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1. 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
《ネタバレ》 今回復讐という物語の型に入れてしまったことが、成功であるように思わせておいてなぜか失敗に終わった。
【以下バレ】
いやね、よいと思ったのだ。標的の3人の男たちに迫っていく途中で彼らの家族の存在に気づき歩みを止めずすれ違うことがなぜカッコいいのかとか、そのまま近くのテーブルに居座り家族が去るのを待ち続ける時間をこちこちイナタく描くことがなぜ変に面白いのかとか、銃撃戦のさなかに仲間に手振りでタバコを要求する姿がなぜあれほどシビれるのかとか、密売屋が冷蔵庫から銃を出してくることや、オヤジを匿った妊婦が7人の子持ちでありしかもあきらかにハーフのような顔立ちの子どもが混ざっている理由がいっさい説明されないのはいったいどういうわけなのかとか、そんなことをカタるのにごく単純な復讐譚をもってきたのはなかなかいいところに気づいたなというか、少なくとも前半はよかったのよ。簡単な物語で安心して変な表現を見る快楽というか。つか、いっそなくてもいいくらいなのよ物語なんぞ。
なんだって途中で3人組を殺し、外人のオヤジの方を生かしちまったんだろうねー。どう考えても逆だろ普通。外人の遺志を継いで親分を倒しに行くというのが盛り上がるんだろ? あああよくわかんねーこの監督。記憶喪失なんて余計な要素を入れちまったもんだから話自体ぐちゃぐちゃになって、バッチの意味なんかよくわかんねーし考えたくもねー。アラン・ドロンを予定してたというぐらいだからひょっとしてマジで外人ウケに走ったのかもわからんが、自分が何を期待されているかを勘違いしちゃいけませんぜ、ダンナ。
[映画館(字幕)] 6点(2010-07-10 23:05:43)(良:1票) 《改行有》
2. 月に囚われた男
《ネタバレ》 自分自身の正体を徐々に知っていく過程で、いちいち観客に真実を細かく説明しないところがよいのだ。
【以下ネタバレバレ注意】
クローンの寿命がおそらく3年で尽きることや救助船がじつは事故処理船であること、それにオリジナルのサムがたぶんすでに地球にいるだろうこともはっきり示されるわけではない。すべて画面からそう感じ取れるように作ってある。んで、それらやらそうなった理由やらの想像を逞しくした観客は、本当にそうなんだろうかと背筋をぞわぞわさせながら画面に見入らざるをえない。まったくうまい。新人と思えん。
話自体は『チューリップ・チューリップ』+『終りなき負債』+P・K・ディックという感じ(これじゃあ知ってる人にはほとんどネタバレだが、懐かしいなあ)なので、スれた中年オヤヂにとって衝撃はない。作り手にとってもそれはおそらく同じことで、哲学的な主題を殊更増幅するような演出はなかった(たんに予算不足だからかもしれんが)。また、その他にもクローンの巣が見つかった場面だの何だので演出不足では思える箇所もあったが、それでもまあいいやと許せる出来。
ただ一つ、この手の映画ではたいてい冷酷無比な障害物となるはずの人工知能ガーティが、やけに優しいのにはちと違和感を持った。ラストで友情を優先するなんてのもありえん。しかしこの「何でも記録してしまう装置」を何とかしなければこういう話は成り立たない。うーみゅ困ったもんだなあ。[映画館(字幕)] 7点(2010-05-21 18:25:02)《改行有》
3. 劔岳 点の記
《ネタバレ》 大自然を過不足なくフレームに収めてこれこそ映画だという、いかにも大監督がしそうな勘違いを無批判に継承したような映画。雲の絨毯を眼下に見渡しながらの会話シーンなど確かに声を失う美しさではあるが、一方で映画が一番撮らなければいけない「人と何かとの間」を撮ることには、興味がないのか自信がないのかあまり優れたものを感じない。人が自然と絡む雪崩や転落シーンなどちゃちくてまるでテレビみたいだし、浅野忠信は謙虚だがたまに口を開けば大根だし、香川照之は有能だが顔が決定的にダメで(宮崎あおいはすごくいいけど)、人と人とが緊密に絡む映像とはほど遠い。彼らももし一流の監督にかかればなんとかなったかもしれない。ちうことで所詮半端な2流の映画だが、実際に登山したという収録時の苦労話に同情してまあ6点。CGが発達した今の時代、そんなもの映画の出来に全然関係なくなってきているのだが。
[映画館(邦画)] 6点(2009-07-04 22:28:12)《改行有》
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