわんぱく放題です。しかしこれがかの「ゾンビ」のリメイクとして見た場合には、確かに問題もあるわけで。ゾンビの存在以上にオリジナルのキモだったドス黒い世界観が継承されておらず、その点で言えば「28日後」の方がオリジナルに近いんですよね。そしてやっぱりゾンビはユラユラ歩きの方が不気味でいいです。殴られようが撃たれようがユラユラ歩いて来る、目的がわからないから怖いんですよね。でも目標めがけて全力疾走してしまうと、その怖さがなくなってしまいます。それに走ってしまうと、どうしても人間に見えてしまうんですよね。全員陸上選手みたいにいいフォームだし。でもゾンビが走ればアクションの緊迫感は高まるわけで、やっぱりこの映画はアクションとして評価すべきなんです。なのでこの点数で。7点(2004-06-03 22:29:26)(良:1票)

278.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 これはなかなか評価の難しい映画です。 声高に主義主張を叫ぶ映画ではないため表面上は中立を装っているものの、主人公が愛すべき家庭人として描かれ、「俺も真面目に働かなきゃ」と改心したまさにその日に射殺されたというドラマチックな内容としている点で、やはり表現にはバイアスがかかっていると思います。交通事故に遭った犬を抱きしめる場面とか、ハッパを海に捨てる場面とか、故人が一人で行ったはずの善行を一体誰が見てたんだよとツッコミを入れたくなりました。 そもそも主人公は前科持ちで出所後にも売人を続けており、社会との信頼関係を自ら破壊してきた人物なのです。そんな人物が公共交通機関で敵対グループと喧嘩をしたとなれば、警察官達が「相手は危険人物である」との予断を持って事に当たり、「新年で混み合う公共交通機関で一般市民に被害が出ないよう対処せねばならない。何かあれば即撃て」との姿勢でいたことにも、一定の合理性はあります。また、舞台となったフルートベール駅周辺は治安が悪く、その地では警察官達は緊張感を持って職務に当たっているという点も考慮に含めねばなりません。そうした警察官側の論理を扱っていない点でも、やはりアンフェアな内容だったと言わざるをえません。 ただし、さすがはライアン・クーグラー監督作品とだけあって映画としては抜群に面白く、その構成力には舌を巻きます。冒頭に射殺場面を持ってくることで「この人物は殺されます」という結末を観客に対して突き付け、当日の彼の些細な行動にも高いドラマ性と緊張感を与えています。主人公が非常に魅力的であることもドラマへの没入感を高めており、上記の通りの社会啓蒙的な側面を度外視すれば、これがとても良い映画となっているのです。[インターネット(字幕)] 6点(2016-11-02 19:06:22)(良:1票) 《改行有》

279.  アレクサンドリア 《ネタバレ》 拡大期にあったキリスト教が、現在のイスラム国やタリバンの如く多神教の文化や建造物を破壊しまくるという、かなり衝撃的な内容となっています。黎明期にローマ帝国より迫害を受けた歴史はしばしば語られるものの、一定の権威を獲得した後に従前の文化の破壊者となっていたという歴史はよく知らなかっただけに、本作の内容には驚かされました。 また、キリスト教の不寛容を描いた本作がカトリック国のスペインで製作されたという点も驚きなのですが、少しでも不備があれば文句がつきそうなセンシティブな題材にあって、監督のアレハンドロ・アメナーバルは文句のつけようのないほど徹底した完成度でこれに対応しており、作り手の気迫が画面ごしにも伝わってきました。CGに頼らず巨大なオープンセットを建設するという本物志向ぶり、モブシーンのド迫力など、歴史スペクタクルとして申し分のない仕上がりとなっているのです。 内容についてもどちらか一方の勢力を悪役に仕立て上げるのではなく、従前のローマ社会に大きな歪みがあって、社会システムからこぼれ落ちた弱者の受け皿としてキリスト教が拡大したという歴史がきちんと描かれています。基本的には人格者として扱われている主人公・ヒュパティアですら無意識のうちに差別的な言葉を使うという描写もきちんと挿入されており、歴史を多面的に描いて観客に問題提起しようとする姿勢も好印象でした。 問題点といえば、ヒュパティアがあまりに常人離れしていて、私を含めた一般の観客にとっては感情移入が難しいということでしょうか。信仰心はないものの、形式上はキリスト教に入信して批判をうまくかわしながら新旧文化の融和を図ろうとする弟子のオレステスと比較すると、敵対者にわざわざ攻撃材料を与えるかような言動をとるヒュパティアはうまくないなぁと思うし、その頑なさは、キリスト教側の強硬派・キュリロスと変わらないものではないかとの印象を受けました。[DVD(吹替)] 8点(2016-01-26 16:21:14)(良:1票) 《改行有》

280.  スーパーマン リターンズ 《ネタバレ》 9.11やアフガン・イラク攻撃などアメリカにとって波乱の21世紀においてなんでも解決してくれる無敵のヒーローは成立するのだろうかという難題に挑み、そこに突破口を作ってみせたブライアン・シンガーの手腕は相変わらず見事でした。かつての恋人に「スーパーマンはなぜ不要なのか?」という論文を書かれ、それがピュリッツァー賞まで受賞するほど変わってしまった世の中。町の人助けやちんけな犯罪者の成敗はやってくれても、テロや戦争など人類が抱える本当の困難には立ち会ってくれないじゃないかという大きな矛盾を前提としてこの作品は作られていますが、それに対する答案をきちんと準備しているのが立派なところ。スーパーマンは神のごとき力を持って世界を救うヒーローというよりも、目の前で困ってる人をほっておけない気の良い超人というスタンスを明確に出してきているのです。最初から最後まで基本的に彼は知り合いを助けるために戦っていることからも、彼の戦いの目的が個人的な方向へシフトしていることがよくわかります。また、スーパーマンに救われた人たちが感謝と尊敬を示すリアクションが丁寧に描いているあたりからも同様の意味が感じられます。墜落する飛行機を救う大スペクタクルの後に、スーパーマンの華々しい帰還を大歓声で迎える観衆が映し出される場面はまさに象徴的で、彼が観衆に支えられる市井のヒーローである(だから難しい世界情勢ではなく目の前の事件に立ち会うのみ)ことがよく描かれています。スーパーマンが病院に運ばれるというヒーローものとしてはありえない展開も、21世紀のスーパーマン像を確立する大博打だったと思います。徹底的なリアル路線にシフトしたバットマンよりも、ヒーローへのロマンと現実のうまい折衷をやってのけたスーパーマンの試みの方を私は評価します。そういえば劇中スーパーマンの活躍を報じるテレビの中から「ゴッサムでも目撃されており」という発言がチラっと聞こえるのですが(字幕では未訳)、バットマンの町にまで人助けに行っちゃダメでしょ。映画全体は恐ろしいまでに丁寧に作りこまれており、テンポも遅いのでやたら冗長に感じますが、それはスーパーマンに対する思い入れの違いだと思います。ガンダムが普通のアクション映画になっていたら日本人としては許せないのと同じ感覚で、アメリカ人にとってのスーパーマンはこのボリュームがふさわしいのでしょう。[映画館(字幕)] 7点(2007-02-11 17:28:21)(良:1票)


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