みんなのシネマレビュー |
|
461. 高台家の人々 《ネタバレ》 物語の骨子は『ローマの休日』『プリティ・ウーマン』『ノッテイングヒルの恋人』と同じ格差恋愛もの。主人公の妄想癖は『赤毛のアン』や『アメリ』でお馴染み、愛すべきヒロインの定番キャラ設定のひとつ。平凡な主人公が、数々の障害を乗り越えて王子様と結ばれるまでを描くシンデレラ型ラブストーリーです。言わずもがな、本作最大の特徴は“王子様がテレパス”ということ。個人的には、DVや浮気癖に匹敵する無理案件だと思いますが、それを乗り越えるところに浪漫があるのでしょうね。さて、押さえておきたいポイント。それは木絵に対して語りかけた由布子の言葉「ちょっと妙な力があるくらい何よ」。母が子供たちの特殊能力に気付いていたことが判明します。2人の結婚を反対したのも、身内にテレパスがいる大変さを知っていたから。何となく流してしまいそうな事実ですが、これって結構重大な告白。何故なら、子供たちは両親に自身のテレパス能力を隠しているのですから。夫婦は“子のテレパス能力に気付かないふり”をして、育ててきたワケです。特殊能力など全く意識せず、丸ごと子供たちを愛してきた証。茂正Jr.の“空気を読まないほど馬鹿正直に思いを口に出す”人となりも、“何故そのような性格が形成されたか?”を考えると泣かされます。テレパス能力が無い人とだって、ちゃんと良好な人間関係が築けるのよ。だから自分の能力を否定しないで。それが父と母からのメッセージであり、高台家の教育方針。何という大きな家族愛でしょう。『高台家の人々』というタイトルの味わいが増します。この手の天然ヒロインをやらせたら、綾瀬はるかの右に出る者なし。素敵な“家族愛”の物語でありました。[DVD(邦画)] 7点(2019-01-20 00:28:43)(良:1票) 462. 夜明け告げるルーのうた 《ネタバレ》 巨大な御陰岩は、「既成概念」や「古い価値観」あるいは「主人公の内なる心の壁」の象徴と見て取れます。つまり御陰岩の崩壊という結末には“変化を恐れるな”というメッセージが込められていると考えます。カイ父も“結果を恐れるな”と。自ら人型に変態し、かつ他者に人魚化を促すルーは、変化のシンボルです。今回の一件を通じ、まさに人生の分岐点にあった主人公は勿論のこと、貝類採取の激減が見込まれる漁港の人々の生活、そしてルーを含めた人魚族の行く末も、否応も無く変化が訪れるでしょう。そう、変化には痛みが伴います。それでもなお、環境や状況に適応し、変化し続けなければ生きていけないのが人間です。というより、全ての生物に架せられた宿命。歩みを止めたものは消え去るのみです。都会で成功しかなった伊佐木先輩が、故郷で新しい夢を見つけたこと。老若男女で力を合わせて開けた水門。途切れ途切れ、ゆっくりでないと伝わらない屋外放送。そして人間と人魚族のチームプレー。己が人生に立ちはだかる“壁”を打ち破るためのヒントは、ふんだんに出されています。覚悟なく、安易に変化を望んだ『人魚ランド』なる目論見が失敗したことも見逃せません。チャレンジの先に未来があります。日本アニメーション界の巨匠であり、神とも言える宮崎駿監督の代表作のひとつ『崖の上のポニョ』に真正面から対抗した本作にも、先述のチャレンジ精神が隠されている気がしてなりません。躍動感と疾走感あふれるアクション、デフォルメと記号化で印象強化、そして豊かな想像力。観客の心を突き刺す湯浅政明スタイルは、宮崎監督とは違う新たな価値観を呈示しています。日本アニメーションの新たな“夜明けを告げる”本作の心意気に対し、私は『ポニョ』と同じ10点満点というかたちで応えたいと思います。[DVD(邦画)] 10点(2019-01-15 18:55:44) 463. 来る 《ネタバレ》 極端な物言いをするなら、本作の是非を決定付ける分かれ目は、松たか子さんのキャラクターに魅力を感じるか否かに尽きると考えます。完全無欠のプロフェッショナルとして、ある種の冷酷さを漂わせていたスーパー除霊師が、最終決戦で露にした”愛“や”情“すなわち”人であるが故の弱さ“に価値を見出だせるかどうかが鍵。(ちなみに、“何か”が姿を現したシーンの衝撃は絶大でした。絶望は美しいです)あれ?この感想って中島監督の『告白』の時と同じですね。やっぱり中島監督は、松たか子さんの使い方がお上手なようで。そして終わり良ければ全て良しと(ハッピーエンドという意味ではなく)。王道のオカルトでありながら、ホラーを観ている感覚はありません。これまた不思議な味わい。怖いというより、面白い、興味深いとの印象です。ちなみに”何か“は、難病や麻薬中毒なんかと置き換えても成立するでしょう。恐ろしい敵と対峙したとき、人の値打ちが明かされます。[映画館(邦画)] 8点(2019-01-12 17:37:14)(良:1票) 464. 獣は月夜に夢を見る 《ネタバレ》 DVDに収録されていた予告編には、トーマス・アルフレッドソン監督の『某作品』を彷彿させるとのコメントが。ああ、それ言っちゃうんだという感じ。おっしゃる通り、基本設定は『某作品』(後にヒットガールちゃんでリメイク)を連想せずにはいられないもの。言葉を選ばなければ二番煎じです。ただし、オリジナリティ云々を理由に低評価を付けるつもりはありません。そんな事言い出したら、ゾンビ映画なんてほとんどパクリですし。問題なのは尻切れトンボのような終わり方。彼女の素性は知れました。さあそこからどうするかって話が知りたいんです。確かに彼氏から意思表明らしき言葉は発せられました。でも行動が伴ってこそ初めて価値が生まれるのでは。ピロートークの「愛している」と、クロちゃんの「守るから」を信じられるほど、お人好しではないもので。寒々とした空気感はさすが北欧の映画。見慣れた米国製映画のそれとは違う新鮮味を感じましたが、ちょっと残念な仕立てでした。[DVD(吹替)] 5点(2019-01-10 19:18:22) 465. 犬猿 《ネタバレ》 私は長男で、妹が一人。また三姉妹の父親でもあります。本作は個人の経験(人間観)と照らし合わせて楽しむタイプの映画。同じ兄弟でも、異性と同性では当然ながら関係性は異なるワケで、私の場合は比較対象とするサンプル=娘たちとなります。車の座席、おやつの分配、お風呂の順番、外食先の店選び。全然すんなり決まりません。その一方タッグを組んで強力なおねだり作戦を敢行することも。仲が良いんだか悪いんだか。絶対的に頼れる友であり、最高に苛立つ永遠のライバル。今はまだ幼い娘たちですが、大人になったらあんな風になるのかと思うと、感慨深いことで(苦笑)。本作のタイトルは『犬猿』。これは愛あるタイトルと捉えましょう。嫉妬しようが煙たかろうが、本作の兄弟姉妹はいずれも相手を認めています。同じ桃太郎チームの一員です。桃太郎=親が不在となったとき、どのように関係が変化するか(あるいはしないのか)興味深いところですね。現実には全く相容れない『水と油』な兄弟もざらに存在しますので、充分微笑ましい兄弟関係の物語と感じました。あのシチュエーションで厄介者の兄を見捨てなかった弟は尊いというか、お人好しというか。監督の人の良さが現れていると思います。その一方、コーヒーカップに乗るニッチェに豚鼻の効果音を入れたりと、嫌らしい(悪戯な)一面も。実に吉田恵輔監督らしい映画であったと思います。最後にキャストにも触れておきましょうか。男の方は人気と実力を兼ね揃えた俳優コンビであるのに対し、姉妹ペアは芸人とグラビアタレントの組み合わせ。本職役者組と比べると演技面では流石に敵いません。しかし、彼女らは彼女らなりに、生々しい犬猿姉妹の空気感を見事に作り上げてくれました。何より顔の造作が似ているところがポイント高し。コント上手のニッチェ江上は兎も角も、筧ちゃんが予想外に良くてちょっと驚きました。決して演技が上手いわけではないですよ。でも自らのリアル芸能人生をキャラにダブらせ、身を削った心意気や良し。根性もありそうです。要するに、筧ちゃん=二代目磯山さやかという結論でファイナルアンサー。[DVD(邦画)] 8点(2019-01-05 16:58:05) 466. 百円の恋 《ネタバレ》 デビュー戦が決まった晴れやかな表情の主人公に、冷や水を浴びせる会長の言葉「10年遅いよ」。全くもって正論です。『人はいつだってやり直せる』。巷に溢れるのは、希望に満ちた心地よいフレーズ。でも実際はそんなに甘くありません。ピークを過ぎれば、坂道を下るように人の能力は衰えていきます。知力、体力、そして気力さえも。それが自然の摂理。一子はもう32歳。元引きこもりニートがボクシングの真似事をしたところで、高が知れています。しかし、思いもよらぬ出来事が転機となるのもまた事実。主人公の場合は、男の裏切りに対する“怒り”がキッカケでした。自堕落な生活を送っていた頃の“逆切れ”や“八つ当たり”とは違う“本気の憤り”は持続力を有し行動原理となり得ます。ボクシングに打ち込む主人公は素晴らしく魅力的に映りました。人は変われる。これならデビュー戦勝利も夢じゃない気がしたものです。しかしリングの上で待っていたのは、一発のパンチさえ当てられぬ厳しい現実でした。いくらシャドウが様になっても、所詮仮想の敵は自身。ままならぬ他人との対戦は別物です。経験が物を言う世界。それは恋愛も同じですよね。ボコボコにされ、血反吐を吐くみじめな姿は、彼女が無為に過ごしてきた人生の中間決算と言えましょう。長年己が人生から逃げてきたツケが、一時の頑張りで完済できるはずもなく。でも、それでも、崖っぷちで繰り出した渾身の左フックは、彼女が積み重ねた努力の結晶に他なりません。遅過ぎる頑張りだとしても、しないよりずっとマシ。勇気を出して手を出さなければ、ラッキーパンチさえ望めません。泣けました。それはもう泣けました。主人公がこの先“客を呼べるプロボクサー”になるのは難しいでしょう。でも観客(家族や元彼)の思いを背負って戦えたのなら、もう立派にプロだと思うのです。一子、凄いよ。前言撤回。まだ32歳。まだまだ、これからです!彼女がリング上で見せた闘争心は、自らの人生と対峙する際にも役立つはずです。その彼で大丈夫ですか、そうですか。今度は逃がさないように。思う存分、真正面から、ヤツと戦いましょう。KOして尻に敷いてやりましょうよ。 キャラクター造形は繊細で、前フリのドラマが長いこと。いつまで経っても主人公がボクシングを始めやしない(苦笑)。でもその分、どっぷり主人公の内面に潜る時間が持てました。なんという丁寧なつくり。その上で、これまた丹念にトレーニングシーンを描いてくれるのですから、感情移入するなって方が無理な話。デビュー戦のカタルシスは絶大でした。安藤サクラの女優としての非凡な才能なくしては成立しなかった、正しいボクシング映画。傑作です。[DVD(邦画)] 9点(2019-01-01 00:00:01)(良:4票) 467. ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 《ネタバレ》 承太郎の髪型と服装、億泰の顔のバッテン。これがダメ。本当に駄目です。原作に忠実であれば許される(褒められる)と思ったら大間違いです。この部分について、製作チーム内で問題にされていないとしたら、それこそが問題。この(ある意味些細な)不具合だけで、余裕で不合格点が付いてしまいます。キャスティングについては、仗助ママに観月ありさはグレートでしたね。[DVD(邦画)] 4点(2018-12-30 19:57:04) 468. 曇天に笑う 《ネタバレ》 大事なコトを登場人物が全部台詞で喋ってしまうB級以下の映画で時々みられるズッコケパターン。でも本作を観ると、それでも説明があるだけ有難い気がします。原作ありきかもしれませんが、一見さんに優しくないつくりと感じました。3兄弟の立ち位置(職業)は?5人組(やまいぬ)の家系と特殊能力は?曇天が続くとき、大蛇が復活?その器となる人間がいるらしい。そいつを殺す?それとも守る?沢山の疑問を抱えたまま、ぬるりと進むストーリー。最後まで見れば解るからOKって話でもないような。リアルタイムで問題を共有したいじゃないですか(そう、いみじくも次男が長男に言っていたように)。そういう意味では確かに難しい設定であったとは思います。一般常識では処理しきれないのがファンタジーの弱点。さらに陰陽道系。そもそも胡散臭いったらありゃしない。明治初頭という知ってるようでよく知らない時代背景も難解さに輪をかけます。間口はことのほか狭いです。また、最初からいきなり強い主人公にも感情移入が叶いません。修行もなくクライマックスのボス戦突入ですか。ジャッキーチェンだって、孫悟空だって、強敵と戦う前は修行するんですが。だから一緒に燃えることが出来るんです。更にいうなら廃刀令後だから、刀じゃなくて鉄扇なんですよね(これは常識で分かる範囲)。でもそれでゴロツキの巣窟に乗り込むって、流石に無茶が過ぎてロマンとは言えないですよ。全体的に中二病な雰囲気アリアリの物語は『トュームレイダー明治維新版』といった趣。キャラクター名は皆なかなかのキラキラぶり。白子で「しらす」。当て字じゃないですけど、普通は「しらこ」では。ほら、海苔の。伊東四朗の。『ニンッ』の。人件費は相当にかかっているのは間違いないので、豪華なつくりの映画だとは思います。[DVD(邦画)] 4点(2018-12-25 21:26:57) 469. 悪女 AKUJO 《ネタバレ》 女殺し屋リベンジ系バイオレンスアクション。セールスポイントは、ノーカット長回しの主観映像でしょう。オープニングとクライマックスで、これでもかと言わんばかりに、撃ちまくり、斬りまくります。確かに臨場感は絶大で、インパクトは強烈。ただし、視認性には難ありで、動きをまともに追うと酔ってしまうかもしれません。既視感あるベタな復讐劇は、古今東西の同カテゴリーの有名映画のエッセンス満載で、さすが韓国映画の面目躍如といったところでしょうか。外連味のある演出は、良く言えばエンターテイメント、悪く言えばマンガチック。最終的には『ターミネーター』みたいになっていましたが、流石にやり過ぎてはいませんか?[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-12-20 19:17:11) 470. ライフ(2017) 《ネタバレ》 個人的にSF映画は理系(科学)-文系(哲学)軸と、派手系(アクション)-地味系(ドラマ)軸で分類できると思っています。理系-派手系の代表作は『スタートレック』『インターステラ―』、理系-地味系は『ガタカ』『メッセージ』。文系-派手系は『スターウォーズ』、『エイリアン2』文系-地味系は『E.T』『コンタクト』。(有名・名作で作品名が挙がっていないのは、観ていない(観そびれている)か、恐れ多いから。『2001年~』とか『ソラリス』とか。カテゴリー別けの異論は認めます。考えているうちに自分でも解らなくなりました苦笑)。で、本作は理系-地味系に分類しておきましょう。傑作の多いジャンル。観始めたうちは同カテゴリーの『エイリアン』を彷彿とさせる雰囲気に、好意的に観ていたのですが次第に尻すぼみに。何が悪かったのかと考えてみたのですが、筋立てに必然性が感じられなかったのが要因かと。例えば結末。『ミスト』くらい袋小路に追い込んでくれれば、バッドエンドも納得出来たと思うのです。サプライズのためのサプライズでは、残念ながら心は動きません。[DVD(字幕)] 5点(2018-12-15 21:59:36) 471. 銀魂 《ネタバレ》 これはね、アレですね。『オールスター新春かくし芸大会』の味。一流のスター(あるいは年末年始限定で稼ぐタレントさん)が、普段は決して手を出さないオフザケ設定の余興ドラマでハメを外す、かつての年始の風物詩。本作はそのグレードアップ版。演者がそれぞれの役割を完璧に理解しているのが素晴らしいです。福田組のレギュラーの佐藤二朗やムロツヨシのアドリブ強めのオモシロ演技は勿論のこと、岡田将生や堂本剛はお笑い抜きの生真面目演技(という体裁の実はギャグ)で、物語に筋を通します。そう、そうなんです。外側はとことん悪ノリギャグでコーティングしながら、作品の本質は実にオーソドックスなヒューマンドラマ。まるでカステラに挟まれた羊羹のような(・・・その名はシベリアという)。観終えて何故か「良いものを観たな」という気にさせられる福田マジックをご堪能ください。私は原作未読ですが問題なく楽しめました。というか、最高。[ブルーレイ(邦画)] 8点(2018-12-10 20:26:04)(良:1票) 472. バッド・ガール(2012) 《ネタバレ》 凌辱を受けた女性が加害男性に復讐を果たす“リベンジサスペンス”は、そこそこ目にするジャンル。カタルシスが魅力です。ただ、本作については“爽快感”は皆無でした。確かに主人公が受けた屈辱は(本人にしてみれば)理不尽なものだったかもしれません。しかし“加害者”が受けた報復が、主人公が受けた痛みに見合うかと問われると疑問です。復讐の原則は“目には目を、歯には歯を”の等価報復。先に手を出した方に原因があるので、個人的には倍返しでも問題ないとは思いますが、それでも殺人はやり過ぎ。完全に別件の痛みや苦しみも上乗せした上での復讐となっています。もう普通に殺人鬼としか思えません。ルームメイトとか同級生は完全にとばっちりですよね。満たされぬ家庭環境、幼少期の性的虐待、ジェンダーにジャパンカルチャーと、物語にハクを付ける装飾要素は垣間見えますが、本質的に物語に深みを与えるものではありません。[DVD(字幕)] 3点(2018-12-05 21:54:18) 473. ジェーン・ドウの解剖 《ネタバレ》 広げに広げた大風呂敷。嫌な予感はありましたが案の定といいますか、オカルトで畳むなら、そりゃ畳めるでしょうよというのが率直な感想。また生還要件が付されていないのも個人的にはマイナス査定でありました。最初からオカルトホラーと知っていれば、もう少し好意的な感想になった可能性はありますが。『ジェーン・ドゥ』の言葉の意味を知れたので、ひとつ勉強になりました。[DVD(吹替)] 5点(2018-11-30 22:57:11)(良:1票) 474. いぬやしき 《ネタバレ》 流し読み程度で原作は既読。詳細は把握しておりません。ですから「原作と比較して云々」はナシの感想でお願いします。 『デスノート』と同じく(いやそれ以上の)“絶対的な生殺与奪権”を手にしたとき、あなたならどうしますか?と。現実問題として「死ねばいいのに」な奴は掃いて捨てる程いるワケですが、獅子神のような能力があったとしても、大多数の人はその力を使わないでしょう。何故なら「死ねばいいのに」と「殺したい」は似て非なるものだから。社会生活を営む人間は“隣人を殺さない”ことを原則として生きています。そう教育されてきました。深層心理に刷り込まれた鉄の掟。それにいつでも殺せるなら、今殺す必要がないとも言えます。究極の「金持ち喧嘩せず」状態。それより“治癒能力”の方がよほど魅力的に思えます。他者から圧倒的な称賛を得られる快感。こりゃ気持ちがいい。これが一般的な感覚と推測します。一方、獅子神は能力を使っていとも簡単に人を殺しました。おそらく彼はサイコパス。ただ、私たちが一般的にイメージするサイコパスより、ずっと人間味がありました。母や直行、しおんに対する態度をみるにつけ、何故あそこまで冷酷に人を殺せるのか疑問なくらい。さらに超が付くイケメン。ギャップは絶大で(これを魅力と言ってよいのか悩みますが)、惹きつけられるものがありました。彼の対照に位置するのが本作の主人公、犬屋敷。獅子神=悪とするなら、犬屋敷=善。典型的ダメおやじキャラがヒーローという構図は俄然燃えますが、キャラの魅力という点では獅子神に劣ります。やっぱり憲さんは違うんじゃないかと。身長178㎝で実にスマート。もっとしょぼくれ感が欲しいです。物語全体を通じても、より獅子神の方にスポットが当たっていた気がします。結局、守りたい人は誰一人として守れなかった獅子神に対し、家族を守り抜いた犬屋敷。能力の差異ではなく、その使い方の違い。自分だけ守れても、虚しいだけです。犬屋敷は手に入れた能力を使って娘を守りました。いえ、彼は特殊能力を持つ前から、ちゃんと家族を守ってきました。家族を養うことがどれほど大変か。衣食住の保障が当たり前と思うなかれ、子供たちよ。そういう意味では母親がダメ。本当にダメ。あなたが夫を馬鹿にするから子供が真似するんです。反省しましょう。伏線放置(娘の漫画家志望の件)など、脚本は今一つという気はしますが、空中戦闘シーンの見応えはなかなか。ネットの匿名掲示板で暴言を吐く輩への報復が、一番カタルシスがあったりします。[インターネット(邦画)] 6点(2018-11-25 10:53:52)(良:1票) 475. 小川町セレナーデ 《ネタバレ》 本サイトの投稿ネームにマイナー漫画(おおひなた先生ご免なさい)のサブキャラクター名を拝借している私が言えた義理は無いのですが、子どもの名前をスナックの店名に付けるのは、やはりオススメしません。そりゃ、からかわれます。思慮の浅い子どもは残酷ですから。さぞ、幼い小夜子ちゃんは辛い思いをしたことでしょう。ただ戸籍上の命名と違い、店名ならば何時でも変えられたはず。仮に小夜子ちゃんが恨み言を口にしなかったとしても、娘の気持ちに母が気づかないはずがありません。しかし、それでもなお、娘の名前のスナックに拘り続けたことに胸が締め付けられます。シングルマザーを選んだお母さんの覚悟。また、その思いをちゃんと受け止め成長した小夜子ちゃんも偉いなあと。そういう意味では、お父さん(?)はもっとしっかりしろと言いたい気分。ただ夫婦が決めた関係性を、外野がとやかく口を挟む筋合いはありません。男運の悪さは如何ともし難いですが(母譲りかな?)、小夜子ちゃんは立派に育ちました。本当に家族のかたちに正解は無いですね。スナック閉店のピンチにオカマバーへリニューアル。素人がダンスショーを披露したくらいで店が繁盛するほど水商売は甘くないでしょうが、これはエンジェル父さんに“親の務め“を果たさせるチャンスを与えたものと考えましょう(おそらく借金は経営不振というより、生活費を捻出するためのもの。つまり、父ちゃんは借金返済計画に協力するかたちで、間接的に娘の養育費を負担したワケです)。コメディとしても、人情ドラマとしても、オカマさん映画にしては淡白な味付けなれど、過激で濃いドラマばかりでは胸焼けします。こんな優しいドラマもいいんじゃないでしょうか。エンディングテーマ『幸せの貼り紙はいつも背中に』はドラマの世界観にピタリとハマっていてイイ感じです。(以下余談)作品登録から、感想投稿まで随分と時間がかかってしまい大変失礼いたしました。前述した『幸せの貼り紙~』は私立恵比寿中学の楽曲で、個人的に気に入っている歌。主題歌として採用いただいた本作の登録をお願いしたのですが、映画自体の鑑賞を失念しておりました。不手際お詫びいたします。[DVD(邦画)] 7点(2018-11-20 18:59:46) 476. トウキョウ・リビング・デッド・アイドル 《ネタバレ》 アイドルちゃんでホラーというだけで、最早定番という気がしますが、本作はさらに『ゾンビもの』でもあり『セーラー服で日本刀振り回しもの』でもありました(注:そんなジャンルはないっすか)。要するに、人気ファクター全部乗せ。お得感はあります。エンドクレジットによりますと、本作はクラウドファンディングを用いた模様。なるほど、出資者を口説くならセールスポイントは多い方が好ましいでしょう。で、興味深いというか、なるほどと思うのは、主人公がセーラー服をまとい日本刀で戦わないところ。殺陣ができる若手女優さんを別途用意しておりました。効率重視の分業制。昨今のアイドルビジネスに例えるなら、成果が出るのに時間を要する歌のレッスンは省略して、口パクで代用みたいな。効率性や採算を重視するなら、この手法もアリなんでしょう。ただ誤算だったのは、ゾンビものとソードアクションの噛み合わせが意外と良くないこと。本作では殺陣の美しさを優先させた結果、“ゾンビ退治=頭部の破壊“という鉄の掟が形骸化しています。腹を斬られて絶命するゾンビ。ん?これで『ゾンビもの』を名乗って良いのかしら?理性を持つニュータイプゾンビってのも大概だと思いますが、最低限の約束事が守られていないと駄目なんじゃないかと思ってしまうのは、私が古いタイプの男だからでしょうね。何せ自分、不器用ですから(気分は高倉健で)。安心のロリ顔、見事な巨乳、意外と確かな演技力と三拍子揃った浅川梨奈さんはヒロインの資質充分。アクションパートを担った星守紗凪さんも頑張りました。個人的に贔屓している亜紗美嬢は、ほとんどお顔を隠しているのに存在感バッチリ。加藤雅人さんには、小林歌穂さんをはじめ、エビ中のみんながいつもお世話になっております。基本的にチープなC級ホラーであることは間違いありませんが、前述したお得感と、役者さんの力量のおかげもあってか、そこそこ満足できる作品に仕上がっていると考えます。[DVD(邦画)] 6点(2018-11-15 18:26:38) 477. トランセンデンス(2014) 《ネタバレ》 究極のIOT(インターネットオブシングス)、シンギュラリティ(人口知能の技術的特異点)がもたらす人類にとってのネクストステージとは一体どんな世界か。同じテーマを扱う『ターミネーター』と比べると、その技術進化のスケールは、本作の方が二歩も三歩も先を行きます(製作年が違いますから当然ですが)。特徴的なのは、単に“人類滅亡”の恐怖を描くのではなく“人類の進化”を提示した点。ナノテクノロジーの恩恵は、“何かを手放したとしても”手に入れたくなるほど魅力的なものに思えました。人としての幸福と、人が人であることの証明。どちらを優先させますか?いやー考えれば、考えるほど面白いです。かなり興味深く観させていただきました。満足度は高めですが、最終的に“夫婦の愛”に落とし込むあたりは、やや陳腐な印象を受けます。[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-11-10 00:58:31) 478. シンクロナイズドモンスター 《ネタバレ》 設定とオチを思い付いてから、逆算して脚本を書いたような印象を受けます。そう思ってしまうほど、基本となるアイデア(自分と同じ動きをする巨大怪獣が何故か異国の地に現れる)と、結末の“成る程そうきたか“感が抜きん出ているのです。言い方を変えるなら、本筋となるドラマがいまいちピンと来ないというか。アル中負け組の主人公が世界を救う爽快ストーリー。確かに間違いではありませんが、そもそもの原因は彼女にあるワケで。どちらかと言えば尻拭いなんです。そして元カレと幼馴染との三角関係が何とも微妙で。ラブコメのヤキモキが薄いんです。というのも、観客の感情移入先である“イイ人そうな“幼馴染が、結局クソ野郎だったワケです。更に言うならジョーカーとおぼしき常連イケメンの存在に意味が有ったのかも疑問。彼、肝心な場面で空気でした。何だよ結局セフレかと。すげえ羨ましいぞと。つまり、ラブコメな雰囲気アリアリなのに、全然そのカテゴリーでは楽しめなかったのです。一方、SFのギミックとして、理屈は通っているとは言い難いものの、説明責任は果たしており問題なしと考えます(2018.7.20投稿の『◯ディウス』とは似て非なるものです)。アイデアは純粋に素晴らしいと思いました。事情を知らないならまだしも、ロボと同化していると知りながら破壊行為を行ったクソ野郎には正直ドン引きで、もう少し気軽に笑えるコメディだったら良かったと思います。[DVD(吹替)] 6点(2018-11-05 18:53:41)(良:1票) 479. ミスミソウ 《ネタバレ》 壮絶ないじめ、両親を焼き殺される!~からの~復讐劇と聞いていたので、それはもう陰惨かつ過激な敵討ちを想像しておりましたが、実際それほどでもなく。確かに主人公の殺戮ぶりは容赦なく一線を越えておりますが、ヤッパ片手に敵地に乗り込む積極的な報復(任侠映画の如きノリ)はなく、見方によっては正当防衛(というか過当防衛)の範疇と言っても差支えない反撃に終始しています。あくまで相手からの仕掛けを待っての倍返し的な。決して仇の絶命や、苦しむ姿を見たいがための殺人ではありません。社会生活を営む人間が決して外すことのない“リミッター”を解除しているだけと見て取れます。ある意味それも致し方ないこと。本来コミュニティが保持している抑止力なり秩序なりが、何ら機能していないのですから。唯一覚悟を決めて対峙したであろう親殺しの実行犯にさえトドメを刺さぬばかりか、発端となった首謀者に赦しを与える主人公。復讐劇としては物足りなくもありますが、その分終盤に意外な展開が待っていました。もう誰も信じられない地獄の結末。八方塞。希望ナシ。ハッピーエンドが望めない物語であることは解りますが、そこまでやるかと。もちろん加害者に赦しを与えたところで魂が救われるとは思いませんし、差し違えての敵討ちにも価値は見出せません。ただ唯一、救いらしきものがあるとすれば、主人公とイジメ首謀者の間に、友情が僅かに残っていたことでしょうか。実際、首謀者は親殺しに直接関わっていませんでした(コレ重要)。首謀者が指摘した「他人の尻馬に乗って暴走する取り巻きは質が悪い」は正論だと思います(ただし、お前が言うなとは思いますが)。他人をダシに使って己の悪行(憂さ晴らし)を正当化するのは、卑劣極まりない行為です。責任をとる気が無いから、何でも出来るとも言えるでしょう。無責任な馬鹿が一番怖いということ。なかなかの鬱映画でありました。一瞬ギャグか?と思えるような軽薄なセリフや描写が散見されたのは何故でしょうか。除雪車が人を巻き込んでも緊急停止しないとか。基本設定は勿論ですが、全体的にリアリティを排除しているように感じました。マンガ原作ゆえのこと?あるいは凄惨な物語を薄める為に、わざと狙って粗いつくりなのでしょうか。[DVD(邦画)] 6点(2018-10-30 20:25:15)(良:1票) 480. ミックス。 《ネタバレ》 『スポ根』+『ラブコメ』+『サクセスストーリー』の教科書どおりの仕様。それゆえ観易いというか、手堅いつくりとの印象です。細部に気配りも感じられました。例えば、元天才卓球少女と元プロボクサーというポンコツ負け組が、実業団トップと対等に渡り合うという“無理難題”を成立させるために数々のギミックが用意されています。「一流選手はミックス専門の練習はしない」「元天才卓球少女の底力」「一流ボクサーの運動神経」「1年という長尺の特訓期間」「右利き+左利きコンビのアドバンテージ」「道場破りで実力アップ」「元中国ナショナルチーム選手のコーチング」「敵チームの不仲」。これだけでも、本作が『卓球』というスポーツに対し敬意を払っていると言えましょう。それでもなお、卓球で必要とされる“技術”は一朝一夕で(下地のあるガッキーは兎も角も、瑛太は無理)身に付くものではありませんし、こと練習量で実業団選手を上回るとも思えません。元中学卓球部員としては、“在り得ない”と思うワケであります。また、男女混合(ミックス)を安易にラブストーリーのダシに使った点が腑に落ちません。それなら『社交ダンス』とか『フィギュアスケートペア』とか、男女が体を密着させている競技なんか、もう絶対デキてるって話じゃないですか!(失礼。興奮してしまいました。)冗談はさておき、肝心のラブストーリーが弱いことは否めません。決戦直前、卓球王子様からの再誘惑は「恋の最終ハードル」なのでしょうが、流石に無理があるでしょう。教科書に沿うがあまりの不自然さ。そもそもガッキーが冴えないOL役だったり、浮気されたりする時点で「そんな馬鹿な」ではありますが。サイドストーリーのドラマ(夫婦が卓球に打ち込んだ秘密、元ヤン心の解放)の方が、出来が良かったりします。[ビデオ(邦画)] 6点(2018-10-25 19:53:42)(良:1票)
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS