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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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421.  リミットレス かなり満足できたサスペンス映画でした。魔法のアイテムを手に入れて浮かれていたら後で大変なことになったというのび太チックな物語なのですが、本作の監督と脚本家は基本設定がとにかく雑であることをきちんと認識していたようで (財界の大物が欲しがるアイテムをなぜ街のチンピラが持っている?そして、なぜそれを主人公に飲ませた?etc…)、設定を深掘りせず主人公のサバイバルに物語の焦点を絞っています。この戦略が吉と出ていて、90分の勢いあるサスペンス映画としては年に数本出会えるかどうかというレベルの面白さとなっています。特殊な設定のおかげで先読みの難しい物語に仕上がっているのですが、同時にこの設定のアラを観客に見透かされる前にさっさと話を終わらせているのです(これ以上設定をいじくっていれば、映画は空中分解していたことでしょう)。観終わった後から振り返れば、主人公が執筆した小説、今カノと元カノ、主人公の殺人容疑等、投げっぱなしのネタがいくつも見つかるのですが、スピーディな語り口のおかげで観ている間は特に気になりません。ブラッドリー・クーパーの飄々とした個性も設定のアラを隠すことに貢献しており、これは映画化の勝利だと思います。[DVD(吹替)] 7点(2012-06-17 03:13:59)(良:1票)

422.  クエスト ヴァンダムIN少年ジャンプ。ベッソンといいヴァンダムといい、フランス人は少年マンガを読みすぎなんじゃないの?4点(2004-08-06 12:52:43)(笑:1票)

423.  幻影師アイゼンハイム 《ネタバレ》 『真実の行方』から『ファイトクラブ』までの間には「デ・ニーロに匹敵する天才アクター」と絶賛されたものの、21世紀に入ると共に手抜きの仕事が目立つようになり、今では演技派と呼ばれることも少なくなってしまった俳優・エドワード・ノートン。しかし、本作においては久しぶりにその実力を発揮しており、「この人はうまい人なのだ」ということを再認識させられました。空白の15年間、アイゼンハイムはどこで何をしていたのかは明確に説明されないのですが、ノートンのミステリアスな雰囲気や立ち居振る舞いによって、その空白は見事に埋まっています。実に説得力のある演技なのです。映画の内容は良くも悪くもノートンの演技に頼りっきりなのですが、余計な要素を加えなかったおかげでなかなか楽しめる仕上がりとなっています。。。 ただし、ラストですべてがぶち壊しになりました。確かにサプライズとしては機能しているのですが、論理的な整合性は完全に無視された、一発芸とも言えるオチには愕然としました。彼らは駆け落ちするために一連の騒動を巻き起こし、その騒ぎの中で無実の皇太子を自殺にまで追い込んだというわけです。刑事も刑事で、この騒動のために出世街道を手放したにも関わらずヘラヘラと笑ってる場合ですか。もし私がこの刑事の立場なら、怒り狂ってるところですよ。[DVD(吹替)] 4点(2013-03-27 22:53:53)(良:1票) 《改行有》

424.  マトリックス 《ネタバレ》 公開当時、一方には本作の斬新さに対する称賛があって、もう一方には既存の要素をシャッフルしただけじゃないかという批判がありました。現在になってあらためて鑑賞すると確かに本作のテーマは目新しいものではないのですが、哲学的なテーマを娯楽アクションでやろうとした試みは非常に斬新であり、かつこの試みを成功させてしまったウォシャウスキー兄弟の監督及び脚本家としての能力の高さは並外れています。それまでの映画界では、一方に「スターウォーズ」のような娯楽大作があって、もう一方に「2001年宇宙の旅」のような難解な作品があって、これらは水と油だったわけですが、「マトリックス」は難解さと面白さの融合を成功させてしまったわけです。また、きちんと作り込めば難解なテーマであっても観客は付いてくることを本作が証明し、ハリウッドのマーケット観や意思決定のあり方も大きく変えてしまいました。もし本作がなければ、ノーラン版バットマンなどは登場していなかったでしょう。とにかく脚本の完成度が高く、「信仰と哲学」という難解なテーマを一般の観客にも分かる形で提示し、かつそれを刺激的なビジュアルと燃えるアクションに絡めて物語を構築しています。隠喩に満ちたセリフは禅問答のようで一見すると不親切なのですが、一般の観客が付いて来られるギリギリのところで難解さを留めておいたサジ加減は絶妙であり、理解可能な節度を保ちつつ観客に考える喜びを与えたという意味では最高のサービス精神が感じられます。また、アクション映画としても本作の脚本は際立っています。象徴的なのがエージェントの扱いで、「エージェントは圧倒的に強く、もし彼らと鉢合わせると殺される」というセリフがしつこい程に繰り返されるおかげで、エージェントが登場するだけで画面に緊張感が漂います。ネオを逃がすためエージェントに挑んだモーフィアスの自己犠牲も、エージェント・スミスとの戦いを決意したネオの確信も、クライマックスのチェイスの緊張感も、「エージェントに追いつかれる=死」という擦り込みが徹底されていたからこそ、それぞれの意味が際立つ形となっています。一方で、公開当時絶賛されたビジュアルについては、現在見返すと多少のアラが気になります。ネブカデネザル号や人体発電所のCGは本編から浮いてしまっているし、カンフーやワイヤーアクションは役者が慣れていないためかヘタクソです。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2010-08-07 02:20:57)(良:1票)

425.  魔法使いの弟子 《ネタバレ》 「『ナショナル・トレジャー』のチームが再結集!」との謳い文句にイヤな予感はしていたのですが、案の定、つまらん映画に仕上がっていました。見せ場はそれなりに凝っており、これまでにないSFアクションを撮ってやろうという意気込みは感じられるものの、2時間の連続活劇としてまとめられていないのが大きな敗因です。世界の存亡をかけた物語なのに話に広がりが感じられないし、悪の魔法使いの封印が解けた場合に、どんな恐ろしいことが起こるのかという煽りも不足しています。「全人類は奴隷にされる」という大雑把な一言だけでは弱すぎるのです。それまで雑魚の敵すら倒せなかった主人公が、クライマックスで突如覚醒してラスボスを簡単に倒してしまうという唐突な展開にも興醒めで、主人公特権の濫用は活劇の勢いを削ぐということを学んでいただきたいものです。おまけに、そもそも主人公が戦いに参加した理由や背景までが薄っぺらなので、物語への感情移入が著しく困難な状態となっています。ルーク・スカイウォーカー、ハリー・ポッター、ネオ・・・平凡な生活から一転して激しい戦いにスカウトされた戦士というのは、往々にして引くに引けないシリアスな背景を背負っているものなのですが、一方で本作の主人公は軽すぎるのです。。。 ニコラス・ケイジ以外の俳優陣は、皆パっとしません。特に、主人公を演じたあいつは一体何者なんでしょうか?ダラしない顔にダラしない喋り方、オタクを主人公にするにしても、あそこまで無残なのは困ります。トビー・マグワイア、シャイア・ラブーフ、『ザ・ロック』に出演した頃のニコラス・ケイジらは、オタクの役柄であっても締めるべき部分では鋭い目つきを披露していました。それが出来てこそアクション映画の主役を務めるに足るオタクなのですが、一方で本作の主役は最初から最後まで一貫して間抜け面。そんな彼に惚れてしまったヒロインまでがバカ女に見えてしまう有様なのですから、彼の存在感は犯罪的です。[ブルーレイ(字幕)] 3点(2012-10-28 15:00:15)(笑:1票) 《改行有》

426.  CASSHERN 私が生まれる遥か以前のアニメなのでオリジナルは未見なのですが、どんな作品であったのかの予習はばっちりしました。オリジナルには「平和=戦争をしないこと」という誤った定義付けをした戦後民主主義の矛盾を突く姿勢が根底にあって、「平和を守るためには戦わねばならないことだってあるのではないのか?」という問いを子供たちに突きつける野心的な内容となっていました。例えば、絶対的平和主義を掲げる市民達が、何の抵抗もなしに自分達の街をブライキングボスに引き渡すというエピソードがありました。戦争をしないことこそが最善であり、自分達の善意は敵にも伝わるはずだという勝手な思い込みが彼らの中にはあって、さらには戦いで命を失うリスクを冒すくらいなら隷属の身に陥った方がマシという浅ましい根性があったのですが、そんな卑屈な人間を見たブライキングボスは「このようにして守るほど平和とはありがたいものなのか」と、その姿を鼻で笑うのでした。最終的に、全市民が虐殺されてそのエピソードは幕を閉じます。。。一方、実写版の本作。140分に渡って「戦争はいけないんだ!」と主張する内容はオリジナルの正反対です。軍国日本を悪役にするという世界観からも戦後民主主義的な価値観がベースにあることは明らかなのですが、これでは戦後民主主義への疑念を出発点とするオリジナルとは水と油。キャシャーンの設定にしても、オリジナルの主人公は父の反対を押し切って自らの意思で改造されるのですが、本作では父親のエゴの被害者として扱われています。父殺し・兄弟殺しの物語は石ノ森章太郎の世界だし、本作が「新造人間キャシャーン」のリメイクである必然性は限りなく薄いと思います。映画としても雑な部分が多くて、理念的な主張をしつこいくらいに繰り返す一方で、背景の説明ができていないのでセリフが完全に浮いています。「なぜこの人がここにいるのだろうか?」と、キャラクター達の基本的な動きすら見失うほど状況説明がヘタクソで、さほど難しくないはずの物語が非常に難解に感じられます。ただし、ビジュアルの素晴らしさは本物です。たったの6億円で作られた作品とは思えないほど見応えがあります。「腐ってもオリジナリティで勝負する」という監督のガッツも感じられるため、決して嫌いな映画ではありません(最近見たヤマトの盗作ぶりがあまりに酷かったので、本作がより際立って感じられます)。[DVD(邦画)] 6点(2012-02-01 00:53:49)(良:1票)

427.  アドレナリン(2006) エロくてグロいんだけど、笑える程度の適度なサジ加減。バカバカしい話なんだけど、しんみりとしたドラマパートも味がある。すごくバランスの良い作品だと思います。特に素晴らしかったのが冒頭で、死を宣告され絶望の淵に立たされたと思いきや、「なんだと~~!!」とブチ切れて残された時間で仕返しに走る主人公。ここで一気に物語が疾走を開始し、以降はバカバカしくも勢いのあるアクションがノンストップで繰り広げられます。見せ場における画面作りはカッコ良いし、アドレナリン切れで命の灯が消えかける主人公の描写もうまいものです。この監督さんのことはよく知りませんが、なかなかセンスのある人だと思います。また、ジェイソン・ステイサムも作品の本質をよく理解した怪演を披露。普通の俳優であればかっこつけようとしたり、感動的な演技を披露したりしようとするもんです。しかしこの人は最後までバカ。このプロ根性には頭が下がります。[DVD(吹替)] 7点(2010-10-28 21:14:31)(良:1票)

428.  オーシャンズ11 《ネタバレ》 オールスターキャストとは宣伝されたものの、出演者中本当にスターと言えるのはクルーニー、ピット、ロバーツ、デイモン、ガルシアの5人だけだし、その中でもデイモンとガルシアは久しくヒットがなくスターの座が危なかった時期にあり、本当にオールスターキャストと言えるのかどうかは疑問があります。一方で画面からは確かに豪華さが感じられたわけですが、これはキャストの力ではなくスタッフの実力によるところが大きいと思います。特にソダーバーグの貢献は大きく、インディーズ出身の彼にとって初のメジャー大作を任されたプレッシャーは相当なものだったはずなのですが、そんな中でも演出は非常に的確であり、時に余裕すら感じさせる素晴らしい腕前を披露。11人という大所帯チームが参加する犯罪計画は非常に複雑なのですが、流れるような演出と編集でこれを分かりやすく見せています。俳優達による軽快な絡みもうまく撮れていて、ケチの付けようのない仕事をしています。。。そんな監督の手腕にも関わらずこの映画が面白くないのは、脚本の出来がイマイチだったためでしょう。11人が参加する犯罪計画をわかりやすくまとめるという困難な作業に気を取られてしまい、各分野のスペシャリストである11人の特技を計画に活かすという重要な点が軽くなっています。まず、チームのブレーンを務めるのがオーシャンとラスティの二人なのですが、これはオーシャン一人でも務まります。ドライバーも二人は必要ないし、しかも高度な運転技術を要する展開がないため、二人とも必要なかったとも言えます。爆破担当とメカニック担当は通常であれば一人の人間がこなす役だし、スリの名人ライナスに至っては何のために存在しているのかがよく分かりません。そして、最大の問題がベネディクトの描写が浅いことで、観客が彼を敵として認識できるほどにダークな面が強調されていないため、オーシャンの計画に爽快感が不足する原因となっています。また犯罪者の妻だったテスがカジノ王であるベネディクトとどうやって出会ったのかも不明であるため(簡単に出会える相手ではありません)、テスとベネディクト、オーシャンとベネディクトの関係がはっきりしません。そのために、激しく憎んでいたはずのオーシャンの元に戻っていくテスの心境の変化もよくわからなくなり、見ようによっては感情的で頭の悪い女に見えてしまうという残念なことになっています。[DVD(吹替)] 4点(2010-09-15 22:33:45)(良:1票)

429.  サブウェイ123 激突 トニー・スコット+ブライアン・ヘルゲランド+デンゼル・ワシントンといえば燃えるバイオレンス大作「マイ・ボディガード」のトリオですが、今回は一転してアクション控え目で会話によるやりとりが中心となっています。にも関わらず宣伝において「クライム・アクション超大作!」と煽られたため、ガッカリされた方も多いようです。しかし、犯人との息詰るやりとりは悪くありません。さすがはヘルゲランドだけあってセリフにはキレがあるし、ビジュアルの巨匠スコットは単調になりがちなこの手の作品に視覚的なアクセントを入れています。ワシントン、ガンダルフィーニ、タトゥーロは相変わらずお上手。オリジナルはコミカルな要素を多分に含んだ作品でしたが、今回は芸達者なガンダルフィーニがコメディパートを引き受け、その役割を見事に果たしています。そして意外にも良かったのがトラボルタで、前述の3人のように器用なタイプの俳優ではないものの、この人は善人役にも悪人役にもハマるスターであり、かつ彼の演じる役柄には適度な大物感が漂います。彼が演じるライダーの素性や犯行の動機は謎となっており、ワシントン演じるガーバーと私たち観客はライダーの言葉や行動から彼が何者であるかを推測することとなるのですが、ここでトラボルタの個性が活きてきます。社会に対する正当な憤りから大それた犯罪を計画した「ザ・ロック」のハメル准将タイプの同情すべき悪役なのか、純粋に金のためにハイジャックを起こした知能犯にして、計画遂行のために錯乱状態を装っているだけの「ダイハード」のハンスタイプの冷徹な悪役なのか、社会を逆恨みして暴れているだけの単純バカなのかの判断がつかず、彼が次に何をしでかすかが読めないのです。このキナ臭さが作品前半の面白さに大きく貢献しているのですが、この味はトラボルタでなければ出せませんでした。善人と悪人を演じ分けられる俳優は多くいるものの、基本的に役柄を演じ分けていないトラボルタの個性がなければ、ライダーをここまでミステリアスには出来なかったのです。。。というわけで本作の脚本は謎の悪人ライダーによってNY市と観客が振り回されることが核となっているため、彼の素性が明かされる後半以降は話が急激につまらなくなってしまいます。彼についての謎解きをもっと引っ張り、素性が明らかになったところで映画を終わらせた方がよかったのではないでしょうか。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2010-08-25 00:56:21)(良:1票)

430.  リリーのすべて 《ネタバレ》 トム・フーパー監督との相性は悪く、どの作品も盛り上げ方がうまくなくて退屈してしまいます。本作も同じくで、例えば前例のない性転換手術を決意するくだりなんて多くの葛藤があり、そこに重大なドラマが宿ったはずなのに、実にサラっと流されるわけです。性転換手術後のリリーが百貨店に就職したことにしても、当時の社会がリリーを受け入れるかどうかという重要局面であったはずなのに、こちらもアッサリと流されてしまいます。また、リリーがヘンリクと浮気しているかもしれない場面をゲルダが目撃してしまったことは夫婦関係における深刻な問題だったはずなのに、こちらは結論が有耶無耶にされてしまう。本作のテーマを扱うのであれば当然盛り上がるべき部分が、ほぼ切り捨てられていることが気になりました。 また、本作は夫婦愛の物語として宣伝されていましたが、果たしてこれが美しい愛の形だったのかは疑問です。ゲルダからはアイナーでいることを求められていたにも関わらず、アイナーは「私はリリーよ」と言ってゲルダの心情や都合をまるで無視してどんどん突き進んでいくわけです。アイナーはアイナーなりに葛藤を抱えていたのならまだしも、自分の都合しか主張しないのだから身勝手にしか見えませんでした。せめて社会的な体裁くらいは取り繕おうという努力すら放棄しているのでは話になりません。それを受けるゲルダにしても、自分の軽はずみな行動で夫を開花させてしまったことへの責任感と、リリーによって画家としてのキャリアが開けたことへの感謝から、運命共同体の如くリリーに協力している様子であり、そこに夫婦愛という要素は薄く感じました。彼女はアイナーの幼馴染ハンスと浮気してるし。 エディ・レッドメイソンは男性役でも女性役でも美しくて驚いてしまいました。そんなレッドメイソンを際立たせるためか、アリシア・ヴィキャンデルは化粧も髪型も地味で、5年前ならケイト・ウィンスレットがやっていたような強い女性役を演じているのですが、今までの彼女が演じてきたものとはかなり違う役どころながら、見事これをものにしています。ヌードも披露して熱演アピールもバッチリ。果たしてオスカーに値するほどのパフォーマンスだったかどうかに疑問符が付かないわけでもありませんが、彼女の演技は本作の重要な見せ場となっています。[インターネット(字幕)] 4点(2017-01-08 03:28:41)(良:1票) 《改行有》

431.  デアデビル 《ネタバレ》 「X-MEN」「スパイダーマン」の予想を超える大ヒットを受けて急ごしらえで作られた作品だけあって(公開日が決まった時、製作開始のアナウンスからあまりに間を開けず完成したため「もう出来たの?」と驚いた記憶があります)、実に浅い作りとなっています。レーダーセンスの映像表現は美しいもののそれ以外に特に誉めるべきものがなく、数あるアメコミ実写化作品の中でも最低クラスの完成度と言えるでしょう。父親を殺されたマードック少年の怒り、善を名乗りながら人を殺すことの葛藤、素顔では愛し合いながら仮面をかぶると敵同士となるエレクトラとの関係などアメコミにありがちな要素てんこ盛りなのですが、そのどれもが中途半端で消化不良を起こしています。短い上映時間の中で原作にあった多くの要素を詰め込んでしまったため、すべてのイベントが軽く、印象に残らないものとなっているのです。エレクトラの扱いなどは特にひどいもので、父親の仇がデアデビルだと誤解しひと波乱起きるかと思いきや、デアデビルの正体が恋人マードックだと知った途端に誤解が解けてしまうというお手軽さ。新聞記者も何のためにいるのか不明であり、彼の登場シーンは丸ごと割愛してもよかったように思います。ハリウッドの川合俊一ことベン・アフレックもアメコミの主人公には合っていません。体が大きく動きが鈍重であるため、夜の街を飛び回る身の軽さが感じられないのです。キングピンとの最後の戦いに至っては、大きな人ともっと大きな人のただのどつきあい、アメコミヒーローの戦いではありませんでした。キングピンと決着をつけず、ブルズアイも生かしておき、エレクトラの生存も匂わせるという、ヒットしたら続編作るよ!という制作陣の腰の引けた姿勢もグダグダで、さすがにこんないい加減なものは評価できません。[DVD(吹替)] 3点(2009-09-12 00:10:49)(良:1票)

432.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 旧シリーズの劇場版には一通り目を通しているものの、テレビシリーズは未見。ファンではないものの、主要キャラクターや物語の背景についての知識はある程度持っているという状況での鑑賞です。。。 21世紀に入り、スタートレックシリーズは危機的状況に陥っていました。劇場版の興行成績は回を重ねる毎にワースト記録を更新し続け、テレビの新シリーズの視聴率も初回から低迷。長年、固定客のみを相手に商売を続けた結果、一般の観客・視聴者には理解不能な程に世界観が複雑化したことがその要因であり、大幅なリニューアルによって新規のファンを取り込むことしか、シリーズの維持を図ることはできないという状況にまで追い込まれていたのです。しかし、これが難題でした。少しでも気に食わない点があれば大騒ぎをする旧来のファンを納得させつつも、一般の観客をも取り込まなければならない。このリニューアル企画に最初に挑んだのはテレビシリーズのクリエイター達でしたが、話をまとめきれずに企画は頓挫。結局、スターウォーズ派を公言するJJエイブラムスにシリーズの命運を委ねることとなったのです。。。 エイブラムスは奇想天外なアイデアで、この難題を片付けてみせました。エピソード0でもリメイクでもない、タイムスリップにより時間軸が歪められたパラレルワールドでの物語としたのです。このアイデアには唸らされました。オリジナルの時系列を引き継ぎながらも、設定などについては全面リニューアルをする。これなら旧来のファンは納得するし、新規のファンは設定を一から覚えられる。このアイデアを思いついた時点で、この企画は勝ちだったのです。。。 さらに、リニューアルのメリットはこれだけではありません。旧劇場版にはテレビシリーズの俳優陣がそのまま出演し続けたため、主要キャストは中年や初老ばかり。これが娯楽作としての大きな制約条件となっていたのですが、リニューアルによって出演者全体が若返ったことから、見せ場はダイナミックなものとなりました。エイブラムスの小慣れた演出とも相俟って、スリル溢れる連続活劇に仕上がっています。ロミュラン人の逆恨みはさすがに度を越していないか?とか、ラスト、身動きがとれなくなったロミュラン船を攻撃するカークは容赦なさすぎないか?とか、細かい部分には疑問符も付きますが、そんなことはどうでもいいと思わせる程の勢いのあるアクション大作でした。[映画館(字幕)] 8点(2013-08-26 00:50:46)(良:1票) 《改行有》

433.  マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと 普段はヴァンダムとかスタローンばかり観ている私ですが、「たまには家族で見られる映画も借りてきてよ」と嫁に言われたので、ゲオで何気なくレンタル。子犬の可愛さを全面に押し出したジャケットと女性受けを狙った邦題から、事前には『ベートーベン』や『101』のような「犬さえ出しとけばOKなんだろ映画」だと思っていたのですが、意外や意外、これが犬のいる生活を丁寧に描いた良作でした。ラスト15分では涙腺から涙を搾り取られます。家族の前なので泣くまいと思ってたんですけど、どうしても堪えることができずに号泣。さらには、寝る前に映画の内容を思い出してまた号泣。本作の感動は、もはや暴力的とも言える領域に達しています。。。 原作はコラムニストが自身の経験をまとめたエッセイであり、基本的に実話ベースなので話のリアリティが違います。犬を飼った経験のある方であれば、身に覚えのあるエピソードの連続なのです。特に、わが家は作者と非常に酷似した歴史を歩んでいるので、他人事とは思えないほどでした。子供と犬の両方が騒ぎ出して手が付けられなくなった時に、「犬なんて飼うべきじゃなかったのよ!」と絶叫する嫁。うちでもまったく同じ光景が繰り広げられています。。。 映画化に際しての脚色では、犬に擦り寄りすぎない姿勢が好印象でした。映画の中心にあるのはあくまで主人公の人生であり、その人生において仕事の重要度が高い時期には仕事の描写を、子供の重要度が高い時期には子供の描写をと、必ずしも犬ばかりが描かれているわけではありません。さらには、子供と犬との触れ合いというビジュアル的に美味しい部分は、本作にはほとんど登場しません。なぜなら、子供と犬が遊んでいる時間には主人公は会社にいるので、その光景を見ていないから。そんな当たり前のことを貫き通し、安易なウケを狙わなかったことが、本作に動物映画を越える深みを与えています。。。 ただし、映画の視点が固定されすぎていることが凶と出ている面もあります。ヒステリックに怒ってばかりの奥さんが悪役に近いポジションになっているし(女性には女性の言い分があるでしょう)、長男が犬に対して寄せる思いも伝わってきません。そもそもの問題として、どストライクな私以外の観客・視聴者が、どれだけ感情移入できるのかは不明だし。本作には、あとわずかな客観性が必要だったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-07-08 22:37:36)(良:1票) 《改行有》

434.  パージ:アナーキー 《ネタバレ》 前作には低い評価を下したものの、続編である本作は実にいけるバイオレンス映画として仕上がっていました。 籠城戦だった前作からは一転して、本作では無法地帯となったロス市街地が舞台となり、ガトリング砲で人をミンチにするわ、固まって避難していたホームレスを火炎放射器で焼き殺すわのやりたい放題。主人公は射撃や格闘に精通し、状況判断にも長けたザ・ヒーローという感じの男で、その活躍は文句なしにかっこよく、「そう、こういうのが見たかったんだよ!」と頑固なバイオレンスファンを納得させるだけのビジュアルを叩きつけてきます。お話の方もユルユルだった前作からは一転してソリッドな仕上がりとなっており、なかなか気が抜けません。状況が悪化し、観客側のフラストレーションが最高潮に達したところで反撃!というテンポの作り方もよく、なかなか見入ってしまうのです。また、これだけの残虐ショーを繰り広げておきながら、クライマックスでは暖かさすら漂うというドラマ部分の味付けも絶妙であり、前作で感じた不満がほぼ解消されてお釣りがくるほどの仕上がりとなっています。 あえて不満点を挙げるなら、政府による介入や、反政府組織の登場など、ちょいと世界観を拡大しすぎで扱いきれていない設定があったかなということは気になりましたが、これについては現在企画中の『The Purge3』の仕上がり次第でしょう。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-01-02 00:24:06)(良:1票) 《改行有》

435.  オープン・ウォーター 《ネタバレ》 泳ぎの不得意な私としては相当怖い映画でした。サメが襲ってくる、クラゲに刺されるという直接的な恐怖以前に、だだっぴろい海のど真ん中に丸腰で放置されるというあの恐怖。ありそうでなかった題材をきっちり映像化したということでアイデアの勝利と言えるでしょう。映画的な演出をしてないように見せかけつつも、底意地の悪いラストをビシっとやってくる当たりの計算もうまかったと思います。とまぁ私は本作を十分に評価しているのですが、悪名高きブレア・ウィッチと同じミスを犯しているのはある意味致命的。海に置き去りにされる絶望感を観客の想像力で補ってもらうことを前提に映画を作ってしまっているのです。なので、私のように海底に足がつかなくなっただけで恐怖を感じる人間にとってはこの上ない恐怖映画であっても、そうでない人には退屈に感じられる仕上がりとなっています。ドキュメンタリータッチの中にもそれとなくひと工夫加えることを完全に怠っているのです。だだっ広い海に取り残されてることがわかる俯瞰ショットをひとつ入れただけで絶望感の描写は違っていただろうし、潮に流されている、体温が下がっている、海水は飲めないから脱水症状になるなど、おいしい材料はいくつも提示されているのに、その場限りのセリフで終わっているのが残念。サメだけでなくこれらの要素もラストに向けてじわじわと主人公達を襲ってくれれば、多くの人が怖がる映画になったはずです。また、ふたりの葛藤も薄味なような気がしました。この映画は特殊な状況に置かれた人の恐怖を描くという意味で心理スリラーに分類されると思うのですが、神経をすり減らす主人公達の描写が今一歩弱く感じました。生身の人間があの状況に放り出されればあんなに静かなことはないはずです。例えば海に置き去りにされたことに気付いてすぐの時点で、スーザンは遠くへ見えるボートへ泳いで行こうと言いますが、一方ダニエルは無理に動かずにこの場に留まろうと言い、その結果ボートに救われるチャンスを逃してしまいます。こうした二者択一の失敗は後の葛藤につながるのが映画の常套手段なのに、こんなおいしいエピソードが話に絡んでこないのはもったいない限りです。「サメに襲われる恐怖」もいいのですが、海に取り残されたということ自体を人間はどう感じ、どうリアクションするのかを丁寧に描いていれば、より多くの人が怖いと感じる映画になったはずです。[DVD(字幕)] 7点(2006-11-05 13:36:37)(良:1票)

436.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 バイオレンスを自称する他のすべての作品に対して「あんたら、本当の暴力をわかってないな」と言えるほどの強烈なバイオレンス作品。これに比べれば、スカーフェイスやグッドフェローズすら甘く感じられます。直接的なバイオレンスシーンはサウナでの死闘のみなのですが、暴力的でギラギラとしたオーラを作品全体が放っており、100分間すべてがバイオレンスシーンと言える状態となっています。コッポラやマイケル・マンが美学をもって描く闇の組織像もここにはなく、平然とモラルを侵し、人の不幸の上で生活する理不尽な縦社会がこれでもかと映し出されます。家族を大事にし孫をかわいがる一方で、10代の少女たちを売春宿に閉じ込めるセミヨンの憎々しさといったらありませんが、これがヨーロッパや、もしかしたら日本でも現実に起こっていることなのですから恐ろしい。監督と脚本家にはマフィアを糾弾したいという意思もあったようですが、現実社会の問題がよく物語に昇華しており、製作者たちがアンナやニコライに託した怒りに私たちも自然と共感できる形となっています。カタギからヤクザの世界を垣間見るアンナが私たちの視点となりますが、彼女の行動原理や直面する事態への反応が非常に自然なので、話に違和感がありません。口数の少ないニコライの人柄を僅かな行動や言葉からきちんと描けているのも見事。キリルから強要されたSEXのあと、情けなさと絶望感から泣くこともできない売春婦の少女に「まだ死ぬなよ」と声をかけるくだりは、作品の世界や彼の人柄を端的に示していました。また、本作の特徴である過激な暴力描写も決して露悪的ではなく、重みと必然性と作り手の責任感が伝わってきます。監督の手腕は神業の域に達していて、オリバー・ストーンあたりだと3時間以上かけそうな情報量を100分程度で無理なく片づけています。物語の進行と登場人物の感情が必ず同時に描かれ一切のムダが省かれており、駆け足も間延びもなく観客のバイオリズムにピタリと一致した構成となっています。テーマから逆算して描くべきものとそうでないものの取捨選択も的確に為されており、例えばFSB絡みの展開はいくらでも膨らませそうなものの、テーマの上では重要でない為触れる程度となっています。この監督は変な映画ばかり作ってるイメージがありましたが、いざシンプルなものを作らせても並の監督ではマネできないレベルにするのですから大したものです。[DVD(字幕)] 9点(2008-12-19 01:11:27)(良:1票)

437.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 原作、メルヴィルの『白鯨』ともに未読です。 職業映画を撮らせるとピカイチのロン・ハワードが監督しただけあって、19世紀初頭の捕鯨船の様子が描かれる前半部分はかなり面白くできています。また、エリート家系出身ではあるが経験のなさゆえに見栄を張りたがる船長と、身分は低いものの叩き上げで船員達からの信頼も厚い一等航海士との対立などは月並みながらもよくできており、見せ場、ドラマ、ともに充実しています。 ただし、海難事故を経て漂流が始まる後半になると、作品のテンションは一気に落ちます。職人的な航海士達が知恵を出し合って難局を乗り切るのではなくただ潮に流されているだけなので、ロン・ハワードが得意とする職業映画という領域から外れてしまうのです。飢えの中で人肉に手を出すという展開も作り手が意図するほど衝撃的ではなく、これだけ何もなければ仲間の肉を食うしかないでしょとしか感じませんでした。もっと容赦のない描写ができる監督が撮っていれば後半パートの訴求力はより強いものになったと思うのですが、ロン・ハワードでは無難にまとまり過ぎたように感じます。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-08-10 00:43:48)(良:1票) 《改行有》

438.  2 days トゥー・デイズ 90年代に数えきれないほど製作されたタランティーノフォロワーとしては極めて標準的な出来。悪くはないが、決して良くもないといったところです。本家タランティーノの強みとは、既存の映画作りの枠を無視して自由に物語を組み立てることにあるのですが、本作を含むタランティーノフォロワーは「タランティーノみたいな映画を作る」という点からスタートして自らを枠にハメており、そのことが最大の弱点となっています。。。 「パルプ・フィクション」を研究したと思われる本作の脚本は意外なほど丁寧に練られていて、当初は無関係に思われたエピソードがひとつに収束してゆく様はなかなか楽しめました。しかし良かったのはそこだけ。これまたパルプ・フィクションを意識したと思われる風変わりなキャラクター達を監督が扱いきれておらず、コメディパートではあまり笑えません(訛りのキツイ英語しか話せなかった当時のシャーリーズ・セロンがスウェーデン人役という苦心の果ての設定には笑いましたが)。これこそがタランティーノ症候群の罠であり、無理しておかしなキャラクターなど登場させず、監督の引き出しに合わせたキャラクター作りをやっていればよかったのです。[DVD(吹替)] 4点(2012-06-07 00:30:07)(良:1票) 《改行有》

439.  世界侵略:ロサンゼルス決戦 2012年一発目の映画には何か景気の良いのを観たいなというわけで、やたら勢いのあるタイトルの本作を鑑賞しました。悪評が多く聞かれた作品だし、主演は「ザ・コア」のアーロン・エッカートだし、内容に大した期待はしていなかったのですが、映画は自分の目で見るまでは分からないもの。意外にも満足できる作品でした。エイリアンと海兵隊による市街戦という設定は、ゲームではありがちなのですが実写では本作が初。なかなか目の付けどころの良い企画だと思います。内容は事前の予想よりも遥かに硬派で、海兵隊員の大半が有色人種という現実的な設定になっていたり、「自分を見捨てないでください」と言う部下を「戦場では何も約束はできない」と切って捨てるホットなやりとりがあったり、敵エイリアンの急所を見つけるために瀕死の敵ソルジャーをナイフで突きまくる場面があったりと、本気モードで練り上げられた脚本には好感が持てました。「テキサス・チェーンソー ビギニング」で素晴らしい腕前を披露したジョナサン・リーベスマンのビジュアルセンスも爆発しており、「ブラックホーク・ダウン」を思わせる戦闘シーンには大興奮なのでした。役者はよくトレーニングされていて、銃の撃ち方など非常に様になっています。本作は決してバカ映画ではないのです。逃げ遅れた市民を連れて基地までの10kmを移動するのみというシンプルなプロットは効果的で、前半は奇跡的なまでに面白く仕上がっています。残念なのは、主人公達が戦争の大勢にまで手を突っ込みはじめた後半になると話が途端に面白くなくなったことで、彼らは戦争の当事者ではなく、あくまで体験者の一人に留めておくべきだったと思います。宇宙人の侵略目的云々に言及しはじめてから途端につまらなくなったスピ版「宇宙戦争」と同じ理屈ですね。徹頭徹尾、傍観者の視点で「クローバーフィールド」を作ったJ・J・エイブラムスは、やはり偉大なのです。[DVD(吹替)] 7点(2012-01-01 18:39:57)(良:1票)

440.  ジャンゴ 繋がれざる者 『ジャッキー・ブラウン』までは緻密な構成力とオタクらしいおふざけのバランスが素晴らしかったものの、『キル・ビル』辺りからB級マニアを意識しすぎた映画作りが鼻につくようになり、『グラインドハウス』でとうとう自家中毒に陥ってしまったタランティーノですが、その後の2作(『イングロリアス・バスターズ』と本作)ではオタク趣味を控えめにし、純粋に面白い映画を作ろうという姿勢にシフトしたように感じます。どちらの映画も時代劇であり、得意の音楽談義や映画談義ができない舞台を設けることで自身に制約を課したようなのですが、それでいて、従前からの選曲センスで観客の意表を突いてくるという遊びは面白く、タラの個性が非常に良い形で出た娯楽作として仕上がっています。。。 本作で感じたのは、私たちが思っている以上に、タランティーノは引き出しの多い監督さんだということです。かつて、タランティーノと言えば捻れた構成が第一の特徴として挙げられていましたが、一方本作は驚く程シンプルです。ジャンゴという男の物語が一直線に進むのみであり、時間軸の解体等のテクニックで観客の目を誤魔化したりはしていません。また、演出についても笑いに逃げている部分が少なく、正統派のウエスタンをやってやろうという気概に溢れています。90年代にはオフビート専門でオンビートの映画を撮れない監督だと思われていたタランティーノが、ここまで真っ当な娯楽を追求したことは意外であり、本作はこれまでの彼の作風の正反対をいく企画だと言えるのですが、これをほぼ完璧に作ってきたことには驚かされました。ジャンゴのかっこよさ、生理的嫌悪感を抱かせる敵、そしてガンファイトの迫力、そのどれもが非常に高いレベルで仕上がっています。長い上映時間がまったく苦にならないほど展開はスピーディであり、さらには農場での食事の場面など、アクション以外の部分にも只ならぬ緊張感が漂っています。これだけやってくれれば大満足です。。。 さらに、黒人奴隷の物語でありながら、人種問題を過度に扱い過ぎていない点でも好感を持ちました。ジャンゴのパートナーは白人だし、敵方にも黒人のブレーンがいる。余計な政治的要素を排除したおかげで、純粋に楽しめる娯楽作となっています。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-09-30 01:03:54)(良:1票) 《改行有》


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