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1. ランジュ氏の犯罪
《ネタバレ》 オープニングタイトル文字の背景ともなる中庭の石畳。その中庭空間を自由奔放に移動しながら多くの登場人物たちを活き活きと映し出していくジャン・バシュレのカメラが素晴らしい。屋内シーンなら窓外、屋外シーンならば窓内と、一つの画面の中には二つ以上の空間が常にあって重層的で豊かな世界を作り出す。出版社社長バタラ(ジュール・ベリー)と愛人(シルヴィア・バタイユ)の別れを列車の中から捉えたショットや、足を事故で骨折した青年が寝ている窓辺に、通りを挟んだ向かい側の窓から同僚に支えられて恋人がやってくるショット等が特に印象深い。特に後者などは暖かい陽光の感覚と、二人が寄り添う窓枠に座った犬がまた良い味を出していて幸福感は格別だ。続く自転車のシーンの開放的なロケーション撮影も清新な感覚に溢れている。そして本作品でのカメラワークの極め付けは、ランジュ氏(ルネ・ルフェーブル)が神父姿のバタラを追って階下に下っていくのを屋外から追う下降移動と戸口からのさらなるパンニングのショット。抜群の照明処理とも相俟って、観る側も息詰まる圧巻の場面である。寒風の吹く砂浜を男女が行くラストの切返しが暖かい印象を残す。[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2010-07-12 21:34:42)
2. ラ・マルセイエーズ
平民側、宮廷側の双方からフランス革命を描く。群像劇らしく、モブシーンにおいても個々の人間それぞれに焦点を当てるかのように、クレーン移動の多用によってエキストラ一人一人を丁寧に映し出していくキャメラが素晴らしい。義勇軍のマルセイユ出発時、パリ到着時、宮殿突入前の整列場面のスケール感に満ちた長大な俯瞰ショットや、木漏れ日の中を行軍する隊列のショット等は単なるスペクタクルに留まらない人間味と悲喜の感情に溢れた名場面である。平民側の主役というべきボミエが義勇軍に志願する場面での、家族とのやりとりの淡々とした切なさ。ルノワール映画の刻印ともいえる特徴の一つ、窓を介して彼が小さく走り去っていくのを捉えた素晴らしいショットが忘れがたい。一方の国王側の描写もまた一面的になることはない。ユーモアを交えた食事場面などによって、国王・王妃らの等身大の人間性が描きこまれており魅力的である。演出、役者の好演のみならず、まさにルノワールの人間観の表出の賜物といえる。[DVD(字幕)] 8点(2009-08-14 23:15:54)
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