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1. チャップリンの独裁者
《ネタバレ》 ~The Great Dictator~偉大な独裁者。
冒頭の第一次世界大戦が結構リアル。あの威圧感ある長距離砲はセットだろうか?良く出来てるなぁ。
ヒンケル総統の、インチキ・ドイツ語によるスピーチが、いかにもそれっぽくて可笑しい。ヴィーナスや考える人の小ネタも笑える。
秘書の打つタイプライター・ネタ、コイン・ケーキ・ネタがシンプルだけどツボった。
独裁者なのに隣国の独裁者にはちょっと気を使ってるところとか、ヒンケルを憎み切れないキャラとして描いている。
だけど床屋の男とヒンケルがそっくりなことに、誰も触れないのが不思議。どう解釈すればよいんだろう?
突撃隊員によるユダヤ人への扱いは過激な暴力レベル。制作当時、ホロコースト大量虐殺の事実は世界に伝えられていなかったためらしい。
当時のドイツの社会的立場と勢いを考えると、今に例えると中国くらい強力だったんじゃないかな。
中国が香港や台湾、チベット自治区や新疆ウイグル自治区への過激な暴力を、習近平そっくりの主人公を出して、ユーモアを入れながらも真っ正面から批判できる有名人が、いま何人いるだろう?
サイレント映画の王が雄弁に語る。ヒンケルでも床屋の男でもなく、コメディ映画としてのストーリーなんかそっちのけで、チャールズ・チャップリン個人が、コメディを見て笑いに来た観客にぶつける演説のパワー。
結果的にヨーロッパ戦線は第二次世界大戦になり、約7500万人の戦死者・犠牲者とともに、600万人のユダヤ人が一方的に殺された。世界が笑いごとでは済まない事態に向かっているまさにその時に、チャップリンの情熱によりこの映画が作られた事実が凄い。[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-07-07 23:13:43)(良:2票) 《改行有》
2. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 ~Monsieur Verdoux~ムッシュ・ヴェルドゥ。=ヴェルドゥさん。
これは伝わりにくいタイトルだ。調べたら元ネタはヴェルヌイエ(地名)の連続殺人鬼アンリ・ランドリュー。第一次大戦の未亡人を狙った有名な結婚詐欺の殺人犯なので、当時の欧米人だったら“あぁこのタイトルは、あの事件を元ネタにしてるのね”ってイメージが出来ただろうけど、日本で公開される30年も前の外国の出来事だし、今の私たちはもちろん、当時の日本人もほとんどの人が知らないだろうから、この、いかにもな邦題も納得がいく。
自分の墓から始まり、最初のガヤガヤした家族とテルマの家の売買から、ヴェルドゥの次のターゲット・リディア殺害に移り、アナベラ殺害を練りつつもグロネーを口説く。そして足の悪い奥さんと、子猫を抱いた刑務所帰りの娘…忙しく動き回るヴェルドゥと汽車の車輪。詐欺と言うとズルして楽に稼ぐイメージだけど、“普通に働いたほうが楽じゃない?”ってくらい忙しく見せて、そのギャップを楽しむのかもしれないけど、元ネタを知らないのもあって、観てるコッチは状況把握に忙しい。
後半の毒を誤って飲む辺りからチャップリン映画らしさが出て、他のチャップリン映画と同じノリの“わかりやすい”面白さが出てくる。
そして最後の「一人を殺せば悪党、万人を殺せば英雄。数が罪を正当化する」は、あまりに有名な言葉。
当時はかなりインパクトが有ったと思うけど、この言葉の為の映画と考えると、今では既に私たちの日常に染み込んでいる言葉でもあり、驚きには結びつかない。“私利私欲で殺人を犯したお前が言うな”感もある。
大量破壊兵器と大量殺人について言及する死刑判決の裁判シーン。「皆さんとは程なくお会いすることになる」は
“アンリ・ヴェルドゥ”
“1880-1937”
第二次世界大戦の2年前に処刑された、冒頭の墓のシーンに繋がる。
メッセージはストレートだけど、頭の中で整理しないと意味が結びつかない作品で、今までのチャップリン映画とは趣が異なる。[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-09-10 16:45:38)《改行有》
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