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1. 風の歌が聴きたい
《ネタバレ》 大沼公園をデートする長廻しシーンをはじめ、中江有里と雨宮良の二人は手話を完全に自分のものとし、
モデルその人になりきるようにナチュラルにコミュニケーションをとっている。
その他の出演者達も手話の身振りを器用にこなしており、そうした俳優の努力だけとっても感心させる。
が、そのようなテクニック以上に彼女の身振りと表情の豊かな表現力に感動させられる。
一般的に健常者がやれば過剰と見做されるその身体表現には、相手に心を伝えようとする切実な意志の力が漲っている。
サイレント映画の俳優が全身で喜びや悲しみを表すあの表現力。まだ喋れない幼子のあの表現力を思わずにいられない。
髪型も幾度か変え、学生時代から出産までを演じる中江はその容貌だけでなく、雨宮との交際の中で変化していく感情を
演じきって、魅力的だ。[DVD(邦画)] 8点(2015-10-27 17:18:04)《改行有》
2. ガメラ3 邪神<イリス>覚醒
《ネタバレ》 赤道付近の密林から、京都駅構内、そして生命体内奥へと舞台を狭めていくように、
物語においても画面においても、拡がりよりも深さと垂直性が志向されている。
人間が怪獣を見上げる視点。その仰角もシリーズ中で最も大きく、
ほとんど真上を見るようなショットの多用によってスケール感が出されている。
渋谷のシークエンスでの、デフォルメ造型されたガメラの巨大な足が
キャメラの眼前に迫るショットのパースなどは絶品だ
。
ミニチュアセットでは貧相になりかねない「火炎」の合成への
果敢な挑戦と成功にも拍手したい。
炎や破片、逆巻く細かな雨滴のスペクタクルも圧倒的だ。
特撮映画は、記憶に残る物語など無くとも、
強烈に印象に残るショットさえあれば十分に勝ちと云って良い。
ラストの炎に包まれる京都の超ロングショットも、
まるで『関の彌太っぺ』のように感動的だ。
[映画館(邦画)] 8点(2012-11-05 22:13:03)《改行有》
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