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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 世界 この作品、北京の「世界公園」を舞台に、女性ダンサーと彼女を取り巻く人間模様を描き“いまの中国”を表現するという着想を得た時点で監督には勝ち組のゴールが見えたのではないかな~。“世界”で愛を求める孤独感、“世界”に日々いることの閉塞感、“世界”から抜け出せない焦燥感・・・ミニチュアの「世界公園」を比喩に後はそれらをどう切り取っていくか。全体を覆う寒々としたフィルム(デジタル→フィルム)の質感が孤独感を、ワンカットで長々と回されるカメラの前の沈黙した空気が閉塞感を、ダンスが華やかであればあるほど焦燥感を現前させているように見えました。主人公タオとロシア人アンナが沈黙したまま人力車に揺られるシーンの顔に射し込む光の美しさ、言葉の通じない二人が交わす会話の豊かさよ。タオの心象を現すアニメ、携帯電話のメール、まんま使われる「東京物語」の音楽もよしとしましょう。「今年は雪が降らない」世界を締めくくるラストのほのかな雪に、二人の世界が暖かく展ける・・・ミニチュアの世界がようやく等身大の世界を手に入れたように見えるその痛々しさに心惑わされる傑作です。[映画館(字幕)] 9点(2005-11-27 23:42:37)(良:1票) 2. 蝉しぐれ 子役→市川染五郎はそれほど年齢差が出ていないし、子役→木村佳乃はあまりにも子役が幼すぎることから劇的に年齢差を感じさせます。よって子役→成人のバトンタッチがぎこちなく、スムーズにストーリィが運ばれない。市川、木村それぞれが初めから演じた方がよかったように感じます。違う人物が演じるなら、例えば“ふく”は、蛇に噛まれた傷跡を、文四郎は与之助を助けた時に傷を受けたことにして、その傷を意匠として同一人物に描く映像的工夫が欲しいところです。そして桜、蝉、稲穂、雪など季節の移り変わりを叙情的に切り取るのはいいのですが、ラストの回想シーンの連なりは感傷的な音楽と重なり少し安易で、ここは文四郎とふくの主観ショットで、何もない現在の空間(蛇に噛まれた川、荷車を押した坂道、花火を見た祭りの場など)を写し、そこに過去の思い出を観客に蘇生させた方がより映画的だったのではないかな~と考えながら映画館を出たのでありました。[映画館(字幕)] 6点(2005-10-25 12:49:03) 3. 世界の中心で、愛をさけぶ うーん、なぜだろう、心が動かなかったなー。周りから聞こえるグスグスに反比例するように心は乾きっぱなし。監督の前作『きょうのできごと』は行定色たっぷりで満点を献上しましたが、今作は『ひまわり』の延長上にある死生観、残された者のけじめというテーマが、なんかあっさりし過ぎていて肩透かし。最初は監督を断ったのもわかるような気がしました。『花とアリス』(同カメラマン)では気にならなかったカメラの揺れもこの作品では、テーマの重みからか「頼むからもっとどっしりしてくれー、止まってくれー」とさけび続けました。愛をさけばしてはくれず、残念無念の一本。 実際に頭を丸めた長澤まさみの役者根性に+1点。5点(2004-05-11 17:36:37) 4. 戦場のピアニスト この映画の感動の無さは、家族を見捨てて自らのみ生き延びようとしたピアニストのエゴに尽きる。ふつうは、例え犯罪者でもいつのまにかその人物に同化してその成功を祈る自分に気付くものだが、このピアニストの場合は、全くそんな気が起こらなかった。『ライフ・イズ・ビューティフル』のグイドを見習ってほしい。こう思うことこそが、現代にぬくぬくと生きる戦争を知らない者のエゴだということは分かっているのだが・・・。4点(2004-03-25 22:33:20)
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