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プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567
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41.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 愛の言葉で始まるファーストシーン、絵だけで殺人の様子を描き出す素晴らしい出だし。 ところがストーリーは3つに膨らんでいき、徐々に1つの事件へと結びつく・・・。 偶然が偶然を重ねる悲劇、ブラック・ユーモア的な感覚。 フランス映画は何から何までオシャレだ。フェチもエロも上品だから好き(イタリア映画も自由奔放なところが好きな俺である)。 特にこの映画は殺しの場面も上品。 血を見せないのが逆に残酷でさえある。 登場人物も何処か紳士的だから良いんだよね(フランス人なのに)。 パリっ子の粋な計らい(車をぶつけた相手を酒にさそってしまう、散らかしたゴミをちゃんと回収する、自殺の方法もシンプル)。 ある意味理想的で人間味のあるパリっ子がこの映画にはいるワケよ。 愛の言葉に始まり愛の言葉で終わる・・・本人じゃなく写真に向って言うシーンが印象的な映画だった。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:36:46)《改行有》

42.  黒い罠 《ネタバレ》 市民ケーン」なんぞより遥かに面白いしワクワクする。 爆弾が爆発までをワンショットに収めてしまった見事なシークエンス。 ウェルズのバロック様式は大袈裟であり、壮大であり、大胆であり、見事だ。 闇が拡がるようにぶくぶく膨れ上がるウェルズの巨体は、警察組織そのものの“闇”を表現しているのだろうか。 それに挑もうとするチャールトン・ヘストンの小ささ、頼もしさ、危うさ。 服を引き剥がされ、背中を向けて冷たくなった女の惨たらしさ。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:23:55)《改行有》

43.  ウンベルトD あの犬はズルい。黒澤明の「生きる」と何となく似ている作品だけど、俺はコッチの方が好きかな。ヴィットリオ・デ・シーカ最高傑作の一つ。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:08:02)

44.  復讐は俺に任せろ 「L.A.コンフィデンシャル」が赤子に思えるほどの傑作中の傑作。 グレン・フォードが魅せるギャングvs警察のフィルム・ノワール。 「ゴッドファーザー」や「L.A.コンフィデンシャル」に多大な影響を与えたのはホークス、黒澤明、そしてフリッツ・ラング。 前半の丁寧なドラマ展開から一定に保たれた緊張の糸。 その糸が弾け飛ぶ時、主人公の壮絶な復讐劇は最高潮のままクライマックスを迎える。 “自殺”の場面から始まるファースト・シーンの強烈な導入、 最初30分はグレン・フォード演じる刑事が地道な聞き込み調査。 平和な家庭での日常、その裏では凶悪な事件を追う刑事だ。だが、まだ罪人を“徹底的に”潰す狂気は無い。優しすぎる一面を持っている。 用心棒をブチのめす場面も何処か優しすぎる甘さを感じさせる。その甘さが後半の狂気をより引き立てるワケでもあるのだが。 ま、アレですよ。とにかくバーの雰囲気とか、色々素晴らしい。 主人公の家庭に響く無言電話、ジリジリと迫る恐怖、積み木が崩れ去る暗示とかとにかく良い。 突然の死が重なる時、車が吹き飛ばされる時、警察バッヂを捨てる時、直接的な描写はなくとも沸騰したコーヒーを浴びせかけるシーンの恐怖、一生消えない火傷を負っても死ぬに死ねない女、外見は無傷でも爆発の衝撃で・・・男は復讐の鬼と化す! ラスト1時間の緊張感に満ちた展開。 主人公が探る一味も顔を出してくる。 リー・マーヴィンの悪党ぶりも良いが、何と言ってもグロリア・グレアムの存在!! こんな魅力的でエロティックで“女”を見せ付けてくれるファム・ファタールは中々お目にかかれない。別にヌードになるワケじゃない、脱がなくともそのセリフ、しぐさで勃起するくらい最高の悪女だ。 特に終盤の彼女は最高だったぜ。 今回のラングは女に容赦なさすぎる。 案外、少女の連続殺人を描いた「M」よりえげつないかも。 モチロン、我等がグレンも最高潮だ。 バーで一味と主人公が邂逅し“ゾッ”とする瞬間。 尋問される男は気の毒だ。 コンド●ムなんか机の上に置いておくから(関係ねえだろ)・・・。 首を締め上げてでも吐かせてやる! 終盤の銃撃戦までの流れも凄かった。 文句なしの傑作です。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:07:19)(良:1票) 《改行有》

45.  大人は判ってくれない 《ネタバレ》 俺は「アメリカの夜」の方が好きだが、彼の最高傑作はやはりこの作品になるのだろう。 トリュフォーの自伝的内容のこの映画は、「野性の少年」で描かれた内面的な自伝要素とはかなり違う。生々しい、外に向かって放たれる痛々しさ。 彼の師であるアンドレ・バザンに捧げられた言葉と共に映画は始まる。教室でテストを受ける生徒たち。彼等は教師の目を盗んでポスターを回し、不運にも先生に見つかった生徒は人身御供として差し出される。 アントワーヌは日頃からチョークを投げつける教師に目を付けられ問題児扱いされ、家に帰っても母親に「成績が悪いのも当然ね」などと平然と言い放つ厳しさ、片身の狭さ。父親と同級生が心の支えになっていたが、そんな父も母親の顔色を伺い、母も共働きで不仲。アントワーヌも無理に家事を手伝わされ宿題も手につかないという有様。 寝る場所も裏口という寒い場所。アントワーヌはタバコやワインまで飲んでしまう不良小学生となっていく。教師が彼を目の敵にすればするほど、アントワーヌの心は益々荒んでいく。円筒形のアトラクションで遊ぶアントワーヌ。遠心力で動きがままならなく様子は、人々に振り回され閉所に押し込められていくアントワーヌのその後を暗示するよう。 アントワーヌが見てしまった母の情事。アントワーヌの怒りと失望に満ちた表情。アントワーヌは父を気遣いその事を中々言い出せない。彼にとっても信じがたい、嘘であってくれという現実。 勢いで飛び出す家、路上で人に見つからぬように牛乳を盗んで飲む、証拠隠滅まで図る。それでも一応心配して彼を抱きしめ母親、体を洗ってくれる愛情の欠片。 ヒビの入った家族をどうにか繋ぎ止める映画。疲れた父親すらハッスル(嫁の胸を乳揉み)させるエネルギー、母の言葉、本との出合い。せっかくやる気になってがむしゃらに頑張っても報われない虚しさ。だからといって丸写しで停学とはいくら何でも酷い。 一度付いた嘘は延々と足を引っ張る鎖になっていく。 売れなかったとはいえ盗み出したタイプライターを一人で戻しにいく健気さ。だが子供でも罪は罪、親友すら赤の他人という素振り、親にすら半ば見捨てられ彼の心は死んでいく。子も子なら親も親。夜の市街を見つめる眼差し。 脱走し走って走って走っても見えない出口。ようやく辿り付いた浜辺で、彼は何を思うのだろうか。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:25:09)《改行有》

46.  次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊 《ネタバレ》 本来はこの第八作で完結予定だった次郎長。 完結を予定していただけに、畳み掛けもシリーズ一番の迫力を感じさせる。 石松が主役といっても良い。 次郎長一家のやり取りも益々和気藹々として面白おかしく、「旅がらす次郎長一家」で仲間を失った痛みからようやく吹っ切れた感も出ている。 先に旅立った豚松も、生まれ変わって槍を振り回して(「七人の侍」に出演して)いる事だろう。 諸事情で途中退場してしまった仲間たちのエピソードもキチンと織り込み、ストーリーはより厚みを増してくる。 どうでもいいけど、加藤大介は出れないで何で志村喬が出て来れんだよ(笑) 志村さん「七人の侍」で一番重要なお人じゃないか。 戦前から「弥次喜多道中記」や「鴛鴦歌合戦」でマキノ一家と馴染みが深い人だし、シリーズで一番盛り上がっている時に出るのは自然な流れなのだろう。短時間とはいえ、大親分としての存在をしっかり印象付けて去っていった。流石だ。 中盤の政五郎と石松の戦いは必見だ。 半裸になりじゃれる様に刃を交える斬り合いは熱く、その途中で「俺にはお藤さんがいるから死ねんのよ~」とのろけてみせる政五郎のノロケにガクッと呆れる石松が面白い。が、何処かギクシャクする。 普通戦闘時の女の話は死亡フラグである。 ギム・ギンガナムで言えば「戦場でな、恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはな、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよ!」と思いながら石松も戦っていたに違いない(何じゃそりゃ)。 だが、政五郎には生きる理由が存在する。 石松はどうだ、戦って死ぬ事に活路を見出そうとしているのではないか。 政五郎に触発されたか石松、夕顔への想いを募らせる。 だがそこは石松。忠義は次郎長に、惚れた女には義理立てだけして去っていく。切ない。 この後に再び登場する志村喬の演技が素晴らしい。 そして再び刃を交える政五郎と石松。 「俺も惚れた女が出来たから死ねん」とノロケ返しだ。 夢のような幻想的な光景が展開される。 石松の直球を受ける気ゼロのお園は本当魅力的。 しかし、“戦馬鹿”じゃなくなった石松は・・・石松よ永遠に。 この作品でパワーを使い果たしたか、第九部はラストに相応しくない急ぎ足の作品となってしまったのが惜しい。[DVD(邦画)] 9点(2015-01-13 03:12:09)《改行有》

47.  キッスで殺せ! 《ネタバレ》 「Remember Me(私を忘れないで)」だって?忘れたくても忘れらんねえよって傑作。 ロバート・アルドリッチはフィルム・ノワールでも多くの傑作があるが、コレは「何がジェーンに起ったか?」と並んで最高傑作の一つ。 ファースト・シーン、初っ端から路上を走る女。 ワケ有り女を拾って車が走り出すと同時にクレジットがズラズラ画面を上っていく。強烈なオープニングだ。 女の荒い吐息は、まるで性向でよがるような荒さすらある。 ミッキー・スピレインの原作「燃える接吻を」のセックスと暴力を盛り込んだハードボイルドの世界観を、アルドリッチ流の“えげつなさ”で描かれる。 SF的な要素を持ったフィル・ノワールは「アルファビル」や「ブレードランナー」等も該当するだろうか。 とにかくこの映画はよく壊す、よく歌う(クラシック)、よく叫ぶ、よく殴る(後ビンタ)、よく死ぬ。取り合えず酔ったまま運転すんなよ。 ヒッチコックの「汚名」も酔いどれイングリッド・バーグマンがぶっ飛ばしてたな。 「三つ数えろ」張りに女性がウジャウジャ出てくる。ドイツもコイツも謎を秘めて。 女性じゃないけど“va-va-voom(ババブーン)”ことニックのオッチャンも癒し。 そんな女たちを主人公のマイク・ハマーは、常に冷めた眼で見届けていく。 ハマーは「Remember Me」というメッセージだけを頼りに黙々と仕事に取り掛かる。だが、たらしだ。 探偵の武器は銃弾の代わりに鉄拳が飛ぶ。 ポップコーンと鉄拳を3発打ち込む、階段での“追い討ち”は本当えげつない。 地道な調査の影でうごめく暗殺者たち。 次々に“人生から”ノックアウトされていく敵や知人、そしてハマーが追う“ヤバ過ぎる”探し物。 ボクシング場に立ち寄るシーンすら、この映画の鉄拳の飛びようを象徴する。 浜辺でのシーンは「アハハ待てよコイツ~(バキドカ)」という風にしか見えねえ。あーあ手錠にしないから・・・片手で何したんだよハマー。 ベッドでのやり取りは最高だったぜ。だから悲鳴(爆) ところであの“黙秘”のシーンも笑っちまったよ。 終盤の演出は完全にホラー映画というか、SFというかとにかく怖い。そんな場面すら冷めた眼差しで見届けられるハマーは何なんだよ。 ともあれ、衝撃的なクライマックスが拝める映画だった。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:11:22)《改行有》

48.  めまい(1958) 《ネタバレ》 ヒッチコック作品の中でも「サイコ」とこの「めまい」は毛色が違う作品のようだ。 螺旋を象ったオープニング、印象的な“眼”、ジェームズ・ステュアートが“めまい”の恐怖に捉われる経緯を語る一瞬の銃撃・死・恐怖で構成されたファースト・シーンから一気に引き込まれる。 とにかくこの映画、ひたすら“落ちる”。 冒頭からステュワートが落ちそうになるし、ノヴァクは水に飛び込むわ夢の中まで落ちて落ちて落ちまくる。 かつての婚約者であるミッジの家でのやり取りもそそる。 ステュワートがイスを登るだけでもスリルが発生する凄さ。窓の外を見た瞬間の、あの血の気が引く感じ。 ヴェラ・マイルズの「めまい」も見たかったけど、やはり本作のキム・ノヴァクの存在感は圧倒的。 彼女を車でジリジリと追跡する瞬間の異様な緊張感。 下手に車を猛スピードで走らせるよりも、こういう慎重かつ徐々に敵を追い詰めるようなスリルの方が何倍も怖い。「恐怖の報酬」しかり、「探偵学入門」しかりしかり。 突然ノヴァクが消える瞬間も息を呑む。 この間一斉セリフが無いのも凄い。映像だけで一切退屈させずに観客を引き込むのだ。 「セリフの入らない映画こそ本物」なのだろう。 ステュワートが出会う彼女は得たいが知れない上に「カルロッタ」の記憶とやらを引き継いでいるらしい。彼女の混乱は観客も混乱させる。ノヴァクの夫も何か臭う。 デヴィッド・O・セルズニックと組んだ「レベッカ」も亡き人間の亡霊が人を操るような演出だったが、このヒッチコック“による”「めまい」は生存する人間が亡き人間の亡霊を操る。 ヒッチコック本人は死んだ人間の真似をする事を「屍姦」と言ったらしい。 生前の人間とそっくりの格好、そっくりの仕草をしてその女性の名誉を辱めようとする行為だからだろうか。 まあ、「カルロッタ」との長々しい接吻、何度もブッ“殺す”結果は死姦に等しい行為なのかもな。 セコイアの木は「ラ・ジュテ」や「12モンキーズ」でも引用される。 この作品はまるでタイムスリップするような感覚を登場人物が語るが、後年の上記2作は本当にタイムスリップしちゃうんだから凄い。 終盤のどんでん返し、明かされる真実、ステュワートまで狂気に染まる怖さとアニメーション、蘇る「カルロッタ」、衝撃的な“オチ”…賛否はあるだろうが、とても好きな映画。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:32:09)(良:1票) 《改行有》

49.  イヴの総て 《ネタバレ》 実在した女優エリザベート・ベルクナーをモデルにリアルなブロード・ウェイの舞台裏、女優たちの熾烈な女の戦いを淡々と描く。 「アクションや時代劇好きには退屈」という評判を聞いていたのだが、そんな事はない、上々の作品だった。 確かに冒頭こそ説明ばかりで退屈になるかと思ったが、イヴの巧妙な手口にドキリとして一気に引き込まれてしまう。 イヴの過去、心を許していく映画関係者、着々と親密になるイヴ・・・だがそれは総てイヴの「仮面」だった。 徐々に本心を表していくイヴ、イヴの様子に疑念と嫉妬を燃やすマーゴ、板挟みになる作家の妻カレン、イヴに思うまま操られるロイドやマックスといった作家たち、新聞記者を通して行われるメディアリテラシー・・・彼女たちは劇中で映画の登場人物だとか、スクリーンや劇場で何かを演じる姿を見せない。 何故なら既に「イヴ」という手の中でそれぞれの役を演じているからだ。 セリフが多いのも「イヴの総て」が舞台劇だという証であり、その中で嘘の電話をして不気味な笑みを浮かべるイヴの姿、イヴの部屋に突然横たわる「来訪者」を我々にだけ見せる映画的な演出がギラギラ光り面白い。 とにかくベティ・デイヴィスとアン・バクスターの騙し合いのようなやり取りが面白くて飽きない。 それに利用される者筈の者が実は利用者だった事が判明する新聞記者ドゥイットの存在。 コイツが一番の食わせ物だった。 一番の弱みを握っていたのはこの男であり、イヴをさらに巨大な掌で転がす事に成功したのはドゥイットなのだ。 何だジョージ・サンダースよ、ヒッチコック映画の時より有能じゃないか(多分褒めてる)。 それとマリリン・モンローが普通に別嬪でワロタ(当たり前だけど)。 個人的にモンローは主役をやっている時よりも脇で原石としてキラキラ光っている時のほうが可愛いと思っていたりするのです。 ラストの「新しいイヴ」が誕生する瞬間・・・怖い映画だ。 ちなみに本作のリメイク「ショーガール」は色んな意味で凄まじい事になっています(ゴールデンラズベリー賞6部門制覇)。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:11:07)《改行有》

50.  ナサリン 《ネタバレ》 ブニュエルの映画は不条理な作品が多いが、この作品はある意味「忘れられた人々」よりも虚しさに襲われる映画だ。 神父以外みんな疲れた顔をしている。貧しさに疲れ果て、心も卑しさに満ちていた。 首吊り自殺に失敗する女性もいれば、女同士の取っ組み合いも日常茶飯事。 そんな汚濁のようなこの街に、馬鹿正直で理想を失わない男がまだいた。 ナサリン神父は、殺人を犯してしまった娼婦を救おうと懸命に努力をしたが、結局家に火を付けられてしまう。 挙句には娼婦との肉体関係を疑われ、神父としての資格まで奪われてしまうのだ。 いくら神父が熱弁を振るおうとも、娼婦にはキリストの絵がこちらを嘲笑しているようにしか見えなかったのである。 過去の男の思い出で狂ったように笑う女。 ナサリンは、いつか解ってくれる人がいる、救える人がいる筈だと巡礼の旅に出た。 だが労働場でも後ろから石を投げられる始末。 「やったらやり返す」・・・ナサリンは手を出さなかったが、他の不満を持つ男達が怒りを爆発させる。 銃を抜いて殴ったら、その後ろから男からシャベルで一撃。鳴り響く銃声・・・。 蹴り→棒切れ→蹴り。 警官たちも喧嘩っ早い。そのクセ、人が倒れていても放っておくのだ。 ナサリンの旅は続く。途中で出会った、男に裏切られた母親とその娘。 彼女の甥の病気を直したことでようやく明るい兆しが見え始める。 ナサリンは親娘に慕われる。 3人は疫病の蔓延する村で献身的な努力をするが、無駄に終わってしまう。 子のために狂ったように祈る女が忘れられない。 だが、ナサリンたちは確実に何かが変わり始めていた。 これから希望に向って進もう・・という時にナサリンたちを再び不幸が襲う。 母親はともかく、娘が一番不幸ではないだろうか。 母親の前から何の挨拶もできず連れ去られる娘・・・男のやらしい手つきが、娘が男から離れた理由を語るようだ。 徐々に女らしく、自分を取り戻してキレイになってきた彼女が、偶然にも昔の男に“惚れ直されて”しまう悲劇。愛していない男にだ。しかも、心は別の男に移っていた時に・・・。 冒頭の笑うキリストは、将軍の肖像に変わりナサリンを睨む。 娘とナサリンがすれ違うラストシーンが強烈。 ラストで鳴り響くドラムロールは、ナサリンの力強い前身を物語るのか。それとも、より過酷な試練を予告しているのか・・・それは解らない。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-07 14:22:33)《改行有》

51.  山椒大夫 《ネタバレ》 「雨月物語」よりも遥かに進化した溝口最高傑作の一つ。 本作は平安末期。 平安時代にキッチリした活字が合わないのは別として、生活を追われたある貴族一家の波乱に満ちた人生を描く。 主人公たちは今まで貴族という安全に浸かった生活を送ってきた。当然世の中に投げ出されれば、一人では生きていけないほど世間知らずでもある。そんな人々が狼や野盗、“偽り”の情けに騙されても文句が言えない過酷な世の中に放り出される。 主人公の兄妹。人買いの大主の山椒大夫(どんな美人の“太夫”かと思ったらオッサンの方の“大夫”かよ、チッ)にこき使われ、今までした事もない野良仕事に明け暮れ倒れそうになる日々。 そこに声をかけた男。 「辛かろうに負けるんじゃないぞ」 声をかけるくらいなら二人が成人するまで見守ってくれても良かろうに。ひやかしもいいところだ。為にならない情けは世の中いくらでもある。いや、俺がひねくれているだけなんだろうな。世の中、声すらかけてくれない奴が多すぎるもの。 妹はそんな男の言葉を支えに懸命に生きるが、兄は山椒大夫のやり方に染まり、山椒大夫がやった行いを同じ様に平気で行えるほど心が荒んでしまった。 国が乱れ、人買いや姥捨てが平気で跋扈する荒んだ世の中は、人の心も荒らす。 年月が経った兄の顔を見てみろよ。その面を、菩薩のような妹が少しずつ浄化していく。 妹は本当に健気で強い女だ。最後まで母親や父親の事を諦めなかったし、グレた兄の事も見捨てなかった。 それがあんな・・・溝口貴様あああっ(それと「山椒大夫」の原作者)! 兄は妹のためにも、何より家族のために一人で生き抜こうと抗う。荒んだ世の中が同時に彼の心も強くした。 そして父親は息子から離れても違う形で息子を助けてくれた。 兄は学を身に付け、官職になっていく。そして山椒大夫への逆襲。政治の攻防。 悪人は一掃されるが、主人公の運命には絶えず残酷な答えが待つ。 解放されて自由に歓喜する人々、ただ一人満たされない兄。それでも一縷の光が見える限り生き続けた。 終盤のあの池の畔に立ち尽くす、悲しみに満ちた場面。 それに全てが流されてしまった浜辺の村。あの黙々と海藻を整理する男が、それを物語っているのだ。 息子はまだいいさ。これからがある。だがもう一人は、“あの人”は最後の最後で救われたのだろうか[DVD(邦画)] 9点(2015-01-05 18:12:55)《改行有》

52.  最前線 マンの最高傑作の1つになるであろうリアルな戦争映画。 如何にアンソニー・マンが凄い監督かと言うことは本作と「グレン・ミラー物語」「雷鳴の湾」「流血の谷」を始めとする西部劇群を見れば一目瞭然だろう。 戦場における緊迫が常に空気を支配する。ジェームズ・ステュアートの「伏せる」動きも相変わらず絶好調。 伏せて伏せて伏せまくって勝機を見出すマン西部劇のリズムが、ここでも光る。 後にサミュエル・フラーが「最前線物語」という本作に匹敵あるいわ凌駕するほどの傑作を撮っているが、やはり俺は主人公をこれでもか、これでもかと追い詰めるマンの突き詰めたドラマに軍配を挙げたい。 マンの作品は常にアメリカ社会の“歪み”を登場人物の行動によって描こうとしているようだ。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-04 07:46:52)《改行有》

53.  抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より 《ネタバレ》 ブレッソンによる収容所・脱獄映画の傑作。 ドイツ軍占領下のパリで、刑務所から脱出を図る主人公の様子を淡々と追っていく。 主人公が堅牢な監獄の中で脱出の準備を進めていく異様なまでの緊張感。 短いショットの連続で退屈させて貰えない。脱出に成功するんだろうけど、本当に無事に出られるのか?と否応なしにハラハラしてしまう。 危機の連続でこちらも息を呑む。それでも意思が揺るがない主人公の強靭さが頼もしい。 紐がロープになるまで、スプーンが鋭利なナイフになるまで神を心の支えにして耐えて耐えて耐え抜く人間の凄さを見せ付けられるような作品です。[DVD(字幕)] 9点(2015-01-02 23:35:45)(良:1票) 《改行有》

54.  戦争・はだかの兵隊 《ネタバレ》 まずは、記事の作成に御協力して下さった鱗歌さんに感謝、感謝ですっ! マリオ・モニチェリによる傑作戦争コメディ。 ニーノ・ロータの穏やかで何処か哀しさもある音楽が印象的。 舞台は第一次大戦。徴兵検査から訓練、一時の平和から一気に戦争へと突っ込んでいく内容。 徴兵をちょろまかそうとするが騙されて結局軍人となってしまう前科者のジョバンニ、 ジョバンニを騙して金をくすねたが紆余曲折を経て相棒となる衛生兵のオレステのデコボココンビ。 物語はどんどんシリアスになっていくが、ところどころに転がるギャグでクスクス笑ってしまう。 くすねた煙草をくすねた相手に勧めたり、列車の上での追いかけっこ、手榴弾のインク、ドアでのやり取り、特にジョバンニとコンスタンチーナの“再会”シーンは爆笑。 そもそもイタリア人がノリノリでナンパしているだけでも笑ってしまう。ドサクサにまぎれて人妻の胸を揉むなよ・・・w ニワトリの件も和んだ。 だが、戦争となるとシリアスだ。 爆弾に火を付ける作業は怖かったし、鉄条網を伏せて不意を付いたり、食事中の敵兵を撃たなきゃならない辛さ、ボロボロの兵士たちを見て歓迎パレードが葬式の通夜のように静まり返る場面、遠くで閃光が飛び交い味方が焼かれているというようなシーンは凄かった。D.W.グリフィスの「國民の創生」を思い出した。 戦いは冬から春へと移っていく。 街での“別れ”のシーンは切ない。 雨の中での砲撃は火薬が湿気らないだろうか? ラストは哀しい結末だが、軍人として、そして仲間のために秘密を守って散っていく姿はカッコ良くて胸に迫った。[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-01-02 21:41:03)《改行有》

55.  遠い国 《ネタバレ》 ガンファイトよりもドラマが一番の見所と言える作品。 ゴールドラッシュに沸く山間という舞台は後の「ペイルライダー」を連想させる。 ワイオミングからアラスカへと牛を運ぶ男二人。 西部で育てた牛を寒冷地で力強く育てようというフロンティア魂を強く感じる。 一人でもやってやるぞと孤独な危ういステュアート、それを支えるお喋りだが老獪なブレナン爺さん。 船員を銃で打ち下ろして逃亡、上陸後に牛に乗って脱出するステュアートが面白い。 街に付いた二人は街を治めるギャノン一味と関わり合ってしまう。 酒場の女主人と主人公を慕う女性二人の対照的なキャラも魅力的。 雪に覆われた雄大な自然、 追っ手との銃撃戦、 雪崩で別れる運命(雪崩にして随分デカイ塊があったような・・・)、 珍しく重傷を負うステュアート(奇襲とはいえ主人公補正のステュアートはともかく、ブレナン爺さんに傷を負わせるとは相当の手練。「荒野の決闘」のワード・ボンド並みの実力者か。) そしてラストの馬と鈴を利用した奇襲と決着。 ブレナン爺さんのため、街の人々のため、自分のために引き金を引く覚悟を決めたステュアートが力強い。 見事な決着だが、あのタイミングであの人が死ぬのはいささか腑に落ちない。 ブレナンは一足先に旅立つか、残していった“鈴”は最後までステュアートを助けてくれた。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-21 22:13:37)《改行有》

56.  OK牧場の決斗 《ネタバレ》 スタージェスの西部劇は「日本人の勲章」がベストだが、この作品も俺にとっては充分傑作。 ジョン・フォードが「荒野の決闘」を産んで数十年。 ジョン・スタージェスは史実に基づいて「OK牧場の闘い」を描ききった。 フォードの「荒野の決闘」は人間ドラマが醍醐味であり、全体のテンポやガンファイトは今見るとそれほどピンと来るものではない。 何処までも「静」。 史実と大きく違う描写も多く、ドラマとして強調するための脚色が目立った(アープが髭でドクが髭無しってどういう事なの)。 途中「静」から「動」に移ろうとする場面もあったが、やはりフォードらしい西部開拓民への詩情を唄った物語を貫いた。 本作は「動」にこだわった粋な作りが魅力。 冒頭から「OK牧場の闘い」を唄ったネタバレすぎるリズミカルなオープニングが流れるが、ワイアット・アープを知っている者ならば既知の「常識」であり、ネタバレには成らないだろう(その人限定だけど)。 人間ドラマも途中から掘り下げが進み見応えがある(アープ兄弟の影の薄さは「荒野の決闘」の方がまだ掘り下げがあった)。 ワイアット・アープ演じるバート・ランカスターの職人気質、ドク・ホリデイ演じるカーク・ダグラスの男気がよく描かれており、二人の演技も素晴らしい。 恋人と静かに余生を過ごしたい・・・だが仲間や兄弟の危機を見捨てられない。 保安官としての義務、兄弟としての愛情・・・その葛藤。 ドクも酒に酔っても心までは酔わない。世話になった男の為なら命も賭けられる。 そして何といってもガンファイト。 ジョン・スタージェスは人間ドラマで盛り上げガンファイトで爆発させるのが巧い。 「荒野の七人」「墓石と決闘」「大脱走」は言うまでも無い。 ナイフ、銃撃、決闘! 動いて動きまくる撃ち合い! 全てが終わり、静かに別れを交わす二人の姿が印象的。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 19:04:35)《改行有》

57.  無法松の一生(1958) 《ネタバレ》 前作「阪東妻三郎」の無法松から15年。 バンツマ以上のエネルギーと荒々しさを持ち合わせた三船敏郎が松五郎を演じきった。 いつも一本調子などなり声で叫ぶ(そこが良いのだが)三船が、今回は方言も見事にまったく違う三船を見せてくれた。 悪党から正義感、屈強な無頼漢から優男まで動きで魅せてきた三船敏郎の真骨頂とも言える作品の一つ。 表向きは博打に興じる暴れ者、本当は女子供に優しい繊細な男。その二面性が見事。 そして極めつけの祇園太鼓! 太鼓も上手な三船の腕が唸る唸る! あばれ太鼓のように太鼓を打ち鳴らす様は迫力満点。 園井恵子と違った切り口で良子を演じきった高峰秀子、涼子の夫の小太郎に扮する芥川比呂志、撃剣師範役の宮口精二の演技も良い。 前作が不本意なカットで泣かされた稲垣浩にとって、今作は前作以上のパワーと映像(+カラーとシネマスコープ)で完成させられただろう。 これほど血が騒ぐ日本映画は滅多に無い。[DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 19:00:37)《改行有》

58.  突撃(1957) 《ネタバレ》 第一次大戦の戦場を描いたキューブリックの傑作。 前半は戦場での死闘、後半は組織の腐敗や戦争そのものの不条理を描いていく。 冒頭は二人の将校の会話からはじまる。 そこから塹壕で戦う兵士を視察しに出掛ける。 「やあ、ドイツ兵を殺す覚悟はできているか兵士諸君?」 「椅子に座った奴などに戦いを理解できんよ。 “机上”で戦う奴にもだ」 言っている事はご立派、だが実際は現場の事情を知らずに味方を発砲しようとするようなクソ司令官だ。 突撃前の偵察任務。ピストル一つで敵が潜むかも知れない陣地に近づく緊張感みなぎる場面。照明弾の不気味さ、上官はビビッてトンズラ、味方に殺されるこの不条理よ! さっきまで本音で口論していた二人、上官がきたら建前を通さなきゃならない。 突撃作戦時の戦慄。敵のアリ塚をブン奪るために今日も名も無き兵士が死んでいく。 カーク・ダグラス率いる部隊が突っ込んでいく姿は胸が躍る場面でもあるが、同時に事態は急変する。 それにしたってロジェのクソ野郎めっ! こういう奴ほど長生きしやがる。 裁くべき人間を間違えた軍法会議、くじびきで選ばれた“殺される”人間・・・余りに不当だ。 だいたい、どうして敵の陣地を奪ってもいないのに自分の兵士をむざむざ殺さねばならんのだ。 連帯責任の前に、本当の原因を何故追究しようとしないのだろうか。そんな世の中総ての理不尽さを見せ付けられているようだ。 組織が個人を殺す事の残酷さ。爆弾一つで何百人も殺すのと、違うとは言わせない。 死にゆく男たちは最後まで抵抗し、ハラを決めて散っていく。 やり場のない怒り・・・司令官の座を降ろされるくらいで済むと思うなよ。 だが、責任を擦り付け合う奴だけが軍隊じゃない。ルソー大尉みたいな“漢”たちも生き残り、また死んでいくのだ。 酒場で歌う女の歌が、彼らのせめてもの慰めなのだろう。 そして生き残った男たちはまた戦場へと進んでいく・・・。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 17:47:32)《改行有》

59.  第十七捕虜収容所 《ネタバレ》 後年の「大脱走」「勝利への脱出」と共に収容所を描いた戦争映画の傑作。 コメディタッチの軽快なやりとり、謎が謎を呼ぶサスペンス感覚の戦慄。この緊張の糸がビリー・ワイルダーの醍醐味。 オープニングのナレーションが「捕虜収容所を描いた戦争映画が無いから作りました」と来たもんだ。メタすぎる。 いきなり脱走から始まるファーストシーン、だが既に「密告者」が暗躍していた。 一体「密告者」は誰なのか。 一番怪しい男、まったく怪しくない男、様々な疑念が広がる・・・それをワイルダーのコメディ演出が忘れさせてしまう。 アニマルの暴れ振りが可愛くてしょうがない。 と思ったら「密告者」の暗号でドキリとさせられる。油断できないぜ。 収容所内の楽しいやり取り、その隣の鉄条網から先の世界は死が待っている・・・「殺される戦場」よりも「何もしなければ殺されない収容所」の方が気楽かも知れない。 死にたくなったらいつでも鉄条網を潜ればいい。サーチライトが道標だ。 ウィリアム・ホールデンの孤独な戦い振りがカッコイイ。 “商売人”は嫌われて上等。殴られて上等、だが「嘘」だけは付かない・・・てめえ(密告者)の尻尾を掴むまで徹底的に嫌われてやらあ・・・! 「尻尾を掴んだ」後も報復はせずに「気にするな」の一言。こういう男になりたいぜ。 オマケに最後の最後まで“商売人”だったね。 「人の助けになる物」は売っても「魂」は売らない。 せしめた煙草も一口の卵のために変える男だ。 任務でも仕事でもない、仲間のために命を張るのが奴の商売(ビジネス)・・・![DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:00:23)《改行有》

60.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 角川の「デジタル完全版」が素晴らしかったのもありこの点数。画質と音の聞き取りやすさが素晴らしい。黒澤の映画はクライテリオンとかこういう類に限るね。 さて、この映画は芥川の原作小説を読んでいないと恐らくチンプンカンプンで作品の醍醐味を楽しみにくいかもしれない。 検非違使の役人は画面には出てこない。何故なら聞き手は検非違使ではなく、視聴者その者だからだ。多種多様に別れる証言。どれが真実なのか?はたまた全部嘘なのか。 己の蛮勇を誇る多襄丸の証言、辱められた悲しみを訴える女(真砂)の証言、妻の本性を知り、何もかも失った悲しみを訴える女の夫(金沢武弘)の証言。それぞれの「真実」と「虚実」。みんな言うこと成すことが食い違っている。 唯一共通する事・・・それは多襄丸がけし掛けた事、女が犯された事、女の夫が殺害された事。それぞれの怒りと悲しみ。ただ、それぞれの証言が全て「自分が殺した」で結ばれる。しかも自分を庇う証言ばかりだ。 そこに挿入される4つ目の「証言」。それぞれの証言に近いようであり、やはり全く違う。杣売りの言う通り「さっぱり解んねえ」。もうわけ解んねえ。 それに、それぞれの証言も何処か違和感が拭えない。 世の中嘘だらけだ。 映画も嘘にまみれている。 ラストシーンだって、何処か嘘くさくもあるし、偽善的なのかもしれない。 ただ、全部が全部嘘で出来ているというのも疑問だ。 一つくらい真実があるからこそ、世の中何とか動いているのではなかろうか。 だからこそ、最後の行動くらいは信じてやりたい。 一つくらい泥の中に咲く「蓮の花」が一輪あっても良いと俺は思いたい。 独特の殺陣も面白い。 素早く剣を抜き激しく太刀を打ち合う殺陣。「七人の侍」のようにリアルでも、「用心棒」のようなぶっ飛び具合もまだ成りを潜めた形だ。 太刀同士を鍔迫り合わすのは古典的な剣戟であろう。 往年の剣戟映画「雄呂血」などの「リアルっぽい」殺陣。 ここで本当にリアルなのは、互いに剣で間合いを図り、右手には太刀、左手には盾兼牽制用の鞘。まるで西洋のレイピアで突き合うかのような攻防。そして生きるために必死に逃げ惑い、砂や土を投げて這いずる場面。「酔いどれ天使」を彷彿とさせる演出。多少荒削りで長いシーンだが、見応えはある。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-14 20:38:51)《改行有》

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