みんなのシネマレビュー |
|
1. 別離(2011) 《ネタバレ》 この映画のラストシーンは非常に良いですが、あのシーンは、娘の決定した答えを想像しなさい、と言っているのではなく、単純に娘の考えた結論は、この物語には必要がないからカットしたのでしょう。つまり、「別離」で言いたいことは、別離した後の結論ではない、そのことを強調するメッセージだと思います。親といえども、男女関係です。だからなぜ別離するの?という問いかけも意味を持ちません。テーマは別離だけではなく、裁判の行く末にも重点が置かれています。ドストエフスキーの名作「カラマーゾフの兄弟」のように泥沼系の裁判描写が延々と続くので、ドロドロ系好きの私にはたまりません。ただし、もちろん盗まれたお金はどうなった?ということを追求する目的ではありません。裁判というのは、アメリカや日本では、勝つか負けるかという戦略的な戦いの場です。しかし宗教に身を置く人々の一部では、かりに証拠不十分などで法律的な罰を免れても、神様から罰を受けると、本気で恐れている。てっきり私は流産した女性が、嘘をついて、慰謝料をふんだくる気でいるのかと思っていましたが、彼女は最後になって、嘘をついてお金を貰うと、神の罰が当たると恐れていました。日本人では「後ろめたい」という感情はあるかもしれませんが、見えない罰を真剣に怯える人は少ないでしょう。つまり性悪説の立場に立てば、宗教は犯罪防止の1つの抑止力になりえるのかもしれません。まあしかし、DV夫や、娘に嘘を連発する父親をみていると、信者のなかでも、神の罰を恐れるイラン人は一部しかいないのかもしれませんが─。「アルゴ」というイラン人を悪魔扱いしたハリウッド映画の後に観ましたのですごく良い映画に見えました(笑)「アメリカ人よ、これが映画だ」と言いたい気分です。 [DVD(字幕)] 8点(2013-05-06 16:03:43)《改行有》 2. ヘルプ 心がつなぐストーリー 《ネタバレ》 主人公格の髪の毛がボサボサな女、彼女の子ども時代に黒人メイドから「自分を憐れむのはやめなさい。ブサイクは心の中に育つのだ」と言われたシーンに号泣した。血がつながっていませんが紛れもなくボサボサ女と黒人は母と娘の関係を築いていました。それと日本人だって差別する。「俺たちは日本人だ」という民族意識から、中国人や朝鮮人を差別するのだ。他人事のように「アメリカの差別は根深いねぇ」なんてほざいている場合ではないのです。ネトウヨこそクソくらえである。差別の大半は差別していることに気が付かない。これが差別の本質です。仲間が欲しい、連帯感を高めたい、だからAとBを区別する、区別は差別である。もちろん差別しない人間もいる。あのおっぱい女性には感動しました。人間としての弱さを持っており、その弱さが、弱者に対する優しさへと還元されている。彼女は差別しない。「白人にクソを食らわせた黒人メイド」とおっぱい女の会話はどのシーンも笑いながら泣ける。一番大切なことは差別をなくすことではなく、差別をしない人とのつながりを増やしていくことではないでしょうか。おっぱい女の夫が実は良い奴だった。この夫が、「白人にクソを食らわせた黒人メイド」を襲うのかと思ったら実は・・・というシーンはさらに笑い泣きした。抱腹絶倒と号泣が交互に訪れる映画なんて滅多にないぞ。ラストでは「クソを食べた白人女性」から盗人扱いされた黒人メイドがクビにされ、家を出て行こうとするとき「あなたはやさしい子、あなたは賢い子、あなたは大切な子」このセリフでまたもや号泣。血はつながっていない。だが彼女は愛していたのだ。黒人、白人、他人の子供、血のつながり、そんな境界線を意識せずに、真っ向から愛せる人々がいる。差別を扱う作品でありながら、圧倒的に差別しない人々の愛が描かれている。実はそれがこの映画の本質だ。みなさん、これは差別している人が描かれている物語じゃありません。差別しない人が描かれている物語なんです。[DVD(字幕)] 9点(2013-03-20 01:14:05)(良:3票) 3. ペネロピ 《ネタバレ》 この作品の奥深い所は、ペネロピのことを「ひきこもり」のメタファーに見立てて、彼女が社会復帰するまでを描いた物語になっているところです。親が子供を守ろうとするのは、本能でもありますが、自己満足でもあります。ペネロピの両親はその典型です。見所は何といっても、ペネロピが生まれてはじめて家を飛び出して、そこで彼女の目を通して見せられる外界の美しさです。夜の街にシャボン玉が乱舞しているあのシーンは信じられないくらいに綺麗でした。映像は常に外の世界をはじめて見た少女の視点を通し、スクリーンに映し出される。お見事。家を飛び出したペネロペを両親が追いかける理由は、娘を他人に見られるのが恥ずかしいという思いもある。世間体を非常に気にしている親でした。自分の子供に同情するふりをして、我が子を恥ずかしがる親はやはり存在します。それを強調するために、本作品ではあえて主人公を豚鼻にし、親を大金持ちにしたのでしょう。ひきもり問題は、親が子供を無意識のうちに否定することから始まる。親は欠陥を持ったできの悪い子供(ペネロピのような)を守ろうとするのですが「どうせお前にはムリだ。お前は欠陥者だ。お前には助けが必要だ」と、そういう態度をとり続けます。そしてそれを親の役目だと思い込んでしまう。1つだけ真実があるとすれば、たとえ家族であっても、自分以外の人間を救うことなどできないということです。世の中には豚鼻じゃなくても、様々な欠陥を持っているせいで苛められたり差別されて、内に閉じこもる人は多い。大切なことは欠陥を持った自分を隠そうとするのではなく、あるがままの自分を受け入れることなんだと。自分を救えるのはやはり自分しかいないのです。このおとぎ話にはそんなヒューマニズムなメッセージが込められていたように感じました。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-26 20:53:27)(良:1票) 《改行有》 4. ベオウルフ/呪われし勇者 《ネタバレ》 絶対に3Dで観る価値はあります。デジタル3Dで上映している劇場は日本全国でわずかしかないそうです。しかも2000円と高額ですが、未来の映画の姿を想像することができました。安っぽいメガネをかけてみる3Dとはモノが違います。 ユニバーサルスタジオで観るような映像を、2時間もたっぷりと観られるわけですから損はありません。冒頭から度肝を抜かされる。大男のグロい怪物が人間を真っ二つにする。そのときに噴き出た血が自分の体に降りかかってくるような錯覚に襲われます。大男に投げ飛ばされた人間が、空から落ちてきて突起物にグサリと串刺しにされるシーンは、浮遊感覚が抜群で、思わず目をつぶってしまう。これはすごい。ファンタジー映画だと勘違いして母親が子供を連れて観ようものなら悲鳴をあげるかもしれません。ベオウルフのフルチンにも要注意です。これはダークファンタジーです。また、放たれた無数の弓矢がすごい速さで自分に向かってくるシーンは鳥肌がたつ。必死になって弓矢をよけようとしている観客が必ず1人はいるでしょう。いや本当です、それほどリアルティがあるのです。これは新3Dです。ドラゴンが口から炎を吐いて橋の上にいる兵士を、抹殺するシーンの、横に流れるカメラワークも面白い。まさに新感覚です。ドラゴンにつかまって空を飛んでいるベオウルフが木の枝にぶつかったときには、さすがに私も思わず目をつぶってしまいました。本気で自分がドラゴンにつかまっているような感覚です。まるで遊園地のなかでジェットコースターに乗っているようなスリル感を味わえる。クライマックスのドラゴンとの死闘はCG映画として、映像史に残る傑作でしょう。この新感覚のデジタル3Dで、他の映画が観られる技術が開発されたら・・と思うとそれだけで興奮してくる。是非普及させてもらいたい。ちなみにストーリーはたしかに平凡です。しかしベオウルフのキャラクターはなかなか笑える。「オレ様は強いぜ!」とこれほど自慢する主人公もめずらしい。しかもなぜか裸になって戦う。彼の言い分は明確である。「敵は裸で武器すら持っていないからオレ様も裸になって正々堂々と戦う」というもの。明確ですが意味不明でした。ダークでファンタジーな映像美と想像を絶するデジタル3Dが融合された画期的な映画でした。 [映画館(字幕)] 8点(2007-12-04 19:30:38)《改行有》 5. ヘアスプレー(2007) 《ネタバレ》 と、に、か、く、テンションが高いっ!驚くほど元気いっぱいのミュージカルだ。やはり踊りが素晴らしい。ミュージカルというと、歌の批評が多いですが、この映画のレビューを読んでも分かるように誰もそんなことにこだわっていない。そういう次元をはるかに超えている。この映画に出てくる奴らは全員やぶれかぶれなんです。何があっても、ええじゃないか、といってひたすら狂ったように踊りまくっているんです。これほど激しく動きのミュージカルは初体験です。鳥肌がたったシーンは、母と娘がお店から出てきたときに、なぜか大勢の通行人が道路で無我夢中で踊りまくっていたところ。そして母と娘も申し合わせたように一緒になって踊りだす・・この意味不明のサジ加減が最高です。このシーンを見ていると、小さな悩みでクヨクヨしているのが馬鹿らしくなってきて、もうどうでもいいや、という気分になってくる。ツマラナイ理屈なんてすべて吹っ飛ばしてくれるだけのパワーがこの作品には漲っている、それと人生って、なるようにしかならないんだな、という開き直った気持ちにもさせてくれます。悪のり風のドタバタ劇ですが、そこには黒人も白人もデブも関係なく、小難しいイデオロギーや偏った価値観にこだわらず、とにかく一緒になろう!という心地良い一体感が感じられます。心地良い混沌(カオス)でした。エンドロールが流れたときには嵐が通り過ぎたような感覚で茫然自失となりました。 [映画館(字幕)] 10点(2007-10-27 13:20:23)(良:1票) 《改行有》 6. ヘイフラワーとキルトシュー 生活感や生活臭がまったくな感じられないのが素晴らしい♪ まるでディズニーランドの世界を眺めているようでした。これがフィンランドで空前の大ヒットを記録した映画だという事実が面白い。すごく疲れて癒されたい人におすすめできる作品でしょうね。まじめな姉が真剣に神さまにお祈りする姿もかわいいし、子犬のようにはしゃぐ姿の妹もかわいい。 母親も父親もちょっと浮世ばなれしているせいでかわいく見えてくる。 すべての登場人物がリアルな人間ではなく人形のようです。色彩豊かなお家もすばらしい。フランス映画の「アメリ」を思い出しました。フランスにしてもフィンランドにしても本当にセンスがいい。 このように目だけで楽しめる映画もあるわけですね。レビューは以上です。 と、いうわけでみなさん、へいへ~い♪ [DVD(字幕)] 7点(2006-10-20 20:32:16)(良:2票) 《改行有》 7. 北京ヴァイオリン ヴァイオリンとは小手先の技術ではない!感情の表現だ!というヴァイオリンの先生の言葉が響きました。 それに対して主人公の天才少年はまったくの無表情で顔色はとても悪いうえに、活力というか精気がまるで見当たらない。これを見始めたとき、「この少年はやばいぞ!」と思ったものだけど、しだいに彼が自分の感情を表に出していくところが分かりやすくてとても良かったと思う。 父親の親バカぶりということで「シャイン」を思い出した人が多いみたいだけど私は「リトルダンサー」を思い出した。 才能ある子供を愛しすぎると期待で壊れちゃうこともあるけど、一歩ひいて後ろから見守る父親の愛し方が印象的。 特に最後は圧巻だった。 涙を流して演奏する少年のヴァイオリンから煙が!? おい、ちょっとそれはやりすぎだー!と一瞬思ったけど「勢い」というものは凄いものでそんなことなど吹き飛ぶほど感動してしまった。 疲れたときに見る癒し系映画の代表作なのでぜひ見て欲しい。 [映画館(字幕)] 7点(2004-11-07 21:04:29)《改行有》 8. ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ 2001年「騙されたと思って観てほしい映画」のN01。ビデオパッケージのキモイ姿のヘドウィグをみて観るのを控えている人が多いのでは? 最初はとにかく不気味。しかしヘドウィグがロックを通して自分の半生を語っていくうちに、だんだんとあのルックスが気にならなくなってくる。最後はしっかりと「頑張れ!」と応援している。 このような不思議な感覚はスピルバーグの傑作映画「ET」いらいだった。「愛の起源」という歌もスバラシイ。「彼女」はロック歌手でありながら、さながら歌う哲学者といった深みもあって見所は充分だった。 傷ついたぶんだけ彼女は哲学者に近づいたのだと感じた。心に染みわかって日本人には受けるはずです。 ヘドウィックがロックを歌うと情緒が出てくるのが不思議。[DVD(字幕)] 10点(2004-09-18 08:28:09) 9. ベッカムに恋して 《ネタバレ》 邦題をみる限りはB級映画の臭いがプンプンしてくるが、実はぜんぜん違う。すごく面白い。 サッカーは男のスポーツだという偏見を持つイギリス人の母親は自分の娘がレズだと思い込む。そして今まで娘と対立してきた自分を悔いて、夫からオフサイドを教わる、その姿は滑稽で笑える。 そしてインド人の父親は、若いイギリスの留学時代にスポーツをしていたが差別を受けて心にトラウマを抱えている。 自分の娘も同じようにスポーツを通して外国選手から差別を受けるのではないかと思っている。 インド人の母親は、インドの文化を何よりも大切に思っているが、2人の自由主義の申し子である娘たちを見てはいつも嘆いている。 娘が肌を露にしてボールを蹴ることに真っ向から反対している。 そしてベッカムに恋するゲイの男性も、とてもよかった。 主人公の女性が恋するのはベッカムではなく、アイルランド人の女性サッカーチームの監督。彼は自分の父親に負目を感じて対立している。 女性のサッカーチームの監督をしている自分にも誇りが持てない。 イギリス、インド、アイルランド、レズ、ゲイ、人種差別、なんでもありのすべてがつまった面白い映画。 映画が面白いと感じるのは、CGや特撮ではなく人間が輝いているとき。 そのことを改めて教えてくれた貴重な映画。9点(2004-07-04 14:11:48) 10. ベートーベン2 ベートーベンが怪力で別荘を真っ二つに破壊するところは、「うそや~」と思いつつ笑える。 飼い主である娘のほうも悪びれもせずに「ありがとう、ベートーベン!」って・・言うか!6点(2004-05-09 15:45:53) 11. ベティ・ブルー/愛と激情の日々 最初は性欲のみで、つながっていた明るくて軽いカップルが、あるとき、男が書いた小説をベティが読んで、素晴らしい!と認めたことから、男は「自分の存在」を承認してくれたベティを愛し始めた。本来、恋する行為とは、明るくて、軽くて、楽しいのだが、愛する行為とは、見返りを求めないものであり、相手の苦しみをそのまま自分に同化させ、時には愛する者の死によって自分自身も滅ぼされる危険と隣り合わせであることを感じた。 ─狂気の愛─。 人は愛すれば、楽しみも苦しみも10倍になる。10点(2003-10-18 18:53:36)(良:1票) 12. ペリカン文書 この手の映画が好きになり始めたきっかけが、この映画。その後、CIAやFBI関係の映画が乱立して嫌になったが・・。8点(2003-10-15 05:34:45) 13. ベートーベン 犬映画は好きだよ。思わず笑ってしまった。7点(2003-10-15 05:32:51) 14. ペイ・フォワード/可能の王国 キリスト教の「与える行為」をメッセージにした映画だと思う。世の中には自分の存在に対する悩みを解消できない人間が多すぎるから、他人に与えなくちゃいけない。そうすることで自分の存在は良い意味で軽くなる。 8点(2003-10-15 05:31:55)
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS