|
1. 狂走情死考
《ネタバレ》 真白な雪の中、木に縛り付けられ、鞭打たれ、真冬の浜辺を裸で走りと、
俳優たちはかなりの無茶をやっている。ほとんど苦行だ。
夜の西新宿を延々と駆け続ける吉澤健の移動ショットから小樽の雪道を彷徨するラストまで、ひたすらの北上逃避行。
その風景の変遷が時代を鮮明に映し出している。
それは低予算を画面に露呈させない若松作品のしたたかな策でもあるが、その情景の力と身体の感覚は常に積極的な強みになっている。
殺したはずの警察権力が、いつの間にやら目の前に超然と姿を現し、、
という展開も実に寓意に満ちている。[映画館(邦画)] 7点(2015-12-21 23:55:00)《改行有》
2. 驚異の透明人間
サーチライトに浮かび上がる秀逸なオープニングタイトルが即座に次の脱獄場面に連携する。
この脱獄のシークエンスがカットバックを含むわずか10カット足らず、時間にして1分弱の簡潔明瞭さ。極端な短さながら、サーチライトとマシンガンによる光と影のコントラストによってその印象度は強烈である。
カラーの時代ながらモノクロの選択が功を奏している。透明化が不完全で実体が現れてしまう場面の特殊撮影もまた、モノクロ効果と馴染んで違和感がない。その特撮もわずか数カット。
その効果を最大限に活かすために全編をモノクロに統一する映画人としての矜持。
フリッツ・ラング作品の美術担当によって培われただろう、ポイントを押さえたセット・小道具類へのこだわりと創意工夫が随所で見事に活きている。[DVD(字幕)] 8点(2007-09-30 14:01:12)《改行有》
|