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1. ひまわり(1970)
《ネタバレ》 -I Girasoli- イタリア語で“ひまわり(ジラソーリ)” 最初のIは男性名詞の定冠詞の複数形。花だと女性名詞な印象ですが、チューリップやひまわりは男性名詞なんだそうな。
結婚休暇や嘘の精神疾患を駆使してアフリカ戦線行きを避けたアントだけど、結果もっと悪いソ連戦線送りに。イタリアからソ連行きなんてあったんだな。てっきり死んだか、死んだ扱いで強制労働と思っていたところ。執念で見つけ出すジョバンナ。
さてあの広大なソ連で、どうやって夫を探したのか。ソ連に派遣されたイタリア軍はそう多くはないはず。旧友の「ドン河で一緒だった」も大きなヒントで、そこ近辺で総崩れした部隊にきっとアントは居たんだろうと。あとはドン河流域の村を当たっていけば…でもこれ、言葉も通じない土地でとんでもない労力と根気が必要。お金も掛かるし精神も磨り減るよな。
若くて子供もいる現地妻マーシャと、あれから10年歳を取った独り身のジョバンナの対比も可哀想。敵兵を助けて夫にしてなんて、本当にあるのか?って思ってしまうけど、ソ連ではキャベツと兵隊は畑で取れるものだから何ら不思議ではない。この2022年に一方的に他国の州を併合するような国家。国家のために働けて敵意のない男だったら、受け入れた可能性も。
ジョバンナの立場で話を追っていたけど、このマーシャがとても純粋で、全然悪い人じゃないのがまた苦しい。10年前に助けて、そのままずっと一緒に暮らしてるんだから。ジョバンナが来て、引っ越すときもすごくアントを気にして、考え込んでる時に話しかけなかったり、無理に明るく話しかけられたら笑顔で答えたり。とても良く出来た奥さんです。
ドン河で頑張ってアントを引きずるマーシャ。コレどっかで観た画だなって思ったら、レッドリボンにやられた悟空を助ける女の子だ。ほらあの、ジングル村の、ハッチャンと暮らしてる。ほら。
ちなみにロシア語でひまわりは“подсолнечник(パトソールニチニク)”だそうです。
ウクライナ語では“соняшник (ソーニヤシュニク)”だそうです。ぜんぜん違うんですね。[インターネット(字幕)] 8点(2022-10-06 20:29:27)《改行有》
2. 病院坂の首縊りの家
《ネタバレ》 オープニングのジャズ、スタッフ紹介の文字の大きさから、今までのシリーズらしさ(悪く言えばマンネリさ)を払拭しようとしたんだろうか?統一感は薄い。そして黒いマントを纏った金田一が、今までの事件に振り回される感じでなく、一歩引いた落ち着いた感じで、何とも格好いいのだ。それら脱マンネリ策に、最初見た時は違和感を感じたけど、2回目視聴の時には、これも良いなって思ってしまった。お約束のセリフ、仕草はしっかり健在で、等々力警部は粉薬の大サービス。
家系図がとっても複雑で、劇中まんま家系図メモを見せるくらいだけど、それでも充分に理解できたとは思えない。弥生の娘と孫が…という解釈で良かったろうか?もう人間関係が女の髪のように複雑に絡み合っててドロドロだよ。千鶴がなんで天井裏に隠れて暮らしてたのか、劇中聞いてたのに忘れたんだか…
夜中の廃屋で挙げる結婚はミステリアスで、視線の定まらない由佳利の演技はなかなかのモノ。その後の生首事件に繋がる下りは、戦後の怪談としても不気味で興味を惹かれる。謎解きのキッカケ、意外な人物の意外な裏の顔も、ミステリーとしてしっかりした作りに思えた。電話を使っての“誰が誰と話してるのか?”を混乱させる撮り方も上手い。
弥生がもう不憫で不憫で…15の頃から猛蔵に写真で縛られ、写真乾板をネタに脅迫され続け、結婚写真を使った敏男の法眼家への復讐は、法眼家に人生を狂わされた弥生に向けられる事になるハズだった。結果的に娘を2人も失い、そしてあの結末。原作と違い弥生を殺害に関与させたのは、あまりに一方的に不幸過ぎる生涯だったからだろうか。弥生の由佳利に対する想いが今ひとつ掴みきれなかったと思うけど、襖を挟んで小雪と話す弥生の姿に、由佳利への思いも込められていたのかもしれない。
これで石坂金田一を5作品+1を製作年順に続けて観た。前作から1年3ヶ月ほど経っての公開。舞台は昭和26年。んん?年代的に5作品のちょうど真ん中だ。真ん中だけど金田一が渡米(?)を前にして起きた最後の事件ということ。う~ん、作品ごとの関連性が見えるかと思ったんだけど、キャラクター設定は一緒でも、他作品との繋がりらしいワードは一切出てこなかった。
作品ごとに完成度にムラがあるけど、犬2006を除く5作品(女王蜂も除いて4作品でも良い)を、年代ごと(獄→犬→病→(女)→悪)に、脳内で補完しながら観ると、テンポよく観られるかも?[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-10-06 22:33:07)《改行有》
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