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521. 八つ墓村(1977) 《ネタバレ》 地上波TVバージョン(つまり編集版)は何度か観ておりますが、この度フル尺を初めて鑑賞しました。正直2時間半は長い!と感じつつも、同じような描写が延々と続き、遅々として物語が進展しない“もっさり感”が、むしろ田舎社会の旧態依然とした淀んだ空気感を正しく表現していた気もします。本作の金田一は渥美清。正直、違和感が無いと言えばウソになります。しかし『ナイル殺人事件』のピーター・ユスティノフも原作のポワロのイメージとは程遠い見た目。馴染んでしまえばそれもアリ。ただ渥美さんの場合は寅次郎のイメージに悪影響を及ぼすことがあってはなりません。金田一を継続しなかったのは正しい判断であったと考えます。聞くところによると『八つ墓村』は金田一シリーズの中で最も多く映像化された作品だそう。それだけキャッチーかつインパクトの強い設定なのでしょう。主役は名探偵・金田一耕助ではなく、旧家の跡継ぎ・寺田辰弥。演じるはショーケンです。存在感と雰囲気は抜群ですが、演技が上手いのか下手なのかよくわからない、いつものショーケン流。そこに小川真由美の妖艶さや、違和感ある寅さん風味、印象的な音楽が相まって、形容し難い独特の空気感の作品に仕上がっております。それが横溝正史の世界観とマッチしていたかどうかは謎ですが。ところで本作の金田一は物証に基づく論理的な推理を披露していましたっけ?ミステリーというより、オカルトホラーであったことに今頃になって気づきました。[インターネット(邦画)] 7点(2018-04-15 07:57:21) 522. 海月姫 《ネタバレ》 原作本未読。映画より先にTV版を観ています。…と、この書き出しは『電車男』のレビューのコピペ。そう、視聴率爆死といわれた2018年1月期のフジ月9ドラマ、芳根京子ちゃん主演の連ドラ版を実は鑑賞済みです。ですから必然的にTV版と比較する感想となりますことをお許しください。さて、2時間映画と延べ7時間半のTVドラマとでは、ストーリーの掘り下げや、各キャラクター造形の厚みに差が出るのは当然です。さらに言うなら“先に”TV版を観ているという刷り込み効果も手伝って、私個人の満足度はTV版の方に軍配があがります(ある意味当然です)。そんな中でも映画版の方に、より心が惹かれたのは、やはり能年さん。“清潔感”や“好感度”は流石NHK朝ドラ主演女優と思わせるものでした(芳根さんにも同じことが当てはまりますね)。能年さんの魅力で一定水準の満足感を担保しているのは間違いありません。あとは、三国志おたくのまややでしょうか。TV版は内田理央さんが務めましたが、これがなかなかの怪演で、声の印象度は圧倒的に内田さんが勝ります。ただ、まややが自身のトラウマを乗り越えてファッションショーのモデルを引き受けるに至った重要シーンは、映画版の方が刺さりました。太田莉菜さんが有する“負のエネルギー”が活きたものと思われます。本来、この映画の感想で書くべき事ではありませんが、もし本作をご覧になるなら、続けてドラマ版を鑑賞することをお勧めします。本作で感じるストーリー上の不満の何割かは解消されるはずです。[DVD(邦画)] 5点(2018-04-10 22:53:46) 523. ターボキッド 《ネタバレ》 チャリ版『マッドマックス2』あるいは『北斗の拳(実写版のほう)』。それ以外の適切な表現が思いつきません。使い古された世界観、超テキトー設定、やり過ぎゴア描写。全くもってB級映画のテンプレート満載です。ザ・安普請。ただ、見捨てておけない魅力があるのも事実。おそらくそれは、主役2人のキャラクターに起因するのでしょう。ひたすら真面目な主人公、明らかに可愛いアップルちゃん。主役2人のラブストーリーが微笑ましく、血飛沫ハラワタ飛び散る“汚らしい”世紀末バトルとのギャップに眩暈を覚えました。荒地の2人鬼ごっこ。いい雰囲気で見つめ合ってゲロ。妖精バットでタコ殴り、人体串刺しユニコーン。何んだこりゃ。でもいいぞ!クライマックス、血の雨が降り注ぐ中、パラソルの下で交わしたファーストキスは、極めて映画的な美しさに溢れていました。人とロボット。血は通わずとも、通うものがある奇跡。ああ、良い映画を観たなと錯覚するのです。鉄拳カウボーイや丸ノコガイコツ男、悪の親玉隻眼ゼウス。サブキャラクターも良い味出しまくり。美術は並かそれ以下、脚本は穴だらけながら、演出と役者の技量で一本勝ちなんです。愛すべきB級映画をまた一つ見つけました。[DVD(字幕)] 8点(2018-04-05 00:27:55) 524. Mr.&Mrs. スパイ 《ネタバレ》 “スパイコメディ”は映画で人気のジャンル。サスペンスの緊張感が笑いを際立たせるという構造です。ちなみにダウンタウンの『絶対に笑ってはいけない~』シリーズも同じ仕組みですね。サスペンス強めから、ガッチリコメディまでテイストに幅があるのも特徴でしょうか。さて、本作の場合はどうでしょう。平凡な家庭のお隣に越してきた“パーフェクトな夫婦”が実はスパイでしたという王道設定。本来ならスパイは目立ち過ぎ厳禁のはずですが、そこはエンタメ重視。スタイリッシュなアクションも見どころのひとつで、笑いは控え目。盗聴あり、尾行あり、留守宅への忍び込みあり、銃撃戦ありと、およそ『スパイもの』のフォーマットをキッチリ抑えた正統派スパイ映画とも言えます。さらにヒューマンドラマの傾向も顕著で、ハラハラ・クスリで最後はホロリと、盛り沢山。ただし、平気でヒトが死にますし、下ネタもガンガンですので、家族団らんで楽しむタイプの映画ではありませんのでご注意を。『ワンダーウーマン』ガル・ガドット様目当てで鑑賞しましたが、文句なしの美貌に大満足。さらに何処かでみたオッサンだなと思ったら『ハング・オーバー』の奇人アランの姿が。実に立派になったものです。幕の内弁当的にバランスの良い映画ではありますが、個人的には“ちょっと物足りない”という感想です。[DVD(吹替)] 6点(2018-03-30 21:21:34) 525. 咲-Saki- 映画を観るのに資格は必要ありませんが、映画を楽しむためには素養が必要です。本作を楽しむ素養とは、①原作コミックのファンであること。②TVドラマ版を鑑賞済みであること。③麻雀が打てること。④出演女優に興味があること。私の場合、福本伸行氏の麻雀漫画や、『哲也-雀聖と呼ばれた男』など、麻雀を扱った漫画は大好きなのですが、実は麻雀のルールすら知りません(駆け引きの妙や緊迫の心理戦が面白く、ルールを知らなくても楽しめてしまいます)。前述した素養の中では、かろうじて④がカスるかどうか。というワケで、イカサマ無、札束が乱れ飛ばない、血液が抜かれない(!)というだけで“何だか物足りない”という的外れな印象を抱く始末です。青春ドラマとして楽しめば良いのでしょうが、前日譚となるTV版を鑑賞済みで、人間関係のバックボーンを承知していない人間にとっては敷居が高い世界でありました。①~④のうち最低でもひとつ、出来れば複数当てはまる方じゃないと、楽しむのは難しい映画かもしれません。(以下余談)個人的に気に入っている『人狼ゲーム』シリーズに出演されている若手女優の皆さんが、本作でも多数キャスティングされています。コッチは負けても死ななくて大丈夫。ちょっと安心(苦笑)。[DVD(邦画)] 5点(2018-03-25 01:52:12) 526. メッセージ 《ネタバレ》 巨大宇宙船、タコ型地球外生命体、そして“未来の記憶”。トラディショナルなTHE・SF映画の体裁です。ストーリーは“異星人との意思疎通”にほぼ終始するという極めて地味な展開ながらも、情感たっぷりのヒューマンドラマを孕み、見応は十分でした。最終的には親子愛という普遍的なテーマに落とし込むあたりも、王道中の王道のSF作品。個人的な好みで言えば『コンタクト』や『インターステラ―』と甲乙付けがたい傑作SFとの認識です。[CS・衛星(吹替)] 8点(2018-03-20 19:59:44) 527. KARATE KILL/カラテ・キル 《ネタバレ》 主役のハヤテのアクションは、往年のジャッキーチェンカンフーに通じる“型の美学”と“見栄えの良さ”があり好印象です。ワイルドキャット・亜紗美嬢は(こう呼んでいるのは私だけだな)、相変わらず雰囲気抜群で流石の存在感であります。ハイ、褒めたい部分は以上で終了です。リアリティとか、ドラマ性とか、映画としての“正しさ”を求めても仕方がないことは、DVDパッケージの主人公のデフォルメ具合をみれば分かること(どんだけ筋肉モリモリなんだ笑)。とはいえ、それでも注文をつけるとすれば、良キャラの扱いがあまりに勿体なかったこと。剣術使いのハゲ店長(鎌田規昭)、鉤爪のケイコ(亜紗美)、彼らにもっと見せ場をあげて欲しかったです。主要キャラ3人で敵アジトへ乗り込む展開でも良かったんじゃないかなあ。[DVD(邦画)] 6点(2018-03-15 20:29:12) 528. 樹海のふたり 《ネタバレ》 うだつの上がらぬなディレクター2人が手掛けた特番は、まさにテレビ東京のバラエティ特番(『土曜スペシャル』や『日曜ビッグバラエティ』)。純粋に面白そうというか、観たことがあるような無いような、今までなかったの?という気がしますが、企画意図がコンプライアンス的にアウトなのでしょうね。物語の仕立ては、自殺志願者の様々な人生に触れ、また樹海そのものが持つ不思議な生命力にも感化され、主人公2人の人生にも変化が訪れるというもの。蜘蛛は巣を張り、かかった獲物の命を奪うことで自らの生を永らえますが、本作の主人公はビニール紐を命綱に樹海に身を投じ、出会った自殺志願者の命を救うことで、己が人生を豊かにしていきました。網を張り、かかった獲物を養分にするという意味では蜘蛛と彼らは同じですが、獲物を殺すと生かすでは正反対。本来、営利関係にない他人が死のうが生きようがどうでもいい話ですが、そこに価値や特別な意味を見出だすのが人間という生き物の特長なのでしょう。所謂ヒューマンドラマのカテゴリーに属する作品と判断しますが、正直インパルスのコントから笑いの要素を抜きましたな印象が強いです。たとえば板倉のギザな台詞の言い回しや、ニヤけた表情など、お馴染みのコントさながらでした。ですから、インパルスが主演で問題なかったのか?という疑問はありますが、テーマは重くとも各エピソードを深掘りはしないライトなスタイルのため、本職俳優ではない彼らでもOKだったのかなと思います。ドラマとして悪くはありませんが、特段良くもありません。というより、やっぱテレ東で番組を作っていただきたいという感想です。バス旅も終わったことですし、太川さんと蛭子さんにお願いしたら如何でしょう。懸命に説得する太川さんの後ろで、興味なさそうに「死なせておけばいいよ」とのたまう蛭子。いやいや、想像しただけで面白そう。絶対イケるでしょ![DVD(邦画)] 6点(2018-03-10 17:27:29) 529. ブラックパンサー 《ネタバレ》 アメコミヒーローもののフォーマットは、どの作品も大体同じ(敵役とのバトルアクション&自らの強大な能力をどう活かすかのイデオロギー論)なので、あとはヒーローの見た目や性格、能力・世界観が趣向に合うかどうかの問題。そういう観点からすると、超好みだったなと。王位継承バトルは『キン肉マン』世代にはドンピシャですし、空は飛べない、飛び道具もない、基本地味で無敵感があまりない能力や、インスタ映えなどしなさそうなルックスは渋くてイイ感じ。そして何より脇を固める女ソルジャーの皆さんがカッコイイこと。このあたりは『ワンダーウーマン』にも共通しますが、鍛えられた肉体美から繰り出されるお姉さま方のアクションには惚れ惚れします。原作を承知していないのですが、妹の天才科学者が次々とお役立ちアイテムを発明するパターンのヤツですかね。本作のヒーローは地味なところが長所だと思いますので、続編製作にあたり、あまり強力な武器とか、えげつないスキルは身につけない方向でお願いしたいです。アベンジャーズ系はほぼ観ていないのですが、本作を契機に観てみようかしら。(以下、声優・百田夏菜子さんについて)吹替版を鑑賞しました。正直、不安は大いにありました。確かに『かいけつゾロリ』では合格点がつけられる(偉そうにスミマセン)お仕事ぶりでしたが、アニメの吹替と実写のそれは、似て非なるもの。生身の人間の場合、まず声に対して経験則が働きます(安田大サーカスのクロちゃんの声が笑えるのは、経験則が裏切られるから)。その点、シュリ役の女優さんと夏菜子さんの顔立ちが似ており一安心。声質で違和感はありません。あとは演技の部分。今まで数多くの人気俳優さん(演技派を含む)の残念な吹替を目の当たりにしてきたので、内心ハラハラしておりました。五感に訴えかけられる演技と、声だけの演技は別物。しかし、嬉しいことに杞憂に終わりました。夏菜子さんが本来持ち合わせている茶目っ気がキャラクターにピッタリ。素晴らしい出来映えでした。勿論、これは夏菜子さんに基本的な声優のスキルが備わっていたからこそ。歌、演技、ナレーション、ギター。最初は下手でも逃げずに挑戦することで身に付けてきた”表現力”が、ここで実を結んだものと考えます。餅は餅屋は正論ですが、大谷だってメジャーで二刀流を目指す時代。欲張ることは罪ではありません。何でもやる、何でもチャレンジできるのがアイドルの強みでしょう。[映画館(吹替)] 8点(2018-03-05 00:51:23)(良:1票) 530. 激流(1994) 《ネタバレ》 “逃走中の強盗に脅されながら、大自然の中を川下り”という、トリッキーな設定を有するサスペンスは、恐怖度1コワの甘口仕様で家族揃って楽しめる娯楽作品でした。ハイライトは、ガントレットと呼ばれる激流をゴムボートで乗り越えるシーンで、普通にアクティビティを楽しむ感覚。ノーCGの迫力ある画が楽しめますが、クライムサスペンスのハラハラドキドキとはまた別の種類のもで、ネイチャーアドベンチャー要素の比率の方が遥かに高いと考えます。それにしても、途中から別行動となったお父さんの動きが謎過ぎました。家族救出を試みるなら、(絶対に越えられないと散々アナウンスしていた)ガントレットの前じゃなきゃ駄目なんじゃないでしょうか。まあ、そのあたりも“お約束”と捉えて、ゆるく楽しむのが正しい観方なのでしょう。[CS・衛星(吹替)] 7点(2018-02-25 22:58:16) 531. 虐殺器官 《ネタバレ》 哲学的であり、観念的であり、演劇的な映画。社会派のテーマやハードな殺戮シーンを観るにつけ、確かにアダルト志向ではあるのでしょうが、イチイチ台詞で説明してしまう(せざるを得ない)中2病な世界観とロジックが気恥ずかしくもありました。誤解を恐れずに言うなら、実写で観たかったなと。例えば『エヴァンゲリオン』も同カテゴリーのアニメ作品と判断しますが、彼方は”ロボットSF“という”ザ・お子さま向け”看板を掲げているので、似たような仕様でも違和感が無いのかもしれません(そもそもがリアリティを必要としていないので)。真っ当な大人向けアニメを成立させるには、仕立てに相当なテクニックが必要であると感じる一作でした。へんてこな着地点ですみません。[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-02-20 18:56:02) 532. ソルト 《ネタバレ》 最早ハリウッドいち女スパイ役が似合う女優、アンジェリーナ・ジョリー。派手過ぎる顔立ちは、決してスパイ向きとは思えませんが。さて、ストーリーの方は二重スパイの嫌疑をかけられた主人公の逃亡劇をメインとしたサスペンス。そもそもハズレの少ないカテゴリーではありますが、ミスリードが上手く、それでいてヒントもフェアに出されており、脚本は上質だったと思います。展開にメリハリもありましたし。ただしヒロインの無敵感は、やや過ぎたかもしれません。これなら、エイリアンVSプレデターのノリでイーサンハントVSイヴリン・ソルトもアリじゃないかと思ったりします。[CS・衛星(吹替)] 7点(2018-02-15 00:23:53)(良:1票) 533. チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜 《ネタバレ》 豪華女優陣の感想から。まずは、天海祐希(早乙女先生)。本サクセスストーリー上の真の主人公は、紛れもなく先生です。彼女の教育者としての信念と熱意が、偉業達成の原動力であったのは間違いありません。そういう意味では『スクールウォーズ』や『金八先生』のように、指導者にスポットをあてた物語に仕立てることも出来たはずです。しかし、何故そうしなかったのでしょうか。私が考える理由は2つ。一つめは、天海の女優としての資質の問題。華はあっても、ナチュラルな演技は厳しいタイプ(失礼)。正直言って演技派とは思えません。彼女が最大限魅力を発揮するのは『女王の教室』のような極端なキャラ設定のとき。本作では、なまじ実話であったがゆえに、デフォルメした人物像は難しかったかもしれません。2つめの理由の方が決定的と考えますが、これは後述としましょう。次に、中条あやみ(彩乃)。彼女は影の主役と言っていいキーパーソン。主将として、チアダンス部を牽引してきた功労者です。最後に檜舞台でセンターを外されるという悲劇も用意されており、感情移入しやすいポジションでもありました。しかしながら、美人で真面目という淡白な人物設定からも分かるように、あくまで準主役に届かない“脇役”に甘んじている印象です。彼女の魅力を際立たせる手立てはいくらでもあったと思いますが、あえて”控えた”と推測します。こちらの理由も後述します。そして冨田望生(ぽっちゃりさん)。キャラクターバランスの観点からも、体型に特徴あるキャラが欲しいのは分かります。しかし、ステレオタイプな配役の感は否めません。誰でも夢は勝ち取れるというメッセージかもしれませんが、全米制覇という途方もない目標の前に、早乙女先生が課した個のスキルアップには、当然ボディスタイルも含まれていると考えるのが道理かと。あれだけ厳しい練習をして、痩せない方が逆に不自然でしょう。スケジュール的に難しい面もありましょうが、徐々にシェイプアップされていくキャラがいても面白かったかなと思います。さて、最後に広瀬すず(ひかり)。実は今まで彼女の出演作品を観てこなかったのですが、正直度肝を抜かれました。何と言う存在感。圧倒的主役感。持っている熱量が桁違いの女優さんでした。更に演技も上手い!「チアの気持ちが生まれながらに備わっている」というひかりへの抽象的な人物評に説得力が生まれるのも、広瀬ならでは。その一方、サッカー部の彼への片思いがリアリティを欠くという不具合が生じてしまうのも、同じ理由と言えましょう(広瀬をふる男などこの世に存在するはずがないのです!)。彼女の前では、元宝塚の大スターも、S級美少女も霞んでしまう化け物女優でありました(誉めているように聞こえませんね笑)。こうなると、無理に準主役級のキャラを仕立てるより、脇は脇に徹した方が全体のバランスは取れるでしょう。本来なら主役クラスの天海や中条の扱いが軽かった点も合点がいくというもの。広瀬すずの配役が決定した時点で、本作の方向性が定まったと考えます(すみません。完全な決め付けです笑)。青春サクセスストーリーとしては、全てのピースが揃っているところから始まるため、ややドラマチックさには欠けますが、その分子供たちのメンタルと技術向上の過程を丁寧に描いた印象です。とはいえ、イチ女優の魅力だけで本作は既に成立してしまっているのも事実。何とも不思議な映画との評価です(長文失礼しました!)。[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-02-10 00:56:08) 534. ジオストーム 《ネタバレ》 “シネコンで作品選びに迷ったらディザスターを選べ(決して携帯小説原作のラブストーリーや、間違っても堤幸彦監督を信用してはならぬ)”という家訓(又は偏見に満ちたでっち上げ)に習い、今回は本作を劇場鑑賞しました。『彼氏も凍る!』なんてチープなTVCMのキャッチコピーからして、大して期待していなかったのですが、これがなかなかどうして面白かったです。とはいえ、お目当てだった驚天動地の地球破壊スペクタクルシーンは意外や控え目で、本筋は”国家レベルの陰謀に果敢に立ち向かう正義の主人公+家族愛“というアメリカ人が大好きなトンデモサスペンス。ですから、目新しさやオリジナリティなんてものはございません。何度も観てきたお馴染みのヤツ。でもそれで十分でした。優秀なレシピに余計な工夫は要らないワケです。リアリティとか科学的考察なんてものは、とりあえず棚上げして、映画館の重低音と大スクリーンでハイスパート地球崩壊パニック祭りに参加するのがよろしいかと思います。個人的には“男の仕事と娘との約束”というポイントで比較するために『アルマゲドン』を予習しておくことをお勧めします。[映画館(字幕)] 8点(2018-02-05 00:25:16)(良:2票) 535. エベレスト 3D 《ネタバレ》 コレ『実話もの』だったのですね。どうりでストーリーにドラマチックさが足りないワケです。もっともあの流れで主人公が助かるはずもなく、結末には納得しています。“雪山で非情な決断ができない者は死ぬ”法則が破られたら一大事ですから。ただし、ジャーナリストが助かったのには驚きました。鼻と両手を失ったとしても、命が助かれば十分でしょう。それにしても権力とはスゴイものですね。無理が通れば道理が引っ込むヘリ救出。2次被害の危険性なんてお構いなし。まさに地獄の沙汰も金次第です。人間が生存してはいられない領域=デスゾーンとは、すなわち三途の川。三途の川ライン下りは、おそらく世界で一番贅沢な観光アクティビティでしょう。ヒトの冒険心(あるいは好奇心または虚栄心)という“業の深さ”には恐れ入ります。ストーリーは兎も角も、せっかくの世界最高峰の山。画的なダイナミックさ≒恐ろしさ≒荘厳さが、もう少し欲しかった気はします。[DVD(吹替)] 6点(2018-01-30 22:49:44)(良:1票) 536. 劇場版 マジンガーZ/INFINITY 《ネタバレ》 有安杏果さんのももクロ卒業を明日に控え、モノノフ(ファン)が今観る映画はやはりZだろうと本作を選択。と言うのは半分冗談ですが、何やら良さそうな噂を耳にしておりましたので劇場鑑賞に至りました。懐かしのスーパーロボットが今風のアプローチでどう生まれ変わったのか興味津々でしたが、まあ、何と言いますか、馬鹿映画というか、変態映画というか、滅茶苦茶でしたね。『シン・ゴジラ』チックなリアルシミュレーションエッセンスもありつつの、トンデモSF理論やら中2病的倫理観やらが混在するカオスな世界観。さらに劇画風お馴染みキャラと新顔の美少女萌えキャラの作画の差異も違和感アリアリで、食べ会わせがいいんだか悪いんだか。兎に角、リクエストのあったもの全部ぶち込みました感が凄いです。そうそう、火薬の量も半端なかったので、やはり馬鹿映画で間違いありません。良くも悪くも振り切れている作品なので文句はありませんが。[映画館(邦画)] 7点(2018-01-20 20:48:41) 537. 少女は異世界で戦った 《ネタバレ》 本作のセールスポイントは格闘アクション。ルチャ・リブレを彷彿とさせる空中戦+ソードアクションの融合はなかなかに見応えあり。スローモーション等のエフェクトに頼っていない点も好感が持てます。ただ、今一つ物足りないというのも事実。“動ける女優”を集めているので、想定の範囲内というか。みな同じ動きがツマラナイというか。もっと各女優の個性・特技を活かしたアクションを観たかった気はいたします。SF設定の方は彼女たちに戦う理由を与えるためだけのもの。それ以上でも以下でもなく、その部分でややマイナス査定か。折角パラレルワールドなんていう素敵な設定を持ち出してきたのですから、多角的なアプローチ・ストーリー展開に挑戦して欲しかったと思います。[DVD(邦画)] 5点(2018-01-15 23:07:58) 538. ドクター・ストレンジ 《ネタバレ》 小難しい理論は差し置いても、この映像美は大ご馳走。折りたたまれるビル群、歪む次元、私たちの知る法則の外の世界。映画館の大スクリーンで鑑賞したら、さぞや楽しめた事でしょう。それにしてもティルダ・スウィントン。『コンスタンティン』の大天使役のときも感心しましたが、年齢性別を超越した存在感は素晴らしいですね。折角魔法を題材とした物語ですから、よくわからない念の縄みたいな攻撃だけでなく、様々な種類・属性の魔法を見たかった気がしますが、続編に期待ということで。[CS・衛星(吹替)] 7点(2018-01-10 18:21:15) 539. ワンダーウーマン 《ネタバレ》 女優(キャラクター)の魅力だけで成立してしまう映画がたまにあります。『ローマの休日』のオードリー然り『キック・アス』のクロエ然り。本作もガル・ガドット嬢演じるダイアナちゃんがノーベル賞級のアダルトキューティ。主演女優のキャラクターだけで、ほぼ作品が成立しています。素晴らしい。しかし、残念ながら“ほぼ”なのです。大切なのは、ダイアナちゃんの魅力を最大限に引き出すこと。その点で本作は不完全燃焼であったと判断します。物語の仕立ては、『300』のような格闘アクション+『クロコダイルダンディー』的カルチャーギャップの面白さ。後者の比率が大き過ぎた事、またクライマックスの戦いの格闘要素が弱くカタルシス不足であった事が、不完全燃焼の要因かと。構成の問題。とはいえ、このキャラクターは映画界の宝でしょう。続編に期待します。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-01-05 19:29:21)(良:1票) 540. たまこちゃんとコックボー 《ネタバレ》 廣田あいか(ぁぃぁぃ)は、所属するアイドルグループ・私立恵比寿中学において、切り込み隊長兼エース的なポジションの人気メンバーです(私的見解)。普段の幼げなアニメ声からは想像がつかないパワフルな歌声、ポップなファッションセンスに鉄道オタクと(フックの数が多いこと!)、際立つキャラクターがセールスポイント。一般的には“不思議ちゃん”(実際はそんな事ありませんが)にカテゴライズされると思われます。本作は、そんな廣田のパブリックイメージを存分に活かした作品でありました(※映画化の背景は、くるきまきさんが丁寧に解説されております。参考になります!)。現実世界とアニメ世界を行き来するファンタジー系アイドル映画でありながら、テーマは意外とシリアス。社会問題である“引きこもり”を扱い、甘々な味付けの中にも苦味が感じられる仕立て。ポスタービジュアルで想像していたスイートな茶番劇とは違いました。これは嬉しい裏切り。“夢見がち”というより“現実逃避”な主人公が苦難(?)を乗り越え成長していく展開は、王道青春映画のプロットなれど、問題解決がほとんど運と他人任せなのはご愛嬌。いや、人はひとりでは生きられない、成長出来ないというメッセージと受け取りましょうか。結末は腑に落ちるもので、ひよ子が垣間見せた悲しげな(そして諦めと納得の)表情がなかなか魅力的でした。本質的には影ある役が廣田には合っている気がいたします。“ファン向け”の範疇を出ない作品には違いないものの、真摯なつくりで全体印象は悪くありません。(以下映画に関係ない余談)さて、主演を務めた廣田あいかは、平成30年1月3日の日本武道館公演をもってエビ中から転校(脱退)します。芸能活動は継続する模様。『いつかやれると思って今を抑えるのはもうやめよう』そう語った彼女が、どの方向を目指すのか承知しておりませんが、廣田の才能と芯の強さをもってすれば、心配は要らないでしょう(謎の親目線すみません)。旅立つ彼女への餞別に+1点、お年玉で+1点とさせてください。頑張れぁぃぁぃ!そしてエビ中在校生6人へも心からのエールを。突き進め!私立恵比寿中学ー(サドンデスの中山莉子風に)。[DVD(邦画)] 8点(2018-01-01 00:00:00)(良:1票)
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