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1. THE BATMAN-ザ・バットマン-
《ネタバレ》 サスペンス・スリラーの世界にバットマンがやってきましたよ、という趣の作品で、要するに「セブン」「SAW」とかの世界にバットマンがいたらどうなるか? って話で、私はその手の話は超好きなのでとても楽しく観られました。いや良い。敵がリドラーって時点でどう戦うのか興味津々だったのですが、いや、好きな展開で来てくれてとても嬉しいって感じでした。
よく比較される「ダークナイト」が、テロリストの犯罪アクションにどうバットマンを取り込むかという初の(?)試みで、あのジョーカー含めて見事に作品に昇華してたのに対して、本作も別ジャンルとバットマンの融合という点で、なかなかうまくやった作品と言えると思います。
白眉は、なんといっても、あのバットマンとリドラーが直接対面する場面でしょう。そう来たか! と思わず膝を打ちました。
まあ、これ系の作品って、結局、驚天動地のとんでもないオチを論理的整合性を伴いつつ提示できるかという一発ネタの切れ味がものを言うと思うのですが、そうそうそんな良いネタを思いつくことはなくて、サスペンス・スリラーものとして体裁はスタイリッシュに見事に描かれてるけど、ネタの切れ味は世界を揺るがす、というほどでもなくて弱いかなと思いました。サスペンス・スリラー系のヒット後、第2作目くらいの水準かなあみたいな。
あと個人的に、リドラー役のポール・ダノが好きなので(スイスアーミーマンとか良い)、あのどうにもイケてない青年役とかの多い彼がどうやってバットマンの悪役を張るかと思ってましたが、いい感じのキレ具合と、「何者でもない」悪役にぴったりハマって良かったと思います。
主役のバットマンの方はキャットウーマンともども良い雰囲気だったと思うんですけど、全般的に何か決断して行動するみたいなところがなくて、ただただ状況に流されてリドラーのなぞかけを解決してくだけの展開になってしまってるのが、ヒーローものとして物足りない部分ではあったかと思います。エンドで取ってつけたようにバットマン的選択の場面を付けてはいましたが。リドラーとの対面での葛藤が、個人の問題で終わっちゃうので、もうちょっと利他的な苦悩をすると良かったかも知らん。
そんなところで、サスペンス・スリラー系は大好きなので思わず+1点してしまって、こんなところです。[映画館(字幕)] 8点(2022-05-04 11:39:40)《改行有》
2. 最後の決闘裁判
《ネタバレ》 マット・デイモン、ジョディ・カマー、アダム・ドライバー、ベン・アフレックという中堅どころが中世のフランス(14世紀)で、決闘する物語をやるという、事実に基づいた話ということなので割と地味に展開されるかと思ったら、意外にエンターテインメントしていて、中世の風俗(服装とか建物とか楽器とか食事とかあれやこれや)がわりと本格的にしっかり描かれるのに加えて、決闘裁判の騎士同士の騎馬戦がやけに迫力満点にしっかり相手にとどめを刺すまで描かれ、騎士槍強え! とか鎧で固めてると刃とか通らないので斧とか良いなとか、最後はやっぱり鎧通しが殺意高くて素晴らしいとか、決闘だけでなく騎士が仕事として遠征して森の中で集団戦をするとかそういうところの描写が逐一凝っていて、非常に興味深くワクワク観られた感じでした。個人的には当時まだバイオリンは発明されてなかったはずなので、あのバイオリンぽい弦楽器は何だろう? とか気になって仕方ないみたいな(バイオリンの先祖になるような楽器はいろいろあったようなのでそれかなあ、とか)。従騎士と、正式な騎士と、騎士にも種類が色々あります、従騎士には「サー」は付けませんとかいう描写は設定的に熱い所だ。
……というようなところが、この作品の見せようとしたところの主旨なのかどうかよくわからないですが、話の構成の、登場人物3人の視点でそれぞれの展開を描く部分は、あまりシビアにサプライズさせようとかそういう感じはなくて、単に主役たちの見せ場をそれぞれ役者の好きな人のために配分しましたよってだけな感じはしたりして、話的に面白いと思ったのは、『真実』を明らかにするには命を懸けないといけない(当時の偏見まみれの状況だと)という所です。当時の価値観という点で言うと、強姦は、主人の所有物を棄損したことになるので、法律上器物破損扱いになるというのが、なるほどと思ったりはしました(完全に奴隷と同じ扱いだなあと)。
で、マルグリットの視点からすると、真実をめぐって男たちが戦うのは茶番でしかない、というのはちょっと面白かったんですけど、だったらマルグリット自身が戦えよ、と、いたく思ってしまって、しかし設定的に無理か、というのが作品の限界だったように思われました。あの結末で、結局あの後どんな気持ちになれたのだろうか、何も変わらなかったのだろうか。
そんなところでした。[映画館(字幕)] 7点(2021-10-30 15:07:00)《改行有》
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