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1. 曲馬団のサリー
ホークス『ハタリ!』の遥かな先駆けともなる小象のアクション。
迫力の白煙と放水の中で繰り広げられる列車と自動車の痛快アクション。
加えてキャロル・デンプスターが身体を張って懸命に走る、飛ぶ、よじ登るの
クライマックスの大アクション。
そして随所に散りばめられたユーモラスなギャグに、華やかなダンスシーン。
その盛りだくさんのエンタテインメント精神も感動的だが、
それ以上にこの原初的アメリカ映画が胸を打つのは、
その快活なヒロインがふと垣間見せる、人を恋う孤独の表情だ。
南部のカーニヴァルにやってきたデンプスターが街中を一人で歩く。
誰のものとも知れぬ「母を悼む」墓石に彼女は一輪の花を手向ける姿が愛しい。
育ての親W・C・フィールズを慕い、幾度も抱き合い、全身で情愛を示す。
招かれた祖父母の家で、それと知らずに祖母と見つめ合い、触れ合うショットが美しい。
人を恋う、その普遍的・根源的なエモーションとアクションとの一体化が
強く心を引きつけてやまない。
ラスト、一人去りゆくW・C・フィールズに必死にしがみつくデンプスターの
見目はばからぬ懸命な身振りには涙、涙だ。
[DVD(字幕なし「原語」)] 10点(2014-02-14 13:21:06)《改行有》
2. キング・オブ・キングス(1927)
豪華絢爛の衣装と、宮殿をはじめとする壮大な美術セットが圧巻。
人間の群衆だけでなく、登場する動物群も猿、馬、豹、ロバ、山羊、牛、鳩と多彩な上、各種の特殊撮影も融合し、ワイドスクリーンのニコラス・レイ版と比べても遜色ない。
妖艶なマグダラのマリア(ジャクリーヌ・ローガン)に憑依している7つの悪霊を視覚化する多重露光の見事さや、イエス(H・B・ウォーナー)の死後にエルサレムを襲う天変地異のスペクタクル(暗雲と雷光、地割れと土埃)の迫力が素晴らしい。
イエス復活シーンで、天然色となる趣向も意表を衝く。カラーによる朝焼けのショットが鮮烈だ。
そして全編通してイエスに当てられる格別美しい光が印象深い。
その初登場シーンは盲目の子供の眼を癒すエピソード。子供の主観ショットである闇の画面に次第に光がもたらされる。
その中にイエスの顔が浮かび上がる。
彼の輪郭線を眩く輝かせる斜め背後からの強い光線が荘厳かつ幻想的だ。
[DVD(字幕)] 8点(2012-02-15 07:49:16)《改行有》
3. 極北の怪異
ロバート・フラハティによる記録映画の魅力は、狭量な「民俗記録」でも「資料的価値」でもなく、ジャンルや手法や国境に囚われぬ自由な精神に基づく映画感覚といえる。一般的には記録映画としてもの珍しさを第一に要求するであろう映画会社に対し、フラハティはそれ以上に「人間と自然」の魅力の活写に大きな力点を置いていることが画面から明らかに伝わる。ローポジションが緊張感を煽るあざらし漁の撮影。酷寒の猛吹雪の迫力と寂寥を伝えるモンタージュ。一方でナヌーク一家がカメラに向ける大らかで人なつっこい表情やユーモラスな仕草が断然素晴らしい。カメラが全く警戒の対象とはなっていない。これは日本でいえば小川紳介(山形)、佐藤真(阿賀)等の傑作ドキュメンタリーに受け継がれていく、腰を据えた共同生活というアプローチあってこその魅力的な表情といえる。勿論それは単なる長期取材・長期撮影という手法のみで成し得るものではなく、一定期間はカメラを回さず肌で喜怒哀楽を共にすることによって獲得される対象との親和性や、映画的各瞬間を的確に捉える手腕と資質があってのものだ。[DVD(字幕)] 10点(2009-08-08 21:36:43)
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