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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
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1.  ドリーム 《ネタバレ》 ケヴィン・コスナーからタラジ・P・ヘンソンへと手渡される白いチョークが二人を繋ぐ。その慎ましいクロースアップが 不思議と心を揺さぶってくる。 これは冒頭の少女時代の教師から手渡されるチョークのアップショットとも呼応するのだが、 こうした様々なモチーフのさりげない反復や変奏が非常に豊かな映画である。 閉じられるドアと開かれるドア。コーヒー。ネックレス。見上げる行為。歩く行為。走る行為。 ガラス張りの本部長室とトイレの鏡。 オクタヴィア・スペンサーとキルスティン・ダンストとの対話もトイレの鏡像(虚像)として交わされるシーンを 一旦挟むからこそ、ラストの二人が活きてくる。 クライマックスである打ち上げ直前の再計算のシーンは実際なら内線電話一本で済む話だが、 そこをあえてドアからドアへとヒロインを走らせ、ドアを開けて迎え入れさせるというのが映画の演出である。 ケヴィン・コスナーに怒りをぶつけるヘンソンの叫びは、言葉の意味以上に声音そのもの響きと震えで心を打たずにおかない。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2017-10-06 23:04:44)《改行有》

2.  トリガール! 《ネタバレ》 毒舌も賑やかな土屋太鳳がよく走り、よく歌い踊り、よく絶叫しながら大健闘。 これだけやかましくて、デリカシーの無いキャラクター設定でありながら、よく映画を引っ張っている。 コンビネーションのトレーニングの一環として踊る仏頂面ダンスシーンもさすがキレのある動きで魅せる。 自転車で颯爽と駆け抜ける男子学生に一発で一目惚れするシーンの簡潔さなどは実に映画的だし、 自転車の疾走、マシンの飛行も爽快感のある画面で映画と相性がいい。 一方で、土屋が空を飛ぶこと自体に惹かれる描写の欠如、空に飛び立つ瞬間の高揚感が決定的に弱いのが惜しい。[映画館(邦画)] 6点(2017-09-01 23:52:44)《改行有》

3.  東京喰種 トーキョーグール 《ネタバレ》 冒頭のショットからも、眼あるいは視線の主題を意識しているのがわかるが、 それがドラマの中で強度を放つのは相田翔子の死を目撃する娘のシーンくらいか。 彼女の叫び声をかき消す、土砂降りの雨の音。その音響が相乗効果となって 眼の感情を一層盛り上げている。 ドラマが東京を舞台とする根拠はわかるが、画面的にはタイトルに東京を冠する必然性は薄い。 都会の群衆と喧騒があってこそ、異端者の孤独が引き立つと思うのだが。[映画館(邦画)] 4点(2017-08-30 23:58:42)《改行有》

4.  ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 夜の一軒家を主な舞台とすることで、屋内の構造も全面的に披露される訳ではない。 いずれのショットも黒い闇の領域が大きくとられ、それが複数にカラーリングされた限定的な照明効果と共に追うものと追われる者の関係を 立体的に浮かび上がらせる。 闇の中にスポット的に当てられるライティングは次第に傷を負い消耗していく若者らの表情の痛々しさをより強調し、 しかるべき伏線となる小道具に対し要所要所で効率的に視線を誘導する。 天窓に入った亀裂が小さく音をたてていく、硬質な物質感と音のサスペンス。 引きのショットで二つのシルエットが組んづ解れつ格闘する様も、人間を素手で連打する打擲音の地味な生々しさと共に真に迫る。 二転三転と考えられた後半のサスペンス釣瓶打ちもいい。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-04 14:34:16)《改行有》

5.  ドクター・ストレンジ 《ネタバレ》 事故で投げ出された車の回転などを始めとして、ひとつの運動にさらに一捻り動態を加え、画面を活性化させている。 マントに翻弄されたり、幽体離脱させられたり、異次元空間に放り込まれたり、手指の不自由な主人公のアクションは受動的で、 重力が歪み時間が逆行する世界の中での戦闘も思うようにはいかない。 周囲の状況のCGスペクタクル化によって活劇が維持されるのである。 最後の手段も決着もややカタルシスを欠くものの、赤マントの芝居などユーモラスな細部がちりばめられているのが救いだ。 どこか夏目雅子を思わせるティルダ・スウィントンの謎めいた佇まいも東洋の情緒を仄かに醸す。[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2017-03-12 04:02:54)《改行有》

6.  トリプルX 再起動 《ネタバレ》 馬鹿馬鹿しくて最高。あの映画この映画のパッチワークではあるが、アクションの釣る瓶打ちによる力技でハイテンションを維持する。 だけではなく、華のある女優陣の活躍に負うところも非常に大きい。マッチョな男優陣とのバランスが絶妙だ。 それも見た目だけではなく彼女らそれぞれのキャラクターに合わせたアクションの見せ場も用意されているので、さらに魅力が増す。 温度感知によって、ヴィン・ディーゼルの指の間を通して黒幕を狙撃する女性スナイパーのクールな身のこなしがいい。 ドニー・イェンの立ち回りも勿論、素晴らしい。切れの良いカッティングが彼の美技を引き立てている。 トニー・ジャーが割を食ったが。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-02-26 19:46:22)《改行有》

7.  TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ 《ネタバレ》 ミュージカル風味とか極彩色の美術とか、てっきり三池監督作品とばかり思っていたら、違った。 キャスティングの意外さも後から気づかされるパターンで、そういう意味では後からもう一度見返したくなる作品だ。 この内容なら100分程度に収めて欲しいところだが、やりたい事はとにかく詰め込んだというような潔さとパワーがある。 インコや犬から精子に至るまで、多彩な動物の芝居があり、二転三転する舞台と時空の変化があり、120分越えも苦にはならなかった。 賑やかで毒々しいギャグシーン満載の中、森川葵のヒロインがまさに清涼剤となるが、その約10年後、20年後を演じる宮沢りえは 森川の面影をしっかり受け継いでキャラクターに深みを与えている。 二人のささやかな思い出の場所である、海を見下ろす高台のベンチ。その変わらぬ場所が時の流れを印象づけ、 宮沢のどこか憂いを帯びた穏やかな表情・佇まい・そして何気ない一言一言が、生き残った者の思いを滲ませ、胸に沁みる。[映画館(邦画)] 5点(2016-08-09 22:21:21)《改行有》

8.  トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男 《ネタバレ》 とうとう密告フォームまで登場したこの国の今現在と重ね合わせず観ることは困難であるという不幸。 憲法修正第一条を巡る言及から何から引っくるめて、ただの感動的な物語映画として見終えさせてはくれない。 映画でも簡潔明瞭に語られている『スパルタカス』の顛末は、『カーク・ダグラス自伝』の『スパルタカスの戦い』の項などにも詳しく記述されているが スタンリー・キューブリックとの確執なども加わって実際はより複雑で興味深い人間ドラマがあったことがわかる。 その辺りも映像化されれば面白いのだろうが、尺的にはやはり端折ったのが正解だろう。 カーク・ダグラスが「名前を取り返してくれたこと」への感謝のエピソードは、劇場でそのクレジットを見るブライアン・クランストンの表情によって 視覚的にも印象深いものとなった。 脚本家を題材とした映画らしく、映像的な突出はないものの、台詞の妙味と劇展開の面白さで一気に見せる。 手動のタイプライターによる速筆がさらにテンポを生む。 エドワード・G・ロビンソン役やジョン・ウェイン役の俳優らも、顔貌の相似以上に佇まいと台詞を語る口跡が皆素晴らしく、 ジョン・グッドマンの啖呵には胸がすく。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-07-28 23:56:19)《改行有》

9.  殿、利息でござる! 《ネタバレ》 説明すべき箇所は適宜注釈を加え、一方大切な家財道具を売り払うシーン等に見られるように画面で納得させるべき箇所は視覚で訴える。 酒蔵や露店の風情あるオープンセットや、勾配が映える茶畑のロケーションなど美術の仕事をしっかり見せる。 ドラマがウエットに傾いてきたかと思うと、さらりとしたユーモアで軽やかに揺り戻しをかける。 そうした作劇の手際が見事で、ウェルメイドと呼ぶに相応しい。 何れのキャラクターも映画の中で何らかの変化を遂げる、あるいは先入観の操作によって印象を反転させる。 その感情の変化、印象の変化を俳優が的確に表現し、それをシンプルに直截に映し出す。 奇を衒わぬ基本の技で物語に引き込んでくれる。 出番の多い少ないに関わらず、いずれのキャラクターも何らかの感情の動きをみせることで魅力を放って後味も清々しい。 ラストは川島雄三か。 それにしても、封切りのタイミングが絶妙すぎて笑える。現実のほうは笑えないが。[映画館(邦画)] 7点(2016-05-19 22:50:31)《改行有》

10.  トゥモローランド 《ネタバレ》 「それ以上質問を続けると、シャットダウンする。」この遊び心が最高。 つまり観客に対して間接的に、つまらぬツッコミを入れるな、と。 コカ・コーラを2本飲み干したブリット・ロバートソンがゲップする瞬間に 手前にジョージ・クルーニーを配置して、改めて奥の彼女を画面に戻すタイミングやら、 彼女がエッフェル塔展望台で当直員を昏倒させて「human!」とやるショットの縦構図やら、 暴力描写や罵り言葉を、コードギリギリを狙ってかわしていくしたたかさやら、 人物の動かし方、構図取り、対話劇がアップテンポの中で手際よく決まっている。 ひたすら彼女をアクティブに動かす演出が奏功して、キュートなヒロイン像となっている。 格闘アクションでの割すぎないカッティング、高空からの落下と着地を全身像のアクションで捉えていく運動感覚は アニメーション出身監督ならではだ。 のみならず、光の扱い、夜の闇の活かし方も『アイアン・ジャイアント』の監督だけに巧い。 ビジョンの交錯は夜と昼の中で為され、ロケットの出発の光は夜間に煌き、 中盤のジョージ・クルーニーの表情は、あえて逆光の影の中に捉えられている。 ゆえに、ブラッド・バードは実写でも十分に通用している。 (ラフィー・キャシディーとの交流も、どこか『アイアン・ジャイアント』と響きあう。)[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-03 22:44:10)《改行有》

11.  トイレのピエタ 《ネタバレ》 口跡の良さで女優を選ぶ、と語ったのは鈴木則文監督だが、 本作での杉咲花もその声の響きが何よりの特長で、 病院での出のショット、同じくラストでの登場もまずオフからの 彼女の甲高い声が画面に響く。 走り、泳ぎ、自転車を漕ぐ彼女の躍動的なフォーム、 病んだ男たちの泳ぐ視線とは対照的に真っ直ぐ覗き込むような眼にも力がある。 野田洋次郎とリリー・フランキーが語り合う、 白シーツ揺らめく病院屋上シーンの曇天は狙ったものか、たまたまか。 いずれにしてもそうした天候のメリハリも、杉咲とのプールシーンや田舎のシーンの晴天と風を際立たせるのだが、 ここでの野田のアップと涙のショットや、宮沢りえの台詞過剰は、 やはり甘いのではないかと思う。 リリー・フランキーの撮った動画映像も、主人公の死後にだけ見せる形にしたほうがすっきりして より効果的だったのではないか。[映画館(邦画)] 7点(2015-06-25 23:58:08)《改行有》

12.  ドラフト・デイ 電話を通しての駆け引きを満遍なく見せるのにはやはりこの方式か。 対話をしながら、仲間達に暗黙の目線と表情でリアクションを 示し、身振りで指示を出すGMら双方の芝居がスプリットスクリーンで展開する。 そのアクション‐リアクションが同時進行する画面が スリリングで飽きさせない。 [映画館(字幕)] 8点(2015-03-22 00:00:21)《改行有》

13.  とらわれて夏 《ネタバレ》 幾度も挿入される回想シーンが、ケイト・ウィンスレットのものなのか ジョシュ・ブローリンのものなのか。 瞬間的に把握しづらいところがあり、また類似場面の反復でもあって 物語を停滞させている気味があるが、それもまた 登場人物を苛むとらわれのイメージを増幅させてもいる。 時代背景を仄めかす映画ポスター類も序盤でさりげなく提示されるのみ。 ラストに活かされるパイ作りのシークエンスも思わせぶりなところが まるでない。そうした慎ましやかさが好ましい。 大団円の後日談。2人が並び歩く一本道の脇に揺れているのは何の作物だったか。 柔らかい光の中に静かに波打つ枝葉の音。 このラストショットが圧倒的に素晴らしい。 グリフィス的原風景に万感の叙情があふれている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-08-01 15:25:28)《改行有》

14.  東京家族 『息子』(1991)において、聾唖である和久井映見と永瀬正敏の間で交わされた FAXのやりとり。 そのやり取りには説話的な納得性と同時に、その手書き文字を秀逸な人物描写と する細やかな演出が施されていた。 対して、本作で蒼井優と妻夫木聡の間に交わされるメール文字の何と味気なく、 無意味な事か。観客は事態の推移を既に知っているのだから、 蒼井の表情変化なりを見せるだけで事は足りるわけで、 メール画面の文字は説話的にも無駄な二重説明でしかない。 一方では、妻夫木らの馴れ初めを写真一枚で物語らせるスマートさを持ちながら、 一方では上のような蛇足・無駄もあちらこちらに見受けられる。 または、『息子』でのコンロにかかったおでんの鍋のような、 簡素にして情緒豊かな小道具の類に欠けるのも寂しい。 作為性も露わに画面を賑わすエキストラ達は、 おそらくは山田流のリアリズムなのだろうが、蒼井と吉行和子が対話している奥で、 向かいの窓に姿を見せるアパート住人などはどうなのかと思う。 末っ子の部屋の開放性を以て彼の性格を演出したものとは思うが、 シーンの阻害要因となってはいないか。 貶しどころも多々あるのだが、俳優陣は文句無し。 高級ホテルの窓から見る観覧車の夜景シーンは本作オリジナルのイメージとして 印象深い。 [映画館(邦画)] 7点(2013-02-11 23:55:20)《改行有》

15.  ドリームハウス ヒーローを演じつつもどこか邪まさを匂わせるダニエル・クレイグの キャラクターイメージが次第に活きてくる作劇の転換が サスペンスを呼び込んで面白い。 夜の窓外に蠢く人影より何より、主人公の変貌ぶりにインパクトがある。 家の映画としても、二階に続く階段、地下への階段がそれぞれドラマの舞台に 組み込む配慮が為されていて如才ない。 ラストの業火の中、レイチェル・ワイズとのやり取りが感動的で、 温かい余韻を残す。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2012-12-30 00:29:56)《改行有》

16.  ドラゴン・タトゥーの女 音入れの工夫が際立っている。 映画は男女それぞれのシーンが交互に展開していくが、次のシーンからの音を前のシーンの最後に挿入する、いわゆるズリ上げが随所でシーン間の浸透とアクセントの効果を挙げており、長丁場のドラマをスムーズに繋いだ秘訣の一つだろう。 そして心臓の鼓動のような、環境雑音のような微妙な音響の活用。レイプシーンに重なる廊下の掃除機の不協和音、あるいは過剰なまでに悲痛な絶叫が前面に出ることで、画面に不穏の様相が与えられていく。 拷問シーンにかかる挿入曲「オリノコ・フロウ」によって不気味さを増す対位的な効果、静寂の丘に響き渡るライフルの銃声のインパクトなども絶妙だ。 オープニングとは対比的な叙情性に富んだ静かなエンディングのサウンドトラックがヒロインの切ない姿に被り、一際耳に沁みる。 一方では、写真フィルムの流れやルーニー・マーラの手際の良い仕事ぶりを表すハイテンポのカッティングが説話のリズムを創り出し、無機質な邸宅内の廊下を歩くダニエル・クレイグと資料室の書架の間を歩くルーニー・マーラの一体化された構図のクロスカッティングは静かな緊迫感を醸し出す。 サウンドのズリ上げ・ズリ下げだけでなく、構図的連続を擬したシーン転換の技巧も、交互に語られる二人のシーン間のモンタージュを滑らかにし、二人の関係性を映画的に強調する効果まで挙げており秀逸だ。 それら精密に設計された編集による緩急もまた音楽的と云える。 [映画館(字幕)] 7点(2012-02-24 18:34:54)《改行有》

17.  東京島 《ネタバレ》 導入部の大胆な省略と、蛇を捕獲する木村多恵のインパクトあるショットで一気にドラマに引き込む語りの妙は原作の出だしにも負けていない。 現代風刺や寓意性を殊更に強調しない節度も原作の精神の尊重だろう。 したたかと脆弱、善良と狡猾と、ヒロインのみならず個々のキャラクターも多面的かつ複雑な諸相を見せる点に、人間描写へのこだわりの意思が伺える。 キャストとは対照的に原作を始めとする主要スタッフには女性が多く、特に出産シーン以降は反逆光を活かして力強さと繊細さと色彩美を湛えた芹澤明子の撮影が印象的だ。 サヘル・ローズと木村が洗濯する水辺のシーンにおける水面の光の照り返し。 岩場の影で、生まれた赤子を懐に抱く二人のショットの自然な光。 後日談での、東京の夜景を背景にした食卓のキャンドルの暖かな灯りなどは格別に美しい。 窪塚洋介が背負う亀の甲羅のユーモアが秀逸で、10年後のエピローグにもさりげなく登場することで物語に映画オリジナルの膨らみをもたらしている。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-02-23 20:43:32)《改行有》

18.  トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン カーチェイス等を主とする水平軸のアクションよりも、垂直軸・あるいは傾斜軸を活かした高低差のアクションのほうが、やはり3Dには相性が良いのか。 『パールハーバー』で戦艦アリゾナに向かって落下する爆弾を高空から追うバーチャルキャメラや、戦艦オクラホマの傾斜した甲板を船員が滑落していく移動ショットで試みられた斜面感覚がここに結実している。 ビルの高層階から地上を俯瞰する縦に深い構図の奥行きは、平衡感覚を瞬間的に迷わせ、落下の錯覚を催させてはくるのだが、それはあくまで感覚刺激にとどまり、映画の感情を際立たせることは無い。 高層ビルから飛行艇へ、シャイア・ラブーフを追ってヒロインが果敢に飛び移るショットや、半壊して傾斜の度を増すビルの中で手を繋ぎ支え合う二人のアクション等にはもう少し情感というものが伴っても良さそうなものだが。 その無頓着ぶりと、状況をナンセンスコメディに転化させてしまうエキセントリックな感覚こそがマイケル・ベイの資質なのだろう。 それでも(それゆえ?)楽しめてしまうのは、画面の豊かな活劇性ゆえだ。 全身による螺旋回転運動を採り入れながら敵を蹴散らしていくトランスフォーマーのダイナミックな横移動ショットなどは、マキノ的な殺陣アクションを連想させずにはおかない。 [映画館(字幕)] 7点(2011-09-03 19:53:18)《改行有》

19.  東京公園 《ネタバレ》 奇しくも、ゾンビの劇中映画で同時期公開の『SUPER 8』と微かに繋がりあうところが面白い。 『リップスティック』、『ゾンビ』、『瞼の母』といった直接的な映画ネタが飛び交う脚本は好みではないが、榮倉奈々のリズミカルな台詞廻しは小気味よくて大変よろしい。 大福をほおばりながら、あるいはおでん、さらにはケーキや肉まんや赤ワインを美味しそうに飲み食いしながら話す姿も愛らしい。 順撮りか、中抜きか、炬燵を挟んで向かい合う彼女と三浦春馬の対話シーンで、正面からの切り返しごとに二人の多彩な表情を見せていく編集が新鮮な感覚だ。 (後半さらに反復されると共に、木登りで笑わせてくれる高橋洋と、神秘的な井川遥の「正対」切り返しショットの幸福感もいい。) それに対して、彼との正面からの相対を避ける小西真奈美。彼女は表情を隠そうとするがゆえに、三浦との抱擁シーンで見せる手のアクションは感動的だ。 今回のキャメラマンは月永雄太氏。屋内・屋外シーン共に、揺れる木漏れ日を繊細に捉えていて素晴らしい。 潮風公園、筆島のショットにおける波音、風音も聞き逃せない。 [映画館(邦画)] 9点(2011-07-03 20:29:56)《改行有》

20.  トゥルー・グリット 秋口の景観が印象的なヘンリー・ハサウェイ版(69)とは大きくトーンを異にし、こちらは原作に忠実な冬枯れのロケーション。 粉雪が風に舞う山岳地帯の寒々しさがいい。 黒の濃い「夜用の夜」によるナイトシーンも増え、映画のルックは現実的で渋く冷たい。 シネスコ画面を活かした(『許されざる者』的)長大な地平線のライン、スコープ内の像と空砲の音響の時間差、そうした劇空間の広大さや距離感の演出も徹底している。 その中で、ジェフ・ブリッジスが傷ついたヘイリー・スタインフェルドを搬送する夜の画面が美しく味わい深い。 夕景から夜景へと移り変わる地平線を馬が駆けていく夢幻的なイメージの連鎖と、娘が星空を背景にした「父親」を仰ぎ見るショットの古典的画像処理は一際輝いている。 一方で、より「叙事詩」的となり人間ドラマに傾注した感のあるコーエン版は、ハサウェイ版でジョン・ウェインが酒瓶を指に引っ掛けてグイ飲みする粋な仕草や、馬上でライフルを回転させる手捌き、キム・ダービーが急坂を転げ落ちる動作といった(内面性を伴わない)西部劇的アクションの大らかな魅力を必然的に欠いてしまってもいる。 [映画館(字幕)] 7点(2011-05-21 17:42:49)《改行有》

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