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661. 人狼ゲーム プリズン・ブレイク 《ネタバレ》 監視カメラの死角問題より、ヤスリ放置のずさんさより、運営が音声情報を収集していなかったことに驚きました。では観客は無音でゲームを楽しんでいたの?そんなバカな。詭弁、虚言、甘言、罵り合いの様子を聞けなかったら醍醐味半減です。観客に会話情報を提供する為にも、プレイヤーを管理する上でも、盗聴は必須と考えます。つまり、運営は何もかも承知で主人公らのルール違反を見逃していたのではないかと。あれだけの人数の高校生を拉致してくるのは大変なリスクと労力。ゲームの興を削ぐ不要な脱落者など、基本出したくないのが運営の本音でしょう。観客の目の前での明確な不正ならいざ知らず、バックヤードでの多少の違反なら、見て見ぬふりでもオカシクありません。それに幾度となく繰り返されてきたゲーム。運営のノウハウも蓄積させているはず。首輪を切断しての逃亡も初めてではなかった気がします。運営は絶対の自信を持って、2人を泳がせていると推測しました。ですから、結末はモニターに移された文字が示す通り。彼女らに明日はありません……。とはいえ、主人公の選択(挑戦)は称賛されるべきもの。自分の頭で考え、決断し、実行したのですから(惜しむらくは、死んだふりからの夜間脱出計画を試せなかったこと。)少なくとも、運営の思い通りに動かされるのは我慢なりません。それに誰かに従って後悔した、過去の過ちを繰り返してはいけません。成長こそ生きた証。結末がどうあれ、彼女は立派だったと思います。 四作目にして初の役割完全ブラインドは、エンドクレジットで答え合わせをする仕立て。これが非常にスリリングで、ミステリーとして楽しむことが出来ました。続編があるなら、この方式を是非踏襲してください。それにしても、監督が途中交代したシリーズ映画で、このクオリティ維持は驚異的。素直に凄いと思います。シリーズ4作品まとめて、オススメいたします。[DVD(邦画)] 7点(2016-11-15 18:57:09)(良:1票) 662. 10 クローバーフィールド・レーン 《ネタバレ》 主人公には、2つのターニングポイントが用意されていました。ひとつ目は、「世界は滅びたと喚くオッサンに拉致軟禁されました。どうしましょう?」これについては、迷う余地無し。逃げる一手(一応事実確認も)。勿論、オッサンはイカれているという前提です。早速鍵を奪い、オッサンの頭部をビンでガツン!行動力あり。思い切り良し。ところが、予想に反してオッサンの戯言は真実であることが判明します。それも拍子抜けするくらいアッサリと。物語的には、この部分(オッサンの言い分は正しいの?嘘なの?)で、もう少し引っ張っても良かった気がしますが、メインは二つ目の分岐点ということなのでしよう。「オッサンはマジキチ誘拐殺人犯であることが分かりました。さて、この生活を続けますか?」コチラの方は、結構悩みどころです。さしあたり、実害はありません。モラハラ気質は窺えるものの、基本的に関係は良好。外界の惨状を鑑みれば、この文化的な生活を手放すのは勇気が要ります。しかし、ここでも彼女の"思い切りの良さ"と"行動力"がモノをいいました。防護服をハンドメイドして外の世界へ。結果論から言えば、まあ微妙なところ。幸いにも希望ゼロではないものの、修羅場突入決定。曲がりなりにも、衣食住足りていた今までの生活とは雲泥の差です。とりあえず、人類がエイリアンを駆逐するまで、現状を維持する方が利口だったかもしれません。私なら、そちらを選んだでしょう。でも多分これは小賢しい愚かな考え方。面倒ごとが片付いた頃にはオッサンに洗脳済、あるいは社会復帰絶望状態。人生を腐らせてからでは遅いのです。能動的に生きてこそ価値あり。人様の役に立ってナンボ。『逃○中』でミッション全スルーの挙句の自首で大金を得ても、虚しいだけじゃないの?そんな某ドランクドラゴン鈴木拓批判が、本作の隠された裏メッセージでありました。なお、DVDパッケージは史上最低レベルのネタバレをしていますので、見ないように注意してくださいね。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2016-11-10 20:00:03)(良:1票) 663. リザレクション 伊集院光氏のラジオで本作が絶賛(?)されて以来、気になる作品でした。ですからある程度の覚悟は出来ていました。ある意味“パクリポイント”の確認作業が中心。中盤くらいまでは問題ないでしょう。仮想空間という設定ゆえ、雰囲気が似通ってしまうのは仕方がありません。ストーリーはオリジナルですし、独自の色は感じられました。しかし後半、怒涛の攻勢に呆気にとられます。あえてひとつひとつは指摘しませんが、某作の有名シーン、アイデアはことごとく引用されていました。ここまで徹底していると逆に清々しいくらい。結末が難解なところまで瓜二つです。例えるなら、うまい棒に描かれている彼、あるいは中国の遊園地に生息するねずみ君くらい“アレ”な感じ丸出しでした。ただし、アジア的というか、情緒に訴えかける方向性はキライじゃありません。それに“マッチ売りの少女”こと本当は“ライター売りの少女”イム・ウンギュンちゃんの可愛さには顔が緩みっぱなしなのでした。[DVD(字幕)] 4点(2016-11-08 22:22:50) 664. 青鬼 ver.2.0 《ネタバレ》 感覚的には2.0と言うより1.1。前作から何ら代わり映えしない安価な画作りと脚本です。とはいえ、ホラーシリーズとはすべからくそんなもの。『13日の金曜日』然り『リング』『呪怨』然り。マンネリが当たり前。そういう意味では、フォーマットの有用性がシリーズ化の生命線と考えます。状況設定はまずまず。ゲーム世界が舞台なら、如何様にもバリエーションを増やせます。例えばシューティングやシミュレーション風ホラーだってOKでしょう。問題はメインキャラ『青鬼』が魅力に欠けること。ここに前述の人気ホラーシリーズ作品との違いがあります。『13日の金曜日』はホッケーマスクが値千金。ホラー映画業界のビジュアルクイーンまたはグッドデザイン賞もの。貞子や伽椰子も、もはやネタ要員として愛されるほど、キャラが際立っているのが強みです。青鬼クンでは、残念ながら力不足かと。新キャラのフワッティも何だかなあという感じ。シリーズ化に耐えられるフォーマットではなかったというのが私の見解です。点数はタイトルそのままでお願いします。[DVD(邦画)] 2点(2016-11-05 00:27:09) 665. しんぼる 《ネタバレ》 自分が最初に笑った場面は「マグロの握りが出てきたところ」です。小皿に醤油が無くてクスッ。どうですか?このシチュエーションを字面から想像して笑えますか?笑えないですよね。これが可笑しいのは、これまでの前フリ(物語の流れ)を知っていることが前提。さらに観客側に「鮨は醤油に付けるもの」という常識が必要です。視覚、聴覚を初めとする五感を活かし、想像力をフル稼動させ、自身の知識・経験と照らし合わせます。場の空気も影響しますし、タイミングは命です。様々な要素が刹那に融合し、笑いが生まれる理屈。送り手と受け手が共同で創り出す緻密で豊かな感情表現が「笑い」だと考えます。主導権は送り手が握っていますが、決定権は受け手に在ります。どんなに的確でセンスの良いネタでも、客に受け入れる度量が無かったら意味がありません。そのような観点で本作を捉えてみると、鑑賞中に自分が抱いたモヤモヤの正体が見えてきました。「今の笑うところだよな」「これは何のメタファー?」客が監督の意思を慮っているうちは、笑いも湿りがち。当然です。笑いは瞬発力ですから。ただ、これは松本監督の狙い通り。そもそも正解を設定していない映画なら、戸惑って当たり前です。この手法を不親切・手抜きと取るか、モヤモヤ自体を楽しめるかは、観客次第。自分は後者のタイプなので不満はありませんが、“答えなんか無くても正解が在る素振をする”のも監督の仕事のうちかなと。ちなみに最後に出て来た巨大しんぼるが大人のそれだったら+2点でした。(10/3なんばシネマパークスにてレイトショー鑑賞)[映画館(邦画)] 6点(2016-10-30 21:37:00) 666. イット・フォローズ 《ネタバレ》 どうしたら死なずに済むか考えてみました。①飛行機の距離で2地域居住(来たら逃げるの繰り返し)。②洋上生活(「それ」は水が苦手な様子。でもマグロ漁船だと辛過ぎる…)。③『パージ』に出てきたような要塞ホームに住む(「それ」が重機の免許を持っていないことを祈ります笑)。私の貧困な発想ではこの程度が限界。まあ逃げ回ることは可能でしょうが、冒頭に出てきた少女のようにいずれ参ってしまうでしょう。誰かに「それ」を移すのは気が進みませんが、背に腹は代えられません。となれば、若くて、健康で、足が速くて、お金持ちということで…武井壮がベストかと。優しくしてくれるといいな。冗談はさておき、やはりここは根治を目指しましょう。物理攻撃で「それ」を殺せないのは検証済み。ですが壁をすり抜ける能力は無さそう。ということで、鉄の箱にでも閉じ込めてしまうのが一番安心かと(名付けてピッコロ作戦)。理解者が多くいる主人公なら実行可能な気がしますが。さて本作の主題について。“性病の暗喩”と考えたくなるお話ではありますが、終盤ベッド上の友人の語りや、手を繋ぐ2人のラストシーンを見るにつけ、もう一歩踏み込んだ性(生命)へ向けた根源的な解釈をしたくなります。つまり「それ」は“種の存続に対する強迫観念の具現化”ではないかと。今回の現象を表層的に捉えるなら、“死にたくなければ性交渉しなさい”です。それも、できるだけ若く、健康な相手が理想(「それ」を移した相手が自分より先に死んだら、元も子もないワケですから)。生きとし生けるものに架せられた宿命。「繁殖のススメ」。ですから主人公カップルに子供が生まれた瞬間に、「それ」は消え去るのではないかと予想します(あるいは年老いて生殖能力が無くなったら)。文部科学省推薦ならぬ内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)推薦がついても不思議じゃない『婚活も妊活もお早めに』なプロパガンダ映画に違いありません(大嘘)。[DVD(吹替)] 8点(2016-10-30 00:28:18)(良:1票) 667. Seventh Code 《ネタバレ》 簡単に解ける拘束紐、目的地も知れない自動車を走って追跡、初めから知っている各種暗証番号、屈強な男を体術で組み伏せる華奢な女の子。リアリティ無視の“嘘”ばかりが目につきます。聞けば本作は『seventh code』という楽曲のPVとのこと。なるほど、物語としての整合性は不問なワケです。ただ監督脚本は、当代きっての難解ミステリー上手、黒沢清。額面通りに受け取るのは勿体ない話。深読みする価値はありでしょう。ということで、私なりの解釈を試みてみます。冒頭に挙げた数々の不条理は、『妄想』あるいは『夢』の様相を呈しています。全ては主人公(前田敦子)の『心の中の出来事』と捉えるのが自然かと。見知らぬ土地(ウラジオストック)に、一人の男を追ってきた女。あれ?このシチュエーションって、芸能界に飛び込んだ前田敦子の姿と重ならないでしょうか。鈴木亮平=秋元康。スーツ姿や髪型も同じです(おっと、それ以外は言わない約束)。前田が身を寄せたレストラン=AKB48。夢を追って出ていく者あり、一発勝負に出て討ち死にする者あり。メンバーの姿?あるいは前田自身の葛藤?でしょうか。やっとの思いで手に入れた起爆装置は、総選挙の勲章センターポジション。そう、踏み潰して、前に進むのです。与謝野晶子の歌『旅に立つ』。そして衝撃の(あるいは身も蓋も無い)結末。メタファーと呼ぶにはあまりにも女優・前田敦子の現実が目に浮かぶ生々しさがありました。実に面白いです。黒沢清節満載の本格サスペンス。こんな贅沢なPV、観たことありません。[CS・衛星(邦画)] 7点(2016-10-29 21:56:34) 668. 残穢 -住んではいけない部屋- 《ネタバレ》 『リング』のように呪いを解く為に主人公が奔走するでもなく、『呪怨』のように呪いの元凶自ら登場で怖がらせるワケでもない、“気づいた時にはもう遅い”静かなオカルトホラー『残穢』。発端となった強大な禍が新たなる禍を生み、連鎖増幅していく穢れ。平岡が言うようにヤバい案件です。そう彼はちゃんと指摘していました。「取扱いを誤ると酷い目に合う」「これとんでもないものを引き当てたのかもしれません」「話しても祟られる、聞いても祟られる」と。でも結局は本気にしていなかったということ。知識があっても実践しなければ意味がありません。「久保さんの前の住人(梶川氏)が転居先で自殺した」ちゃんとヒントは出されていたのに。これは【くるきまき】さんがおっしゃられるように、放射能的厄災と捉えると納得がいきます。穢れへの短期的な接触なら多分セーフ。調査に加わった久保さんのミステリー研究会後輩にまで、災いは及んでいないでしょう。穢れに長期間、そして深く触れ続ける事が問題。総被爆量で基準を超えると発病する理屈です。「顔が歪む婦人図」を保管していた吉兼家菩提寺の住職のように、深入りしない姿勢が防護服代わり。主人公“わたし”を筆頭に、本件に長く、深く、関わってしまった人たちの末路や如何に。そして本作を鑑賞した“あなた”とて例外ではないと……。過度なBGMで煽らず、あくまで“わたし”と同じ第3者の立場で、事象を検証する感覚を創出したのが秀逸でした。淡々と、明らかになっていく真実。気づけば誰もが当事者に。一見弛緩した空気のエピローグに恐怖が纏わりつきます。久々に正統派のオカルトホラー映画に出会えた気がします。流石、中村義洋監督。ホラーを描いても上手いですね。そして手堅く観易いです。今、一番安心して観られる映画監督だと思います。[DVD(邦画)] 8点(2016-10-25 20:27:10)(良:1票) 669. スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 文字通り“クソ”にまみれた主人公の人生が、軽薄なクイズバラエティショウを通して肯定されていく様に、強く胸を打たれます。学は無くとも経験はある。それが決して他人に誇れるものでなくとも、血となり肉となり、今の自分自身をかたち作る糧となっています。辛い思いも、苦い体験も、全てがクイズの答えに、いや人生の答えに繋がっていました。最も痺れたのは、主人公が司会者の卑怯な罠に引っ掛からなかったところ。『親切を装う大人を信用してはいけない』という痛恨の教訓がちゃんと活かされていました。終わり良ければ全て良し。そう思える素晴らしきラストシーンは、ラブストーリーとしてもこれ以上ない“正しい”結末でありました。それにしてもヒロインを演じた女優さんの魅力的なこと!“この人の為になら命を賭けられる”そんな説得力を持つ恋物語は“強い”と思います。フリーダ・ピントというお名前、覚えておきますね。(以下余談)本作は『勇気の物語』でした。ザ・ダメ人間な自分も一緒に肯定された気がしたのです。私が長年かけて貯め込んできた『深夜ラジオ(伊集院光)』『囲碁』『プロレス』『B級邦画』『ももクロ』に関する知識も、いつか陽の目をみる日が来るんじゃないかと。いや、やっぱ来ないか。来なくてもいいんです。来るかもしれないと思えることが希望なので。[CS・衛星(吹替)] 9点(2016-10-21 22:00:46) 670. 人狼ゲーム クレイジーフォックス 《ネタバレ》 監督交代。若干のルール変更はありつつも、フォーマットは『人狼ゲーム』シリーズをきちんと踏襲しています。今回はビーストサイドならぬ、新カード“フォックス”を引いた少女が主役の『クレイジーフォックス』。タイトルに偽りなく、確かに彼女の戦略は、一見支離滅裂に見えます。劇中でも語られるように“目立たぬこと”がゲーム勝ち抜きの基本戦略であることは明白です(現に、場を仕切っていた2人が早々に退場を余儀なくされました)。では、どうして彼女はリスクを負ってまで、預言者を名乗ったのでしょう。それは偏に恋する彼を守りたいがため。おまけに恋敵も巧みに場の流れを作って抹殺しました。恋愛至上主義。それが彼女の行動原理。でもキツネの立場で彼氏と一緒に生き残る事など出来るはずもありません。さて、では彼女の戦略は意味不明だったのでしょうか。人生の行動指針は人それぞれ。仕事に生きる人、趣味を至上とする人、創造活動に燃える人、家族を守りたい人etc…。どれも間違いではありません。勿論、恋愛に命を懸けるのも。プレイヤーは、非常に濃密な時間を過ごしています。それこそ1日が10年にも相当する理屈。そんな状況の中で“長生きすること”を行動指針にしない人間がいても不思議じゃありません。だって周りの人を見てみてください。タバコ、飲酒、運動不足、かくいう自分も……。“仲間思いの自分に酔っている”多岐川君も、“あいつムカつく”で墓穴を掘った橘さんも確かに愚かですが、否定する気にはなれません。人は間違うもの。論理的でないもの。それで当たり前。ある意味、とてもリアリティのある決着だった気がします。前作、前々作が“良過ぎた”ため、シリーズの中で比較をすると凡庸な印象を受ける本作ですが、「邦画サスペンス」のカテゴリ内の位置づけなら十分な出来栄え。役者の演技の質も高く、悪い印象はありません。[DVD(邦画)] 7点(2016-10-20 19:53:41)(良:1票) 671. パラドクス 《ネタバレ》 (ネタバレありますので未見の方はご注意ください。些細な情報もシャットアウトして観る方が絶対におススメ。予告編も観ちゃダメです……)閉鎖空間に閉じ込められ、出られなくなる主人公。既視感のあるソリッドシチュエーションスリラーで、日本でいえば『世にも奇妙な物語』にありそうな一編。この手のお話は、状況設定の奇抜さがセールスポイントで、“オチ無し”が結構当たり前。その点、本作は腑に落ちる結末を用意してくれた分、良心的かと。劇中で現象の解説は為されているものの、解釈の幅はありそう。ということで私なりの理解を述べたいと思います。 この不思議空間の法則は終盤2人の老人の口から語られる通り、前半35年、後半35年の2部制が採用されています。閉じ込められる空間は全く異なりますが、イベントやルールは同じ。爆発音、人の死、役割演技、死の間際での気づきとバトンタッチ、サバイバル要素なし……。「閉じ込められた世界での肉体的・精神的状況は現実世界でも反映される」「閉じ込められた私たちは本物の自分たちのために酷使される」、それに「この世界には自分のほかにもう一人」。これらの状況から推測される「不思議空間」の真相は「自我の世界」ではないかということ。相方はさしずめ“超自我”さんでしょうか。少々自我の確立時期が遅い気もしますが、みなさん大器晩成タイプなのでしょう。若者時代の前半35年は幸せだが、年配者は過去に囚われて生きるので後半35年はキツイという理屈には異を唱えたいものの、本作で提示されたサンプルは最終的に皆現実世界で「自殺」を選択しているため、「うまく自我をコントロール出来ない人生は地獄ですよ」という事かもしれません。私もまさしく人生の後半戦に入ったところ。肉体的にも精神的にもグッドシェイプして“健康に”乗り切りたいものです。[DVD(吹替)] 7点(2016-10-15 19:24:03) 672. グッドモーニングショー 《ネタバレ》 (一番投稿失礼いたします)ももクロちゃんのファンクランブイベントついでの上京で映画鑑賞。話題の『君の名は。』と迷った挙句、本作を鑑賞しました(本日のメインはライブなので前菜代わり)。“バラエティ・ワイドショー”の流儀と正義を、『踊る大捜査線』シリーズの脚本家で知られる君塚良一氏が監督として描く、ザ・フジテレビ印のお気軽映画。公開2日目、最初の日曜日にしては、客の入りは寂しいものの、劇場内の反応は上々。笑いの取り方は定番ですが安定しており、流石のお手並み。「勇気の印」は時任のCMを知る40代以上向けのネタ。でも振り返ってみると、中井貴一が長澤まさみとの関係を隠そうと狼狽える姿が面白かっただけのような。中井、長澤、吉田、濱田ら演者の表情のアップがやたらと目についたのは、それだけ彼らの演技が素晴らしかったからでしょうね。(以下余談)駅前広場で時間を潰していたところ、大道芸人がパフォーマンスを始めました。巧みな話術とちょっと危険な出し物が彼らの武器。私は後方やや離れた位置から眺めていたのですが、まさしくこの状態が『グッドモーニングショー』の視聴者の立場だったのかなと。お代を払うわけでもなく、ただ催し物を興味本位で眺めるだけ。危険な芸では、成功よりも失敗を期待している自分がいました。無責任な立場だから簡単に「命を捨てる」なんてボタンが押せるワケです。「視聴者が望むものを見せるのが使命」とテレビ屋は言いました。でもそれなら大道芸人は毎回現場で大怪我をしなければなりません(これをソフトに叶えたのが電撃ネットワーク)。正しくは「スポンサーが納得するものを見せる」なのでしょう。野次馬でなく、お代を払い、現場で芸を一緒に作り上げる観客が望むのは、バッドエンドではなくハッピーエンド。テレビのスポンサーだって公開処刑など許すはずがありません。ですから視聴者投票の結果操作は当然の行為。迷う必要など微塵もありません。でも、情報操作の善悪に物語の力点を置く感覚が、テレビという巨大メディアを扱う製作者の良心なのかなと思います。[映画館(邦画)] 7点(2016-10-10 22:43:51)(良:1票) 673. シュガー・ラッシュ 《ネタバレ》 王様がラルフに話したヴァネロペの境遇は、十分腑に落ちるものでした。ゲーム開発途中に発生したバグが原因で、キャラクターがお蔵入り。そんな話、聞いたことある気がします。“死にたくないなら余計な冒険はしない”は真理です。しかしラルフから命の危険性を説かれてもなお、ヴァネロペの意志は揺るぎませんでした。渡辺美里の歌詞ではありませんが『死んでるみたいに生きたくない』ということ。そのへんのガキが同じ台詞を吐いたとしても、「命の有難味が本当に分かっているのか?」と説教したくなります。しかし不死のゲームキャラクターにとっては切実な悩みです。何も起きない日々が永遠に続く。それは正に地獄でしょう。ヴァネロペがどんな気持ちでレースにエントリーしたのか理解出来たとき、私もゲーム世界の仲間になれた気がします。では、ラルフの心情はどうでしょうか。彼がメダルに固執したのは、周りに認めてもらいたいから。それだけです。肯定されない人生は暗闇に違いありません。ラルフとヴァネロペは、共に闇の中に居たのです。願いは同じ。“人生を価値あるものに!”たった一人に認めてもらうだけで、人生は輝きます。2人の友情に胸を熱くしました。勿論、伏線見事な脚本があってのこと。王様の正体、滅亡回避奇跡のクライマックス。全てのピースがピタリとハマる快感は格別でした。人生の目的、友情の価値、社会的役割、騙される心理。豊富な示唆が含まれている物語を堪能いたしました。(以下余談)私が本作の観賞に至った経緯は、ヒロインがももクロの有安杏果(緑担当)にソックリとの噂を聞きつけたから。サイズ感、カラーリング、ヘアースタイル、どれをとっても杏果にしか見えません(笑)。挿入歌はAKBですけど、日本語吹き替えを彼女にお願い出来ないかしら。『「ちゅがー・らっちゅ」って、ほら言えてんじゃん!』そんな杏果を想像して一人ニヤニヤしてしまいます(重症)。[DVD(吹替)] 9点(2016-10-07 22:54:15) 674. ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE 《ネタバレ》 (『THE MOVIE』と名が付けば、何でも映画と呼んで良いのかという疑問はありますが、劇場公開もされておりますので登録させていただきました。ネタバレしないように注意して書くつもりですが、結末を知りになりたくない方は念のため鑑賞後にお読みいただければと思います……)劇場版制作にあたり、ルート設定をどうするか、誰をマドンナにするか、その企画会議の様子が目に浮かぶような、制作サイドが狙ったであろう予想通りの展開(台風直撃を除く)と想像通りの面白さ(ツマラナさ)であったと感じます。プラス査定ポイント:目新しい海外風景、美味しそうな食べ物、民宿泊まりに泣く蛭子。マイナス査定ポイント:いつも以上にちゃんとしている蛭子、ウザイ三船の善人キャラ、ミッションクリアの本気度アップ=ゆるい雰囲気の低下。率直に言うならTVレギュラーよりも“ややツマラナイ”回であったワケです。そんな映画版をわざわざ劇場で高いお金を払って観る価値があるかと問われると難しいですが、少なくとも私は普段絶対に手を出さない『新作』の段階でDVDをレンタルしたので(少なくともファンにとっては)、まだまだ魅力あるコンテンツだとは思います。劇場版第2弾(があるとしたら)おそらくまた海外が舞台でしょう。蛭子さんには劇場版の気負いを捨て、失言失態が期待できる平常運転をお願いしたいところ。是非ともルート上にカジノを入れましょうね。しっかり太川さんをブチ切れさせてください。あとはマドンナの人選次第。今回の三船は劇場版用に“置きに行った”キャスティングだったので、次回は攻めの姿勢が欲しいです。個人的には、神田うの、あびる優、沢尻エリカ、RIKACO、いや海外ですから外タレ枠でパリス・ヒルトンあたりをブッキングしての“地獄篇”を希望します。[DVD(邦画)] 4点(2016-10-05 18:59:50)(良:1票) 675. HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス 《ネタバレ》 インスパイア?オマージュ?パロディ?いえいえ、そんな小洒落た言い方は正しくありません。ただの“パクリ”です。スパイダーマンを筆頭に、モテキ、トイストーリー、ベストキッド、タイムボカン…よくもまあ恥ずかしくもなく、人気作からエッセンスをつまみ食いしたものだと感心します。でも不思議と厭らしくありません。格好悪いとも、ズルいとも思いません。むしろ清々しい。それは偏に「真面目」だからです。奇しくもママンがプラトニック狂介に言い放った台詞と同じ。堂々たる演技。真摯な演出。おいなりさんにフィットさせてイチイチYES(夏色のナンシーかッ)。木根尚登やHIKAKINといった完全な悪ふざけから、カンヌ俳優・柳楽優弥まで、高低差が激しいクレイジーなキャスティングに納得してしまうのも、誠実だから。馬鹿馬鹿しい事をひたむきに。おフザけだって全力で。そんな素敵なサムシングが本シリーズには在るのです。たぶん、誰からも評価されようなんて思っていないでしょう(これで好意的な評価を期待しているのなら、どうかしています)。ごく一部の好事家(変態ともいう)に向けて送られた渾身のラブレター。嬉しいかな、悲しいかな、私の心にはドストライクでありました。「ツマラナイ」「見る価値なし」貶し言葉が全てホメ言葉に転化してしまうのですから、変態映画ってのは、ある意味“最強”なのかもしれません。(以下余談)前作の感想で、変態仮面に高得点を付けけることを娘に知られたくないと思った私ですが、まだまだ覚悟が足りないようです。そもそもお父さんが本作を観ている事自体、(父の威厳的な観点から)子供に知られるワケにはいかないのです。「何?これ新作?」とレンタルDVDケースを長女が手に取った瞬間の絶望感たるや筆舌に尽くせません。(アプリ登録で1枚何でも無料キャンペーンと“シールが貼ってあるDVDはレンタル厳禁”の家訓が仇となりました。幸いにもタイトルを確認される前に、玄関のチャイムが鳴り難を逃れましたが…回覧板よ有難う!)続編が制作された暁には、必ず劇場鑑賞することを(危機管理的見地から)ここに誓います。[DVD(邦画)] 8点(2016-09-30 00:28:24)(笑:1票) 676. ロマンス(2015) 《ネタバレ》 ラブホにて。「オッサン、絶ッ対に何もしないでね」と女。語感、表情ともに、本当にダメなヤツです。一応コインでイケるかどうか占った男ですが、手を出すつもりはなかったでしょう(そんな度胸はありません)。ところが、ところがです。風呂上りの女は明らかに様子が変わりました。弱音を吐き、さめざめと泣き、抱き寄せる腕を拒みません。この瞬間、男の脳裏に再生されたのは、豆絞りを被った小太り中年の四つん這い姿だったはず。熱湯風呂を前にして「ゼッタイに、押 す な よ」の図と同義なり(もはや大島というより、上島。よく見て、顔もソックリよ!)。一方、押し倒された女の心境は如何に。ラブホだしなあ、どうでもいいか、だいぶ金使わせたし仕方がないわ、やっぱ男だなMIX。実に冷静なものです。ところが、ここで男は行為をストッピング!!NOではないが、決してYESでもない女の様子を敏感に察知します。この時の男の気持ち、同世代として激しく理解します。男は女に“情”を寄せていたから。同情、友情、愛情、多分いろいろ。少なくとも一時のノリと欲情で“この関係を清算してよい”行きずりの相手ではありませんでした(一時の快楽より、一生モノの思い出を選択したとも言えます)。それにここで抱いたら本物の最低になってしまうから。やせ我慢して格好つけたいくらい、男にとって女は大事な人に変わっていたのでしょう。多分それは女にしても同じ。自身を蔑む男の背中に、そっと寄り添う気遣いからの“寝たふり”炸裂。このまま男の話を聞こうものなら、本気で抱かれる展開以外ありません。でもそれは御免。そこまで心は許していないし、そもそも万引き野郎だし、でもこの関係は嫌じゃない。「狸寝入り」の術にて現状維持成功。お見事でした。イイ男風キスへのお仕置きも、大人の女の嗜みでしょうね。さて、1泊2日の『ロマンス』は、2人の心境にどのような変化をもたらしたでしょうか。男の方。警官に手をひかれる老婆のように、公権力に頼った更生の道を選ぶのでしょうか。あるいは、まだ困難から逃げ続けるのかも。少なくともコインの表と裏は正しく理解したはず。正しい、いや後悔しない選択をして欲しいものです。女の方は、心のエナジー充電完了。実は上司や同僚に恵まれていた事にも気づけました。実母との“直接対決”にちゃんと営業スマイルが出来ればもう大丈夫。本当に“要るもの”と“要らないもの”を見極めて、自分の人生を歩んで行けるでしょう。今回もタナダ的“強い”ヒロイン像健在の物語を堪能させていただきました。昨今大流行のイケメン&美少女を主役に配したラノベor少女マンガ原作のふんわりマカロン邦画(勝手に命名&完全に偏見)に辟易していた私としましては、アンチテーゼのようなブサメン&アラサーコンビによる定番リアル寓話に大変満足した次第です。中年男の疲れた心と体には、このくらいしっかり甘くて、ちゃんと心に沁みる映画がぴったり。名付けるなら最中映画。苦い現実とよく合います。[CS・衛星(邦画)] 9点(2016-09-20 19:30:22)(良:1票) 677. 寄生獣 完結編 《ネタバレ》 田宮良子の最期と、無敵の寄生獣『後藤』との最終決戦は、完結編というより全編通じてのクライマックス。田宮のシーンは、深津絵里圧巻の演技もあり原作の感動を高いレベルで再現できていたと思います。お見事でした。対して、後藤の方は残念な仕上がりです。何故合理主義のパラサイトが、特定の相手を執拗に狙う必要があるのでしょう。広川コミュニティが崩壊した今、後藤がシンイチを抹殺しなければならない道理などありません。『やりかけの仕事』『戦いこそが我が生きる道』後藤の行動原理たる2つの動機をきちんと説明しなかったのはお粗末でした。『戦は兵力よりも勝機だよ。シンイチ』の名台詞が出る幕のないシチュエーションでの対決、ミギーの体組織が腕に残っているから「後藤に見つかってしまう」と狼狽えるシンイチなど、正直見たくなかったです。以上、原作ファンのコダワリに所以する不満でした。もっともこれらは、原作未読であれば大した問題ではありません。この映画をキッカケに原作を手に取る観客が一人でもいれば、映画化の価値は充分にあったと考えます(フィギアコレクターとして付け加えるなら、立体ミギーが沢山商品化されたのは嬉しい効果。客観的にはコレクションの棚が気持ち悪いことになっていますが笑)。かつて実写劇場版『カイジ』に対して原作の方が『2000倍面白い』と憤った私ですが、本作の場合は『3倍面白い』で閉めさせていただきます。みなさん原作を読んでネ。[CS・衛星(邦画)] 6点(2016-08-30 20:21:13) 678. 寄生獣 “バランス感覚優先で一般向け商業映画に仕上げました”な映画。ホームランではなく、きっちりシングルヒット狙いが功を奏していると感じます。これはこれで正しい映画化のかたち。ただ、原作ファンからしてみれば特大のホームランを狙って欲しかったなあと。それだけの価値がある原作だと思うのです。もちろん結果三振でも構いません。そういう意味では、個人的に決して好きな監督ではありませんが、園子温監督にメガホンを取って欲しかったなあと。[CS・衛星(邦画)] 5点(2016-08-20 21:57:54) 679. GODZILLA ゴジラ(2014) 《ネタバレ》 ハリウッド版『ゴジラ』というよりは、ロボットの出ない『パシフィック・リム』な印象です。予想通り怪獣の質感がリアル過ぎて、和製怪獣映画特有の侘び寂びはありません。もっとも『ゴジラ』ブランドに郷愁を感じていない私のような一般客からしてみれば、全く問題ありません。これだけのスペクタクル映像を頂戴できれば充分に御の字です。人間の力が全く及ばぬ結末のつけ方は非常に好みです。[地上波(吹替)] 7点(2016-08-10 22:51:11) 680. もののけ姫 監督初期の代表作『風の谷のナウシカ』同様、氏のライフワーク”自然と人間との共生”をテーマとした作品ですが(フォーマットまでほぼ一緒)、切り飛ぶ腕や首といったハードな描写や、ほのぼの要素を一切排除した骨太な演出技法を鑑みるに、完全に大人をメインターゲットとした作品と言えそうです(正確には子供無視)。個人的には『カリオストロの城』のような全方向型エンターテイメント作品こそ宮崎監督の魅力が最大限発揮されるジャンルと考えますが、作家である以上作品を通じて自身の主義主張を表現するのは真っ当な行為と言えるでしょう。あまりに理想主義が過ぎるため、私個人の信条とは相いれない部分もありますが、自然賛歌であり人間賛歌として高い完成度を誇るため、監督の説教も抵抗感なく聞き入れることができます。最後に気になった点をひとつ。「おわり」で締めくくるのですが、この言葉はそぐわないと感じます。監督お得意の「おしまい」よりはマシですが、子供を置きざりにしたつくりなら最後はやはり「完」でしょう。細かい指摘ですいません。[DVD(邦画)] 8点(2016-08-06 08:16:06)
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