みんなのシネマレビュー |
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1101. スモーク(1995) ポール・オースター書き下ろしの脚色だけあって、なんと言うか良い意味で小説っぽい映画ですな。それはオーギーはじめ登場人物が、それぞれ丁寧に性格付けされているせいでしょう。NY版下町人情噺というのがピッタリの佳作です。邦画だったら『釣りバカ日誌』みたにシリーズ化させちゃうんだろうな、きっと(『ブルー・イン・ザ・フェイス』はありますけど)。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-06-26 00:55:03) 1102. ミスター&ミセス・ブリッジ 《ネタバレ》 ある意味、とても意表をつく終わり方でした。並みの俳優がブリッジ夫妻を演じていれば、とても退屈な作品になっていたでしょうね。いくら裕福な弁護士夫妻と言っても所詮普通の人間ですし、傍目からは波風立たない様な人生に見えても、当事者にはいろんな出来事があるのだなと改めて感じました。ほとんど感情を表さないP・ニューマンというのも初めて観た気がしますし、なんと言ってもJ・ウッドワードの演技が素晴らしかったです。どことなく可愛らしいおばさんB・ダナーも目立った役でしたが、この人あのG・パルトロウのお母さんなんですね。確かに顔の雰囲気は何となく似ていました。[ビデオ(字幕)] 7点(2010-06-18 19:52:30) 1103. ピアニストを撃て 有名な作品ですけど、これってトリュフォー長編二作目なんですね。とてもそんな若造が撮ったとは思えない技巧を見せてくれますが、ストーリーテリングには若さゆえの荒削りなところも目立ちます。でも私、このオフビートな雰囲気は好きですね。登場人物たちのちょっとピントが合わない会話も、タランティーノの得意技みたいで今観ても斬新です。それにしても同時期に盟友ゴダールが撮った『勝手にしやがれ』と比べると、ゴダールのレベルの高さには驚かされます。[DVD(字幕)] 7点(2010-06-16 00:53:06) 1104. ブラック・スネーク・モーン 《ネタバレ》 はげ親父S・ジャクソンがパンツ一丁姿のC・リッチを鎖で縛るポスターは大変扇情的ですが、エロ要素はたしかに強いがけっこう真面目なストーリーでした。リッチのエロカッコよさは相当なもんですが、あんまり露出が過ぎるとだんだん眼が慣れてきて終いには何とも思わなくなっちゃうものですね。本作はどうしてもエロに関心が偏っちゃうのですが、実はブルースが重要な要素になっています。ジャクソンが劇中何度も聴かせてくれるブルースは実に渋くて迫力がありました。出演者がほとんど黒人で、白人はホワイト・トラッシュのクズ白人ばかりというのが面白く、黒人目線でストーリーが語られるのが良かった。黒人たちの精神の豊かさとたくましさが白人たちのひ弱さとは対照的で、脚本の意図としては面白いところです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-06-13 00:32:38) 1105. ミーン・ストリート 《ネタバレ》 デ・ニーロとスコセッシの黄金コンビが誕生した記念すべき一作です。デ・ニーロはその後のトラヴィスやラ・モッタの原型となる様なキャラなのですが、単なるへなちょこチンピラがいきがって無茶しているみたいな感じがあり、意外と普通っぽいところがあって私はデ・ニーロのフィルモグラフィ中では好きなキャラです。ジョニー・ボーイのセリフ、「俺にカネを貸すおまえは大バカだ」は名言です。私もこのセリフ使わせていただきます。タフガイのくせに信仰心が厚く、そのくせ内面では打算的で要領が良いカイテルのキャラは、どこかスコセッシという人間が反映されている様で面白いところです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-06-10 22:19:50) 1106. ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー 《ネタバレ》 ナオミ・ワッツまぼろしの初主演映画にして、全編にわたりナオミ・ワッツファン感謝祭状態。なんせ、90分のうち確実に三分の二はナオミ・ワッツのアップショットなんですから。また、まるでお笑い芸人の様な彼女の顔芸の数々には苦笑させられます。しかしこれを観てつくづく感じるのは、ナオミ・ワッツって何でブレイクするのにこんなに時間がかかったのだろうということです。ハリウッドの俳優陣の層の厚さを思い知らされます。ナオミよ、大丈夫、君がオスカーに輝くのはきっともうすぐだから。[DVD(字幕)] 7点(2010-06-06 12:29:54) 1107. 東京暗黒街・竹の家 《ネタバレ》 名だたる国辱映画として作品名は知っていましたが、いやはや、これはなかなかの掘り出し物でした。まあ題名が“House of Bamboo”じゃあ日本人としては観る前から抵抗感が強くなってしまうのもしょうがないですが。なぜか東京のパチンコ業界を牛耳る傍ら強盗ギャング団のボスでもあるR・ライアンと、その組織に潜入する捜査官R・スタックが死闘を繰り広げます。このライアンが直接描写はないのですが実はホモらしく、でも冷酷ながら結構魅力的なキャラで、ノワールは悪役に魅力がないと面白くないという鉄則をさすがS・フラーは判ってますね。特筆すべきはワイドスクリーンでロケされた日本の情景で、昭和20年代後半の東京が美しいカラー映像で見せてもらえます。女性がほとんど和服姿だったり、畳の上にいきなり風呂があったり、そりゃおかしなところは沢山あります。しかし敗戦後10年も経ってないと思うと、それなりにS・フラーの日本に対するリスペクトが感じられます。ライアンの屋敷で芸者たちが踊る宴会シーンでは、『キル・ビル』の青葉屋が思い出されるシュールさです。クレーン撮影で上下を意識した映像が多用され、ラストのデパート屋上での銃撃戦は、ダイナミックな映像でインパクトがあります。早川雪洲も頑張っていますが、なんと言ってもあの伝説の大女優である李香蘭(山口淑子)がハリウッド映画で見られるとは驚きました。雪洲の日本語はひどかったですが、香蘭の英語はとても流暢で上手でした。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-06-06 00:18:23)(良:1票) 1108. フルメタル・ジャケット 《ネタバレ》 ああ、ハートマン軍曹、可哀そう…。せっかくどんくさい肥満児をあそこまで鍛えたのに、あんな悲劇が待っていたなんて…。新人を教育するのは、どんな組織でも大変なことデスね。この映画は何度も観ていますが、「微笑みデブ!」ってハートマン軍曹に罵られてみたいとだんだん感じてきた自分が怖くなってきました。 ベトナムに行ってからの戦場シークエンスは結構評判が悪いですが、キューブリックらしいひねった戦闘シーンは癖がありますね。まずジョーカーとカウボーイだけがなぜか眼鏡をかけているのが下品な海兵隊らしくなくて、キューブリックの意図が感じられます。部隊をテト攻勢で攻撃されるフエの街にして、ベトナム戦争なのにまるでスターリングラードみたいな市街戦を見せてくれるのも、キューブリックらしいひねた視点ですね。ただベトコンの女スナイパーがAK47を狙撃銃に使っているのは、現実にはあり得ないでしょう。全般的に戦場シークエンスは私たちがイメージしているベトナムに比べるとリアリティがないのですが、却って悪夢のようなシュールな世界でもあり、引き付けられてしまうのです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-28 00:55:04) 1109. ブルーベルベット 《ネタバレ》 デヴィッド・リンチは既成曲を取り込むのが上手い監督ですが、中でもこの“Blue Velvet”は最高です。ほんと、リンチにしては意表つくぐらい判りやすい映画ですが、その中でもデニス・ホッパーの危なさはリンチ史上これも最高で、ディーン・ストックウェルとのデユエットは自分が観たリンチ映画の中で一番好きなシーンです。そして、イザベラ・ロッセリーニのエロさには参りました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-23 23:24:05) 1110. 三つ数えろ 《ネタバレ》 「誰が運転手を殺したのか?」は有名なエピソードですが、そもそも運転手はストーリーとどんな関係があるの? と、まあこういう穴が多すぎるのか単にこり過ぎただけなのか、とてもじゃないけど一回観ただけではストーリーが追えない困った脚本です。本作に比べれば、昨今の時系列がぐちゃぐちゃになった映画なんて可愛いもんですよ。 今まであまり意識していなかったのですが、本作のローレン・バコールは痺れるぐらい魅力的です。確かに演技は大根ですが、“The Look”と異名をとるあの視線はただ者ではありませんよ、彼女は。あと「アクメ書店(!)」の店員でボギーにフェロモンまき散らすドロシー・マローンも良かったなぁ。ハワード・ホークス映画に出てくる女性キャラは、独特の色気がある女優が多いので楽しいです。[DVD(字幕)] 7点(2010-05-21 23:01:05)(良:1票) 1111. 愛のイエントル 《ネタバレ》 男装のバーブラを見てると、確かに学芸会の演劇を見せられている様な雰囲気です。さすがにバーブラの歌唱は素晴らしく、バラードを歌わせたらバーブラ・ストライサンドにかなう者無しですね。自分で監督までしてるせいか、ある意味究極のナルシスト映画と言えそうで、エイミー・アービングはイエントルに比べてあまりに愚かな女という位置づけはちょっと可哀想かな。船上で歌うバーブラを引きで撮っているラストは、何度見ても素晴らしい名シーンです。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-18 00:52:01) 1112. ステート・オブ・グレース 《ネタバレ》 『フェイク』と似たプロットですが、ドラマ自体はちょっとスケールが小さいですね。私はエド・ハリスのいぶし銀のごとき演技に痺れました。アイルランド系ギャングのボスと言っても愚連隊にしか見えない小勢力で、イタリア系にはもう頭が上がらずヘコヘコしっぱなしの情けないボスを抑えた演技で好演しています。レストランで電話をかける・かけないのやり取りでは、ハリスがポーカーフェイスの下で目まぐるしく打算を巡らせているのが良く判ります。まあ、キレやすい弟を殺してまで守らなきゃいけない稼業とは思えないですけどね。ラストの銃撃戦は、弾着効果が激しくてちょっとびっくりしました。でもこのラストシーンは、それまでの淡々としたドラマ展開からはちょっと浮いてしまいました。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-10 22:02:41) 1113. ナバロンの要塞 さすがに製作後50年ですからスリルの盛り上げ方など古めかしいところはありますが、特攻作戦ものとしては元祖でありジェットコースタームービーとしても現代に通じるものがあります。マロリー大尉やスタブロ大佐など登場キャラがよく作り込まれていますし、「ウソも方便」ではありませんが架空のナバロン島をめぐる英独両軍の動きもディティールが良くできていますね。冒険映画の古典としての風格すら感じさせられます。[映画館(字幕)] 7点(2010-05-09 23:07:42) 1114. ジャーヘッド 《ネタバレ》 海兵隊兵士の品のなさがとってもリアル、でもこれが現実なのでしょう。こういう客観視というか突き放した撮り方は、監督が英国人ならではと言うことでしょうか。アメリカの最近やっている戦闘は「非対称戦争」と良く言われますが、この映画でも米軍が損害を受けるのが味方の誤爆だけで、とても判りやすい。しかしこの海兵隊の若造たちは、みんな志願して入隊したわけなので、個人的には感情移入や同情は出来なかったですね。青春群像劇として観ることも可能でしょうが、リアルに描けば兵士たちは女と酒にしか関心がないという風になってしまうし、そこはジレンマですね。しかしイラクやゲリラ相手の戦争では軍艦が撃沈される心配はなさそうだし、米軍に志願するなら海軍の艦艇乗り組みということですな(笑)。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-07 21:53:54) 1115. 宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 「また、なんで今さら“宇宙戦争”をリメイク?」と言う疑問はありましたが、観てみるとなるほどスピルバーグが撮っただけあってなかなかの出来です。トム・クルーズ一家が体験する視点にこだわったのは正解だと思いますし、徹底してローアングルからのショットで全編通したところも良かったです。その効果は、この映画まるでSFというよりも怪獣映画だと感じられるほどです。そう言えば、私は本作を観て『クローバー・フィールド』に似た雰囲気があると思いました。きっと影響を与えたのでしょうね。トライポッドが暴れまくるシーンはとくに悪夢のようなショットが続き、大地が真っ赤に染められるシーンはトラウマになりそうなほど強烈。それにしても、トム・クルーズのガキふたりはほんとバカでうるさかったですね、観ていてマジでむかついてきました。スピルバーグって本当は子供が嫌いなんじゃないでしょうか・・・。[DVD(字幕)] 7点(2010-05-07 20:47:29)(良:1票) 1116. ベイビー・オブ・マコン 《ネタバレ》 グリナーウェイ美術が、間違いなく頂点に達した作品。この映画の世界はまさに西洋春画(by淀川長治、それにしても上手いこと言うなあ)か地獄絵図か、そう、グロテスクな絵画を見ている様な感じでしょうか。物語のクライマックスは、芝居と現実の境界が判らなくなったコシモ殿下の妄想として解釈することも可能かな。まあとにかく、他の監督には絶対思いつかない様な映像です。この監督はとことん“赤”という色彩にこだわる人です。[ビデオ(字幕)] 7点(2010-05-04 01:56:23) 1117. ビッグ・フィッシュ ゴス系の監督は、突然今までの作風と違った癒し・ヒューマニズムがあふれる映画を撮ることがあります。D・リンチの『ストレート・ストーリー』やT・ギリアムの『フィッシャー・キング』などですが、本作もそういう作品のひとつですね。映画監督だって人間ですし、私生活や恋愛経験で思うところがあれば、撮る題材にも影響があるってことでしょう。きっとバートンは人の親になっていろいろ感じることがあったのでは、と私は勝手に想像しています。偉大な映像作家は、自分のスタイルでなくても心を揺さぶる作品を創作出来るということを本作は証明しているのではないでしょうか。 でも個人的には、T・バートンはゴスの世界観を見せてこそ存在価値がある人だと思っていますが。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-03 22:05:38) 1118. ゲーム(1997) 《ネタバレ》 マイケル・ダグラスが『ウォール街』のゴードン・ゲッコーのまんまのキャラで、やはりゲッコーは彼の生涯のはまり役だったなあとしみじみ思いました。お話は、ほんと『クリスマス・キャロル』の焼き直しもいいとこで、そう気づくともう落ちは判った様なものですが、それでも結構ハラハラさせてくれるのはさすがです。ショーン・ペンとダグラスが兄弟という設定、すごく説得力があるキャスティングですよね、余談ですけど。途中から脚本の暴走が目立ちだしてきて、特にラストに至る展開はちょっと力技すぎるのが不満ですが、これを才能がない監督がやると『シベ超』になっちゃうんだなと思うとなんか可笑しいです。[DVD(字幕)] 7点(2010-04-24 02:07:45) 1119. ある日どこかで 《ネタバレ》 原作小説は、世界幻想文学大賞に輝くリチャード・マシスンの名作です。この映画は必ずしも原作と比べると映画化に成功したとは言えないのですが、キャスティングのアンサンブルが絶妙で、しかもJ・バリーが映画音楽史に残る名曲を提供してくれたので奇跡のような作品となりました。実は、原作では主人公コリアーはガンで余命数カ月と宣告されているのですが、その設定は映画では無しになっています。あの哀しいラストは、原作を改変したおかげで一層素晴らしくなったのではと思います。C・リーブを見舞った悲しい運命がオーヴァーラップするので、ほんと泣けますね、あのラストシーンは。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-04-15 01:13:23)(良:2票) 1120. ネットワーク 《ネタバレ》 70年代を代表する大芝居映画です。出ている役者がみな濃厚な演技をこれでもかと見せつけてくれますが、やはりP・フィンチのキ○ガイ演技には背筋が寒くなります。アメリカには実際TV伝道なんて番組が実際あるくらいですから、預言者ニュースキャスターがいてもおかしくないかも…。F・ダナウェイも節操のなさと安っぽさ加減も絶妙で、こんな演技をしちゃったらその後の彼女の芸歴が落ち目になったのも止むを得ないでしょうね。全体としては寓話なのですが、ここまでユーモアもなくストレートに押しまくられると、観終わって疲労感が残ります。そう言えばこの映画、ニュースショーのテーマ以外に劇中で音楽が全く流れないんですよ。ほとんど密室劇と言える『未知への飛行』でも使われた手法ですが、あまりに役者たちの演技が濃いのですぐに気がつきませんでした。[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-04-14 02:41:45)
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