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1. マチェーテ
《ネタバレ》 妄想でなら描けるセガールの悪役、無双セガールが無惨にやられる様に、まさかの最大のカタルシスがある。そんでもって結末には、デニーロが残念な姿で不甲斐なく殺される。この類いの感動?とはちょっと違うけど、近代ハリウッドの歴史を築いてきたであろうスター俳優がこんな形で共演し、なおかつ、ある意味では自分のキャリアの延長線上で最もタブーといえるものに挑戦したその志を評価せずにはいられない。おまけぐらいではあるけど、薬中のリンジーさんも薬中役+αで出演している所もシュールで好き。ストーリーは馬鹿に振り切っているように見えるが、本質の部分の作りはとても丁寧。ただそこを本気でふざけているだけの事。とってもを好感を持ちました。ただ、一つだけ気になる事があるとすればグロがエンターテイメント性以外の意図を含んでいるように見えないのは、個人的にはすごく嫌いなので総合的な評価は下げざる得ません。[DVD(吹替)] 7点(2012-08-03 03:39:58)(良:1票)
2. マイ・バック・ページ
《ネタバレ》 赤軍も学生運動も、その出来事を日本の歴史の一部
としか捉えることのできないぼくにとっては、
この時代に何が起き、どうしてそうなったか、
という事実性はもちろんのこと、
それによって翻弄される社会がどういう
状態だったか、というのは
とても新鮮な情報として
ぼくは受け取ることができた。
映画はドキュメント的に、
多くの人に世界情勢や社会問題を
知ってもらうための媒体として
使われることもしばしばあり、
この作品に関して言えば、
学生運動に荒れるこの時代の
人間たちの姿というのは、
知っておく価値は十分にあった。
若松孝二監督の「実録連合赤軍」に
関しても、まずは何が起きていたのか、
という事実を知るにはもってこいの
作品だった。
ただ、事実を知るだけなら教科書で言い訳で、
せっかく映画を観るのなら、そこに映し出される人間たちを
通して、監督が何を描きたかったのかが、
見えてこなければ映画にはならない。
若きジャーナリズムに燃える青年と、
口の達者な運動家の青年を通して、
ぼくが感じたことは、
幼さに尽きる。
両者とも、至る所は後悔の淵で、
つまり後先考えず、衝動と流行りに
身を任せてしまった愚か者なのだと思う。
互いに言いたいこと、やりたいことは
あったにせよ、
しかしながら劇中でも描かれているとおり、
論理が纏まっていないように思えた。
ようするに、流行りに流され、
自分の意思が固まる前に
衝動的に動き出してしまった
あさはかな若者でしかないのだと。
さらには、連載誌も終わるまさに流行りの末期で、
若者の多くが抱える自分も何か時代に名を残したい、
という願望も合間っての愚かさだったに違いない。
そんな二人こそ、その時代の象徴なのだと感じた。
監督の同情ではないにしろ、
その時代を覆う大きな哀しみや痛みに対しての、
その肩にそっと手を添えるような
優しさは見えた気がした。
ただ、山下監督の「天然コケッコー」
以来の新作がこれ、というのは癪然としない。
人間の滑稽で愚かだけど、ユーモアに満ちた姿を
豊かに描ける山下監督が、
なぜこの作品を撮ったのか、
納得のいく回答をこの作品から見出せないのが残念だった。
[映画館(邦画)] 7点(2011-07-09 08:41:06)《改行有》
3. 漫才ギャング
《ネタバレ》 この作品は、ふつうに観れば映画っぽく撮れていると思います。こちらに投稿されている皆さんが述べられている通り、様々な要素がそれっぽい姿はしています。まずアクションですが、スローモーションと早回しを多用する事で、今流行のスピード感あるハリウッドっぽいアクションに仕上げています。そのアクションそのものを演出しておられるのが日本屈指のアクション監督である諸鍛冶さんということもあってか、ぽいです。また、この作品のそれっぽさの根源は当然脚本にあるわけですが、問題は大量にあります。まず上地さん演じる鬼塚ですが、彼の変化の物語は佐藤さん演じる黒沢に誘われ、引き受けた時点で終わりを迎えています。というのも彼は自らの生き方を変えなければならない状況に置かれた人物だったわけですが、それに背を向けて突っ返す訳でもなく爽やかに引き受けている時点で彼は成長を遂げてしまっています。終盤に決断を迫られる流れはありますが、彼はそれを深く悩みもせず決断し、ラストカットでは漫才をやってます。葛藤があるっぽいだけでそこに感情の抑制は皆無です。つまり、彼は最初の決断以降その軽いノリのまま、最後まで平然と嬉しそうに漫才をやり切っているわけです。また、二人を筆頭にこの作品には“とある何かをしなければならないが、それをすると大切な何かを失う”といった抑制された状況にいる人間、思い悩む感情は存在しないのです。まぁ、正直そんなことはどうでも良いです。この品川という人は、彼の立場上最もやってはならないことを平然とやってのけているのです。それがあるから、葛藤どうこうは次元を超えてどうでもよくさせてくれます。それは「漫才をなめるな」という事です。黒沢はずぶの素人である鬼塚とコンビを組みますが(それ自体馬鹿じゃないか?と思いますがそれも良しとして)、なぜか初めての舞台から“笑い”を取る訳です。人を“笑わす”という事は簡単ではないと散々黒沢に言わせておきながら、簡単に“笑わせ”ているわけです。その後も人を“笑わす”事に一切苦難することなく“笑わせ”続けます。つまり「人を笑わせることなんて簡単!」という流れの作品になっているのです。そこから理解できるのは、この品川という人が表面、絵面ばっかり洒落込んで中身が伴わせることに興味がないことを具体的に表しているのです。映画だけでなく、漫才すらなめています。[DVD(邦画)] 0点(2012-01-11 18:25:11)
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