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85 |
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自己紹介 |
映画を観る楽しみ方の一つとして、主演のスター俳優・演技派俳優、渋い脇役俳優などに注目して、胸をワクワクさせながら観るという事があります。このレビューでは、極力、その出演俳優に着目して、映画への限りなき愛も含めてコメントしていきたいと思っています。 |
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1. デストラップ/死の罠
《ネタバレ》 推理小説好きなら、観ておきたい価値のある映画「デストラップ 死の罠」。
原作はアイラ・レビンで、ニューヨークのブロードウェイで、延々ロングランした舞台劇の映画化作品だ。
この舞台劇は、ロンドンで大ヒットした、アガサ・クリスティの「ねずみとり」に刺激され、触発されて、製作された気配が多分にあるのだが、イギリス的な本格ミステリの構成とムードを持ちながら、裏側にいかにもアメリカ人好みの乾いた感覚が秘められているのだ。
この映画の演出は、ニューヨーク派の名匠シドニー・ルメット監督。
二幕仕立てという舞台構成を、そのまま映画に持ち込む事で、その構成自体をサスペンスに利用したところは、ミステリ好きを喜ばせる演出だと思う。
才能の枯れたスリラー舞台作家。
若者の持ち込んだ脚本が、あまりにも見事なので、それを自分のものにしようと計画を立てる。
そして、妻をも計画に誘い込み、自分の家で、この若者を殺そうとするのだ。
登場人物は、この三人と近所の奇妙な老婦人だけ。
そして、主な舞台は、この家だけ。
陪審員の控室のみで、あれ程の緊張感と迫力を創り上げた「十二人の怒れる男」の監督だけあって、この限られた場所、その大道具を逆に生かして、二重三重のドンデン返しを語って見せるのだ。
作家のマイケル・ケインも、妻のダイアン・キャノンも、ベストの演技を示している。
そして、青年はあの「スーパーマン」でブレイクしたクリストファー・リーヴだが、複雑な性格の役を陰影を込めて演じていて、実に素晴らしい。
こうしてみると、舞台で練られたミステリの面白さを、単に映像化しただけだと思われがちだが、ところが実はさにあらず。
プロローグに映画ならではのトリックが、はめ込まれているのだ。
実のところ、私はこの部分で完全に騙されてしまった。
憎い人だ、シドニー・ルメット監督。[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-08-24 16:59:08)《改行有》
2. テオレマ
《ネタバレ》 ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の「テオレマ」について、パゾリーニ監督は、最初はこのテーマを詩による舞台劇として考えていたそうだ。
そのため、この映画は知的な構成が明らかすぎるほど明らかだ。画面の隅々まで緻密に計算されており、登場人物の役割も非常にわかりやすい。
だが、主人公が神か悪魔かといった謎が"不条理演劇"のように、簡単には割り切れない。
それは、主人公を演じるテレンス・スタンプの顏のクローズ・アップが、極めて映画的な効果をもたらしているからなのです。
~ミラノの大企業家パオロの家に謎の青年がやって来る。青年は、パオロやその家族と性的な接触を持ち、彼らの欲望を解放して、やがて立ち去って行く。残された人々は、彼ら自身の真実に向き合うこととなる。そして、彼に感化されたメイドは屋敷を出て、聖女になり、パオロは自分の工場を労働者に渡して荒野を彷徨うのだった~
悪魔の中に天使が宿るというようなイメージで、悪魔に魅入られた、悪魔のような美しい俳優・テレンス・スタンプ。
パゾリーニ監督の「テオレマ」に登場する彼は神なのか、それとも悪魔なのか?
彼の来訪は、郵便配達の姿をした天使によって告げられ、その辞去も天使によって予告される。
天使をつかわしたのは、そうすると神なのだろうか?
彼自身が神であったら、迎えの通知がくる筈はないのだから。
彼はただ彼という存在のままブルジョワ一家に迎えられ、客として滞在する。
彼はそこにいるだけで、一家の人々に不思議な力を及ぼす。
彼を見、彼に触り、そして彼に抱かれることによって人々は、自分自身に到達する。
イエス・キリストの衣に触れただけで病が治る聖書の話が、ふと連想されるが、彼は決して人々を救いに来たわけではない。
一家のメイドは、やがてブルジョワの屋敷を出て、故郷の貧しい人々の所に行き、身を犠牲にして土をかぶり、聖女となる。
だが、一家の他の人々は、それぞれの苦悩を生き始めるのだ。
この映画でテレンス・スタンプが果たす役割は、そこに存在するということなのだと思います。
彼の顏と彼の微笑、そして彼のなまめかしい肉体で、そこに存在するということ。
映画を観る私は、一家の人々と同じようにその存在を感じます。
神なのか、悪魔なのか、それとも神の子なのかという問いの答えは、永久に得られない。
逆に言えば、神は彼のような存在だとパゾリーニ監督は見ているのだろう。
ここでは、ひとりの役者が自分の存在をメタフィジカルな存在と同一化させているのだと思います。[DVD(字幕)] 7点(2019-03-18 14:26:10)《改行有》
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