みんなのシネマレビュー |
|
1. ファイナル・デスティネーション 《ネタバレ》 幽霊もゾンビも殺人鬼もクリーチャーも出ないのに、これだけ面白くハラハラできる映画が出来ることが素晴らしい。今まで見たホラー映画の中でも1,2を争う面白さです。 今作の最大の長所は恐怖を煽る演出。『トッド』や『先生』のように、『死ぬまでのプロセス』をじっくり見せるパターン。『テリー』や『ビリー』、ラストの『カーター』のような瞬殺パターン。つまり、『死の見せかた』が大きく2パターンあります。 実際、実生活において『事故死』っていうのは一瞬のうちに起こるものがほとんどです。それをただ垂れ流しただけでは、ただの事故映像であり、映画にはならないでしょう。『テリー』や『ビリー』のような瞬殺パターンっていうのは、従来のホラーでは、ホラーにはなりえなかったと思うんです。 ところが、それを『トッド』、『先生』のパターンと交互に見せることで、とたんに従来にはない新感覚のホラーになります。前後の文脈がなければただの『事故』ですが、前後に文脈があることにより、ただの『事故』から『ホラーによる惨劇』になるのです。つまり今作の『死の筋書き』というストーリーの存在により、今まで映像では成しえなかった新しい形のホラーができあがっちゃっているんですね。 また、それぞれの順番も非常に大事になってきます。『トッド』⇒『テリー』⇒『先生』⇒『ビリー』。野球でいうなら、速球とチェンジアップを交互に投げているようなもんです。この順番だったからこそ、21世紀を代表するホラー映画の傑作になったのだと思えます。 このシリーズは、どうしてもそのアイデアの性質から、一番最初に最大の見せ場である『大量死』をもってくる必要があります。最もインパクトの強い映像を一番最初に見てしまうわけです。最初のインパクトが強すぎると、それ以降は何を見せられても刺激が足りなく感じてしまうものです。これはホラー映画では大変危険な行為でしょう。 にもかかわらず、ちゃんと最後まで緊張感が持続するのがこの作品の凄いところです。 ディテールにも非常にこだわっていて、雑誌のきれはしに書かれた『Tod』、ビルの窓に映る『バスの影』、『シートベルトがちぎれる白昼夢』、その予見の演出は見事すぎます。ただ非常にもったいないのは、その演出が上手すぎるうえに、展開がスピーディーなので、初見では気づかずに見過ごしてしまう可能性が高いことでしょう。(※特にバスの影は、重要な会話シーンの中でさりげなく挿入されるので、一番難易度が高い。)この『予見の演出』に気付くか気付かないかで、この作品の面白さの感じ方って、また変わってくると思います。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2015-05-05 03:15:57)(良:4票) 《改行有》 2. フェイス/オフ 《ネタバレ》 前半かなり怖いですね。へたなホラー映画よりよほど怖いと思いました。あの絶望的な状況からハッピーエンドへと突き進んでいくストーリーは凄いですね。[DVD(字幕)] 9点(2011-07-06 22:30:35) 3. ファンタスティック・フォー [超能力ユニット] 《ネタバレ》 大好きな映画です。わかりやすい。テンポが良い。映像がきれい。みんな強い。4人がよくけんかするけど仲良し。ジョニーと他のキャラクターたちのからみが面白い。リード、スー、ジョニー、ベン、ヴィクター、名前が短くて覚えやすい。個人的には、みんなが少しずつ自分の能力に気付き始めるところが一番好きです。前半で、ベンの部屋を空けるために、リードの手がべチヤ、うにょーとなって鍵をあけたとき、それを見たジョニーのせりふ。「気持ち悪。」名ぜりふです。[DVD(字幕)] 9点(2011-07-05 00:37:52) 4. ブラインド(2011) 《ネタバレ》 めちゃめちゃ怖い幽霊ものかと思っていたら全然違いました。 韓国お得意のサイコパスサスペンス。いや、本当にサイコパスをやらせたら韓国の右に出るものはいませんね。 主演のキム・ハヌルはなんとなく堀北真希に似ていて親近感が湧く。 大泉洋を連想してしまうチョ刑事がユーモア担当で、ホラー色の強い今作の良い緩衝材に。 ス・ユンホが演じるギソプも登場時こそイメージが悪かったのですが、実は良いやつっていうギャップが良い。 そしてなんといっても盲導犬のスルギが最高にかわいい。ラブラドール好きなんですよねー。 スルギも含めキャストが凄い良い。 そしてストーリー。シナリオが作りこまれていて、でもそれでいて難解でなくわかりやすい。電車内での追いかけっこなんか本当に演出からストーリー運びから最高によくできています。 そして意外性。まさかスルギやチョ刑事が犠牲になってしまうなんて誰も想像できないでしょう。これは衝撃的でした。 こうなってくると主人公死亡のバッドエンドもありうる。なんといっても主人公は冒頭、自分の過失で幼馴染を死なせてしまっています。その報いを受ける可能性だってあります。だから最後まで緊迫感が途切れません。 まあ最後はなんだかんだで一応ハッピーエンドにおさまるわけですが、冒頭で死んじゃった彼のことを考えるとスアだけが幸せになるのはなんかちょっとだけひっかかるものがなきにしもあらず。まあ3年間苦しんできたわけだしね・・。 それにしてもチョ刑事に対する扱いがひどい。せめてみんなが驚いたり悲しんだりするシーンを入れてほしかったです。 [DVD(字幕)] 8点(2022-03-25 15:31:03)《改行有》 5. ブラックサイト 《ネタバレ》 こーゆー猟奇犯罪サスペンス、好きです。この映画は娯楽に徹しています。ハラハラするし、ドキドキもするんですが、割と肩の力抜いて見られるんですよね。そーゆーの好きなんです。これを『適度』と言うのでしょう。 閲覧数が増えれば増えるほど、死の装置が稼動していく仕掛けは見事。こんなアイデアよく思いつくもんです。FBI捜査官が記者会見で『閲覧すればあなたも殺人の共犯です。』と呼びかける。ところが意に反して閲覧者は減るどころか増える一方。そりゃそうでしょ。主人公だって劇中で警告していたじゃん。 ネット社会に潜む危険性を極端な形で映像化。不特定多数の人たちが好き勝手に鑑賞できるネット社会への警鐘。それを説教臭い形ではなく、あくまで娯楽サスペンス、エンターテイメントという形で提供してくれる。こーゆー映画大好きです。 殺しのギミックは『ソウ』っぽくて好き。しかも1人目⇒2人目⇒3人目となるにつれて過激度が増していく演出。よくわかっていらっしゃる。『怖いもの見たさ』という人間心理を上手につついてきます。 更に3人目の犠牲者にグリフィンをもってくることで、『他人事ではないんだよ』という雰囲気が一気に強くなり、緊張感が一層高まります。ここでグリフィンを選ぶのが絶妙ですね。最初の2人が助からないのは明らかだし、主人公の女性捜査官が助かるのも明らか。グリフィンのような生かされても殺されてもおかしくない立ち位置の人間を3人目にチョイスするのは、絶妙な人選だったと思います。 社会性とエンターテイメント性のバランスがとれた良質サスペンスです。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-18 20:45:30)(良:2票) 《改行有》 6. ブレイブ ワン 《ネタバレ》 おそらく賛否両論あるであろうラスト。もしかすると『否』のほうが多いかもしれません。 ですがきれい事ばかりでラストをしめくくる作品より、私は人間の本音をあるがままに描くこーゆーラストにぐっときます。 重要なシーンがあります。注文していた結婚式の招待状が届くシーン。幸せだった頃の自分たちを思い出す重要なシーン。良くも悪くも、怒りは時とともに風化していくものです。このシーンはその風化をくいとめる重要なシーン。冒頭の結婚式の打ち合わせをする幸せそうなシーンが蘇り、犯人を許すなという気持ちに一気に引っ張られます。 この映画はエリカ・ベインの人物描写が凄く良い。ジョディ・フォスターという名優が演じているというのもあるでしょうが、脚本と監督が良いのだと思います。 警察署に行き捜査状況を確認。見事なまでのお役所対応。長時間待たされたエリカは意を決してガンショップへと行ってしまう。このときのエリカの気持ちが痛いほど伝わってきます。誰が彼女を責められるでしょうか。 1度目のコンビニ殺人⇒正当防衛。2度目の地下鉄殺人⇒過剰防衛。このあたりの、エリカの心境の変化の描き方が抜群に上手い。3度目も結果正当防衛ではありますが、そもそものきっかけが『巻き込まれ』ではないのが今までと違います。そして4度目とクライマックスは、遂に自分から狩に出ます。エリカの理性が少しずつ失われていく様子が、無理なく自然に描き出されています。 辛いストーリーなので満点はつけづらいですが、ドラマ仕立てのサスペンスとしてはほぼ満点の出来。 同じアパートのスーダン出身の女性の存在感が抜群に良い。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-11-06 12:16:55)《改行有》 7. ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 『人民解放』『人民のため』を謳いながら、その人民を虐殺し、手を切り取り、少年をさらうRUFは狂気の沙汰。大義名分を振りかざし、『暴力』『金銭欲』『性欲』という個人的な欲求を満たす行為に反吐が出る。 先にあらすじ読んで、シエラレオネという国や、その内戦の歴史について少しでも調べて鑑賞した方が良かったかもしれないです。政府は政府で民衆に平気で銃を向けていたようですから、RUFと政府の双方から標的にされた民衆はたまったものではないですね。戦争は絶対悪だけれど、弱者を標的とする『内戦』は唯一戦争の上をいく絶対悪なのでしょう。 さて、舞台は『シエラレオネ内戦』ながら、ストーリーはもっと個人的。内戦について知らなくとも、1本の映画として鑑賞可能。むしろ、ミクロな視点からマクロな世界を理解できる教科書的作品。 『ディアの奪還』『ピンク・ダイヤモンド』『紛争ダイヤモンドの取引ルートの証拠』アーチャー、ソロモン、マディーの三者それぞれが、目的のために協力しあう。冒頭の村襲撃、フリータウン襲撃、ジャーナリスト一行への襲撃、気が休まる暇がありません。更には『ディア拉致、洗脳、少年兵育成』のサイドストーリーが凄い。そして悲しいかな、それぞれのエピソードは目を覆いたくなるのに、一種のエンターテイメント性を感じてしまう。でもそれで良いのだ。これは映画なのだと自分に言い聞かせる。 印象的なシーンは数多くあれど、その中でもとりわけ終盤、ロンドンのショーウィンドウに飾られたダイヤをソロモンが見つめるシーンがこの映画の集大成。 真面目な社会派というにはエンタメ要素が強すぎる。ですが、エンターテイメント性があるからこそ、多くの人に見てもらえるという真実があります。つまり、こういうメッセージを発信するからこそ、面白さを追及した制作サイドの勇気は偉大です。 私はこの映画でシエラレオネ内戦を知り、その歴史背景に興味を持ち、深く調べてしまったので、その意味では貴重な映画だといえます。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-06-05 10:49:00)(良:1票) 《改行有》 8. ファイヤーウォール 《ネタバレ》 わかりやすい。テンポ良い。手に汗握る優良サスペンス。完全な商業用エンターテイメントですが、こーゆーのが好き。ハッキングも誘拐も使い古されたネタですが、それが良い。このストーリーだったらネットとかハッキングとかよくわからなくても全然楽しめます。 ひたすらやられっぱなしだとストレスがたまります。ですが、ジャック(ハリソン・フォード)もその家族もやられっぱなしではありません。現状を打開しようと悪戦苦闘。一度は地下室からの脱出に成功したかのように見えましたが、結局失敗。でもこーゆー流れは悪くないです。 そんで敵のボス、ポール・ベタニー。素晴らしい悪役顔。男の子のひざを砕こうとしたり、ピーナッツ食わせてアレルギー引き起こさせたり、脅迫の手段が容赦ない。やはりこーゆーエンタメ色の強い映画ではなかなか子供を殺せません。実際人質家族はだれも殺されません。でも誘拐犯としての恐ろしさは演出する。それって結構難しいことだと思います。で、なかなかどうして、その辺の恐ろしさってのはよく描けていたのではないでしょうか。 犯人グループがちょっと間抜けな見張りや優しいハッカー、クールなイケメンなどバラエティに富んでいたのも良い。脇は秘書のジャネットや合併企業のゲイリーが良いスパイスを効かせています。人材配置に無駄がないと思います。 好きなシーンやネタも多い。本来は敵同士。でも共通の目的のために一時共闘。そーゆーシチュエーションが好き。主に銀行から金を取るシークエンスが最高。 いろいろと個人的嗜好に合う作品でした。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-04-11 15:24:25)(良:1票) 《改行有》 9. プラダを着た悪魔 《ネタバレ》 特に興味のあるジャンルでもない、にもかかわらず、そんな私に飽きさせることなく見せきった。テンポの良さと演技力、そして音楽で否応無く物語りに引き込むパワーがある作品です。素人にはわかりづらいジャンルであるのは間違いないのですが、少しでもわかりやすく見せようというプロ意識を感じます。おかげさまで全然知らない業界の話なのに、9割以上は理解しました。これって何気に凄いことだと思います。 ストーリーは酷評されがちですが、個人的には好き。 ミランダの解任を知って慌てるアンドレア。でもミランダは周りの人間の何枚も上手。家族のことでは一瞬人間的な弱さも見せるが、仕事では一部の隙も見せない。この徹底した強さと冷徹さが良いですね。この役柄を演じきっているメリル・ストリープの貢献度は高いです。そしてこの人の話し方が、また貫禄と気品を備えていてぐっときます。 エミリーやナイジェルといった仕事仲間も、それぞれプライドと信念をもって仕事しているのがかっちょいいです。そのエミリーやナイジェルに残酷なまでの仕打ちをするミランダ。にもかかわらず、ミランダから離れない二人。手放しで賛成はしがたいですが、カリスマってまさにこーゆーことを言うのでしょうね。 ただ、『ミランダが凄い』というのが、説明台詞でばかり伝えられてくるので、その凄さを実感できるようなエピソードがもう少しあると良かったかもしれないですね。権力をかさに好き放題やってるブラック上司の面ばかりを強調しすぎているような気がしないでもないです。 あと、コレ観た後に仕事すると、なんかモチベーション上がってます。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-08-16 16:10:53)(良:3票) 《改行有》 10. フーリガン(2005) 《ネタバレ》 暴力団体を正当化・美化するような作風なので、手放しに賛同すると眉をひそめられそうですが、映画としては文句なしに面白い。 日本で言うなら、中学の時は普通の生徒だったのに、高校で偶然不良と仲良くなっちゃって、成り行きで高校デビューしちゃうのに近いです。 こーゆーシチュエーションは、ヤンキー漫画にはまったことがある人なら共感しやすそうです。 『喧嘩が強い』『度胸がある』、この2つが揃っているだけで、仲間と認められちゃう社会構造。自分への自信とつながっていき、仲間から頼られる心地よさに陶酔しちゃうんですよねー。この単純な思考回路。男ってほんとバカだよね。大人になりきれない子供です。 『大人になった現在はもちろん、学生のときだってこんな世界に飛び込む勇気はなかった。でも心のどこかでこーゆー世界に憧れている自分が確かにいる。』そんな人には、間違いなく満足できる追体験をさせてくれる一本です。 その一方で、こーゆー客観的に見れば『バカ丸出しの世界』がその性質上避けられないリスクを明確に描いているところはエライと思います。『友人の死』『家族の離散』『過去の過ちに対する報復』。これをしっかり描いているため、この作品はただのエンタメ作品から意味のあるメッセージ性のある映画へと昇華されています。 もちろんそのためには、『ホヴァーの裏切り』や『ピートの死』など、半ば強引な展開もありますが、これらのエピソードによって映画がより一層面白くなったのは間違いありません。 更には『謎の元リーダーの正体』というサプライズ、『マットの成長を感じさせるラストのシークエンス』など、決着つけてほしいところは、きっちり白黒つけてくれるので、ラストでは爽快なカタルシスを得られます。 その一方で『トミーの息子の死』や『スティーヴ、ピート、ホヴァーの因果関係』を考えると、拭いきれない後味の悪さってのも確かに残るんです。 これはなかなかの力作だと思います。[DVD(字幕)] 8点(2017-05-22 02:37:11)(良:1票) 《改行有》 11. ファインディング・ドリー 《ネタバレ》 前作で、そのうっとうしさに少々苦手なイメージがついてしまったドリー。 今作は主役。多少の不安を抱きながら、おそるおそる鑑賞。 結果、うっとうしさは相変わらずのドリーですが、健気に両親に会いに行こうとするその姿、凄く良かったです。 声優さんの力によるところも大きいのですが、小さい頃のドリーが本当にかわいくて、ますます感情移入しちゃいます。 ストーリーは単純明快ですが、二転三転する情報により、『結局ドリーの両親はどこにいるんだ?』っていうプチミステリーの要素があって面白い。 そして魅力的な新キャラも登場。 眼が悪いジンベエザメのディスティニー。エコロケーションが使えないシロイルカのベイリー。海が怖いタコのハンク。 うーん、さすがディズニー。誰も彼もが愛すべきキャラに仕上がっていますね。 そして言わずもがな映像のクオリティの高さ。ついにここまできたかというビジュアル。 特に水面、そして『水面から見る地上の景色』は実写と見紛うばかり。更にはオープンオーシャン(大水槽)を遠景で眺めたときの画は言葉にならないくらい美しい。 ラストがちょっとひっぱりすぎですが、ドリーが貝殻を見つけてたどっていくシーンは文句なしに感動のシークエンス。 こんなに完成度の高い名作なのに、タコのハンクがベビーカーを走らせたり、トラックを運転したり、行き過ぎた擬人化がとても残念。興が冷めちゃいます。 あくまで『魚達の世界』の限界を超えない範囲で、夢のあるアドベンチャーを見せて欲しかったですね。 『何でもアリ』ってゆうのは、少なくともこの作品には相応しくなかったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-05-16 01:17:39)《改行有》 12. ファインディング・ニモ 《ネタバレ》 さすがピクサー、素晴らしい映像技術。今から14年前にこの映像が出来ているということに、もはや言葉が出ません。 ストーリーは、人間に連れ去られたニモを父親マーリンが助けに行くという一般ウケするアドベンチャー。 道中ドリーやアオウミガメのクラッシュ、ペリカンのナイジェルといった協力者の助けを借りるため、一本調子になりがちなロードムービーを、実に面白くアレンジしています。 また、我を失うサメ、アンコウ、クラゲの大群、クジラ、カモメ、ダイバー、子供など、小魚目線ならではの脅威の描き方が実に上手い。もはやホラーと言っても過言ではないくらい、手に汗握ります。 ピクサーは『おもちゃ』、『魚』、『恐竜』、『動物』とさまざまなものを擬人化しますね。 擬人化が極端になりすぎるとオリジナルの良さを損なうし、あまりにリアルを追求しすぎると夢がなくなりそうです。そういった意味では、この作品の擬人化は適度なバランス感覚で実によくできていると言えそうです。 また、擬人化をキーワードに考えると、『バラクーダ』『アンコウ』『カモメ』など、作中言葉を発しない、もしくは発しても意思疎通のできない生き物が出てきます。コミュニケーションの喪失。そして明らかな敵意のある存在。現実世界に例えるならば、テロリストや北朝鮮のようなものでしょうか。その一方で、本来魚にとって脅威であるはずのペリカンやサメでさえも、コミュニケーションが取れれば、友達や仲間になりえることが描かれているのですが、それは深読みのしすぎでしょうか。 サメのエピソードだけは、あってもなくても本筋のストーリーに影響を与えるものではありません。初めはムダだと思ったものですが、このサメのボス、ホオジロザメは、もしかしてアメリカの隠喩なのかなーって。 我を失い、仲間のサメたちから押さえつけられるホオジロザメ。自国への警告であり、自戒なのか。それともただの私の考えすぎなのか。 『クラゲ』や『クジラ』は自然災害を象徴しているように感じるのです。 魚群の忠告を無視し、結果クラゲの大群につっこみ、その脅威にさらされるマーリンとドリー。 クラゲやクジラに明確な敵意はなく、ただ存在しているだけ。 クジラに飲み込まれ絶体絶命のピンチだったにも関わらず、結果シドニーへとたどりつくことができたマーリンたち。それも、ドリーの言うように、『クジラ』という『自然』に逆らわず、身を任せた結果事態が好転してゆくのです。 脅威にもなれば味方にもなる。まるで自然の厳しさと恩恵を体現しているように感じたものですが。いったいどうなんでしょう。 考えすぎですかね。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-03-31 15:05:29)《改行有》 13. ブラックホーク・ダウン 《ネタバレ》 実話をもとにしているだけに、ドキュメンタリーのように事実だけが淡々と映し出されていきます。 ですが退屈とは無縁の内容ですね。 ソマリアのアイディード将軍の側近?の身柄を拘束するだけの強襲作戦。速やかに30分程度で終わるはずだった作戦は、泥沼の市街戦へと突入。陸上部隊も、輸送トラックの部隊も、予想を超える攻撃に次々と死者を出します。 そして撃ち落とされるブラックホーク。救援に向かうブラックホークまで撃ち落とされ、被害は拡大の一途をたどります。 1名、2名を救うため、更なる死傷者を出していく。 単純な足し算引き算ができないのはわかっていますが、やりきれない思いでいっぱいになります。 『あいつらは石を投げてくるから気をつけろ』に代表されるソマリア民兵を下に見る、数々の格下発言。 民兵の子供達が無線機でヘリの音をとり、米軍の出動を知らせるシーンで、子供達に向かってヘリから手を振るアメリカの兵士。 確かにこの作品は純粋な反戦映画ではないのかもしれません。 むしろ、戦争の相手を『無能』『格下』と決め付けてしまったがために、急襲が急襲でなくなり、待ち伏せに会い、被害を拡大させてしまったことをアメリカに反省させるような内容に見えます。 見逃してしまった待ち伏せのサイン。あそこで待ち伏せされていることに気付いていれば、アメリカもソマリアも被害が拡大することはなかったのでしょう。 戦争をする気はなかったのに戦争になってしまった、というのが本当のところではないでしょうか。『これはもう強襲作戦ではない。最悪の市街戦へと突入したんだ。』という本部の上官の悲痛な叫びが、すべてを物語っている気がします。 登場人物が多すぎて、誰が誰だかわからなくなります。誰がデルタフォースなのかも、途中からよくわからなくなります。ソマリアの人たちも、民兵と一般市民の区別がつきません。 つまりは、偉そうに語ってしまいましたが、私がこの映画を理解できているのかどうかが、そもそも怪しい。 ですが、戦争のシビアな現実は、少なからず感じ取ることができたのではないかと思っています。 戦争映画でこのコメントを使うと顰蹙を買いそうですが、『大変面白かった』です。 当事者ではないから言える意見ですね。日本に生きる私にとっては、やはり他人事なのかもしれません。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-11-12 14:17:52)(良:2票) 《改行有》 14. フラッシュバック(2000) 《ネタバレ》 子供のときに両親を殺された子供が、トラウマを抱えたまま10年経った後の物語。 ほどほどに怖く、ほどほどにスリリングで、グロ表現はなかなかのものがあります。 ドイツ映画ですが、ハリウッド定番のスラッシャーものと内容はさほど変わりません。もの凄く性格の悪い若者たちが、次々と殺されていくという、しっかり定石を踏んだ手堅い作りになっています。 ただ、『犯人は誰?』というミステリ要素を含んでいるため、犯人が誰かわかってしまうとやはりトーンダウンしてしまうのは否めません。 この作品は、出だしと終わり方にセンスを感じます。個人的にはかなり好きな演出です。 こうして歴史は繰り返してゆくのだなーと、しみじみ感じてしまいますね。[DVD(字幕)] 8点(2016-02-07 16:12:27)《改行有》 15. ファイナル・デッドコースター このシリーズだけはいつまでたっても飽きないですねー。 数々の伏線。伏線がつながった瞬間に起きる惨劇。はしる戦慄。心無い人から『殺人ピタゴラスイッチ』なんてゆわれちゃいますが、正にその通りなので、何も言えません。 ゾンビも殺人鬼もモンスターも出ないのに、これだけハラハラできるシリーズが他にあるでしょうか。 死に方も偶発的なものに人為的なミスを絶妙な匙加減でからめ、大変自然に、でも大惨事に仕上げているこの手腕が素晴らしい。 必死に写真からヒントを探し、それを次の犠牲者になんとか伝えようとする、わかりやすくも引き込まれてしまうストーリー。 このシリーズでしか感じることのできないドキドキが、確かにあります![DVD(字幕)] 8点(2016-01-18 02:08:24)(良:1票) 《改行有》 16. BULLY ブリー 《ネタバレ》 10代の少年、少女にはたらく集団心理の威力と恐ろしさ。 今作では、事件の因果関係の基礎となるはずの動機の描写が足りない気がします。ブリー(いじめっ子)のボビーが周囲の人間、とりわけマーティに対してどれだけの過酷な暴力行為を繰り返してきたのか、その説明・描写が足りない気がするのです。 つまりは、ボビーの悪行のエピソードが少ないうえに中途半端すぎるのではないかと。これではボビーは理不尽な暴君というよりかは、ただの嫌なやつにしか見えません。 リサやマーティーを演じている役者さんが、その演技力でどれだけ憤りを表現しようとしても、これでは限界があるように感じます。 もし劇中で紹介されたようなエピソードしかないのであれば、『殺すほどのことか?』とも思えるし。 そうではなく、意図的に事実をはっきり伝えていないのであれば、実話ベースの作品としては問題があると思います。 フィクションであれば問題はないのですが、観る人が被害者、もしくは加害者のどちらかに偏った見方をしてしまいかねない、そのような情報操作、もしくは心理的な誘導をするノンフィクション作品は危険だと思います。 ただ映画作品としての面白さは間違いなく高い水準にあると断言できます。 観賞中はいらいらしながらもずっと物語にひきこまれていましたから。そういった意味では文句なしの映像作品です。[DVD(字幕)] 8点(2015-11-15 23:51:27)《改行有》 17. ブルー・ストリーク 《ネタバレ》 ザ・ハリウッド。まさによくあるハリウッド映画です。軽快なノリとトークを楽しめます。エンターテイメントの基本を押さえた手堅い一本です。 プロの泥棒だからこそわかるプロの手口。その設定を活かした脚本と演出、そこから生み出されるちょっとした爽快感や優越感が小気味良い作品です。 本作ではこれでもかというくらい、良い意味でご都合主義が炸裂しまくり。上司や同僚がやたらとマローン刑事を敏腕だと勘違いしていく様子がおかしくてたまりません。 ラストで裏切ったやつを結局マローン(本当はローガン)が撃ち殺しちゃったのがマイナスでしょうか。恋人も一度きりの登場っていうのはもったいないかもしれませんね。せっかくなんで、宝石も彼女もゲットしちゃって、両手に花くらいで終わっても良さどうですけどね。 何にせよ、こーゆー肩の力を抜いて見られる娯楽作品は精神衛生上すっごく大事だと思われます。 蛇足ですが、最近コメディだけは吹き替えで見てみるようにしています。本作も吹き替えで見ました。すっごい良かったです。『吹き替えのほうが面白い』というご意見が、コメディ作品でよく見受けられた気がしましたので。思い切って吹き替えで見てみて良かったです。[DVD(吹替)] 8点(2014-11-30 19:52:29)(良:2票) 《改行有》 18. フェノミナン 《ネタバレ》 感動しました!なんかもの凄く泣かせるようなストーリーではないのですが、ジョージ・マレーの人柄と、レイス、ネイト、ドク、ネイトの子供たち、工場のおじちゃん、FBIの黒人のひと、そういった一握りの彼の理解者の存在に心が揺さぶられました。人の優しさを映像通して感じられるっていうのは素晴らしい体験だと、あらためて思いましたね! この映画はまず予備知識無しで観ることが大切でしょう。私もすっかり騙されてしまいました。現実にそういうことが起こりえるかどうかは別として、物語としてはほぼ完璧な流れだと思います。安易に地球外生命体や第三者的な力に因らないところが最大のポイントでしょう。だからこそ、ジョージの『すべての人間には可能性があるんだ』という言葉が生きてくるんだと思います。 また、この作品には、人が死んでしまうという悲しさよりも、『人は生きているうちに何を成し、何を遺すかが大切』というメッセージがこめられているような気がします。 光を見てからの、ジョージの圧倒的な才能の覚醒と、そこから引き起こされる数々のパフォーマンスで私たちの目を釘付けにさせておいて、そこから、ラストへ向けて少しずつ収束していく物語の中で、大事なメッセージを私たちの心の中に残してくれる、切なくも温かい余韻の残る感動作でした。[DVD(字幕)] 8点(2014-05-09 12:37:28)《改行有》 19. フェティッシュ 《ネタバレ》 ブラックユーモアタイプの作品は得意ではないのですが、これは面白かったです。中盤までは、はっきり言って普通の映画とそんなに変わらないと思います。特に突出する演出もありません。ただ、ガブリエラ(アンジェラ・ジョーンズ)のキャラがたちまくっているので、ポール(ウィリアム・ボールドウィン)と出会ったらどうなるんだろうというわくわく感が楽しいですね。ちょうど、遠足前日に感じるプチ興奮みたいなもんでしょうか? で、いよいよ二人が出会うわけですが、その直前のポールがガブリエラを覗き見るシーンが最高に楽しいです。このシーンは最高でしょう。殺人事件の様子を想像しながら、踊るように殺人事件を再現するアンジェラ。その一心不乱な様子がかわいく面白く、笑い転げます。 で、ポールと出会ってから我にかえり、更にポールが犯人とわかってから、少し萎縮するシナリオ作りが上手いです。このシーンがあるから、アンジェラは殺人フェチということを除けば、常識と良識を兼ね備えたごくごく普通の一般人だと認識できるんですよね。でもそこから殺人現場の再現をポールに語り始めると、再びフェチモード突入です。この辺りのシークエンスは本当に面白くてよく出来ています。挙句には、切られた首が話す話さないの水掛け論を繰り広げるところなんか面白すぎです。アンジェラのキャラは本当によくできていますね。 ラストの〆まで完璧です。 意外と見る人を選びそうで選ばない、この手のジャンルでは最高峰の作品かもしれないです。[DVD(字幕)] 8点(2014-04-15 05:30:04)《改行有》 20. ブロンディー/女銀行強盗 《ネタバレ》 こういったサスペンスって、最初はどうしてもだらだらしちゃったり、受身ばっかりの展開にフラストレーションたまっちゃったりするんですよね。で、その分、中盤くらいから思いっきり巻き返せるかどうかが大事になると思うんですが・・・・おつりがくるくらい巻き返しましたね。本格的に銀行強盗の計画練り始めてから、俄然面白くなります。 キム・ベイシンガー演じるカレン・マッコイは、銀行強盗というよりプロの職人っていう感じ。まるで「ほこ×たて」みたい。「どんな警備システムでも侵入するプロのエンジニアVS絶対に破られない最新防衛システム」みたいな。 パソコンや図面とにらめっこしているときが最高にかっこいいわけですが、時折挿入される息子やJTとの触れ合いがまた最高に良い雰囲気なんです。そして、敵同士が手を組み、絶対不可能な防犯レベルトリプルAの大銀行に挑むのがまたアツい。 更にはそこから出し抜きまくりの反撃反撃でもう気分は爽快。そのまま飛びたっちゃっても良かったくらいなのに、最後にダメ押しとばかりにハラハラさせてくれちゃって、もうほんとにありがとうございました。とても面白かったです。 画像がちょっと良くない。特に暗いシーン。途中から慣れて気にならなくはなりましたけどね。[DVD(字幕)] 8点(2013-07-22 03:31:30)(良:1票) 《改行有》
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS