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1. 原子力戦争 Lost Love
《ネタバレ》 舞台は、当時から放射能漏れの疑惑を持たれていた福島第一、第二原発。
田原総一朗の原作とATGならではの強みによって、ジャーナリズム問題も絡めながら、電力会社の隠蔽主義を告発する。
ドキュメンタリー出身の故・黒木和雄は初期に『海壁』という東京電力のPR映画を撮ったのち、その贖罪のように本作を撮っている。
電力会社の監視と立ち入り拒否を受けながら撮られたという画面は、映画内容とシンクロしつつ、その画面的制約と不自由ぶりが静かな緊張感を漲らせている。
日中に望遠で撮られた発電所の表層的なまぶしい白と、闇討ちが繰り返される夜間シーンの不気味な黒い画調の対比が特徴的だ。
松林の中を逃げる原田芳雄をカメラが追う中、林の中から幽鬼のように群集が湧き出てくる。そのカメラワークはまるでベルトリッチの『暗殺の森』のようだ。
青く美しい浜辺に打ち上げられ、波を受けながら沈黙する原田芳雄の屍。
その図は三十三年後にして痛烈な象徴性を帯びる。[ビデオ(邦画)] 7点(2011-04-09 23:57:52)《改行有》
2. 激動の昭和史 沖縄決戦
《ネタバレ》 アメリカ施政下26年目での映画化。いわゆる沖縄返還前年の映画である。現在に至るも何ら変わらない沖縄軽視への怒りと鬱屈は如何程だったことか。
一方の映画界は斜陽化の真っ只中だ。その中での精細なリサーチ、過酷なアクションを撮る新藤兼人・岡本喜八の
苦労は並大抵ではなかったはずである。
非沖縄的な風土・キャスト・言語に対する批判は容易いが、それはやはり酷だろう。
為政者側に特化した『日本のいちばん長い日』に対する反動でもあろう、軍部(参謀本部、32軍)・沖縄県民の双方を巨視的に描く
「叙事詩的リアリズム」(山根貞男)は、今度は米国兵士側を表象の対象から外した。
その視座は、日本軍の民間人軽視の描写を甘くもしていよう。
しかし、壕を出ろという軍人に抗議する大谷直子、軍人を弱虫と詰る女学生達の痛烈な叫びはカメラに正対して発せられている。
それは、画面を見る我々日本人たちへの痛罵という事に相違ない。
『ドイツ零年』のごとき、幼い子供たちの表情。そこには「主題におけるリアリズムとは全く異なったスタイルにおけるリアリズム」がある。[ビデオ(邦画)] 7点(2007-01-14 12:53:44)《改行有》
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