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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. セルビアン・フィルム 《ネタバレ》 美人の奥さんとまだ小さい息子と3人で暮らしている昔はポルノ男優としてブイブイ言わせていた男が主人公で、スナッフ・フィルムに出演するようはめられていくという話です。スナッフ・フィルムということで、全編、猟奇的な血みどろに彩られていると思ったのですが、結構きちんと物語がつくりこまれていて感心しました。映像の雰囲気が、ビデオゲームのサイレントヒルシリーズを彷彿とさせるダークなサイコスリラーです。これに暴力的なセックスを付加した感じです。個人的には、肉や骨のぶつかりあいに終始した性交に興味がわかず、感情移入はほとんどなかったのですが、サスペンスとしては、シンプルで楽しめるものでした。1つ目のクライマックスは、主人公が女性を剣で切り付けるところで、十分に刺激的なものとなっています。2つ目のクライマックスは「セルビア家族」のシーンですが、こちらは狙いすぎで、思わず笑ってしまいました。笑い事ではないのですが。完全版と銘打たれたものでも部分的検閲があるようで、真の完全版はスウェーデン版のみのようです。リージョンコードが異なっていて面倒くさそうなので、購入まではしないと思います。[DVD(字幕)] 7点(2023-07-10 19:18:40) 2. ゼロ・グラビティ 《ネタバレ》 ハッブル宇宙望遠鏡の修理作業をしていたアメリカ人たち(サンドラ・ブロック他)が、遠くで爆発事故を起こしたロシアの宇宙船から飛んできた破片の雨あられに巻き込まれてしまうという話です。宇宙でこんな事故に遭ったら、万に一つ、否、億に一つも生き残れないところですが、とは言え「みんな、てんでんぱらぱら、宇宙の塵になってしまいました。おわり。」では映画として成立しませんから、いかに視聴者に見透かさないように話に引き込むかが勝負だと思います。まあ上手くやっていると思います。事故を警告した地球の管制塔サイドのシーンもなければ、回想シーンもありません。ひたすら主人公廻りの宇宙空間または宇宙施設内の視点のみで構成されているので、息が詰まり、逃げ場がありません。空間が無限に広がっているがゆえの閉塞感、孤独感に押しつぶされそうになります。余計なシーンをそぎ落とすことは、創り手にとっても逃げ場がないわけですが、そこは妥協することなく、徹底的に宇宙空間を、無重力感を、ディテールを創り込んでいます。その妥協の無さこそが最後の解放感にもつながってくるわけですが、まあ、邦題は余計なものを付けたもんだなと。[DVD(字幕)] 8点(2023-03-14 18:39:23) 3. セッション 《ネタバレ》 原題は「Whiplash」。邦題の「セッション」は、また随分と生ぬるくしてしまったものだなと。さて、日本ではよくあるスポ根もの(文化系スポ根)ですが、アメリカのエンタメ作品としては珍しいのではないでしょうか?この手の物は日本だと、良くも悪くもどこかギャグテイストが漂いますが、舞台がアメリカとなると、十分あり得ると思われ、リアルでシリアスな作品になり得るところが興味深いなと思いました。主役の学生ジャズドラマーが、最初は間が抜けた顔をしているなと思ったのですが、だんだん凜々しくなっていきます。生徒の方が最初から熱血過ぎてもダメで、いいバランスが取れていたと思います。教官が生徒を屈服させるのに有効なのが、補欠メンバーを常に同席させ、正メンバーの倚子を餌に、気にくわなければ即時交代。一方をけなすために、一方を褒めるという手法です。DVDには、投資家を得るための試作品としてつくった10分あまりのショートフィルムが納められているのですが、ほぼ同じキャストで主役だけが入れ替わっています。上記の教官の手法とダブっていて、なかなか乙なことをするなぁと感心しました。[DVD(字幕)] 8点(2023-03-08 18:30:56) 4. セデック・バレ 第一部 太陽旗 《ネタバレ》 台湾の原住民が首狩り族だったという話は聞いたことがあります。日本が統治する際に苦労したと言うことも風の噂で聞いたような気がしますが、それ以上のことは知りませんでした。なので、そんな未開の土人をテーマに映画ができるものなのか?しかも、2部作?というのが見る前の正直な所感でした。ですが、これが見始めると実に興味深くて、エキサイティングで、作品世界に没入してしまいました。台湾原住民達は部族ごとに島内で敵対しているわけですが、他部族との闘いは、一に奇襲、二に奇襲で、油断しているところを襲って、背後に回って大鉈で首を狩るという具合で、鬼ごっこや、サバイバルゲームのような無邪気さがあるのですよね。敵の首を狩るまでは1人前の男として認められないとか、首を集めるほど部族の中で尊敬され地位が高くなるとか、首狩りが、部族の文化に組み込まれて、システム化され、いわばゲーム化されているわけです。よくこんなんで、つい最近まで全滅せずに生き残れたものだと思うのですが、むしろ首狩りありきで、島の生態系がうまくバランスしていたと考えるべきなのでしょうね。こんなことを考えさせられてしまう映画作品に今まで出会ったことがないので、まず、それが、驚きです。本作は首狩り族の青年が台湾を植民地化する日本人に対して蜂起する「霧社事件(1930年)」を扱っています。途中は長くなるので省きますが、壮絶な大虐殺をクライマックスに第1部は幕を下ろします。原住民の無邪気な残虐性、計略性と、欧米などに比べると激甘な植民地支配手法の対比がとても面白いなと思いました。史実とはかなり違い、演出過多になっているようですが、その分、本当にエキサイティングで、面白いです。全体的に、日本人がマヌケになっていますが、主人公をヒーローにするためには、演出上、いたしかたないですね。[DVD(字幕)] 9点(2023-03-05 15:48:24) 5. セデック・バレ 第二部 虹の橋 《ネタバレ》 第1部では、学校の運動会にセデック族が奇襲をかけ、首を狩りまくるところで終わりました(霧社事件)。本作、第2部では、日本の反撃が始まり、セデック族は、健闘しながらも追い詰められていくという流れです。第一部のクライマックスを超えるイベントがあるわけもなく、基本単調な展開の中では、近代兵器に対抗する変幻自在のゲリラ戦のアクションで、緊迫感を保っていると思いますが、さすがに日本軍弱過ぎだろというのが目につき始めてきて、そこでちょっと笑ってしまうと言うか、没入感が弱まりました。最初から負けると分かっていても闘わなければならない、敗れゆく者の美学のようなものは感じられ、日本の武士道的な価値観にも通ずると思っていたところ、最後にそれを言葉にして言われてしまうと何だかなと。果たしてどこまで実際に則しているのかが不明なので、他の資料等を調べたくなりました。[DVD(字幕)] 7点(2023-03-05 15:43:11)
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