みんなのシネマレビュー |
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1. 資金源強奪 刑務所に収監されるまでの一気呵成の展開は苦手な深作監督テイストで冷めた目で眺めていました。そこから結末まで一瞬たりとも目が離せず、大藪晴彦作品を思わせる女に溺れない清元武司(北大路欣也の肉体美とギラギラ発散するオーラに惚れ惚れ)と黒川博行作品を思わせる軽妙洒脱な能代文明(梅宮辰夫の味わい深い演技に北大路欣也以上に惚れ惚れ)を軸にキャスト全員が躍動していました。ギョッとした空港シーンでの結末もお見事。大傑作。[DVD(邦画)] 10点(2019-05-15 19:37:35) 2. 仕立て屋の恋 「愛されずとも愛する」「愛されても愛せない」想いが描かれた作品が数ある中で、本作は私にとって最上です。愛した人が他の人を心底愛しぬいている。その姿を見せつけられ悲しみや苦しみにのたうつ時、その思いから逃れたいため憎しみが沸き起こってきそうな時、仕立て屋イールの生き様が思い浮かびます。彼はどんな状況であろうと愛する事を喜びと感じ、どんな結果になろうと「止む無し、悔い無し」と割り切れたのです。本作から最近考えさせられる事が、残りの日々を負の感情に支配されたまま過ごして生涯を閉じるのか否かという事です。やはり後者でありたい。ならば、どう生きるかであって、どう思って欲しいかではないのでしょう。 【前回の変更から4年が過ぎて思うこと】人を好きになる、なれないは理屈ではない事を達観できるには時間がかかります。イールを見て直ぐにイールにはなれないものです。[DVD(字幕)] 10点(2005-11-30 15:30:25) 3. 市民ケーン リーランドが記者に語る「彼は何時も愛を欲しがっていた、何をするにも愛欲しさだ、自分は持っていないから人には与えられない、自分自身はとても愛していた」という言葉。リーランドがケーンに向かって「愛を施してやっていると思う者が権利を主張し始めたら君は我慢がならない、愛してやるから愛し返せというのが君のやりかただ」という言葉。私事だけれど、自分が子育てに迷う時、家族が嫌になってどこかへ行ってしまいたいと思うときに、何時もこれらの言葉を思い返して頭を冷やしている。自分にとって一生忘れる事がない映画。10点(2004-01-10 10:21:59)(良:1票) 4. 真実の行方 《ネタバレ》 私的にリチャード・ギア嫌いでスルーしてました。今作でも無意味にヘラヘラッと笑みを浮かべるのにイラッとし、オレ様凄腕だろう面にイライラッ! ヘナヘナしたアーロンに「こういう人物に限って実は・・・」予感がありました。多重人格で無罪を勝ち取り、このままメデタシメデタシなのかと思いきや。ラスト5分に痺れました。アーロンの手の上で踊らされていた敗北感を噛みしめながらひっそりと裏口から出るのに胸のすく思いが(ファンの方スミマセン) 特筆すべきはデビューにしてゴールデングローブ助演男優賞獲得のエドワード・ノートンの怪演。ヘタレと凶悪邪悪の演じ分けが凄すぎてあちこちでリプレイタイムに。 ショウネシーの土地開発の件が中途半端だったのが残念-1点ではありますが、傑作サスペンスでありお薦めです。[インターネット(字幕)] 9点(2023-07-25 02:19:50)《改行有》 5. 知らなすぎた男 スティーヴ・マーティン、ローワン・アトキンソンとは違う二枚目と三枚目の塩梅が絶妙なビル・マーレイ。彼が何時気づくかの興味が尽きること無く画面に釘付けでありました。弟を初めとした脇役陣も生き生きとしており好感。彼の真骨頂とでも言えるコサックダンス with マトリョーシカは爆笑迷シーンでありました。 恥を知らん人間同様に真実を知らない人間が最強であるのを魅せてくれた快作。 オープニングタイトルロールの素晴らしく小粋なところに+1点。[DVD(字幕)] 9点(2023-02-28 19:41:00)《改行有》 6. 十二人の怒れる男(1957) 苦手なヘンリー・フォンダ故にスルーしてきた本作。名作の呼び声高い本作は「映画は脚本が命」を実感する紛うこと無い傑作でした。再現シーンが皆無の99%室内会話劇は何時も思う人が人を裁く事の難しさを見せつけられます。本作では有罪=死刑で人の命がかかっているところに陪審員制度の重みを感じるところです。[DVD(字幕)] 9点(2021-10-05 16:47:44)(良:2票) 7. ジャガー オープニングの地球の原風景のような光景と流れる音楽。衝撃でした。色々な負の感情が洗われるようで見惚れ聞き惚れました。オープニングがリプレイタイムとなった初めての作品です。オマケのように観た本編がこれがまた胸熱にさせられた冒険譚で、ワヌとフランソワの関係が超能力によって描かれているのに、その人の事を想う力は絵空事でないものに思えました。「約束は守る」熱いジャン・レノを痛めつける暑苦しい面構えのダニー・トレホ、共に迫力満点。驚きの快作でした。[DVD(字幕)] 9点(2021-05-24 01:48:52) 8. ジェニイの家 監督デビュー作にして後の傑作群も当然と思える出来栄え。リュシアンの亡骸の前で初めて対峙する母と娘が浮かんだのですが大ハズレ。病院シーンからFINまで母親にとってこれ以上ない残酷さを、それも運命と受け止める抑制有る姿が更に掻き立てます。演じるフランソワーズ・ロゼー大女優ならではの独断場でありました。[DVD(字幕)] 9点(2020-11-29 02:21:46) 9. 人生は四十二から 1908年時に於ける英国人気質と米国人気質の違いを描いた1935年製作作品。執事と言えば「日の名残り」アンソニー・ホプキンスが思い浮かびますが、その58年前に演じたチャールズ・ロートンが彼のモデルだったのかなぁと思います。厳格一直線ではない百面相ぶりが実に味わい深い。彼を取り巻く面々も個性豊か。ラストシーン大合唱は生涯忘れじの名場面。余韻の深い傑作です。[DVD(字幕)] 9点(2020-07-18 15:14:36) 10. 真説フランケンシュタイン/北極に消えた怪奇人間!<TVM> 《ネタバレ》 2部構成3時間。1部終了時点で泣く泣く就寝。続きが観たくて堪らず仕事帰りの自転車を漕ぐ足に力が入ってしまった。苦手なホラーものでありながらジェームズ・メイソンが引き合わせてくれた本作の素晴らしさに感嘆しきり。この歳になるまでフランケンシュタインがつぎはぎだらけの怪物と思っていましたが、怪物を作り上げた医者だったのにビックリ。生み出されるまで、生まれてからヒトとしての知性を授けられ成長してゆき、ジワジワと醜くなり両者の間に溝が出来て、悲惨な結末まで。実に丹念に描かれており、おどろおどろしさとドラマの塩梅良く、レナード・ホワイティング、マイケル・サラザン、デビット・マッカラム、ジェーン・シーモア(妖美に目が眩む)、アグネス・ムーアヘッド、ラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッドという超豪華俳優陣と凝ったセットと映像美はTV作品とは思えない出来栄え。いの一番に登場したジェームズ・メイソンは分別あり気で怪しげで実は権力欲の塊のポリドリ博士(実在人物に脚色を加えている)役で要所要所に顔を出し物語に深みを加えている。生首に縋り付いて泣く姿や、天罰を受けてのあまりと言えばあまりの最期は夢に出てきそうな強烈さ。購入した甲斐のある傑作です。[DVD(字幕)] 9点(2018-06-25 15:41:27) 11. 死の谷 《ネタバレ》 更生して穏やかな暮らしを送るための最後の強盗。無法者の身勝手な夢が叶う筈がないのですが、手を繋いでこと切れた二人と、二人の幸せを確信しながら鐘を鳴らす神父さんの姿に切なさで泣けてしまいました。また、多くの者たちの裏切りを見せつけられて、何時の時代も街中が裏切りに溢れているのを再認識させられます。傑作西部劇。[DVD(字幕)] 9点(2018-01-01 13:48:20) 12. 情婦 《ネタバレ》 初見、予備知識ゼロ。澱みのない起承転結。緻密さとユーモアと使命感の強さの按配は余人には真似の出来ないワイルダー監督の名人芸。弁護士と看護師の仲良く喧嘩するさまは絶品で心地良さに浸りました。特筆すべきは情夫に尽くすクリスチーネを演ずるマレーネ・ディートリッヒの美しさでこの世にこのような56歳が存在するのか唖然とさせられます。「殺人ではなく処刑だ」との名台詞に辿る展開であの場所にナイフがポンと置かれていた事に-0.1点、端数切捨てで9点の傑作中の傑作です。[DVD(字幕)] 9点(2014-11-03 14:25:16)(良:1票) 13. 周遊する蒸気船 《ネタバレ》 自首するも正当防衛が認められず死刑判決が出てしまう。理不尽であろうとも罪に対する罰を受けねばならないという骨太さと、他者への深い慈愛。監督の価値観がクスクス笑いから大爆笑が止まらないハチャメチャな展開でもって描かれている傑作。結末の爽快感が心地良い。[DVD(字幕)] 9点(2014-03-17 01:03:40)(良:1票) 14. ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 前作のように爆笑に次ぐ爆笑ではなかったものの、スパイものとして見応え十二分の展開とアクションに笑いを織り交ぜ、尚且つ007のパロディも効かせてくれる、考え抜かれた実に見事な作品に大満足。サイドヘッドロックからのお盆攻撃のラストはアッパレ。そのユーモア精神及び英国の度量の大きさに脱帽。ブラボー。[DVD(字幕)] 9点(2012-06-01 20:11:37) 15. 新幹線大爆破(1975) 《ネタバレ》 初鑑賞。予備知識は「主演が高倉健である」のみ。主犯の理詰めな行動、警察が犯人を特定していく過程、国鉄が爆弾解除を行う過程。結末に向かって片時も目が離せず、山本圭を筆頭に各々の俳優としての個性が役柄に反映されている豪華出演陣の演技も見応えがありました。三者の中で分が悪かった警察ですが、高飛びへの最後の一歩を阻止した手際は忘れられないものとなるでしょう。あの子の姿には衝撃でギョッとしました。惜しむらくは、乗客が事態の好転にも悪化にも絡む事無く、ただうろたえている存在でしか描かれていない点です。あと、どうでも良い事なのですが、一心に太鼓を叩く一団は謎でした。あれも形を変えたヒステリー状態ということなのでしょうか?[DVD(邦画)] 9点(2009-07-10 04:11:16) 16. 深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 犯行の計画と遂行と破綻の理詰めな展開に男同士の友情と男女の愛憎が絡まり合う見事な脚本です。フィリスと関係を持つのは危険であり、キーズには敵わない事を理解していながらも、ずるずると蟻地獄へと嵌まり込んでしまうネフ。三人共々忘れ難いキャラクターです。キーズの万感の想いがこもったラストシーン、ワイルダー監督ならではの演出はさすがと言うしかありません。唯一の減点はフィリスの最期です。私は血も涙もない姿で息絶えた彼女が見たかったです。[DVD(字幕)] 9点(2007-03-23 02:20:33) 17. シラノ・ド・ベルジュラック(1990) ジェラール・ドパルデュー一世一代の名演技に酔わされた忘れられない作品です。 私は元来「男は黙って」派であり、男性の饒舌さは小狡さを感じ信頼できません。しかしシラノが放つ言葉は、素直に受け入れられるものであり、言葉の持つ力を感じさせられました。男気溢れる生き様を貫いた者で、無骨な中に秘めた優しさを持つ者で、コンプレックスに苦しむ弱き部分も持つ者の一語一語なればこそでしょう。この世でもあの世でも正直な胸の内を伝えられない事を思えば、遅過ぎたとはいえ本懐を遂げられたシラノは幸せ者です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鑑賞から4年が過ぎた今、思う事があります。「本懐を遂げた時が永遠の別れであるのが最高である」という事です。[DVD(字幕)] 9点(2004-02-23 21:20:50) 18. 自由を我等に 《ネタバレ》 不当な弾圧と闘い自由を勝ち取る話かとの予想は嬉しい大ハズレ。しっかりとした起承転結でカラリと明るく、時に大笑いさせられ、自由に対する風刺に考えさせられる秀作です。 モダン・タイムス製作時に本作を参考にしたというのに無限へぇであると共に言われてみれば納得できます。[DVD(字幕)] 8点(2023-02-24 02:18:38)《改行有》 19. しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス 《ネタバレ》 私的にはエベレットの物語でした。不器用で無骨な彼が自分に正直になっての「捨てないでくれ」にはこちらも感無量。静かな語り口での深い愛情物語は記憶に留まる秀作でした。[DVD(字幕)] 8点(2022-01-23 00:07:38) 20. シーザーとクレオパトラ 戦闘模様で血湧き肉躍るクロード・レインズの雄姿を拝む事は叶わず。規模の小さい戦闘シーンは戦時中に於いて精一杯の撮影だったのでしょう。しかし、衣装・セット装飾の豪華さは目を奪われるものがありました。どちらかと言うとコミカルな味わいがする舞台劇と言える本作で、初の100万㌦(当時で!)actor となったクロード・レインズはバーナード・ショーが彼をイメージして書き上げた脚本の一言一句を風格漂う演技で魅せてくれます。 「貴方を裏切ってません」クレオパトラに「お前を信頼した事は一度も無い」百万の罵詈雑言に上回る刺し殺すかのような一言。 何時もながらの瞬間芸に「クロード!!!」かけ声かけたお姿でした。 ヴィヴィアン・リーは幼さ漂う姿はまずまずといったところですが、シーザーに見守られて女王に成長するなかでその風格が皆無で、ひたすら「無礼者が」「首を刎ねるぞ」を連呼するのに白けてしまうのが残念。撮影中ローレンス・オリヴィエの子を宿し医師の助言を聞かず流産し精神不安定で5ヶ月間撮影中断したという、空襲下と併せて作品以上にドラマチックな舞台裏に驚きます。 制作費1,278,000ポンドに見合う秀作を堪能しました。[DVD(字幕)] 8点(2021-05-10 15:52:06)《改行有》
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