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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  ブラックハット 『ラスト・オブ・モヒカン』のオーディオコメンタリーでマイケル・マン監督が 披露する時代考証の知識には圧倒される。 『コラテラル』のコメンタリーで雄弁に語るキャラクター設定の緻密さにもまた 感心させられる。 この作品についても、ハッキングに関する綿密で膨大なリサーチが為されたはずだろうし、 主役脇役問わず各人物の背景や生い立ちまで詳細に設定されていることだろう。 それらはこれ見よがしにひけらかされることなく、 各人なりの明確な原理と裏付け・信念が、即物的な行動のみの描写となって 画面に載せられていく。 いきなり幼少時代に遡って主役の人物背景を説明し始まった『アメリカン・スナイパー』とは 大きな違いだ。 クリス・ヘムズワースが、『ラッシュ』に続き、男の色気があっていい。 うなじや二の腕を映し出しながらタン・ウェイにいまいち官能性が薄いのが マイケル・マンたる所以か。それとも機動性・高解像度と引換えに光量不足を露呈してしまう デジタルカメラの弱みゆえか。 夜明けの航空機内、復讐に向かう二人は抱き合い、カメラと共に共振する。 ここからラストに至るまで、さらなる台詞の削ぎ落としは見事の一語。[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2015-05-29 23:54:55)《改行有》

2.  ファインディング・ドリー 《ネタバレ》 ルイ・アームストロングが流れ出したスローモーションシーンの何とはない既視感。すぐには浮かばなかったが、 矢口史靖『スイングガールズ』の猪シーンだと思い出した。 移動に不自由を課された主人公たちが様々に飛ぶこと(上昇と落下)をモチーフに冒険を繰り広げるが、 そのクライマックスとなる大ジャンプを例の曲が情感とヒューモア豊かに彩っている。 トラックを一旦は止めたものの再びドアを閉ざされ移送される。今度こそ万事休すかと思われた瞬間、目に入るのは天井の非常ハッチである。 クライマックスの水平運動に慣らされた目に垂直軸のベクトルを不意に導入させることで驚きを創出する。 『トイ・ストーリー』から一貫した、軸転換によるアクションと作劇のスタイルだ。 ドリーにとって大切なのは、目の前に広がる光景すべてに、全方位的にまずは目を凝らして「見る」こと。 それが下方の貝殻の発見につながり、ピクサー的かつアメリカ映画的な「家に帰ること」に繋がっている。[映画館(吹替)] 8点(2016-08-07 08:26:19)《改行有》

3.  フランシス・ハ パンフレットのモノクロスチル写真でみるグレタ・ガーウィグはさして魅力的には 見えないのだが、ひとたびスクリーンの中で活動し出すとその仕草が、 表情が、不器用なカッコ悪さまで引っくるめて生き生きした魅力を発散し始める。 ルームメイトと戯れあい、ゴロ寝し、街路を飛び跳ね、駆ける。 ありがちな大仰な表情芝居がまるでなく、全身でフランシスを生きる 彼女は実にしなやかで愛らしい。 文句なしに、映画のヒロインだ。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-04-15 23:51:32)《改行有》

4.  ファインド・アウト 派手に車体をぶつけるばかりが能ではない、というカーチェイスがいい。 車種を幾度も変えつつ、 追走するパトカーの目眩めくライトの光芒がテンポの良いカッティングの中で 美しく映えて、車体の接触など一度も無いことが逆に一層の緊迫感を煽る。 運転座席での携帯通話という図の繰り返しは単調になりがちだが、 通話しているアマンダ・サイフリッドの背後の窓ガラスに意識的に 映り込んでいる雨滴、緩やかに流れていく街燈の光やマジックアワーの明かり、 そして森の闇が画面の動的なアクセントとして機能している。 「Just Watch Me」と懐柔を拒否し、「I lied」と何の躊躇もなく マッチの火を洞穴に投げ込み復讐を果たすヒロインの清々しいまでの豪胆。 全編に一貫した、一切躊躇のない無頼派の行動が何より魅力だ。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2013-10-16 01:04:20)《改行有》

5.  ファウスト(2011) 《ネタバレ》 つきまとい、つきまとわれ、顔を接さんばかりに寄せ合い、問答する登場人物たち。 スタンダードサイズの画面の中、歪曲のエフェクトと共に その過剰なまでに詰まった人物間の距離が息詰まるような緊迫感を醸す。 猥雑かつ殺伐としたイメージ群の中、 マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)の清楚さが文字通り輝く。 教会内のシーンの厳かな光。 ファウスト(ヨハネス・ツァイラー)に真相を問わんとする彼女の 複雑で繊細な表情を包む光芒。そして雷光が劇的だ。 湖畔に一人佇む彼女がファウストを振り返る、その一瞬の表情の印象深さ。 そのまま二人がグリーンの湖中へと沈んでゆく、その静かな波紋の広がりの清冽。 ラストの峻厳なロケーションもまた素晴らしい。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-05-31 23:58:15)《改行有》

6.  舟を編む 宮崎あおいの「上で食べよう。」のシーンから、十二年後のシーンへ転換する鮮やかさ。 のちに登場する「香具矢さんは馬締さんの配偶者なの」といった台詞の妙が 石井監督らしくて面白い。 または、加藤剛の死去の場面。 病院の廊下に立ち尽くす松田龍平の横顔から、喪服姿の松田・宮崎が傘を差しながら 坂道を登ってくるロングショットへと画面は転換する。 そして二人が蕎麦を一口すする静かな食卓のショットが窓の雪を映し出す。 そのカメラワークが情感に溢れ、素晴らしい。 この手の物語でありがちなパターンである、 結婚式やら恩師の死やらの劇的イベントに時間を割いて感傷的に盛り上げるといった 媚びになるシーンをことごとく割愛してみせる節度ある姿勢に 非常に好感を持つ。 酒を飲めなかった黒木華が、ビールを一気に飲み干す。 吃音っていた松田龍平が、自然に仲間たちと会話を交わし、チームを統率する。 ツマを盛りつけていた宮崎あおいが、凛とした立ち姿で主菜をふるまっている。 外見の変化だけに頼ることなく、具体的な行動の変化によって 時の流れと人の成長を描く。そうした演出方法も真っ当だ。 ほぼ全てのキャラクターが善良すぎる点は玉に瑕だが、 オダギリジョー、小林薫、伊佐山ひろ子などなど、いずれの配役も味がある。 書物の積み重なる編集部や下宿の内装美術も相当に凝っており、素晴らしい。 [映画館(邦画)] 8点(2013-04-18 23:58:22)《改行有》

7.  ファミリー・ツリー 《ネタバレ》 意識の戻らない母を逝かせる事が次女(アマラ・ミラー)に伝えられる。カメラは彼女の目に光る涙を見逃さない。幼さを残しながらも、気丈にその言葉を受け入れる彼女の表情。その一連のショットを繋ぐ寡黙で繊細で優しいディゾルブ処理が素晴らしい。 通俗に陥りそうな、親族会議でのスピーチを巧みに省略するのも、親子3人と少年の小さなシルエットがカウアイ島の渚を歩くロングショットの重なりが豊かな情感を醸成するのも、この適切なディゾルブ編集による。 単なるハワイの絵葉書的美観の羅列に陥らせずに、風や波の音と共に自然光を活かしながら、パンフォーカスやロングショットによって人物・自然・ポートレートを同化させる構図もシークエンスと主題を際立たせている。 その極めつけが、父ジョージ・クルーニー、長女シャイリーン・ウッドリー、次女アマラ・ミラーの親子がソファで寛ぐラストショットの一体感だろう。 母の形見の膝かけに包まる三人の真直ぐな視線。その背後にあるランプシェードの灯。額縁の絵。開放的な奥の空間。流れ続ける『皇帝ペンギン』のナレーション。 静かな時間の感覚が父娘の絆を炙り出すようで、秀逸だ。 [映画館(字幕)] 8点(2012-05-24 22:27:10)《改行有》

8.  ブンミおじさんの森 大雑把に三部に分けられる構成には侯孝賢の『百年恋歌』のような趣がある。 熱帯林の緑の濃淡と、湿潤の感覚。裸電球の下で食卓を囲むショットとフレームへの人の出入り。エピローグのPOPミュージックなど等、、。 小さな滝と水流の幽玄性、中国茶の入ったガラスコップに木漏れ日を美しく反射させる採光などは実に繊細だ。寝室の蚊帳は幾度も画面に淡く美しい紗をかける。 水と小魚の鍾乳洞のイメージなどは母胎のメタファーそのままだが、まずもって具体の画面として吸引力がある。 冒頭から豊かに響く生命の気配の濃密さ。静かな地鳴りのような音響へと変わり、それが途切れた瞬間に引き立つ静寂、その音響が緊張を孕みながらも心地よい。 あるいは足を患うジェンの不自由な足取り、水牛、犬、精霊の佇まいもまた静かな緊張感を終始漲らせる。 赤い目を光らせる「猿の精霊」の造型はどこか宮崎駿の描く神人の影響などもおぼろげに感じさせる。 暗い洞穴の中で輝く、星のような鉱石の光。その美しいイメージはまさに『天空の城ラピュタ』の一場面の優れた実写化だ。[映画館(字幕)] 8点(2011-04-18 23:01:37)《改行有》

9.  不屈の男 アンブロークン 《ネタバレ》 イタリア移民としての被差別、走ることとの出会い、そしてオリンピック走者としての活躍が回想処理によってまずは語られる。 ナショナリスティックな曇りを取り払い、映画的な主題に立ち返れば、走ることに対する抑圧と解放のドラマということになるか。 丹念に描写された前半の海上漂流は、踏むべき地面の無いゴムボート上では立つことも歩くことも出来ない、そういう意味での責苦でもある。 収容所では足・顔を殴打され、幾度も地面に伏すこととり、直江津では重い木材を担がされ、ひたすら直立させられることとなる。 単純化するなら、走ることで自己実現してきた者が走るという行為を奪われ、それを取り戻すまでのドラマ、となろう。 それだけに、エピローグでにこやかに走るザンぺリ-ニ氏の姿は感動的である。 ロジャー・ディーキンスの撮影は、実話の映画化といこともあって合理的な光源を基にした自然主義的なルックだ。 爆撃機のキャノピーの中を一瞬横切る太陽の入射光などの細部が画面にリアリズムを与えている。 直江津の石炭採掘場の見事な美術を舞台に展開されるのは、収容所長との視線の闘いでもある。 ここに至って、写実的な照明はより強度を帯び、二人は順光と逆光で対照化される。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-29 04:52:30)《改行有》

10.  ブリッジ・オブ・スパイ 《ネタバレ》 マーク・ライランスの自画像、鏡像、本人の三身が一画面内に映し出される冒頭のショット。 それは二対一の交換のドラマ、国を跨ぐスパイのアイデンティティのメタファーでもあろうか。 鏡への反射の演出は随所にみられ、様々に考察の余地がある。 裁判劇を含む饒舌な脚本でありながら、冒頭で示されるそのスパイ活動の描写は尾行劇とレンズを凝視する事という視覚の駆使であり、 そこに画面で語るスピルバーグの本領が発揮されている。 ヤヌス・カミンスキーは、凍てつくヨーロッパと、温かみのあるニューヨークのルックのコントラストをよく際立たせ、 クライマックスの橋は越境という決定的局面を光と共に象徴的に浮かび上がらせている。 本作での光は、米国パイロットを幾度も苛み、銃弾の撃ち込まれたトム・ハンクス家族を晒し、橋の向こう側に輝くライトも 必ずしも希望を象徴していない。蒼白い光芒の下、シルエットと化して消えゆくそれぞれのスパイと、立ち尽くすトム・ハンクスの 暗示的なロングショットが切なくも美しい。 マーク・ライランスの寡黙な芝居が素晴らしい一方、眉間に皺を寄せるばかりのトム・ハンクスの表情は少々単調か。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-11 21:21:24)《改行有》

11.  フランス組曲 《ネタバレ》 ドイツ占領下のフランス。貞淑なヒロインと紳士的なドイツ軍士官のスリリングな視線の劇。 特に序盤のシチュエーションはオフからの足音等の音響と共に、メルヴィルの『海の沈黙』のような静かな緊張感を湛えている。 半開きのドアや鏡面等のフレーミングによって、ヒロインのミシェル・ウィリアムズは小さく切り取られているが、 ドラマがそこから大きくうねるのに伴い、義母役:クリスティン・スコット・トーマスと共に彼女もまた枠を越えて大きく変貌していく。 萎縮する女から、恋を経て雄々しく前進する女へ。ミシェル・ウィリアムズがひときわ魅力的だ。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-01-10 23:53:06)《改行有》

12.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 携帯画面の文字情報と、それを読むリーアム・ニーソンのリアクションを 同じ画面内に乗せながら物語を畳み掛けていく。 観客は双方に視線を配りながらの視聴を要求されるが、それぞれのショットを 定番的に分断させるよりも断然テンポとリズムがいい。 その意味でも「NON STOP」である。 犯人とメール交渉をしつつ、相手の反応を機内の複数の監視カメラを通して 女性二人にチェックさせていく。 そこに同時進行で機外との通話が重なる、といった具合に複雑な シチェーションを的確に処理しながらテンションを上げていく手際がいい。 主人公を陥れていくマスメディア、謎解きに一役買う携帯動画メディア。 各種映像媒体の提示も現在的で面白い。 閉所での格闘アクションは相変わらず煩雑でぶつ切りなのが玉に瑕だが。 割れた鏡面に歪む主人公の像などは、もはや監督のトレードマークといえる。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-09-11 23:59:05)《改行有》

13.  フタバから遠く離れて 映画中盤に、双葉町へ一時帰宅する避難家族たちの模様が映し出される。 舩橋淳監督ら撮影クルーも同行しているが、幾つもの家族を追うには限界がある。 監督から預かったビデオカメラだろうか。取材対象であった中井裕一さんは 自ら機材を持って、被災地の様を記録していく。 墓参に訪れた墓地は荒れ果て、あちらこちらで墓石が崩れている。 中井さんの慨嘆の声。カメラは激しく動揺し、忙しない。 時間がない、と怒鳴りながら親を急かす中井さんの切迫した声が胸を衝く。 限られた時間の中、頼まれてきた思い出の品々を家具の中から慌ただしく探し出す 一時帰宅者たちには悲しむ余裕も無い。 一方で、避難所の家族たちに寄り添うローポジションのカメラ、 牛舎の中で餓死している牛たちの惨い姿に正対するカメラの意志的な構えと スタンスは揺るぎなく、厳しい。 民主党の海江田・細野らによる恐るべき珍セリフも忘れがたい。 [映画館(邦画)] 7点(2013-04-12 23:40:29)《改行有》

14.  BLACK & WHITE/ブラック&ホワイト(2012) 計算された予定調和的な長回しほど撮影の裏舞台を想像させてしまい、説話にとっては妨げとなりがちである。 『ターミネーター4』でもそれが気取りにも見えかねない逆効果を生んでいたが、本作中盤でリース・ウィザースプーンが自室で音楽に合わせて踊り動き回る中、彼女の視界の外で部屋を物色するトム・ハーディ&クリス・パインの動きを組み入れた縦横無尽の移動長回しなどは、あえて作り手の段取り臭さを誇張したようなユーモアがある。 「荒唐無稽を真剣にやる」というドラマ内容と撮影スタイルが合致した相乗効果もあるだろう。 スタッフ・キャストの息の合った仕事ぶりを見せつけて心地いい。 そうした作り手の熱意を露呈させる長回しも、レンタルDVD店のシーンを始めとする様々な映画ネタも、一種のご愛敬。 それらの無邪気な作為性は明らかにシリアスパートの緊張感まで削いでいるのだが、それも狙いなのだろうから、アクションシーンの雑なカット割りに耐えつつひたすら予定調和を楽しむしかない。 対話劇のテンポ、特にヒロインの親友役:チェルシー・ハンドラーの話術は傑作である。 [映画館(字幕)] 7点(2012-05-04 03:16:05)《改行有》

15.  武士道シックスティーン 《ネタバレ》 クライマックスのインターハイをあれだけ潔く省略したのに、一方で北乃きいの父親に関するエピソード等では台詞説明過多な印象があって、本来ならもっと脚本を削れたはずと不満は残る。とはいえ、この種の青春ものではないがしろにされがちな家族との関係描写を丁寧に描いている点は好印象だ。面付けの所作などのさりげないシーンも光る。そして、風。休部中の成海璃子が剣道場を覗く場面や、ベンチに横並びになる成海・北乃のツー・ショット、あるいは小高い丘の場面など、幾度と無く彼女らの背景で木々が風でさわさわと揺れる。それら要所要所で吹き抜ける涼やかな風が非常に印象的で、映画を心地よい感覚で満たしてくれる。小木茂光と成海の父娘が陽光の差し込む開け放たれた道場に並び座る和解の場面でも、木々の影が二人を癒すように繊細に揺れていて良い感じだ。階段の段差を用いたエピソードもまた、二人の関係と距離をうまく視覚化している。北乃の見上げた主観ショットともとれる、青空を背景としたラストショットの笑顔も気持ちいい。[映画館(邦画)] 7点(2010-05-16 19:28:43)

16.  フェア・ゲーム(2010) 友人達とのホーム・パーティシーンで白熱する政治論議。 マスメディアのサダム・フセイン悪玉論を得意げに受け売りする友人を、ショーン・ペンが一喝する。そのフセイン像は自身が実際に見聞した真実の姿なのか、と。 例えば、実際の現場を直接見てもおらずに『ユナイテッド93』の顛末を(「大本営発表」を以って)既に「知っている」つもりの少なくない観客にとっては耳が痛い台詞だろう。 CIAエージェントとしての身分を暴露され絶望するナオミ・ワッツを説得するシーンと共に、俳優ショーン・ペン本人の義憤が直裁に伝わってくるような響きの台詞であり、メソッド演技である。 パパラッチとの確執。国家と個人。いずれもショーン・ペン的なモチーフであり、役者の個性と、実録としての強みとの相乗効果がまず何よりも映画の推進力だ。 劇中のホワイトハウスは曇天にくすんでいる。 今後いくつの「イラク後遺症映画」が作られていくことになるのか。 [映画館(字幕)] 6点(2011-12-10 21:13:23)《改行有》

17.  ブラック・スワン 明らかにそれと判るデジタルエフェクトほど無粋なものはない。 観客が気付かないぐらいが効果的なのであって、過度に充血した眼やら、鳥肌やら、自傷やら、大仰な効果音付で繰り返されればさすがに興も冷める。 二次加工も半端に使われてしまうと、実写画面への信頼性すら揺らぎかねない。 『タイタニック』でレオナルド・ディカプリオらが踊ったアイリッシュダンスのように、モーフィングによってダンサーの下半身と俳優の上半身を繋ぐ事などもはや造作もないのだから。 ダンスシーンの、演者に肉薄していくような手持ちキャメラワークを始め、役者の身体性と演技に拘るのなら尚のこと、過剰な特殊効果は控え、出来る限り役者の生身だけで勝負してくれなければ価値を減じてしまう。 つきつめていけば、「演技賞」とはどこまでを言うのかという事にもなる。 地下鉄の車窓、ドレッシングルームや稽古場の大鏡の錯覚的な重層性と迷宮感。CGの援用はこれらに限定するだけで十分かと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2011-05-15 20:49:56)《改行有》

18.  不能犯 《ネタバレ》 そもそも自分は手を汚したくないので他者に殺してもらおう、という了見自体が「純粋な殺意」とは呼べない気がするのだが。 そこらへんが引っ掛かり続けるとドラマに入りづらい。 そのかわり、沢尻エリカと松坂桃李に関する設定を視覚化するため、白光と陰影を配分して二人を対称化させるレイアウトが為されており、 余計な装飾を省いてすっきりしたモノトーン系の背景と衣装によって二人の芝居を引き立てるなどよく工夫している。 ラストの階段も、上下と左右のベクトルでの対称化という訳だ。[映画館(邦画)] 5点(2018-02-07 23:01:51)《改行有》

19.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 恐らく膨大な美術ボードが描かれたのだろう。 その世界観の提示に汲々としている感じだ。本当に160分も必要だったのだろうか。 白い濃霧や雪、黒い闇や波濤、雨に煙って視界不良の世界が奥行きをつくりだすが、 そこに環境音なのかBGMなのか、紛らわしい音響が虚仮脅しのように響くのも仕舞いには飽きる。 前作同様に碧い瞳のクロースアップで始まるオープニングだが、眼球や見ることのモチーフへのこだわりも 相対的に非常に弱く、単なるオマージュに過ぎない。 その冒頭の視線は、ヴァンゲリスのメロディと共にラストで横たわるライアン・ゴズリングの主観ショットにも繋がる よう、工夫するのが妥当かと思うのだが。[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2017-10-27 23:31:04)《改行有》

20.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 つまるところ、ローガン・ラーマンのビルドゥングス・ロマンである。 聖書談義を採り入れ、良心的兵役拒否者や非戦闘員らを点描し、 砲弾や銃弾に弾き飛ばされる人体の即物的な描写へ執拗に拘りながら、 劇伴音楽からしても基調となるのは悲愴美やヒロイズムといったもの であり、ドラマもそこに収斂する。 単に仲が良いというだけではない危うさを秘めたチーム内の 一筋縄ではいかない人物関係描写や、 汚物・曇天・泥濘・血糊といった不浄の描写がこの監督の持ち味なのだろうことは 分かった。 会食シーンでの時計音、見張りシーンでの草木のざわめき、 次第に高まる砲弾の飛来音など、 静かな場面で緊張を演出する音使いはいい。 [映画館(字幕)] 5点(2014-12-07 11:35:54)《改行有》

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