みんなのシネマレビュー |
|
1941. 私の頭の中の消しゴム 《ネタバレ》 韓国映画で、“難病もの”とくれば、相当アクの強い、「泣かせるぞこのやろう」的な作品を予想していたのですが、だいぶ様子が違いました。思った以上に薄味、というか上品な味付けでした。正直、あまり泣けませんでした。ただ、自分は泣ければOKとは思っていないので、そこは問題ではありません。問題なのは深みに欠けたことです。題材的にはもっと深く潜れるはず。潜って、潜って、潜って、答えらしきものを見つけて欲しかったと思いました。(もちろん正解はありませんが)。本作ではあまりに簡単に物語の指針を示してしまった気がします。清らかな部分は必要ですが、そうでない部分をしっかり描かないと、この手のお話は浅いもの(いわゆる「お涙頂戴」)になってしまうと思いました。(ちなみにTV吹替え版での鑑賞でしたが、小西真奈美は合っていませんでした。彼女は相当好きなんですけど…。やっぱり餅は餅屋でお願いしたい。)[地上波(吹替)] 5点(2006-12-17 23:20:31) 1942. ザ・セル 《ネタバレ》 世界観自体は好きです。予想通り非常に幻惑的で、映像的にも面白いものがあったと思います。ただちょっとちぐはぐな印象があります。テーマは深そうなのに、ストーリーはわりとアッサリとしていたような。監禁された人質救出という明確な目的を作ってしまったことで、普通のサスペンスになってしまった気がします。作品の間口は狭いのに、いざ入ってみたら意外に出口は広かったという感じ。もっと深い、難解な作品を想像していた者にとっては、食い足りなさが残りました。いっそカルトと呼ばれるくらい、思い切った作品にして欲しかったと思います。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-12-16 20:17:04)(良:1票) 1943. 宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 ハリウッド超大作か、映像は凄いのかもしれないけど、大味なんでしょ。深みという点では今一歩なんじゃない。そう思っていました。でも見事なまでに、その予想は裏切られました。めちゃくちゃ面白い!というか、怖い!!身じろぎも出来ず物語に引き込まれました。それは徹底した主人公目線での描写によるところが大きい。大局が分からないため、観客は傍観者(第三者)にはなれません。常に主人公であり続けなければならない。さらに民間人であることも、感情移入を助けます。侵略者に襲われる恐怖、それ以上に子供の命を失うかもしれないという恐怖は、半端ではありませんでした。下手なホラーやサスペンスよりずっと怖い。オチも自分好みでした。武力で勝つのではなく、生命の歴史で勝つ。しゃれていたと思います。金に物を言わせた映像美だけではない、確かな演出力。さすがスピルバーグ。これぞ自分が求めていた大作のかたちでした。一級のパニック映画です。劇場で観られなかったことが悔やまれます。[CS・衛星(吹替)] 9点(2006-12-15 21:32:55)(良:4票) 1944. 深呼吸の必要 《ネタバレ》 『ALWAYS・三丁目の夕日』と同じ匂いを感じました。疲れた現代人に対する清涼剤。『ALWAYS』はノスタルジーという名の、本作は実生活から離れた“楽園”という形での癒しです。癒しそのものを否定する気はありません。必要なことだと思います。でも、ただ浸るのは違う気がします。キーとなるのは田所の存在。彼の生き方を西村が非難する場面があります。結局お前も人生から逃げているだけではないかという指摘。彼は黙ります。つまり多少なりとも心当たりがあるということ。でも結局これに対する回答はなく、彼は同じ生き方を続けます。でも自分は答えを聞きたかった。どんな答えでも納得します。そもそも生き方に正解なんてありません。しかし答えないのでは、問いかけを肯定したことになってしまう。つまり人生から逃げ込む場所が楽園であると。そこで安住することを“よし”とすることを。しかしそれは違うと思います。楽園はあくまで一時の休憩所のはず。自分の在るべき場所に戻らなくてはならない。それが楽園に行く条件だと思います。(おじいとおばあにとっては、島が在るべき場所。楽園ではありません。)深呼吸は確かに必要です。でも深呼吸ばかりもしていられない。そのことを忘れてはいけないと思いました。それより心に残ったのは、おじいの言葉でした。「ダメになったらまたやり直せばいい」よく聞くフレーズです。でもおじいの言葉には説得力がある。丹精込めて育てた農作物がひとつの台風でダメになることを常とする生活。でも投げ出さず、また作り直す。経験を積んだ人間、痛みを知っている人間の言葉は心に響きます。「なんくるないさー」もそう。なんでもないような言葉でも、本当は凄いことなんだと思います。おじいの言葉にちょっと泣けてしまいました。[DVD(邦画)] 6点(2006-12-14 18:30:43) 1945. 殺人捜査 このタイトルならば、普通はサスペンスかミステリーを想像すると思います。しかし全然違いました。確かに殺人事件は起きます。それも物語開始早々に。でもタイトルである殺人事件の捜査そのものは、あまり重要ではありません。メインとなるのは、殺人犯である主人公の心理描写です。それも、「捕まることを恐れる」や「罪の意識に苛まれる」といった、よくある類のものではありません。もっとアイデンティティの根幹に関わるような悩み。ちょっと哲学的ですらある。さらにこの犯人、変態なんですよ。上手くまとめられなくて申し訳ないのですが、そんなお話なんです。切り口は目新しく、興味をそそります。はまる人は、はまるのではないかと。ただ娯楽作品という感じではないので、面白いかというと微妙です。[CS・衛星(字幕)] 5点(2006-12-13 18:08:49) 1946. ラスト サムライ 《ネタバレ》 勝元たちが戦った理由付けが曖昧だと感じました。“それが武士道だから”で片付けられていたような。誇りを守るため。死に場所を見つけるため。それだけの戦いに見えました。(明治初頭の士族の反乱は、士族がその権益、すなわち生活の術を守るためのもの。いわば生きるための戦いです。死を前提とする本作のような戦いとは別物では。)そもそも武士道とは何でしょう。文字どおり士族階級独特の道徳、倫理観です。名を重んじ、主君への忠誠を誓うこと。日本人の大多数を占めた農民、工商人には関係のない思想です。(しかもこの思想は徳川の治世になって植え付けられたもの。その方が体制維持に便利であったから。)徳川以前の武士を含め、多くの日本人のベースとなる精神があるとすれば、それは“家”の観念です。個よりも血を優先する考え方。家を守る(子孫を絶やさぬ)ことが重要。そのためには、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶ。地べたを這いつくばっても家族を守る。この精神のほうが尊く、美しいと感じます。ですから、現代の私たちが抱く“武士道”の概念とは、遺伝子に組み込まれたような元からある類のものではなく、近代文化の中で整理されたものだと思います。“礼節を重んじること”や“潔しを宗とすること”ではないかと。私たちが世界に誇れる“武士道”とは、そういうことだと思います。決して捕虜にツバを吐きかけたり、負け戦において一人でも多く道連れにするような戦いを肯定するものでは無いはずです。生きることを前提としない戦い、守るべき家族をないがしろにする戦いに、美しさはありません。ただの自己満足だと思います。例えば勝元が自らの首を差し出して事態が収束するのであれば、迷わずそうするべきです。否定的な意見を述べましたが、渡辺謙がハリウッド進出の足がかりを掴んだことについては、素直に嬉しいですし、一娯楽作品としての出来が悪いとは思いません。外国で賞賛されるのなら分かります。[地上波(吹替)] 5点(2006-12-12 18:05:39)(良:1票) 1947. 親切なクムジャさん 《ネタバレ》 自分は復讐そのものを否定する気はありません。人間が持つ、至極当然の感情だと思います。しかし“復讐しても死んだ人間は生き返らない”“虚しいだけだ”という声もあります。この意見も正しいと思う。いずれにしても“人間だから”どうすべきか悩むのです。本作の重要ポイントは、主人公が遺族を復讐に巻き込んだこと。いや正確にいうなら、遺族を巻き込む際に、主人公が“悩まなかった”ことです。普通は悩むはず。遺族にとって良いことなのか?知らずにいた方が幸せではないか?そういうことを考えるのが人間です。しかし彼女がそのことで、悩んだようには見えません。これはどういうことか。彼女は、自分の指を切って詫びるほど、他人の痛みを感じることが出来る人間です。遺族を巻き込むことに、ためらいが無いはずがない。彼女が“悩まない”のは、“人間であることを止めたから”だと思いました。遺族にしてもそう。いつもと変わらぬ(ように見える)振る舞い、事務的に制裁を加える姿が、とても恐ろしいと感じました。一線を越えたのだと思います。人間であることを放棄しなければ復讐は出来ない。一方、復讐をするのは人間であるがゆえ。哀しい矛盾がそこにあります。復讐の先にあったのは、“やすらぎ”か“苦しみ”か。いずれにしても、残された者はこれからも生きて行かなくてはなりません。本作のスタンスはニュートラルです。復讐を肯定しているとも、否定しているともとれます。この姿勢は良いと感じました。惜しむらくは、展開がやや平坦であったこと。物語的な面白さに欠けたことです。こと作品の求心力という点においては、前作『オールドボーイ』に及ばないと感じました。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-12-11 18:24:02)(良:1票) 1948. 007/カジノ・ロワイヤル(1967) ナンセンスギャグのオンパレード。というか出鱈目です。作品として破綻していると言ってもいいぐらい。でもかえって清々しい。これだけ豪華キャストを使っての悪ふざけ、ラストにかけてのワッショイぶり。凄いです。ただ、作品としては正直、面白いとは言い難い。というか、見終えてポカーンとしました。0点か10点かというぐらいアクの強い作品だと思いますが、自分は本作をまだ消化しきれていないようです。なので中間くらいにさせてください。でもエンドクレジットのセンスは好きなのでちょっとプラスで。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-12-10 22:30:10) 1949. 激突!<TVM> ちょっと凝った作品やひねりの効いた作品が自分は好みです。解釈を観客に委ねるようなあそびのある作品も好き。いうならば本作はそれと対極に位置するような作品です。単純明快、直球勝負。必要なことは過不足なく作品の中で描かれています。ストーリーは一言で説明出来てしまいます。“自家用車がタンクローリーに追いかけられるお話”。でもこれが面白い。シンプルが故に誤魔化しが効かず、純粋に監督の力量が分かります。抽象的な褒め言葉を必要としない作品。こういうのを見せられると参るしかありません。監督の見事な手腕の前にただひれ伏すのみ。シンプルイズベスト。炊き込みご飯や混ぜご飯もいいけど、やっぱり白めしは上手いと思わせる作品です。[CS・衛星(字幕)] 8点(2006-12-09 19:04:02)(良:1票) 1950. タイムマシン(2002) 《ネタバレ》 59年版と比べて、かなりエンターテイメント性に優れています。タイムマシン制作の動機も分かりやすく、ラブストーリー要素やアクション性も強い。本作最大のウリは、やはりタイムトラベルシーン。移り変わる景色を使い時間経過を見せる手法は59年版と同じ。映像技術は格段に進歩しているので見ごたえUP。というか、これがやりたくてリメイクしたのだと思います。単純に面白いのはリメイク版の方かもしれません。ただ本作は、59年版が持っていた哲学的なテーマ部分が抜け落ちています。ですから、余韻や深みという点でオリジナルに及びません。自分は59年版の方が好きです。しかし本作を否定する気はありません。これはこれでアリだと思います。過去を変えることが不可能だと悟った主人公。だから未来に希望を見出した。彼の心情は理解できますし、メッセージもポジティブ。オリジナルを単に焼き直すだけなら、リメイクの意義は薄い。真っ当なリメイク作でありながら、別の角度からアプローチしたことを評価させていただきたい。[DVD(字幕)] 7点(2006-12-08 19:55:47) 1951. WEEKEND BLUES ウィークエンド・ブルース 映画に限らず全ての芸術は、自分の思いを他者に伝える作業だと思います。でも簡単には伝わらない。思いを100%伝えることなど不可能です。ですから少しでも100%に近づけるように創意工夫を凝らします。本作は高いレベルで監督の思いを伝えることに成功していると思います。これはもの凄いこと。低予算だろうが、役者が無名だろうが関係ない。(もっとも本作の場合、役者も文句なく素晴らしいです。その素晴らしい役者を起用したことも含めて監督の手腕だと感じます。)本作と『運命じゃない人』を観ると“内田けんじ”がどういう人間か見えてきます。物語として面白いだけでなく、ちゃんと監督の主義主張が感じられる。もう手放しで褒め称えたいです。ただ気がかりはひとつだけ。不遜な言い方で恐縮ですが、この才能を日本映画界が育てられるのかということ。大人の事情やしがらみで才能を潰さないで欲しいということです。本作と『運命じゃない人』が監督の頂点とならないことを祈るばかりです。[DVD(邦画)] 9点(2006-12-07 18:49:43)(良:3票) 1952. オーギュスタン 恋々風塵 『きまぐれオーギュスタン』のつもりで観たのですが、違いました。そのため『きまぐれ』は未見です。でもせっかくなので感想を書きます。コメディとしてはかなり薄口です。爆笑シーンはありません。普通のドラマと言っていいです。彼はいわゆる“変わり者”。こだわり派でもある。そんな彼の悩みは“他人と触れ合うのが苦手なこと”。握手さえダメ。でも夢であるカンフースターになるには克服しなければならない壁です。だから治療のために中国人針師兼カウンセラー、リン先生の元へ通うようになります。彼女との交流が本作の主軸。彼女への恋心が主人公を変えていきます。展開に派手さはありません。でも味わいがある。ひとつは主人公の魅力。人の心を掴む“いい顔”だと思います。普段飄々としている(いや感情を表に出せないといったほうが正しい)ため、感情が表に出た時には、ハッとさせられます。物語的にも一人の男の成長、自分探しの過程をきちんと描いていて好感がもてました。人生のもどかしさ、切なさもある。面白いと手放しで人に勧められる作品ではありません。でも妙に心に残ります。ラストのオーギュスタンの表情。そこに人生の機微を感じます。[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-12-06 18:13:38) 1953. タイム・マシン/80万年後の世界へ 《ネタバレ》 主人公が見たかったのは“人類の行き着く先“。そこにあるのは純粋な探究心。そして争いを繰りかえす現代人に対する”あきらめ“でした。未来には希望がある。技術の進歩、社会の成熟が世界を平和にすると。だから彼は未来を目指します。しかし80万年後の世界、人類の行き着いた先は、彼の期待したものではありませんでした。モーロックとイーロイたち未来人の世界。見た目は違っても元は同じ人間。人間が人間を支配する。人間が人間を一方的に食う世界は、まさしく地獄です。現代人よりもはるかに性質が悪い。感情を捨て、自らの存在意義を捨てたイーロイ。野獣と化したモーロック。人類は”進化“ではなく”退化“した。未来人は人間であることを棄てたのです。未来人を再び”人間“に戻すために、主人公は80万年後の世界に戻ります。3冊の本を手にして。本は主人公の言葉を借りれば”何千年もの努力の結晶“。人類の営みの記録です。知識を後世に伝える”タイムマシン“とも言えます。人の一生は短い。1人の人間が経験できることはほんの僅かです。しかし本を介せば、莫大な量の経験や知識を得ることが出来ます。それが人間の知恵。知恵を放棄した未来人が人間でなくなるのは当然です。知恵はより良く生きるためのもの。それさえ捨てなければ、きっと人間は理想の世界を築ける、そんなメッセージが本作には込められているのだと思います。[DVD(吹替)] 8点(2006-12-05 18:03:29)(良:1票) 1954. シムソンズ 少なからず本作をなめていました。「カーリング娘」こと「チーム青森」人気にあやかったブーム便乗作品であると。美少女を主役に配し、彼女ら目当ての男性客を見込んだ作品であると。事実、そういう側面を持った作品だとは思います。しかしだからといって、作品の質が低いと決め付けるのは大きな間違いだと知りました。何といっても4人娘が素晴らしい!正直彼女たちが役者として上手いのかどうかは分かりません。でもハツラツとしています。表情も豊か。嫌味がありません。大泉洋をはじめ、脇を固める役者陣もみな味がある。ストーリーに意外性はありませんが、丁寧にドラマをつくっている印象。4人がちゃんと悩んで、自ら答えを出していきます。カーリングの描写も然り。地道な努力をしっかり見せること。スポーツ作品で一番大切なことが守られていました(最近、これが欠けている作品がホントに多い)。カーリングに対する愛情、地元北海道に対する敬意も感じます。作品に気負いがなく自然体。だから爽やか。元気が出ます。大いに笑えて素直に泣ける、上質なスポーツ青春ムービーでした。これから何度も観ることになるでしょう。本作に携わった全ての人に感謝したい、握手してまわりたい、そんな作品でした。[DVD(邦画)] 10点(2006-12-04 17:52:22)(良:4票) 1955. 遊星よりの物体X 《ネタバレ》 登場人物たちは、物体X(みんなは”火星人”と言ってました)がいかに人間よりも勝っているか、危険な存在かを力説するのですが、見た目はまるっきり人間。しかも動きが遅い。狡猾さも感じられず、緊張感はあまり無かったと思います。終止人間側に余裕が感じられました。クライマックスもわりとアッサリ。エンディングはとてもほのぼのとしていました。ホラーというジャンルからすると違うかなと思いますが、なんか微笑ましかったです。[DVD(字幕)] 5点(2006-12-03 21:37:57)(良:1票) 1956. 恋に唄えば♪ 《ネタバレ》 本作のスタイルは本格的なミュージカル。やはり歌とダンスに期待してしまいますが、ちょっと物足りません。どうも手軽に作ってしまった感じ。全体的な安っぽさも否めません。基本的にキャスティングミスなのだと思います。(個人的には好きなのですが、)優香は適役ではありませんし、竹中にしても(彼は素晴らしいエンターティナーだと思いますが、)ちょっと違うかなと思いました。ミュージカルの出来る役者が不在だった、あるいは準備不足だったということ。それに舞台を外国にまで広げたのが良くなかった。素人同然の外国人エキストラの大量投入。安さ爆発です。制作費が少ない事と、つくりが安っぽい事は違います。ミュージカルですから“歌とダンス“だけは時間をかけてきっちり作っておく必要がありました。軸がしっかりしていれば、セットやCGが弱くても、安っぽいという印象にならないと思います。ストーリーはラブコメの王道ですし、ツメは甘いものの後味は悪くありません。邦画でミュージカルという難しいジャンルに挑戦したその意欲は買います。[CS・衛星(邦画)] 5点(2006-12-02 18:21:37) 1957. 終わりで始まりの4日間 《ネタバレ》 谷の住人の姿は人生をなぞらえています。人生は鉱脈を掘り進めることと同じ。深く深く無限に掘り進めて行く作業。降りしきる雨の中、主人公は谷底へ叫びます。自らの人生と向かい合う決意をするかのように。少年期に負った心の傷を引きずる主人公。ひとりの少女との出会いが彼を変えていく。いいお話だと思います。作品を包む雰囲気も温かい。でもちょっとひっかかります。結局は“彼女が出来てハッピー”という話ではないのか。父との和解は一方的ではないか。家族(ホーム)の重要性を訴えているようだが、家族がないと人はダメなのか。いくつかの疑問(言いがかりともいう)が頭を過ります。キスのハッピーエンド。上手くまとめ過ぎのような気がするのです。主人公は本当に成長したのでしょうか。これはナタリー・ポートマンをゲットした主人公に対するやっかみではありません。たぶん。[CS・衛星(字幕)] 6点(2006-12-01 20:51:07) 1958. 問題のない私たち 《ネタバレ》 sayzinさんのおっしゃるように、前半と後半では別の話になっています。1話完結スタイルの連ドラを2本立てにしたよう。前半が「生徒間のいじめ」、後半が「教師による生徒へのいじめ」。いじめの方法、登場人物のキャラ作り、台詞等すべてがステレオタイプで、リアリティに欠けます。美女ぞろいのクラスというのも(男性目線からすると嬉しいですが)現実感の無さに拍車をかけます。でも事の本質は外していないと思いました。個の放棄、短絡的発想、想像力の欠如、狭い社会、幼児性。いじめを生む要件は揃っています。観ていて心が痛くなります。不快指数は高い。でも本作で用意されたラストは、前半も後半も実に爽やかです。今までのドロドロが嘘のよう。そう、ウソ臭いんです。こんなに後腐れなく、丸く納まるなら誰も苦労はしません。でも共感できたのは、”主人公が自ら動いたこと“。誰もが主人公のように強くありません。だから逃げてもいいし、助けを求めてもいい。ただ、自分から能動的に動かないと事態は変わらない。呼んでもいない正義の味方は現われないということ。その点を押さえていたのは良かったと思います。あと友達は大切です。自らの身を守るうえでも、自身を成長させるうえでも。美少女揃いですし、ピチピチ水着も拝めます。でもそれを目的で観ると痛い目にあいます。[CS・衛星(邦画)] 6点(2006-11-30 18:16:07)(良:2票) 1959. 旅するジーンズと16歳の夏 《ネタバレ》 “ジーンズにかけた魔法”“仲間内の決まりごと”。いかにもティーンの女の子が考えそうなことです。アホらしい。正直苦手な分野です。甘ったるい青春ごっこなら御免だなと思いつつ鑑賞しました。でもこれが大違い。実に爽やかな青春ドラマでした。本作が素晴らしいのは、主役4人がみんな“外の世界を経験したこと”です。気の合う仲間でつるむのは重要な成長過程。しかしあまりの心地よさに、そのコミュニティーに依存してしまうことがあります。狭い社会の中だけで物事が完結してしまう。陥りがちです。思考の幅が広がらない。それはすなわち、人としての成長していないこと。4人は、ひと夏で多くのことを経験しました。仲間内の世界にいては見えないこと、思いもよらぬ世界を知りました。苦く、辛く、涙が出るようなこと。そんな人生のハードルを乗り越える時には勇気が要ります。その勇気をもらう“おまじない”。それが1本のジーンズでした。4人にはもうジーンズは必要ありません。子供から大人になるということは、多分そういうことだと思います。[CS・衛星(字幕)] 8点(2006-11-29 18:41:23)(良:3票) 1960. いぬのえいが 《ネタバレ》 伊東美咲のCMの話は笑いました。オムニバスとしては、上出来。犬好きでも、そうでなくても楽しめると思います。問題はマリモの話。噂に違わぬ破壊力ぶりです。確かに泣けます。知らぬ間に涙が溢れるという感じ。でも“物語に感動して”というのとはちょっと違う。犬を飼った経験のない自分でも泣けてしまう。人間の心はそういうふうに出来ている、あるいはそう教育されてきたのだと感じます。それが人間の良いところなのでしょう。でも、偽善的だなとも思ってしまう。これで泣ける自分がちょっとイヤ。ひねくれ者でスミマセン。[DVD(邦画)] 5点(2006-11-28 18:49:21)
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS